そして少女は死んだ -The Elfin Knight- (前編) ◆X5fSBupbmM
「戦闘があったことは確かなようだが……、誰もいないな」
『あちー』
『あちー』
(こいつが燃えていないところをみると……、火を使った戦闘に巻き込まれた訳じゃあなさそうだな)
『あっちーー』
『あっちーー』
銃器が近くに転がっていたので確認したが、弾は入っていない。
これによる火災だろうか。銃器をデイパックにしまう。
役立ちそうにないが、最悪鈍器として使えばいい。
これによる火災だろうか。銃器をデイパックにしまう。
役立ちそうにないが、最悪鈍器として使えばいい。
(武器か能力か……、道路を溶かすほどの炎を使う奴がいるのか。一応、警戒はしておいたほうがいいだろう)
『あっちーよーーー』
『あっちーよーーー』
ジャケットのポケットから聞こえる、夏奈の声は無視する。
と、いうかお前ただの紙だろ。暑いとか寒いとか関係ないだろ。
と、いうかお前ただの紙だろ。暑いとか寒いとか関係ないだろ。
『視覚嗅覚味覚触覚姉妹センサー、と完全装備ですがなにか? 今は真っ暗でなにも見えないけどな!
つーか、お前さっきから何やってんだー? 蒸し暑くてたまらないぞ』
「黙ってろ」
つーか、お前さっきから何やってんだー? 蒸し暑くてたまらないぞ』
「黙ってろ」
なんで人の考えが分かる、とか、姉妹センサーってなんだ、とか五感一個足りてねえよ、とかとツッコむのは止めた。
こいつのおしゃべりに付き合っていてはきりが無い。
シンヤは足元の死体に目当てのものを見つけると、その場に屈んだ。
白い異形はやる夫、その傍に横たわっているのは、"お姉ちゃん人形"こと6/。
死体の格好から見て、柊つかさの話にあった涼宮ハルヒ主催のパーティ会場は、ここで間違いない。
名も知らない男の亡骸、動物か何かの骨があることと、炎が上がっている理由は掴めないが……。
こいつのおしゃべりに付き合っていてはきりが無い。
シンヤは足元の死体に目当てのものを見つけると、その場に屈んだ。
白い異形はやる夫、その傍に横たわっているのは、"お姉ちゃん人形"こと6/。
死体の格好から見て、柊つかさの話にあった涼宮ハルヒ主催のパーティ会場は、ここで間違いない。
名も知らない男の亡骸、動物か何かの骨があることと、炎が上がっている理由は掴めないが……。
(そんなことはどうでもいい)
シンヤはそこまで理解した上で、なんの感慨も抱かずやる夫の頭部に手をかける。
潰れて中身を露出させたイチゴ饅頭のようなそれを、胴体からねじ切った。
銀色の輪を残して、邪魔になった饅頭は炎の中に投げ入れる。
女の頸椎を力任せに折り、首と胴が泣き別れしている男からは、そのまま首輪を抜き取りポン、と放った。
二回転がって、動きを止めた男の首。
何も見ていないはずのそいつの目は、骨と/6を凝視しているように見えた。
潰れて中身を露出させたイチゴ饅頭のようなそれを、胴体からねじ切った。
銀色の輪を残して、邪魔になった饅頭は炎の中に投げ入れる。
女の頸椎を力任せに折り、首と胴が泣き別れしている男からは、そのまま首輪を抜き取りポン、と放った。
二回転がって、動きを止めた男の首。
何も見ていないはずのそいつの目は、骨と/6を凝視しているように見えた。
「……制限ってやつにうんざりしててね。これは貰っていくよ」
シンヤがつかさから聞いたこの場所に来た理由は、"一度目"の行動と同じ。
強いられた制限の解除、即ち首輪の解体のためだ。
強いられた制限の解除、即ち首輪の解体のためだ。
「……おい。お前の姉妹や知り合いに、機械に強い奴はいるか?」
『ん? んー、海馬なら……ダメだ、この会場にはいない。……もしかして、首輪持っているのか?』
「ほう。それくらいは気付くか」
『ん? んー、海馬なら……ダメだ、この会場にはいない。……もしかして、首輪持っているのか?』
「ほう。それくらいは気付くか」
胸ポケットからカードを覗かせ、首輪の一つをかざす。
夏奈はここで初めて周囲の風景を視野に入れたらしく、急に騒ぎ出した。
夏奈はここで初めて周囲の風景を視野に入れたらしく、急に騒ぎ出した。
『うっわー……って、かがみぃ? つーかなんだこの惨状!?
