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共立世界ピースギア本部・中央司令室。
巨大な半円形スクリーンに星域データが流れる中、司令席に座る綾音は最新報告を静かに追っていた。
その中には、つい数分前に確定した一件――キューラがシナリス星域連合議長メレザの打診を受け、未来因果班へ正式配属となった通知も含まれている。
綾音「キューラ。議長からの申し出を承諾したこと、正式に歓迎するわ」
キューラ「ありがとう、綾音司令。ここが……僕の新しい任務の舞台なんだね」
ホログラム越しに映るキューラの姿は落ち着いているが、その瞳の奥では情報処理用の光が微かに走っていた。
綾音はその様子を見て、彼女が既に“仕事の顔”に切り替わっていることを悟る。
綾音「未来因果班は、まだ起きていない災厄の芽を摘む部門よ。君の解析能力と未来予測は不可欠になる」
キューラ「期待が重いな。でも……やりがいはありそうだ」
その瞬間、司令室に警告音が響いた。
スクリーンが切り替わり、報告官の緊迫した表情が映し出される。
報告官「司令、シナリスⅦ地域で
変異キメラの異常発生を確認しました。村落が一つ壊滅。非戦闘員の退避は進行中ですが、制圧が追いついていません」
綾音「了解。状況データを即時共有して」
綾音は一拍置き、キューラに視線を向ける。
綾音「――初任務よ、キューラ。変異キメラの調査と封じ込めを担当して」
キューラ「変異キメラ……自然発生の線が濃い?」
綾音「現時点では外的介入は未確認。ただし遺伝子変異の速度が異常に早い」
キューラは短く息を吐いた。
未来因果班に入った直後に、試されるような案件だ。
キューラ「了解。現地で直接確認する」
――シナリスⅦ地域・前線基地。
鬱蒼とした森林の中、破壊された家屋と焦げた地面が痛々しく広がっていた。
夜気の湿り気と、生物由来の異臭が混じる。
キューラは特務隊と合流し、即座にホログラム映像を展開した。
キューラ「発生数が指数関数的に増えているね。このペースは普通じゃない」
隊員「罠も鎮圧部隊も突破されました。キメラの行動パターンが毎回変わるんです」
キューラ「……学習している、か」
胸元のインターフェースが開き、生体サンプルの解析結果が空間に浮かぶ。
キューラの指先が走るたび、遺伝子配列が分解・再構築されていく。
キューラ「遺伝子構造が安定していない。自然変異にしては振れ幅が大きすぎる」
隊員「事故じゃない、ということですか?」
キューラ「断定はできない。でも、環境だけでここまで誘導された進化は……不自然だ」
彼女は地図を拡大し、被害地点に次々とマーカーを打ち込む。
赤い光点が、ある一定の法則を描いて浮かび上がった。
キューラ「群れはこの中心点に引き寄せられている。ここを抑えれば被害拡大は止められる」
隊員「了解。封鎖線を再構築し、住民誘導を優先します」
夜が深まるにつれ、基地内は張り詰めた静けさに包まれた。
キューラは休むことなくデータと向き合い続ける。
キューラ「……やっぱり、ただの事故じゃない」
胸の奥に、小さな違和感が残る。
誰かが、この未来を“見た”上で動かしている――そんな感覚。
通信が入る。
綾音「現地状況は?」
キューラ「封じ込めは進行中。最悪は脱しました。ただ……原因の核心には、まだ届いていません」
綾音「慎重に続行して。被害拡大は許されない」
キューラ「了解。未来因果班として、やるべきことはわかってる」
通信が切れ、キューラは夜空を見上げた。
星々は何事もなかったかのように瞬いている。
だが彼女は知っている。
この静けさの裏で、未来は確実に歪み始めていることを。
未来因果班の最初の一歩は、すでに引き返せない地点を越えていた。
最終更新:2025年12月16日 21:30