アットウィキロゴ

巡りゆく星たちの中で > ふたりの心は静かに

数週間後。
修復班詰所で、ユナとカナタは並んで立っていた。
昼の点呼が終わり、作業指示がひと段落した、その静かな隙間の時間だった。

ユナは小さく息を吸い、カナタを一度だけ見上げる。
彼は気づいたように、ほんのわずかに頷いた。

ユナ「……あの……わたしたち……その……」

カナタ「僕たち、正式にお付き合いしています」

照れを隠すように早口で言い切ると、詰所に一瞬の沈黙が落ちた。
次の瞬間、技術主任が腕を組んだまま、破顔する。

主任「おう、それなら気兼ねなくペア作業頼めるな。
仲良くしろよー」

ユナ「……はい……がんばります……」

カナタ「もちろんです!」

周囲から軽い笑いと拍手が起こり、場の空気はすぐにいつもの日常へ戻った。
だが、ユナの胸の内では、確かな安堵と温もりが静かに広がっていた。

それからの日々は、大きな事件もなく、穏やかに過ぎていった。
食堂の窓際で、並んで腰掛け、湯気の立つスープをすすりながら交わす他愛ない会話。
保守点検の合間、人目を気にしながら、ほんの一瞬だけ指先を重ねる時間。
夜になると、ユナの居住区の前で、カナタが小さく手を振る。
それが、ふたりのささやかな日課になっていた。

ユナ「……また、明日も……いっしょに作業……だね」

カナタ「うん。これからも、ずっとね」

ユナ「……ずっと……」

その言葉を口にするたび、胸の奥がじんわりと温かくなる。
以前のように、理由のない不安に押しつぶされる夜は、もうなかった。

数か月後。
技術主任の発案により、ふたりは新設される小型修復ドローンの共同開発班に任命された。
戦闘後や危険区域での初動修復を担う、次世代機の試作だ。

主任「ユナの慎重さと、カナタの発想力。
この組み合わせ、かなり相性がいい。
新しい部門、期待してるぞ」

ユナ「……はい。ありがとうございます……」

カナタ「任せてください!」

開発室の片隅。
未完成のドローンが、作業台の上で静かに眠っている。
配線はまだ仮止めで、外装も試作段階だった。

カナタ「これも、未来の一歩だね」

ユナ「……うん……ふたりで、一歩ずつ……」

ユナはそっと手を伸ばし、カナタの指に絡める。
過去の傷も、これから訪れるかもしれない不安も、もうひとりで抱える必要はなかった。

ユナ「……わたし……もう、こわくないよ」

カナタ「僕も。ユナとなら、大丈夫」

無数の星が瞬く宇宙の片隅で。
ふたりの心は、静かに、しかし確かに結ばれていった。
次のページ
最終更新:2025年12月16日 21:18