シンヤ、このヤロっ! お前この短時間になんちゅーことを……!』
「死体の首を切っただけだ。殺しも火も俺じゃない。それに、柊かがみの名前は放送で呼ばれていないだろう」
『あ、6/って彫ってある。そーか、お前ここで……つかさが言ってたこと、本当だったんだなぁ。
十代も朝倉も、アカギの奴も死んじまったし……、アカギってなんで二人いるんだろう……?』
シンヤ、このヤロっ! お前この短時間になんちゅーことを……!』
「死体の首を切っただけだ。殺しも火も俺じゃない。それに、柊かがみの名前は放送で呼ばれていないだろう」
『あ、6/って彫ってある。そーか、お前ここで……つかさが言ってたこと、本当だったんだなぁ。
十代も朝倉も、アカギの奴も死んじまったし……、アカギってなんで二人いるんだろう……?』
話聞けよ。……しかも、独り言が脱線しっぱなしだ。
夏奈は一旦放っておいて、手に入れた三つの首輪に目を移した。
遺体の損傷具合と関係ないかのように、傷ひとつもない。
夏奈は一旦放っておいて、手に入れた三つの首輪に目を移した。
遺体の損傷具合と関係ないかのように、傷ひとつもない。
"6/シ(カガミ)"、"ヤルオ"、"ジョセフ・ジョースター"。
それぞれに、先ほどの放送で呼ばれた名前が彫られていた。
夏奈は6/の名前を見て、首輪の主を柊かがみと勘違いしたのだろう。
"一度目"に使われていた首輪は外側に、名前が英語でプリントされていた。
"二度目"のこれの見た目は似ているが、やはり別物。
そこで、シンヤは前のゲームで解体を試みた人物がいたことを思い出す。
キヨマロ、とかいったか。
彼が書いたメモの内容と、解体された首輪について記憶から探りだす。
夏奈は6/の名前を見て、首輪の主を柊かがみと勘違いしたのだろう。
"一度目"に使われていた首輪は外側に、名前が英語でプリントされていた。
"二度目"のこれの見た目は似ているが、やはり別物。
そこで、シンヤは前のゲームで解体を試みた人物がいたことを思い出す。
キヨマロ、とかいったか。
彼が書いたメモの内容と、解体された首輪について記憶から探りだす。
解体された首輪の部品は小さな丸い玉がいくつかと、ネームシール。精巧な他の部品と不釣り合いな程に大きくあからさまなネジが一本。
そして、メモに記された首輪の解除方法は――、
そして、メモに記された首輪の解除方法は――、
――……今お前、こう思ったよなあ?
俺は最強の力を持っている! 俺がコイツに負けるはずがない!!
俺が首輪の情報を手に入れられるのは当然だ!! ……ってなあ、相羽シンヤくんよおー。――
俺は最強の力を持っている! 俺がコイツに負けるはずがない!!
俺が首輪の情報を手に入れられるのは当然だ!! ……ってなあ、相羽シンヤくんよおー。――
…………あれ?
いや、待て違う。思い出すべきはあの男の言葉じゃない。
シンヤは俯き、右手で目元を手で覆った。
その少し前だ。そう、キヨマロがあの診察室に入って来る前。机の上に見つけたメモの……、
いや、待て違う。思い出すべきはあの男の言葉じゃない。
シンヤは俯き、右手で目元を手で覆った。
その少し前だ。そう、キヨマロがあの診察室に入って来る前。机の上に見つけたメモの……、
――おうおうおうおう、いい感じにブッチ切れてくれてるねぇ相羽シンヤくんよぉ。
屈辱かい、屈辱かぁい? そりゃあそうだよな、人間如きに腕一本ぶっ飛ばされたんだもんなあ!!
