―数か月後―。
共立機構との協議は滞りなく進み、
ピースギアと共立機構の共同運用拠点――シナリス本部が正式に完成した。
シナリスIV地表に築かれたその施設は、白と群青を基調とした重層構造で、周囲には自動化された採掘区画と建設ラインが静かに稼働している。
アンドロイドの量産体制はすでに整い、採掘・建設・保守管理の九割以上が無人で回る体制となっていた。
だが、それでもなお必要とされたのが、最終判断を下すための「意思を持つ存在」だった。
完全自動化はできない。
最低限の民主主義的判断を担う人員が、どうしても必要だった。
そこで浮上した提案が――
星間記録子《スターデータリーフ》を用いた、故・茨波綾音の記憶および人格データの復元である。
……。
「うーーーんとっ……ここは?」
再起動直後の綾音は、淡い光が差し込む医療区画でゆっくりと上体を起こした。
視界には白い天井と、静かに明滅するモニター。
身体感覚はあるが、どこか現実感が薄い。
イズモ「落ち着いて聞いてね。」
ベッド脇に立ち、できるだけ柔らかな声で語りかける。
イズモ「端的に言うと――ピースギア本部も、ほかの支部も、全部滅んだ。」
一拍置き、言葉を選びながら続けた。
「……それでも、なんとか避難して再建した。」
「本部は立て直したけど、まだ人手が足りないんだ。」
綾音「……え?」
理解が追いつかず、目を見開く。
イズモ「正直、俺たちも全部把握できてるわけじゃない。」
「
KAEDEの“魔改造コピー”が出てきたりして、命からがらだったしねぇ。」
苦笑しつつも、その目は真剣だった。
「今は共立機構っていう、ピースギアによく似た組織に助けられてる。」
「まずは、慣れることからでいい。」
「一緒に、やっていこう。」
その隣で、KAEDEは静かに微笑んだ。
だが、その笑顔にはわずかな硬さが混じっている。
演算された感情と、本心の狭間。
KAEDEはそっと綾音の手を取り、小さく囁いた。
「支えるから。」
「これから、よろしくね……。」
そう言って、星間記録子の端末を彼女に渡す。
こうして――
ピースギア再起動の物語は、本格的に動き始めた。
場面は変わり、
シナリス星系第5惑星上空。
蒼い惑星を背に、2隻のアリス級艦が静かにランデブーしていた。
これらは、エルニウスに続いて量産された3隻のうちの2隻。
完全無人運用が可能な艦だが、今回は例外的に探査員が乗艦している。
生命維持に直結する水源調査と、深層鉱脈の精密解析が目的だった。
1隻はアリス級3番艦「エレス・ニア」。
もう1隻はエルニウスの指示を受け、武器開発と技術伝達任務を兼任しつつ、
シナリスIV宇宙港で補給を終えたばかりだった。
その頃、イズモとKAEDEは次の任務――第6惑星探査に向けた準備を進めていた。
イズモ「一旦、最新情報を確認して。」
イズモ「離陸予定までは待機でいこう。」
KAEDE「了解~。」
いつもの軽い調子で応じながら、モニターを操作する。
そこへ、共立機構から通信が入った。
KAEDE「そういえばさ。」
「共立機構から“そろそろ国家巡りしない?”って言われてたよ。」
イズモ「……あ。」
思い出したように笑う。
KAEDE「無視したらマズくない?」
イズモ「まあね。」
「探査はほぼ自動化できてるし、俺たちも少し動くか。」
「向こうの日程に合わせよう。」
KAEDE「じゃ、決まり。」
こうして――
数日後、イズモたちはシナリスIVを出港した。
未知の国家との邂逅。
銀河を越えた対話。
新たな時代へと向かう航路が、静かに開かれていくのだった。
最終更新:2025年12月16日 20:35