しばらくして向こうから通信が入る。
『貴艦の提案は合理的であり受諾に値する。移行手順を協議したい』
『当機構はシナリス星系での無人惑星開拓権を承認し、双方の安全のため、平和維持軍の駐留と防衛連携を提案する。独立主権組織に関しては段階的に協議する』
イズモ「まじで言ってる!?」
思わずイスから半分立ち上がりそうになりながら、驚きの声をあげる。
KAEDE「えっ!?」
思わず声を上げ、モニターに目を走らせる。
そして、イズモはモニターを指さしてKAEDEに見せる。その画面にははっきりとこう書かれていた。
『貴艦の提案受諾する』
イズモ「まじで?」
KAEDE「まあ、そうでしょうね……」
肩をすくめながらも、少し嬉しそうに答える。
その文面には――
「当機構はシナリス星系での無人惑星開拓権利を承認し、両者の安全のため平和維持軍の駐留と防衛連携を提案する。独立主権組織に関しては段階的に協議する。」
という内容が、きっちりと記されていた。
イズモ「こんなわけのわからない戦艦1隻に自治権渡すのやばない?」
と、若干青ざめた顔でモニターを見つめる。その表情は完全に「予想外」と書かれているようだった。
いや、断られると思っていた。それゆえ、受諾の文字列が余計に重くのしかかってきたのだろう。
そんな彼の顔を見たKAEDEが――
KAEDE「ま~たまたぁ」
と軽く笑って言った。余裕ありげな表情で、再度画面を指差す。
そこにも、同じく**『貴艦の提案受諾する』**としっかり書かれていた。
イズモ「……まじか」
KAEDE「ね?」
どや顔で返す。
(なんでお前がそんなに得意げなんだよ!)
と心の中で叫びながらも、イズモはもう一度文面を読み返す。
イズモ「まあ、それはいいとして……添付ファイルにこんなのがあったのよ。技術デモと仕様書の提出しろって……」
KAEDE「あ、そういえば会議のときにもアチラ側から“性能見せてくれ”みたいなこと言われてたね」
イズモ「まあ、要望があるならだしますかねぇ……なんか、するだろ」
少しうんざりした顔をしながら言う。
KAEDE「そうね……」
ややげんなりとした表情でうなずく。
2人は憂鬱な顔をしているが、それでも――やるしかない。
自分たちの技術を護り、同時に故国をも守るには、この手段しかないのだ。
そう理解したうえで、しぶしぶ実行に移す覚悟を固めた。
イズモ「とりあえず打診してみるか」
彼は短く息をつき、通信端末に文章を入力した。
『そちらの日程で
ワープ航法等のデモンストレーションを行う用意がある』
イズモ「まあ、あとは結果まちかなぁ~」
伸びをしながら椅子にもたれかかる。
KAEDE「そうね……おとなしく帰ってくれえたらそれがいいんですけど……」
イズモ「なんだお前、まだ憂鬱そうなの?」
KAEDE「…だって……まぁ、そうですかね……」
声に微妙な揺らぎを含みながらも、苦笑してみせる。
イズモ「そんなもん気にすんな。なるようになるよ」
軽く拳を握り、ぽんと机に置く。
KAEDE「……はあ、分かりましたって……それでいいのか指揮官!?」
イズモ「……うん。まあ、適当でいいんだよ。こういうのはさ」
にやりと笑うその顔は、どこか腹が座っているようでいて、やはり根は真面目な男なのだ。
そして――
エレス・ニア第3軌道基地に、平和維持軍の駐屯と防衛連携の交渉を行うため、ふたりは再び向かうのだった。
最終更新:2025年06月27日 20:17