いいねェ、もっともっと惨めに喚いて見せてみろよ、ヒャアハハハハハハハハハ!――
屈辱かい、屈辱かぁい? そりゃあそうだよな、人間如きに腕一本ぶっ飛ばされたんだもんなあ!!
いいねェ、もっともっと惨めに喚いて見せてみろよ、ヒャアハハハハハハハハハ!――
…………待て、ちょっと待ってくれ。
空いた左手で、シンヤは自らの髪をぐしぐしとかき乱す。
思い出せないのだ、重要なことが一つも。
もう一度、集中して情報を記憶から探り出そうとしたが、やはり有用な情報は出てきやしない。
あのメモには、それなりのことが書かれていた筈。
だというのに、薄汚い言葉と声に邪魔される。
空いた左手で、シンヤは自らの髪をぐしぐしとかき乱す。
思い出せないのだ、重要なことが一つも。
もう一度、集中して情報を記憶から探り出そうとしたが、やはり有用な情報は出てきやしない。
あのメモには、それなりのことが書かれていた筈。
だというのに、薄汚い言葉と声に邪魔される。
――テメエの前でテメエがいつまでたっても敵わない、大好きな大好きな立派でカッコいい兄貴を嬲り殺してやる!
そのときお前はどんな顔を浮かべるんだろうなあ!
オニイチャン、シナナイデーなんていって泣き喚くのかなあ、兄貴が死んだことを喜ぶのかなあ!
それとも目標に永遠に届かないことが分かって空っぽになっちまうのかなあ!
ヒャァハハハハハハハハハハハハハハッハハハッハハハハハッハハハハッハハハハッハハハハ!――
そのときお前はどんな顔を浮かべるんだろうなあ!
オニイチャン、シナナイデーなんていって泣き喚くのかなあ、兄貴が死んだことを喜ぶのかなあ!
それとも目標に永遠に届かないことが分かって空っぽになっちまうのかなあ!
ヒャァハハハハハハハハハハハハハハッハハハッハハハハハッハハハハッハハハハッハハハハ!――
忌々しいラッドの哄笑と嘲りが脳裏に映る。
(あ、の、や、ろ、う……!!)
あまりのことに言葉も出なかった。
虫けらから受けた屈辱が、叩きつけられた言葉が耐えがたいものだった故に、貴重な情報よりも強く焼き付いてしまっていた。
シンヤは歯を噛み締め……笑った。憎悪のあまり、表情筋が勝手に笑みを形作った。
虫けらから受けた屈辱が、叩きつけられた言葉が耐えがたいものだった故に、貴重な情報よりも強く焼き付いてしまっていた。
シンヤは歯を噛み締め……笑った。憎悪のあまり、表情筋が勝手に笑みを形作った。
(次こそ、殺す……ッ!!
