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令咏術 > 召属性


概要

 召属性は、令咏術において上位存在を招いて力を借り受ける、上位属性の言語コードである。
地球の言葉から採った通称はラテン語の"invītāre"に由来するインヴィーターレで、ロフィルナ語圏では、君主と精霊を表す二語を組んだファールレンザの名が通る。
コール・スクリプトは、転移者の術者たちが共立英語で呼び習わした名である。

伝承

 召属性の起こりとして語り継がれるのは、ヒュプノクラシアの世界で滅亡の淵に立たされた古い王国の伝説である。王国に仕えた祭司は、禁忌とされた儀式に踏み込み、異界の存在と契約を交わしたという。差し出したのは自らの半生で、引き換えに得た力は押し寄せた敵軍を一瞬で壊滅させたものの、祭司も間を置かずに息絶えたと伝わる。強い力を借りれば重い代償が返るという理解は、出来事を境に各地に広まり、後に続く者たちは、身を守りながら力を借りる手立てを探り始めた。研究の積み重ねを経て、精霊や霊的存在と穏やかな条件で結ぶ契約の形が整えられた。深い契約を求める者の危うさは後の時代にも残り、制御を誤った術者が暴走した召喚体に呑み込まれる事故は、各地の記録に繰り返し現れる。人々が招きを操る術者を畏れてきた背景には、招く力の大きさに加えて、力に呑まれた術者たちの記憶が横たわる。招いた相手を御するには深い知識が要り、高潔な心根を欠いた者は契約の段で相手に付け込まれるとされてきた。最後の手段として召属性を修める者は、意志を鍛える修練に加えて、相手と言葉を交わす作法の習得に長い歳月を充てる。

契約

 召属性の契約は、招く相手の格に応じて結び方が分かれ、相手が深いほど術者の差し出すものも重くなる。

招き先

 術者の詠唱が届く先は、時空の歪みから天体の奥底に至るまで、全て神々の防壁の内側にある。防壁を成す事象災害の歪みには、乱れた時空に寄り添って形を保つ存在が潜んでおり、術者の多くが契約の相手に歪みの住人を選ぶ。もう一つの招き先は天体の深部に残る古い理であり、名残の筋は星脈となって地殻の浅い層まで上がってくる。脈の通う土地では精霊の類が招きに応じやすく、穏やかな条件で結ぶ契約の多くも、筋の走りに沿った場所で交わされる。相手の居所によって交信の言語も作法も分かれ、歪みの住人に届く文は、古い理に宿る存在に向ける文から語の運びまで別の規則に従う。熟練した術者のごく一握りは、キラー<魔王>に数えられる存在を本当に呼び寄せる。集合知性<神>を招いた記録も残り、類する擬体とエネルギー体を相手取る術者もいる。応じた存在が現世で振るえる力には古い契約の定めた枠があり、全能から遠い所で術者に手を貸す。

代償

 契約が術者に求める見返りは、招く相手の深さに比例して重みを増す。精霊との穏やかな契約で差し出すのは術を保つ間の集中と精神の張りであり、長く招き続けた術者は、詠唱を終えた後も頭の芯に重い疲れを抱える。上位の存在と結ぶ契約では、相手の求めるものが術者の生命力にまで及び、相当の条件を呑んで結んだ術者は、その多くが死に至る。召喚の間に走らせるシートの構造も狂気を帯び、術者は五感を研ぎ澄ませて詠唱の速さを引き上げる。交信の言語は一語の誤りで相手との繋がりを崩すため、術者は作法の細部まで正確に運び、最後の一節まで唱え切る。条件の重さを測り違えた術者は、契約の途中で払いきれる量を超えた見返りを迫られ、引き返す道を失う。熟練の術者は交信の段で相手の求めを繰り返し確かめ、自らの身体が差し出せる量を見極めてから条件を受け入れる。

基本術式

 四つの基本術式は招く相手の格に沿って段を成し、契約の取り決めを受け持つ一つが、残る三つの前提に置かれる。

スポンデリウム(Sponderium)

 招きに先立ち、相手と交わす契約の条件を取り決める。術者はシートに相手の居所を刻み、詠唱か指先の書き込みで交信の門を開いて、力を借りる範囲を相手に示す。示した範囲に見合う見返りを相手が返してくるため、交信は文の応酬となり、術者は見返りの重さを測り直しながら双方の折り合う一点を探る。合意した条件はシートの文として残り、続く召喚の文は、その合意を土台に組み上げられる。交渉を丁寧に重ねた契約ほど相手の信を得やすく、召喚の成否も安定し、招いた後に借りられる力の幅も広がる。条件の読み違いは召喚の場で命取りになるため、術者には、相手の言葉の奥に潜む求めを見抜く知識が要り、不利な条件に首を振る胆力も問われる。結んだ契約は術者と相手を繋ぐ糸として残り、同じ相手を再び招く場面では、更新の手順を踏めば召喚の準備が整う。

ゲニロクラ(Genilocra)

