デモンストレーション終了後、
「監視を付ける」という条件付きで開拓が正式に許可された。
その結果として――
シナリス星系において、わざわざ公式セレモニーまで開催される運びとなったのだった。
イズモ「……真面目すぎだろ」
宇宙服の襟元を整えながら、ため息交じりに呟く。
イズモ「わざわざ俺たち一隻のために式典とかさ。
その予算、別のとこに回せばいいのに」
KAEDE「そう言わないの」
微笑みながら、やんわりとたしなめる。
イズモ「ポータル艦アリス、エリス、エミリの処女航海式典を思い出すな」
KAEDE「……ですね」
懐かしさを含んだ視線で、遠くを見るように微笑んだ。
イズモ「あの時も、色々あったよなぁ」
イズモ「エラーで時間軸吹き飛ばされて、
前身組織と創立前のクデュックを行ったり来たりして、
挙句の果てに十一次元まで飛ばされてさ」
肩をすくめ、半ば笑い話のように続ける。
イズモ「帰ってきたと思ったら、創造能力持ちの敵に記憶サーバー壊されて……
今思えば、よく生きてるわ」
KAEDEは何も言わず、静かに頷いた。
その沈黙が、あの過酷な時間を共有してきた証でもあった。
やがて、エルニウスはシナリスIVの軌道へ到達する。
青緑色の惑星が視界いっぱいに広がり、
淡く脈動する光が宇宙空間を満たしていた。
赤道付近に広がる「エメラルド盆地」では、
星の鼓動に呼応するかのようにクリスタルの鉱脈が輝き、
反射した光が大気を透かして揺れている。
その周囲を、巡航艦五十隻が扇状に展開し、
二百機の監視ドローンが正確無比な隊列で周回していた。
イズモ「……なんだ、この星」
思わず息を呑む。
紫がかった燐光と、エメラルド色の地表が織りなす光景。
現実感が薄れ、異次元に足を踏み入れたかのような錯覚を覚える。
KAEDE「ちょっと……これは、凄すぎない?」
目を見開き、言葉を失いながら呟く。
イズモ「圧巻だな……」
モニター越しに惑星を見つめ、ゆっくりと息を吐く。
「ここを……俺たちが開拓するのか」
その時、背後から小さな足音がした。
「すごい……すごーい……」
振り向くと、KAEDEがくるりと一回転していた。
子どものように無邪気な仕草。
言葉にしなくとも、抑えていた緊張が一気にほどけたのがわかる。
その姿を見た瞬間、
ここに辿り着くまでの戦いと喪失、
数え切れない決断が胸に押し寄せ――
イズモは、思わず目頭を押さえた。
袖でそっと拭い、気づかれないよう背を向ける。
それでも、KAEDEの視線が静かに向けられているのを感じる。
イズモは何も言わず、ただ小さく笑った。
艦隊の誘導に従い、エルニウスはシナリスIVへ降下する。
着陸の衝撃が収まり、ハッチが開いた瞬間――
二人は、完全に言葉を失った。
イズモ「……なんだ、これ」
地平線まで続く緑の大地。
その中央に設営されたセレモニー会場。
真紅のレッドカーペットが一直線に伸びている。
共立機構による生演奏が響き渡り、
整然とした隊列が奏でる音色が、空気そのものを震わせる。
それは耳ではなく、胸に直接届く音だった。
KAEDE「……綺麗」
その一言に、偽りはなかった。
二人は、確信する。
――この場所なら、信頼できる。
たとえこの先、困難や対立が待ち受けていようとも。
今日、この光景に立ち会った事実だけは、
確かな決意として心に刻まれた。
共立機構と共に歩むこと。
新たな
ピースギアのように、
この星と未来を築いていくこと。
セレモニーは、
温かく、そして力強く――
静かに幕を閉じた。
最終更新:2025年12月16日 20:27