クライモリ ◆cyLXjJEN56
―――紅い。
夜空が、紅く染まっている。
厳密に言えば、夜空にかかった雲に、地上からの光がスクリーンの様に映し出されているが為であって、空自体が紅く輝いている訳ではなく、その光源は地上に在ると言う訳だ。
厳密に言えば、夜空にかかった雲に、地上からの光がスクリーンの様に映し出されているが為であって、空自体が紅く輝いている訳ではなく、その光源は地上に在ると言う訳だ。
では、空を紅く染める、その光源とはなんだろう。
果たして、『儀式』の会場、地図上では『B-4』の南方に位置する、古びた教会から飛び出した、赤い赤い炎こそが、その光源の正体であった。
火の手は、教会全体を覆い尽くさんとばかりの勢いで、消化せずに放っておけば、後一時間も経たずに、灰と炭と残骸だけを残して、教会は焼失してしまうだろう。
どうやら、教会内部より出火したらしいが、バリン、と音を立てて、ステンドグラスが割れる音が響き、さらに炎が、教会の内から外へと飛び出して、空を一層、紅く染めた。
そんな中、燃え盛る炎と煙により、今にも崩れ落ちんとしている教会正面の観音開きの扉が、ギィギィと嫌な軋み音を響かせて開き、その内側から、煙、炎と共に、一人分の人影を吐きだして来たのだ。
明らかに常人であれば焼け死んでしまうであろう燃える教会の内より出現したその人影は、やはりと言うべきか、『普通の人間』では無かった。
黒と白で構築された、スマートな仮面の鎧騎士。
白い線は、黒い体に、非常に尖った文様を描き、その有り様は、何処となく『三角形』を連想させる。
それは、仮面となるとより顕著で、『三角形』の意匠を交えたその仮面には、二本の角と、橙色の大きな『眼』が二つあり、その橙は、炎の赤を受けて、一層妖しく光り輝いている。
白い線は、黒い体に、非常に尖った文様を描き、その有り様は、何処となく『三角形』を連想させる。
それは、仮面となるとより顕著で、『三角形』の意匠を交えたその仮面には、二本の角と、橙色の大きな『眼』が二つあり、その橙は、炎の赤を受けて、一層妖しく光り輝いている。
この鎧騎士……『スマートブレイン』が『王』を護る為に作り上げた三体の『守護騎士』が一体、すなわち、『デルタ』であった。
『三本のベルト』の内、一番最初に造られたこのベルトは、装着者を選ばず、人であろうと、オルフェノクであろうと、自由に変身する事ができる。
無論、何の代償も無い訳ではないが……
無論、何の代償も無い訳ではないが……
さて、この、燃える教会から出て来た『デルタ』の左手は、何か『大きなもの』を掴んで引き摺っており、ソレの一部には、教会内で引き摺ったせいか、幾らかの炎が燃え移っている。
『――――――――――――』
『デルタ』は無言で、まるでゴミでも捨てるかの様に、それを地面へと向けて放り投げた。
『デルタ』の怪力により、かなり重そうに見える『何か』は、しかしまるで軽いモノであるかの様に、宙に放物線を描きながら飛んで、どさりと草むらに落ちて転がった。
『デルタ』の怪力により、かなり重そうに見える『何か』は、しかしまるで軽いモノであるかの様に、宙に放物線を描きながら飛んで、どさりと草むらに落ちて転がった。
ここで…影に隠れて解らなかった『何か』の正体が明らかになる。
それは――――
それは――――
―――散大した瞳孔。
―――硬直を始めた肉体。
―――血に染まったボロボロの衣服。
―――そして、随所が『欠損』した体躯……
―――硬直を始めた肉体。
―――血に染まったボロボロの衣服。
―――そして、随所が『欠損』した体躯……
それは『人間の死体』であった。
それも、推測するに、相当に残虐な方法で惨殺された死体であった。