 土地に宿る精霊を招き、自然の力を借りて現象を起こす。招きに応じる精霊の性質は術者の立つ場所の環境に左右され、水場の近くでは水の精霊が、乾いた熱の籠もる土地では火の精霊が、術者の呼びかけに答えやすい。水の精霊の力を借りた術者が川筋を丸ごと動かす規模の水流を操る一方、火の精霊を招いた術者は敵陣を呑む炎の壁を築き、退路を焼いて敵の足を止める。地形に応じて招く相手を替えられる幅の広さが持ち味で、戦場の環境を読む術者ほど、一つの戦いの中で多彩な手を打てる。星脈の筋が地表の近くを走る一帯では精霊の応じ方が速く、熟練の術者は脈の位置を見定めてから足場を選ぶ。招きを成り立たせる要は、精霊との間に重ねてきた信の厚さにある。術者は招く前に土地を歩いて精霊の気配を確かめ、捧げる詠唱の調子を相手に合わせて整える。準備に手間をかけた招きほど借りられる力は大きく、詠唱の運びが拙い術者の呼びかけに、精霊は気まぐれに応じる。

ソニンブリス(Sonimbris)

 霊的存在の律に術者のシートを重ね、共鳴を通じて力を一時借り受ける。術者は詠唱の律動を相手の律に寄せ、シートの流れる速さを一段ずつ合わせていき、両者の律が揃った瞬間に力の通い路が開く。借りた力は術者の身体に流れ込み、打ち込む一撃の重さを増す用い方にも、受ける守りを固める用い方にも振り向けられる。傷の塞がりを早める働きも同じ共鳴から引き出せ、長い戦いに臨む術者は、共鳴を保ったまま回復の力を少しずつ汲み上げて持ちこたえる。共鳴の間は相手の律に寄り添い続ける集中が要り、術者の心が揺れた瞬間に力の流れは途切れる。相手との繋がりが深いほど共鳴は長く続き、引き出せる力の幅も広がるため、術者は日頃から同じ存在との交信を重ね、互いの律を知り合う間柄を築く。共鳴の助けは戦いの外にも及び、重い荷を動かす作業にも、長い道のりを歩き通す旅にも添えられる。

レグナヴォカ(Regnavoca)

 招き先の最も深い層に住まう存在を呼び寄せ、相手の力を一時借りて戦局を覆す。招きの文は長く、媒介エネルギーを大量に注ぎ込む手順が文の大半を占めるため、術者は注入を続けながら交信の門を開いたまま保ち、最後の一節まで張り詰めた集中で唱え切る。応じた存在の力を借りた術者は、陣地ごと敵を薙ぐ攻めも、軍勢の打ち込みを受け止め切る守りも組めるようになり、劣勢を一撃で塗り替えた記録も残る。深い契約を前提とする術式であり、長い交信で信を積み上げた術者にのみ応じる存在も多い。詠唱に入る術者は、命に届く代償を承知のうえで招きに臨む。借りた力は契約の定めた時の間だけ術者の手に留まり、期限を越えて引き留めようとした術者は相手の反発を招く。招きの途中で契約が破綻すれば、相手の力は術者自身に逆流し、身体にも精神にも深い傷を残す。

運用

 召属性の運用は、現実改変に抗う手段として磨かれてきた系譜に、精霊の力で土地を整える穏やかな用い方が並ぶ。

改変対処

 現実改変を操る相手に向き合う局面で、召属性は有力な対抗の手段の一つに数えられる。改変の力を持つ存在も、招きの文が届けば交信の相手となり、術者は契約の段で力を借り受ける条件を取り付けて、改変の働きを自らの側に引き寄せる。借りた力を握ったまま封じる側に回る手順を組み上げた技術が次元隔離であり、エーテルを重ねた薄膜のシートで空間を折り畳んで、相手を外界から切り離した空隙に閉じ込める。完成した手順は異能封鎖プロトコルに封じ込めの系統として登録された。作業は長い詠唱を伴い、精神から肉体にまで及ぶ負荷を分け合うため、複数の術者が交代で詠唱を受け継ぐ。改変の前後で揺らぐ認識を捉える心属性の術者が傍らに立てば、折り畳みに移る時機の見極めを任せられるため、召喚を担う側は交信の保持に専念できる。封じ込めの現場に立つ術者には上位属性の学識が求められ、長時間の詠唱に耐える体力も、位相の合う一瞬を確実に捉える集中も、修練の段から鍛え込まれる。

環境調整

 精霊と結ぶ穏やかな契約は、戦いの外では自然の働きを整える手立てとして用いられてきた。川が溢れかけた土地に招かれた術者は、水の精霊に流れの向きを変えさせ、堤の切れかけた箇所から水を逸らす。燃え広がる野火を前にした術者は火の精霊を招き、炎の進む先を空き地に導いて、焚き付けの尽きた所で火勢を鎮める。乾いた土地では、地中の水を寄せる精霊と契約を交わし、井戸の涸れる季節を越させる術者もいる。星脈の筋が浅く走る土地では精霊が招きに応じやすく、集落ごとに馴染みの精霊と長い契約を保つ例が多い。契約を更新する時期には術者が土地を巡り、精霊の気配に表れた変わりの兆しを確かめる。招いた精霊の力は土地の環境に深く結び付いているため、術者は借りる量を土地の耐えられる範囲に収め、一帯の水と熱の巡りを保ったまま力を返す手順を守る。

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技術
最終更新:2025年11月09日 12:33