人間という矮小な存在であることを、下等生物がテッカマンに喧嘩を売ったことを、後悔させてやるよ。
その無駄に動く舌と手足を千切り引き裂いて、臓物をブチ撒かせ、今度こそ消し炭にッ……いや、
爪の欠片一つ残さず滅s『おーい、戻ってこーーいっ』)
「…………」
『なーに、黙りこくってんだ。こっちから気色悪い顔が丸見えだぞー?』
人間という矮小な存在であることを、下等生物がテッカマンに喧嘩を売ったことを、後悔させてやるよ。
その無駄に動く舌と手足を千切り引き裂いて、臓物をブチ撒かせ、今度こそ消し炭にッ……いや、
爪の欠片一つ残さず滅s『おーい、戻ってこーーいっ』)
「…………」
『なーに、黙りこくってんだ。こっちから気色悪い顔が丸見えだぞー?』
俯いたまま顔を覆っていた手を放すと、胸ポケットから覗いたカード――ドラゴンの赤い瞳と目があった。
……ラッドといい、魅音といい、こいつといい。自分はセリフを遮られる呪いでもかかっているのだろうか。
……ラッドといい、魅音といい、こいつといい。自分はセリフを遮られる呪いでもかかっているのだろうか。
死んだと思っていた園崎魅音は、放送で呼ばれなかった。
柊つかさの話通りならば、ゲームに乗った涼宮ハルヒと共にいるらしいが、何を考えての行動だろうか。
混乱していたつかさからの情報である為にその真意は測れないが、市民プールで合流という約束はやはり無効だろうと判断する。
その時、ラダムによって強化された聴覚がパンッ、という音を捉えた。続いて、ガラガラという音。どちらも小さい。
多少の距離があるようだが、近くに他の参加者がいるのだろう。
この場に留まるのも時間の無駄だと結論付けたシンヤは、そちらの方へ駆け出す。
兄や首輪について、他の参加者から聞き出したい情報はいくらでもあった。
柊つかさの話通りならば、ゲームに乗った涼宮ハルヒと共にいるらしいが、何を考えての行動だろうか。
混乱していたつかさからの情報である為にその真意は測れないが、市民プールで合流という約束はやはり無効だろうと判断する。
その時、ラダムによって強化された聴覚がパンッ、という音を捉えた。続いて、ガラガラという音。どちらも小さい。
多少の距離があるようだが、近くに他の参加者がいるのだろう。
この場に留まるのも時間の無駄だと結論付けたシンヤは、そちらの方へ駆け出す。
兄や首輪について、他の参加者から聞き出したい情報はいくらでもあった。
『どーした?』
「銃声と崩壊音が聞こえた。誰かが争っている」
『あたしには聞こえなかったぞ?』
「お前と違って、僕の聴覚は鋭敏でね」
「銃声と崩壊音が聞こえた。誰かが争っている」
『あたしには聞こえなかったぞ?』
「お前と違って、僕の聴覚は鋭敏でね」
まあ、とにかく。首輪解除の手がかりは余力のある時でいいだろう。
最優先目的は、Dボゥイと決着をつけることなのだから。
価値のある情報持っている相手ならばいいのだが、と銃声と轟音の元へ足を速めた。
最優先目的は、Dボゥイと決着をつけることなのだから。
価値のある情報持っている相手ならばいいのだが、と銃声と轟音の元へ足を速めた。
(しかし……)
先ほどの夏奈の間抜けな呼びかけ。あれで、冷静さをやや取り戻せた。
もしあれがなければ、苛立ちの為に銃声にも気付かなかっただろうな、とシンヤは少しだけ反省した。
もしあれがなければ、苛立ちの為に銃声にも気付かなかっただろうな、とシンヤは少しだけ反省した。
「……そういえばお前、柊かがみを知っているのか?」
『おう、前のゲームの時の仲間だよ。変態だったけど』
「…………へんたい?」
『ガチレズでこなたにベッタリでなー。聞いた話じゃ、6/をおk』「いい、黙れ」
『おう、前のゲームの時の仲間だよ。変態だったけど』
「…………へんたい?」
『ガチレズでこなたにベッタリでなー。聞いた話じゃ、6/をおk』「いい、黙れ」
意味がわからない単語は無視し、セリフ遮りの仕返しも兼ねてカードをポケットにねじ込んだ。
遮る直前に、もっとおかしな単語が聞こえた気がしたが、「OK」と言ったということにしておこう。
遮る直前に、もっとおかしな単語が聞こえた気がしたが、「OK」と言ったということにしておこう。
☆☆☆
E-3、映画館。今日、映画館といえば商業施設に付属した複合型映画館を連想しやすいだろう。
だが、会場に設置されたここはミニシアター。スクリーンが一つだけの小さな施設である。
その2階、従業員休憩室前の廊下。
だが、会場に設置されたここはミニシアター。スクリーンが一つだけの小さな施設である。
