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テクソヴェア財団 > 第1機動研究支部列車


概要

 第1機動研究支部列車は、テクソヴェア財団が運用する移動式の研究施設である。
一本の列車が財団の研究支部を成し、研究と生活の設備を編成の内側に収めている。走る航路はエルカム交通公団の路線網に置かれる。

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運行

 支部列車の乗務はテクソヴェア財団の技官が受け持ち、運転から車内の保安までを、研究員と寝食を共にする同じ編成の内側で賄っている。

取得

 支部列車は、テクソヴェア財団がエルカム交通公団から買い入れた車両で組まれている。財団は異次元と惑星間の研究を柔軟かつ効率よく運営する手段を求め、研究の場そのものを動かせる列車の形を選んだ。売買の手続きは、他国へ輸出する機械を管理する公団の工機部輸出課が取り仕切り、車両の仕様も同課の技官との協議を重ねて固められた。引き渡された旅客車両の改装には財団の焼鈍工作部が当たり、研究設備の重い負荷に合わせて、車内の給電の配線を一から引き直している。契約には車両の引き渡しに加えて、公団の運行計画に支部列車を臨時に組み込む権利が盛り込まれており、財団は路線網の全域を研究の足場として使える立場にある。公団との協力関係は引き渡しの後も続き、走行に関わる機構の保守は公団の車両点検課に委ねられて、支部列車は国際列車と同じ周期で定期の点検を受ける。研究設備の中身は財団の機密にあたり、車内の機器の手入れには、乗り組んだ技官が自ら当たっている。

航路

 エルカム交通公団の国際列車司令が、支部列車に運行の指令を送る。行き先の申請は、テクソヴェア財団の本部を抱えるオクシレイン大衆自由国の司令所で受け付けられ、公団の運行計画との照合を経て臨時の便に仕立てられる。定期列車の合間を縫って組まれる便のため、指令の確定を待つ間、支部列車は手近な駅の待避線にとどまって出発の時を待つ。定期列車の混み合う時期には指令が出発を見合わせる場合もあり、回収の日程は、待機の長引く見込みを織り込んで組まれる。公団の路線を成すB.N.S.ゲートやルーゼリック・ワープ航法も、星系の間を渡る区間ごとに使い分けられ、乗務の技官は切り替わる指令に沿って編成を進める。国際航路には公団警備部の装甲列車隊が警備に就き、回収した品を積んで帰路をたどる支部列車も、警備の行き届いた路線の上を走る。公団の5550型機関車は特殊装甲列車を除く全ての列車と連結でき、走行の機構に故障を抱えた支部列車も、この機関車に牽かれて最寄りの車両基地へ運ばれる。

編成

 支部列車の車体はエルカム交通公団の旅客車両を土台に組まれ、外観は国際列車の姿をとどめる一方、内部は研究の用途に合わせて一両ずつ作り替えられた。

研究車両

 研究車両は、テクソヴェア財団の原体保全の原則に従い、原物から写し取った写体のみを扱う。写体を壊す試験も車内で認められ、解析の担当者は原物を損なう心配から離れて、品の内部の構造に踏み込んでいく。車両の境には気密の扉が設けられ、一両で生じた汚染は、隣の車両に及ぶ前に区画ごと閉じ込められる。生物学研究車両では異星の生物から採ったサンプルの遺伝子を解析し、採取地の生態の記録まで同じ車内で整えていく。物理学研究車両は次元の境で生じる物理現象を追い、境を越えて流れ込むエネルギーを取り出す試みが、実験台の上で繰り返されている。魔法の術式に由来する品には術式計測車両の計器が向けられ、術の働きは数値の記録に置き換えられて読み解かれる。測定は術の行使者から切り離した計器に任され、記録の値は、誰が測っても同じ数字に揃う。データセンター車両は車列の中ほどに連結され、探査の現場から届く観測の情報を即座に処理して、結果を暗号化した回線で本部へ送り出す。

収蔵車両

 写体工作車両は、回収された原物を編成の中で最初に迎え入れる車両である。搬入を終えた品から技官が直ちに構造を写し取り、写し終えた原物を容器に封じていく。来歴票の書き起こしも同じ車内で始まり、出所の座標の欄には、回収の時点で支部列車が停泊していた位置が書き込まれる。封じた原物は隣の封函車両に移され、テクソヴェア財団の静蔵部の棚に収まる日まで、封を保ったまま運ばれる。容器は回収ごとに一つずつ割り当てられ、外側には来歴票の写しが貼り付けられて、封を解く前に品の素性を確かめられる。停めると技術の途絶える装置も稼働保存車両に積まれ、動いたまま本部への道をたどって、静蔵部の稼働保存の区画へ直に引き渡される。車内には給電の系統が幾重にも引かれ、どれか一つが落ちても、別の系統が即座に電力を送り込む。装置の挙動を映す計器の盤は稼働保存車両の一角に据えられ、走行の最中も、交代で就く見張りの目が絶えず注がれる。乗務の技官は、積み荷の装置や写体の実験に異常の兆しを認めると、当該車両の連結を解いて待避線に残し、編成の残りを安全な距離まで引き離す。

