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巡りゆく星たちの中で > 接触

『こちら文明共立機構国際平和維持軍、多国籍部隊。貴艦の所属と意図を明らかにせよ。敵意がない場合、保護と対話を保証する』

その通信は、英語をはじめとする複数の地球言語、電波、光信号、量子通信という並列チャネルで艦内に届いた。
感情を排した冷静な軍用標準音声でありながら、威圧を抑えた明確な調子だった。

艦橋の空気が一瞬、張り詰める。
メインスクリーンには、三隻の大型艦が一定距離を保って展開する様子が映し出されていた。
漆黒の宇宙に浮かぶ艦影は、明らかに統制の取れた動きを見せている。

イズモ「……向こう、最初から撃つ気はなさそうだな」

腕を組み、モニターを見据えたまま低く呟く。
声には警戒と同時に、わずかな安堵が滲んでいた。

KAEDE「はい。武装は展開されていますが、照準は固定されていません。あくまで警戒と接触を目的とした行動と判断します」

淡々とした口調の奥に、処理負荷が下がった兆候が混じる。
オペレーション席のホログラムには、受信した通信が言語別・信号形式別に整理されて表示されていた。

イズモ「よし。こっちも、ちゃんと名乗ろう。変に隠す理由はない」

KAEDE「了解しました」

即座に通信系統が切り替えられ、送信準備が整う。
イズモは背筋を伸ばし、呼吸を一つ整えた。

『こちらピースギア所属、ポータル艦アリス級《エルニウス》。指揮官、最上イズモ三佐だ。我々はパラレルワールド探索中、偶発的転移によってこの宙域へ到達した。敵意はない』

英語と国際モールス符号、補助的に数種の広域通信規格で発信される。
声は過度な感情を抑え、意図的に落ち着いた調整が施されていた。

KAEDE「送信完了。現在、相手側の応答を待機中です」

イズモ「了解。……この手の初接触は、慎重すぎるくらいでちょうどいい」

椅子にもたれながらも、視線はスクリーンから離れない。
三隻の艦は依然として距離を保ち、動きを見せていなかった。

KAEDE「相手艦の行動パターン、変化なし。誘導を意識した配置を維持しています」

艦橋は短い静寂に包まれる。
機関部の低い振動音だけが、時間の経過を主張していた。

イズモ「……それにしても」

ふと眉をひそめる。

イズモ「なんで地球言語がそのまま通じてる。自動翻訳、こっちは起動してないぞ」

KAEDE「周辺宙域に、恒星間ネットワークの存在を確認しています。規模は限定的ですが、言語データの共有は可能と推測されます」

イズモ「つまり……この世界に、地球に関係する存在がいるか。それとも、俺たちみたいな転移者が他にもいるか、だな」

スクリーンの向こうに浮かぶ艦影を見つめ、静かに息を吐く。

イズモ「どっちにせよ、今は敵じゃない。向こうの誘導に従おう」

KAEDE「了解。相手艦の指示を待ちます」

未知の文明との距離は、まだ測れない。
だが艦橋に漂う緊張の中で、イズモの目には確かな覚悟が宿っていた。
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ストーリー
最終更新:2025年12月16日 20:12