その2階、従業員休憩室前の廊下。
「もういいかーい?」
「ま、まーだだよー♪」
「ま、まーだだよー♪」
するする、もぞもぞ。
コリコリ、パカッ。
コリコリ、パカッ。
「もういいかーい?」
「ま、まままだだよーっ♪」
「ま、まままだだよーっ♪」
コト、カチカチ。
もがもが、ごそごそ。……どてっ。
もがもが、ごそごそ。……どてっ。
「もういいかーい?」
「痛たた……あっ。ま、まままだ! ちょっと待ってーっ」
「痛たた……あっ。ま、まままだ! ちょっと待ってーっ」
調達したパイプ椅子に座ったパピヨンは、マイクロドライバーを手に龍騎のカードデッキの解体に勤しんでいた。
とはいえ工具の関係上、外装を外して内部を見る程度しかできないのだが。
この映画館、チケット売り場や事務室にコンピュータがなかったばかりか、工具類も古いドライバーしか見つからなかったのだ。
ミニシアターといえど受付や事務処理にパソコンが、映写機材の整備に工具が必須だろうに。
とはいえ工具の関係上、外装を外して内部を見る程度しかできないのだが。
この映画館、チケット売り場や事務室にコンピュータがなかったばかりか、工具類も古いドライバーしか見つからなかったのだ。
ミニシアターといえど受付や事務処理にパソコンが、映写機材の整備に工具が必須だろうに。
地図に記された場所に役立つ道具をたっぷり置いてやる程、主催は気が利いていないということだろうか。
パピヨンが支給品を確認している間、つかさは半日の間にズタボロになった服を着替えていた。
というより、彼らが未だ映画館に残っている理由がこれである。
鞭を打たれ、バルサミコ酢をぶっ掛けられて、裂け目と染みが散乱した制服の惨状に、つかさは気づかなかったのだ。
パピヨンがそのことを気にもせず、自然体で彼女に接していたのも一因である。
一旦劇場の外に出て第二回放送を確認した後にようやく、下着まで酢で赤黒く湿っていたことに彼女は気づいた。
そして顔を赤青紫色と変化させながら、ここに駆け込んだのだった。
パピヨンが支給品を確認している間、つかさは半日の間にズタボロになった服を着替えていた。
というより、彼らが未だ映画館に残っている理由がこれである。
鞭を打たれ、バルサミコ酢をぶっ掛けられて、裂け目と染みが散乱した制服の惨状に、つかさは気づかなかったのだ。
パピヨンがそのことを気にもせず、自然体で彼女に接していたのも一因である。
一旦劇場の外に出て第二回放送を確認した後にようやく、下着まで酢で赤黒く湿っていたことに彼女は気づいた。
そして顔を赤青紫色と変化させながら、ここに駆け込んだのだった。
ちなみに、パピヨンはつかさの承認を得て作業に着手している。
細工などされないと思っているのだろう。つくづく、甘い奴だ。
小細工なんてする気は毛頭ないけど。
細工などされないと思っているのだろう。つくづく、甘い奴だ。
小細工なんてする気は毛頭ないけど。
(しかしこれは……外部からエネルギー源を取り入れているのか? そうなると、このカード自体が生物……まさかな)
一般人でも仮面ライダーに変身できるアイテム、龍騎のカードデッキ。
だがこれには変身により発せられる莫大な力、それに見合うエネルギー源らしきものが見当たらなかった。
あと強いているなら、後付されたような装置が気になった。
ピンク色の小さなボックス。これだけ、他の部品とは質が異なっている。
だがこれには変身により発せられる莫大な力、それに見合うエネルギー源らしきものが見当たらなかった。
あと強いているなら、後付されたような装置が気になった。
ピンク色の小さなボックス。これだけ、他の部品とは質が異なっている。
BADAN主催のゲームで、支給品となっていた核鉄のことをパピヨンは思い返す。
核鉄により形成される武装錬金というものは、使用者の潜在能力と闘争本能によって形成される唯一無二の武器である。
核鉄のシリアルナンバーが異なっても、使用者が同じならば武装錬金アナザータイプとしての具現が可能だ。逆に言えば、特定の武装錬金は本人にしか扱えない。
だがバトル・ロワイアルという環境において、これは通じなかった。
BADAN主催のゲームでは、複数の人間が早坂桜花のエンゼル御前を展開し、今回もでっていうという女がパピヨンのニアデスハピネスを発動さている。
前回の現象に関してはシリアルナンバーごとに核鉄を察知、変化させる『闘争心誤読装置』が首輪に設置されていた。
カードデッキのこのボックス、同じ類のものだろうか?