それも、推測するに、相当に残虐な方法で惨殺された死体であった。
今や、死体となってしまったその人間の名前は、『松田桃太』と言った。
◇
―――松田桃太。
『キラ事件』を追う、警視庁の敏腕(?)刑事であり、その能力は必ずしも低くはないが、単純な性格であり、頭の回転もそれほど速くは無く、オマケに、余り空気を読めない、調子の良い男である。
しかし一方で、確固たる正義感、卓越した射撃の技能の持ち主であり、決して無能などでは無い。
そんな松田には、正義感からも、警察官としての矜持からも、こんな極悪非道の『儀式』の存在を許す事は出来なかった。
素早く、信頼できる夜神月君や、夜神本部長、そしてついでにいけすかないLと合流して、知恵と勇気を結集して、この『儀式』をぶっ潰し、あのアカギとか言う男を逮捕せねば……
そんな事を、松田が初期出現地点であった教会の中で考えていた時である。
―――ギシリ
と、床の軋む音が、松田の耳に入る。
この教会は相当に古いと思われる木造で、故に、歩くたびに床がギシギシと鳴る。
そして、自分は今、礼拝堂の椅子に座っている所であり、よって、音が鳴ったのは、誰かが、教会の中に居る事を示すのだ。
この教会は相当に古いと思われる木造で、故に、歩くたびに床がギシギシと鳴る。
そして、自分は今、礼拝堂の椅子に座っている所であり、よって、音が鳴ったのは、誰かが、教会の中に居る事を示すのだ。
松田は、支給品であった『マニューリン MR73』を、コートの下のホルスターから引き抜いた。
フランス製のリボルバー拳銃で、使用される357マグナム弾の殺傷力は非常に高い。
フランス製のリボルバー拳銃で、使用される357マグナム弾の殺傷力は非常に高い。
―――ギシリ
―――ギシリ
―――ギシリ
―――ギシリ
―――ギシリ
床の軋み音は、徐々にその大きさを増して行く。
間違いなく、こちらへと誰かが近づいているのだ。
間違いなく、こちらへと誰かが近づいているのだ。
この様な状況下での、見知らぬ誰かとの接触……
松田の額と頬に、緊張故の汗が浮かんだ。
松田の額と頬に、緊張故の汗が浮かんだ。
そして遂に、その何者かはやってきた。
礼拝堂へと繋がる扉の一つが、錆びた蝶番から出る嫌な音と共に開いたのだ。
礼拝堂へと繋がる扉の一つが、錆びた蝶番から出る嫌な音と共に開いたのだ。
松田は、開いたドアへと向けて、銃口を擬し、言った。
「両手を後ろで組んで、ゆっくりと此方へ歩いて来るんだ!!」
「怪しい動きを見せれば、容赦なく発砲する!!」
「怪しい動きを見せれば、容赦なく発砲する!!」
と、松田は陰で見えない、その未だ不明な来訪者へと告げた。
この礼拝堂には、窓から覗く月明かりしか光源が無く、それ故に、開いた扉の向こうの誰かは陰でしか解らなかった。
この礼拝堂には、窓から覗く月明かりしか光源が無く、それ故に、開いた扉の向こうの誰かは陰でしか解らなかった。
さて、銃口こそ向けたが、無論、本当に撃ち気は松田には無い。
仮に撃たねばならぬ状況に陥ったとしても、規範通り、初弾は警告の為にわざと外すつもりでいた。
日本の警察官の拳銃は、初弾が空砲になっているのだが、この拳銃では実弾な為に、わざわざ外して撃つ必要があった。
仮に撃たねばならぬ状況に陥ったとしても、規範通り、初弾は警告の為にわざと外すつもりでいた。
日本の警察官の拳銃は、初弾が空砲になっているのだが、この拳銃では実弾な為に、わざわざ外して撃つ必要があった。
『―――――』
それに対して、その謎の人物は、松田の指示に従う事無く、堂々と松田の方へと歩みを進めて来る。
松田が、再度の警告を発しようとした時、月明かりで、その人物の姿が初めて明らかになった。