生活車両

 生活車両は、乗員が旅程の大半を過ごす居住の区画を収め、編成の後尾寄りにまとめて連結されている。寝台を並べた居住車両には個室と相部屋が混在し、回収から戻った隊員は、護送の装備を保管室に預けてから自分の寝台に向かう。寝台の区画は遮音の壁で囲まれ、夜更けまで続く解析の作業音から、休息を取る乗員を隔てている。食堂車両が乗務の技官を含めた全員の食卓を一手に引き受け、献立は停泊の長さに応じて組み替えられる。翌日の回収の段取りも食卓を囲んで詰められる場合が多く、研究員は、現場へ出る隊員から採取の要望を直に聞き取る。停車駅ごとの食材の積み込みは、テクソヴェア財団の伏流補給部が沿線の取引先と結んだ段取りに沿って進められる。レクリエーション車両も編成に加わり、体を動かす区画が、航路の終端で長く停泊する乗員の気晴らしに使われる。生活支援の車両には医務の区画も置かれ、伏流補給部から派遣された医療要員が、乗員の体調を日ごとに見守っている。回収の現場で負った傷に備えて外科の設備も整えられ、重い負傷者は、本部の医療施設へ送り出す前にこの区画で処置を受ける。

任務

 支部列車の行き先はテクソヴェア財団の経営評議会が回収の計画に沿って定め、一つの旅程の中に、性格を違える任務が続けて組み込まれる場合も多い。

異次元探査

 異次元探査は、新しい技術や資源を探し出して持ち帰る任務である。エルカム交通公団の航路が結ぶのは星系の間であり、支部列車は路線の終端に停泊して探査の前線拠点となる。回収班は車内に積んだ次元間移動装置で境の向こうへ入り、列車は班の帰還まで同じ位置で待機を続ける。境を越えた班と列車を結ぶ連絡の手段は、移動装置に組み込まれた信号の経路に一本化されている。帰還の予定を過ぎた班が出た場合には、列車に控える予備の班が同じ経路をたどって捜索に向かう。移動の技術を磨く開発も任務に含まれ、物理学研究車両で試作した機構は、終端での実験を経て班の装備に組み込まれる。次元の境に近い停泊地には事象災害の兆しが現れる場合があり、データセンター車両は、境の観測値に乱れを捉えた時点で班に帰還の合図を送る。未踏の次元の探索も計画に上っており、停泊地を路線網の外縁へ広げる準備が、新たな装置の導入と並んで進められている。

惑星間調査

 惑星間調査の舞台は、エルカム交通公団の駅を持つ惑星の地表に置かれる。支部列車が大気圏を降りて地上の駅に停車すると、調査班は駅を足場に地表へ出ていく。班は駅に通信の中継点を据えてから散開し、データセンター車両との交信を保ったまま、駅から離れた奥地の採取地点へ向かう。生命体の調べは周囲の環境の条件と照らし合わせて進められ、移ろう気候に応じた変化を追うために、季節を跨いで続けられる場合もある。停車が長引く調査では、支部列車が公団の運行を妨げる位置を避けて側線に移り、拠点の役目を続ける。採取したサンプルも写体工作車両で写し取られ、原物は封函車両に収められて、生物学研究車両には写体の側だけが届く。住民の暮らす土地に踏み入る前には、調査が土地の暮らしに及ぼす影響を見積もった書面が整えられる。公団の路線網が新たな星系へ延びるたびに、支部列車の行き先には未知の惑星が書き加えられる。研究員は現地の技術を学ぶ際に使い手の文化まで記録を広げ、得た知見をテクソヴェア財団の技術に取り込む道を探る。

災害対応

 支部列車は、自然災害や人為的な災害に見舞われた土地にも、救援の拠点として駆け付ける。テクソヴェア財団では出動の可否を特別委員会が審議し、決定と同時に、エルカム交通公団の国際列車司令へ臨時便の申請が送られる。出動の間は研究車両の実験が中断され、乗員の全員が救援の作業に回るほか、片付けた実験台の一角も負傷者の待機の場に充てられる。支部列車が被災地の駅に着くと、医務の区画が負傷者に開かれ、乗り組んだ医療要員が手当てに当たる。被災で路線が傷んだ区間では、支部列車は手前の健在な駅に留まり、救援の隊が陸路で現地に入る。救援の物資は伏流補給部が沿線の駅で買い集め、荷物の区画に積まれて現地に届けられる。停電に陥った施設には、稼働保存車両の空いた給電系統から電力が分け与えられ、医療の拠点となる建物から順に送電が始まる。インフラの復旧は通信の回線から手当てが始まり、技官が財団の中継装置を駅から現地へ運び込んで、仮設の線を張り巡らせる。撤収の時期は特別委員会が決め、張り巡らせた仮設の線の扱いも、同じ審議の場で現地の求めに応じて取り決められる。

共同研究

 客員の研究者は、共立世界の各地で提携を結んだ研究組織から支部列車に迎えられる。乗車の期間は共同の計画ごとに取り決められ、客員にも生活車両の寝台が割り当てられて、乗員と同じ食卓で旅程を過ごす。共同の計画では研究車両の一角が客員に貸し出され、財団の研究員と同じ実験台で、写体を囲んだ検討が進められる。封函車両と稼働保存車両の扉は財団の乗員の手でのみ開かれ、客員の作業場は研究車両の内側に定められている。訓練の課程も編成の中で組まれ、外部から参加した若手の研究者は、停泊地での観測から写体の解析までを、乗務の研究員に付いて一通り経験する。提携先に渡す記録は、データセンター車両の保存分から写しが作られ、テクソヴェア財団の許諾契約に関わる部分は伏せられる。写しを携えた提携先の研究者が次の停車駅で降り、自らの拠点に戻って解析を引き継ぐ。

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タグ:

技術
最終更新:2024年12月13日 22:38

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