核鉄により形成される武装錬金というものは、使用者の潜在能力と闘争本能によって形成される唯一無二の武器である。
核鉄のシリアルナンバーが異なっても、使用者が同じならば武装錬金アナザータイプとしての具現が可能だ。逆に言えば、特定の武装錬金は本人にしか扱えない。
だがバトル・ロワイアルという環境において、これは通じなかった。
BADAN主催のゲームでは、複数の人間が早坂桜花のエンゼル御前を展開し、今回もでっていうという女がパピヨンのニアデスハピネスを発動さている。
前回の現象に関してはシリアルナンバーごとに核鉄を察知、変化させる『闘争心誤読装置』が首輪に設置されていた。
カードデッキのこのボックス、同じ類のものだろうか?
(首輪の確認していない以上、断言はできない、か。
自分の首輪を解体するにせよ、支給品の解析をするにせよ、サンプルは必要だな)
自分の首輪を解体するにせよ、支給品の解析をするにせよ、サンプルは必要だな)
パピヨンはBADAN製の首輪の構造を知っている。『闘争心誤読装置』はその一つだ。
もろもろの事情で、監視装置が盗聴機能とGPSを用いた位置確認しかなかったことも、分かっている。
こうして首輪に関する知識を持つ者を参戦させている点と、第一回定時放送の"映像"流出を考えると、今回はBADAN製の首輪を用いている訳ではないだろう。
前回の核鉄のことを考えると、龍騎のベルトの解析には首輪の解析も必要になってくる。
もろもろの事情で、監視装置が盗聴機能とGPSを用いた位置確認しかなかったことも、分かっている。
こうして首輪に関する知識を持つ者を参戦させている点と、第一回定時放送の"映像"流出を考えると、今回はBADAN製の首輪を用いている訳ではないだろう。
前回の核鉄のことを考えると、龍騎のベルトの解析には首輪の解析も必要になってくる。
(BADANの技術の応用か、新規のものかまだ分からないが……いずれその力、俺の手に収める。
……ま、貴様ら組織の人材は要らないがな)
……ま、貴様ら組織の人材は要らないがな)
パピヨンは二回目の定時放送を見て確信した。あの赤いナメクジはいらない。
それを御し切れていない道化も同様だ。
ふと、放送を聞いた直後に聞き出した、柊つかさの持つ情報を思い出す。
6/とやる夫の名前が呼ばれた時には目を伏せたが、彼女の友人が呼ばれなかったことに安堵していた。
尋ねれば、説明を共に聞いた友人もいたと言っていた。みんなこんなゲーム、知らないようだった、とも。
即ちそれは、"彼女"がやはりどこにも存在しないと証明になる訳で。
それを御し切れていない道化も同様だ。
ふと、放送を聞いた直後に聞き出した、柊つかさの持つ情報を思い出す。
6/とやる夫の名前が呼ばれた時には目を伏せたが、彼女の友人が呼ばれなかったことに安堵していた。
尋ねれば、説明を共に聞いた友人もいたと言っていた。みんなこんなゲーム、知らないようだった、とも。
即ちそれは、"彼女"がやはりどこにも存在しないと証明になる訳で。
(……まあ、分かりきっていたことだ)
首を振って思考を半ば無理やり打ち止め、カードデッキを組み立て直す。
ドライバーを持った指の隙間から、掌のホムンクルスの口が見えた。
ドライバーを持った指の隙間から、掌のホムンクルスの口が見えた。
最後のネジを回し終えた時、「お待たせー」と篭もったつかさの声と共に扉が開いた。
そこから現れた彼女の姿は――。
そこから現れた彼女の姿は――。
「ごめんね、待たせちゃって。この服、動きづらくって……」
黒かった。
外套、靴、ズボン。その他全て、真っ黒だった。
動きづらいのは当たり前だろう。その衣装は成人男性用だ。