松田が、再度の警告を発しようとした時、月明かりで、その人物の姿が初めて明らかになった。
白と黒の仮面。橙色の瞳。
言うまでも無い、『デルタ』であった。
言うまでも無い、『デルタ』であった。
その余りの異様な姿に、松田は思わず唖然とするも、しかし擬した銃口は外す事無く、
「もう一度警告する!!」
「両手を後ろで組んで……そこで一旦止まるんだ!!」
「指示に従わないなら……今度こそ発砲する!!」
「両手を後ろで組んで……そこで一旦止まるんだ!!」
「指示に従わないなら……今度こそ発砲する!!」
しかし、『デルタ』はその歩みを止めない。
松田が引き金を引いた。撃鉄が落ちて、銃声。
銃弾は、床をぶち抜き、思いの外大きな穴を開けた。
警告射撃であった。
松田が引き金を引いた。撃鉄が落ちて、銃声。
銃弾は、床をぶち抜き、思いの外大きな穴を開けた。
警告射撃であった。
「最終警告だ」
「両手を後ろで組んで……そこで一旦止まるんだ!!」
「今度は…外さない。確実に当てるぞ!!」
「両手を後ろで組んで……そこで一旦止まるんだ!!」
「今度は…外さない。確実に当てるぞ!!」
そんな松田に対し、『デルタ』は、初めて歩く以外の行動を取った。
その右手が、腰元に伸びる。腰元にあるのは―――
その右手が、腰元に伸びる。腰元にあるのは―――
「!!」
その形状を見て、今度こそ松田は躊躇しなかった。
覚悟を決めた時の松田の動きは恐ろしく素早い。
彼は、『デルタ』が腰に伸ばした右手へと向けて、即座に銃口を向けて、引き金を、引く。
覚悟を決めた時の松田の動きは恐ろしく素早い。
彼は、『デルタ』が腰に伸ばした右手へと向けて、即座に銃口を向けて、引き金を、引く。
―――パチュォォォン!
「!?」
「!?」
―――銃弾が弾かれた。
―――それも、怪人の着た異様な服の表面に。
―――それも、怪人の着た異様な服の表面に。
余りの想定外の事態に、松田が唖然としている間に、『デルタ』は腰のモノ、『ブラスターモード』と化していた『デルタムーバー』を引き抜いて
「ふぁいあ」
と一言。それに、
―――『 Burst Mode 』
と、電子音声が続く。
『デルタ』が、そして銃口を松田に向け、慌てて松田も茫然から立ち直って銃口を、『デルタ』の右手に向けるも
『デルタ』が、そして銃口を松田に向け、慌てて松田も茫然から立ち直って銃口を、『デルタ』の右手に向けるも
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
青く細い光線が、松田の右手に命中し、松田は絶叫を上げながら床にひっくり返った。
その右手から拳銃が弾き飛ばされたばかりか、右手は焼けただれ、その人差指と中指が欠損している。
フォトンブラッドの青い光弾に、吹き飛ばされてしまったのだ。
フォトンブラッドの青い光弾に、吹き飛ばされてしまったのだ。
痛みに床でゴロゴロと転がる松田へと、『デルタ』は腰にデルタムーバーを戻しつつ、悠然と歩みよって来る。
そして……
そして……
「うあわぁ!? 何をす――――」
『デルタ』は松田の首を捕まえて、無理矢理彼の体を引き摺り上げたのだ。
仮面の橙色の眼と、松田の眼が、正面から向き合う。
「―――――ッ!?」
この時、松田は確かに感じ取った。
何故か、それが解ってしまった。
何故か、それが解ってしまった。
仮面の下の誰かの顔が、確かに、嗤っているだろうと言う事を。
恐ろしく、暗い喜びによって、だ。
恐ろしく、暗い喜びによって、だ。
空いた方の『デルタ』の左手が、松田の右肩の掛り―――
―――『虐殺』が始まる。
◇
松田の死骸の状況は凄まじいモノだった。
