――共立世界ピースギア本部・中央司令室。
綾音は司令席に座り、報告を確認していた。
キューラが議長メレザからの打診を受け、正式に未来因果班へ配属されることが決まったばかりだ。
綾音「キューラ、議長からの申し出を承諾したことを歓迎する」
キューラ「綾音司令、ありがとう。ここが新たな任務の場になるんだな」
綾音は穏やかな表情で頷いた。
綾音「未来因果班は共立世界の未来に影響する可能性のある脅威を未然に摘出し、対応する。君の能力は非常に重要な役割を果たすだろう」
キューラ「期待に応えられるよう努めるよ」
そこへ、通信が割り込んだ。司令室のスクリーンに現れたのは報告官だった。
報告官「司令、シナリスⅦ地域で変異キメラの異常発生が報告されました。現地は緊迫した状況で、非戦闘員の退避が進められています」
綾音「了解。キューラ、初任務はこの変異キメラの調査と封じ込めだ」
キューラ「変異キメラか……自然発生の可能性が高い?」
綾音「現時点での情報では外的介入は確認されていない。急激な遺伝子変異による生物の異常増殖と考えられている」
キューラは覚悟を決めた。
キューラ「了解。早速現地へ向かい、状況を確認する」
――現地・シナリスⅦ地域。
緑深い森林地帯の一角に、破壊された村落の残骸が広がる。
キューラは特務隊とともに前線基地に降り立ち、映像資料をチェックした。
キューラ「異常発生はここ数日で急増している。被害の範囲が拡大中だ」
隊員「捕獲用の罠や鎮圧部隊が破壊され、住民は避難していますが、完全な封じ込めには至っていません」
キューラ「なるほど……この変異キメラの生態を解析し、効率的な対処方法を見つける必要がある」
キューラは胸元のホログラムインターフェースを展開し、現地で採取された生体サンプルのデータを分析し始めた。
キューラ「遺伝子構造の急激な変異が確認できる。この変化は自然発生かもしれないが、非常に稀な現象だ」
隊員「つまり、自然現象の域を超えた異常な遺伝子変異かもしれないということですか?」
キューラ「そうだ。だが、環境要因も大きいだろう。地質の異変や放射線、未知のウイルス感染など複合的要因を調査しなければならない」
情報収集を続けるキューラは、ホログラムの地図に発生範囲と被害状況を細かくマークした。
キューラ「変異キメラの群れは特定のエリアに集中している。ここを中心に封じ込めを強化し、住民の安全確保を最優先しよう」
隊員「はい、隊は二手に分かれて封鎖線を構築しつつ、避難誘導を行います」
キューラは指示を飛ばし、現地の混乱を徐々に沈静化させるべく動いた。
キューラ「現地のデータを集約しながら対策を講じる。僕の能力で異常の兆候を検知し、迅速な対応が可能だ」
隊員「了解、キューラ様」
夜が更ける中、キューラは常にモニターとサンプル分析を繰り返した。
キューラ「この変異は単なる事故や自然変異ではない。環境の急激な変化が生物の遺伝子に影響を与え、異常進化を引き起こした可能性が高い」
キューラは微かな違和感を感じつつも、冷静に現状の把握に努めた。
キューラ「未来因果班の使命は、こうした異常が共立世界の秩序を乱さぬよう監視し、未然に防ぐことだ。今回の事件も、その試金石となるだろう」
キューラは次第に、任務の重みを深く実感し始めていた。
綾音「キューラ、現地の状況は?」
キューラ「封じ込めは進んでいます。被害は最悪の段階を脱しつつありますが、原因の解明にはまだ時間が必要です」
綾音「引き続き慎重に対応を頼む。被害拡大を絶対に許さないように」
キューラ「了解。共立世界の未来を守るために最善を尽くす」
未来因果班の新たな一歩は、静かにしかし確実に刻まれていた。
星空の下、変異キメラを巡る闘いは始まったばかりである。
最終更新:2025年08月24日 06:00