巡りゆく星たちの中で > 接触

『こちら文明共立機構国際平和維持軍多国籍部隊。貴艦の所属と意図を明らかにせよ。敵意がない場合、保護と対話を保証する』

そう向こうの艦から英語等の地球言語や電波、光信号、量子通信で飛んできたのである。
その通信は、冷ややかでありながらも威圧感を抑えた丁寧な軍用標準音声で発せられていた。艦橋に響く、イズモとKAEDEは一瞬緊張の面持ちを見せた。

艦内はわずかに緊迫した空気に包まれ、スクリーンには相手艦のシルエットが映し出されている。漆黒の宇宙空間に浮かぶその艦影は奇妙な存在感を放っていた。

イズモ「向こうは戦うつもりはないらしいな」
イズモはモニターをじっと見つめながら、腕を組み思案顔で呟く。

KAEDE「そのようですね」
淡々とした口調ながらも、声にわずかな安堵が混じっていた。オペレーション席の端末には相手からの通信ログが解析され、各言語に分類されたデータが表示されている。

イズモ「とりあえず連絡を取ってみよう」
目を細め、慎重さを込めた声で命じた。

KAEDE「わかりました」
即座に対応し、手早く通信系統を操作する。

『こちらピースギア所属ポータル艦アリス級エルニウスの最上イズモ三佐だ。我々はパラレルワールド探索中にここにきたものだ。敵意はない』
英語と国際モールス符号で呼びかけた。イズモの声は落ち着いており、明確で信頼感を与えるよう調整されていた。宇宙空間を介し、信号がゆっくりと向こうへ向かっていく。

KAEDE「通信終了。相手からの反応待ちです」
端末から指を離し、息をつくように報告する。

イズモ「了解。どうなるかわからないけど慎重に行こう」
椅子にもたれかかりながら、視線はモニターに釘付けのままだ。

KAEDE「了解」
艦橋内は一瞬の静寂に包まれる。

イズモ「相手側がこの内容で受け入れてくれるか……」
小声で自問するようにつぶやく。

イズモ「にしても、なんで地球言語を使えてるんだろ?自動翻訳かけてないんだけどなぁ、この周辺宙域に地球はないんだけどなぁ」
眉をひそめながら、疑問が口からこぼれる。

イズモ「それと小規模ではあるけど恒星間ネットワークはあるんだなぁ」
スキャン結果を確認しながらのつぶやき。思考は加速し続ける。

イズモ「地球は存在しないはず……ってことは何か地球に関係する存在がいるか、はたまたうちらのような転移者がいるのか...とりあえず向こう側の誘導に従うか」
決断を胸に、モニターの向こうにいる未知の存在との接触に備える。その目は静かだが、確かな覚悟が宿っていた。

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最終更新:2025年06月27日 23:07