右腕と両耳は根元から引きちぎられ、両脚は有り得ない方向へと圧し折られ、肋骨はグシャグシャに砕けて肺に突き刺さり、その上で、激痛と失血で朦朧とし、昏睡寸前の半死半生の所を、首をへし折られて殺されたのだ。
右腕と両耳は根元から引きちぎられ、両脚は有り得ない方向へと圧し折られ、肋骨はグシャグシャに砕けて肺に突き刺さり、その上で、激痛と失血で朦朧とし、昏睡寸前の半死半生の所を、首をへし折られて殺されたのだ。
『デルタ』の力を使えば…松田を殺すなど容易い事であり、この様に執拗な攻撃は必要ない。
では、何故、『デルタ』がこの様な『虐殺』を行ったかと言えば、それは『デルタ』の性能を確かめる為であり、『彼女』の、異様に沸き立った血の疼きを満たす為である。
では、何故、『デルタ』がこの様な『虐殺』を行ったかと言えば、それは『デルタ』の性能を確かめる為であり、『彼女』の、異様に沸き立った血の疼きを満たす為である。
心は『闇』に支配され、最早荒れ狂う嵐の様に、体は猛っている。
しかし、それが不思議と不愉快では無い。
しかし、それが不思議と不愉快では無い。
そんな事を考えながら、『デルタ』は除装し、その内なる姿を明らかにする。
―――紫の長い髪。
―――同色の暗い瞳。
―――結ばれたリボンは血の様に赤い。
―――同色の暗い瞳。
―――結ばれたリボンは血の様に赤い。
黒い亀首のセーターに、ジーンズの姿で、腰にデルタドライバーを巻き付けたこの少女は、その名を『間桐桜』と言う。
何故、彼女が、支給された『デルタギア』を着けるつもりになったのかは解らない。
今、一つだけ確かな事は、『デルタギア』の持つ『副作用』…『デモンズスレート』による影響か、それとも、それによって彼女の内側に溜めこまれていた『悪意/恨み/怨み』が噴出したのか、そのどちらが原因かは兎も角、彼女の精神の平衡は崩れ、邪悪な意思に支配されているという事だ。
「―――――うふふふふ」
「せ♪ ん♪ ぱ♪ い♪」
「せ♪ ん♪ ぱ♪ い♪」
妖艶に一人微笑みながら、彼女は一人、暗い森にわけ入った。
その殺戮の理由は、愛する『先輩/衛宮士郎』の為か、それとも、単なる暴走した彼女の悪意の故か、それは未だ不明であった。
【松田桃太@DEATH NOTE(漫画) 死亡】
【B-4/燃え盛る教会付近の森/一日目 深夜】
【間桐桜@Fate/stay night】
[状態]:『デモンズスレート』の影響による凶暴化状態、溜めこんだ悪意の噴出
[装備]:デルタギア@仮面ライダー555(変身解除中)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:???
1:???
[備考]
※『デモンズスレート』の影響で、精神の平衡を失っています
[状態]:『デモンズスレート』の影響による凶暴化状態、溜めこんだ悪意の噴出
[装備]:デルタギア@仮面ライダー555(変身解除中)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:???
1:???
[備考]
※『デモンズスレート』の影響で、精神の平衡を失っています
※B-4の『古びた教会』は、後1時間程で完全に焼失します
※松田の支給品はディパックもろとも、焼失しました
※松田の支給品はディパックもろとも、焼失しました
008:草加雅人なら大丈夫♪ | 投下順に読む | 010:Night of Knights |
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初登場 | 間桐桜 | 023:monster. ~愛故の狂気 |
初登場 | 松田桃太 | GAME OVER |