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巡りゆく星たちの中で > 試練

大気圏外宇宙港、シナリス本部司令室。

巨大な展望窓の向こうで星々が瞬き、深宇宙の闇が静かに広がっていた。
その静寂とは裏腹に、司令室の空気は張り詰めている。

青白い光を放つモニター群には、因果解析値、生命反応分布、航宙路予測が幾重にも重なって表示されていた。
ピースギアの心臓部とも言える空間で、司令官・綾音は机上に浮かぶホログラムを見つめていた。

綾音「……共立機構から正式要請ね。ノクターナル・コラプス領域での変異キメラ急増。駆除依頼……想定より早い」

低く呟いた声には、焦りよりも確信が滲んでいた。
周囲では隊員たちが無言のまま装備の最終確認を進めている。

セラ=ヴォルカン「解析完了。変異キメラの活性値は観測史上最高です。通常の掃討任務では対応困難。すでに領域中心部まで拡散しています」

綾音「了解。即応部隊を再編。今回の指揮官はライネルに任せる」

一瞬、室内の視線が一斉に集まる。
ライネルは一歩前へ出て、短く頷いた。

ライネル「承知しました。全隊、出撃準備完了。現地の詳細を」

セラ=ヴォルカン「ノクターナル・コラプスは、共立機構が長年隔離してきた危険領域です。外界との接触は完全遮断されていましたが、最近その封印が崩壊。変異キメラが爆発的に増殖しています」

ライネル「……自然進化じゃないな。外的要因が絡んでいる可能性が高い」

綾音「原因は不明。ただし放置すれば周辺星系へ拡散する。共立機構が恐れるのも無理はないわ」

短い沈黙が落ちる。
その間にも、装備のロック音や起動音が規則正しく響いた。

ライネルは自らの装甲胸部に手を置き、静かに息を吐いた。

ライネル「……この領域で、父は戦い、命を落とした。なら、俺が終わらせる」

セラ=ヴォルカン「頼むわ、ライネル。今のピースギアで、あそこに踏み込めるのはあなたたちだけ」

やがて視点は宇宙船のブリッジへ移る。
漆黒の宙域、その中心で赤く脈動するノクターナル・コラプス領域が迫っていた。
禍々しい光は、生き物の鼓動のように不規則に瞬いている。

通信が割り込み、共立機構からの映像が投影された。

共立機構司令官「カナタ=ライネル。貴官の前任者、トーマ・ライネルの戦果は記録に残っている。今回も確実な任務遂行を期待する。変異キメラはすでに多数の犠牲を生み、生態系を破壊中だ。支援艦隊は出動、諜報班も警戒を強化している」

ライネル「了解。任務に全力を尽くす」

通信が切れ、ブリッジには再び静寂が戻った。
だがその沈黙は、嵐の前触れだった。

視界に広がるノクターナル・コラプス。
そこに待つのは、単なる獣ではない。
進化し、融合し、意思を宿した異形の群れ。

それを討つことこそが、ピースギアの存在理由。
そして、この任務は――彼らの運命を試す戦いとなる。

最終更新:2025年12月16日 21:54