パピヨンは知らないが、彼女が着ているのはダースベイダーの衣装。
体格の良い男が着れば栄えるだろうが、華奢な女子高生が装備したことで、衣装本来の貫禄やら威圧感やらが見事にぶち壊れていた。
マントの裾はずるずると引きずられ、足元は覚束なく、今にも裾を踏んでひっくり返りそうだ。
篭もった声を発する顔も、少女の面影はない。これまた黒く、厳つい兜のような装飾品で覆われている。
外套、靴、ズボン。その他全て、真っ黒だった。
動きづらいのは当たり前だろう。その衣装は成人男性用だ。
パピヨンは知らないが、彼女が着ているのはダースベイダーの衣装。
体格の良い男が着れば栄えるだろうが、華奢な女子高生が装備したことで、衣装本来の貫禄やら威圧感やらが見事にぶち壊れていた。
マントの裾はずるずると引きずられ、足元は覚束なく、今にも裾を踏んでひっくり返りそうだ。
篭もった声を発する顔も、少女の面影はない。これまた黒く、厳つい兜のような装飾品で覆われている。
あんまりだ、という感想がパピヨンの脳を支配した。
なんて、なんて華がない。
だというのに柊つかさは小さく頭を傾げ、こうのたまうのだ。
なんて、なんて華がない。
だというのに柊つかさは小さく頭を傾げ、こうのたまうのだ。
「えへへ、似合うかな……?」
普段の姿ならその仕草を可愛いと思う者もいるだろう。思い出したくもないが、川田章吾とか。
だが呼吸の度に兜のどこからか空気が漏れているのか、シュコー、シュコー、と音を響かせている。
そこを女子らしく傾けても、異様なだけだった。
パピヨンは馴染みの収納場所から、自らのマスクのスペアを取り出す。
なぜかつかさが小さな悲鳴を上げたが、無視して蝶マスクを兜に装着させた。
二歩ほど引いて、その姿をしばし眺める。
そして、一言。
だが呼吸の度に兜のどこからか空気が漏れているのか、シュコー、シュコー、と音を響かせている。
そこを女子らしく傾けても、異様なだけだった。
パピヨンは馴染みの収納場所から、自らのマスクのスペアを取り出す。
なぜかつかさが小さな悲鳴を上げたが、無視して蝶マスクを兜に装着させた。
二歩ほど引いて、その姿をしばし眺める。
そして、一言。
「全く似合わん」
「え、えぇー……」
「え、えぇー……」
蝶でも矯正できないとは、なんて絶望的な姿だ。
☆☆☆
「岩崎みなみさん、無理にとは言わないわ。
だけど……もしできるのなら、そのナイフで私の心臓を貫いて」
だけど……もしできるのなら、そのナイフで私の心臓を貫いて」
E-3、地図に載っている公道ではなく、小さな店が並ぶ通り。その路上。
岩崎みなみは"柊かがみ"を前に、言葉を失って立ち尽くしていた。
普通の女の子である彼女が、人間と思えない程の力を振るった為に。
かがみは涙ぐむ。彼女を、妹を、親友を魔女と罵る放送を耳にしながら。
音声の出所は、道路沿いの電柱上部にあるスピーカーからだ。
みなみもその内容を理解する。
岩崎みなみは"柊かがみ"を前に、言葉を失って立ち尽くしていた。
普通の女の子である彼女が、人間と思えない程の力を振るった為に。
かがみは涙ぐむ。彼女を、妹を、親友を魔女と罵る放送を耳にしながら。
音声の出所は、道路沿いの電柱上部にあるスピーカーからだ。
みなみもその内容を理解する。
『柊かがみとその妹のつかさ、そしてこの二人と同じ赤い制服を着た連中…、こいつらは全員、この殺し合いに乗った魔女なんだ!』
(……嘘)
(……嘘)
でも、納得はできない。だって彼女達は、ただの女子高生ではないか。
そこで違和感を覚えたみなみは、かがみをもう一度見つめた。
そこで違和感を覚えたみなみは、かがみをもう一度見つめた。
(コンクリートを踏み砕くような力を持つ人が、ただの女子高生……?)
スピーカーを通して、さっきとは違う甲高い声が喚いている。"かがみ"へ意識が集中したみなみは、その話を理解できない。
「せ、んぱい、どうしてそんなことを言うんですか……?」
「……私、もう疲れちゃったの。誤解されて巻き込まれてばっかりで。
何をやっても裏目に出ちゃって……無力だったの。この放送がいい証拠。
それにね……。あいつがいない世界なんて、考えられない。
生きていく、自信がない……。ううん、生きる意味がないのよ」
「……私、もう疲れちゃったの。誤解されて巻き込まれてばっかりで。
何をやっても裏目に出ちゃって……無力だったの。この放送がいい証拠。
それにね……。あいつがいない世界なんて、考えられない。
生きていく、自信がない……。ううん、生きる意味がないのよ」
自嘲気味に笑む、かがみの青い瞳には光がない。
かがみは誰かの死に悲しんでいるのだろう。でも、誰のこと?
陵桜学園の人間の名は、二回目の放送で呼ばれていなかった。
みゆきの死に反応しているとしたら、遅すぎる。
それに彼女の言い分は、まるで恋人が死んだようではないか。そうなると、いよいよ誰のことか分からなくなってくる。
かがみは誰かの死に悲しんでいるのだろう。でも、誰のこと?
陵桜学園の人間の名は、二回目の放送で呼ばれていなかった。
みゆきの死に反応しているとしたら、遅すぎる。
それに彼女の言い分は、まるで恋人が死んだようではないか。そうなると、いよいよ誰のことか分からなくなってくる。
「あいつって、誰ですか……?」
「こなた」
「え?」
「私にとってのこなた……爆弾よ」
「……え?」
「こなた」
「え?」
「私にとってのこなた……爆弾よ」
「……え?」
かがみが、こなたのことを好き? 爆弾ってなんだろう?
そんな名前が、名簿にあったような気がする。支給品の説明書にもあったような気がする。
……分からない。
みなみは混乱していく。目の前の"柊かがみ"が、得体の知れない何かに感じ始める。
そんな名前が、名簿にあったような気がする。支給品の説明書にもあったような気がする。
……分からない。
みなみは混乱していく。目の前の"柊かがみ"が、得体の知れない何かに感じ始める。
――『柊かがみは魔女だ』――
もう途切れた放送の内容が、さらにみなみを追い詰める。
違う、違う。この先輩はそんな人じゃない。
混乱していくみなみを見て、かがみは笑みを深めた。
違う、違う。この先輩はそんな人じゃない。
混乱していくみなみを見て、かがみは笑みを深めた。
「ごめん……無理だよね。私、あなたの格好を見て、早まっちゃったみたい」
「ッ!?」
「ッ!?」
自分が血を浴びた状態であることを失念していたみなみは、その言葉に動揺する。
だから、みなみは自分より後方を見据えたかがみの言葉を受けても、俊敏に反応できない。
だから、みなみは自分より後方を見据えたかがみの言葉を受けても、俊敏に反応できない。
「……ねえ。あんたは、私を殺してくれる?」
誰かのため息を聞いてようやく、みなみは自分の後方に他の人物が立っていたことに気付いた。
ビクリ、と体を震わせて……みなみはすぐにポケットのナイフを握った。
誰だろう、誰が先輩を殺すというのだろう。
誰が、自分達に……ゆたかに、危害を加えようとするのだろう?
恐れを抱きながらも、後ろへ振り向こうとするみなみ。しかしその動作は、後ろにいた彼を見た瞬間に停止してしまった。
ビクリ、と体を震わせて……みなみはすぐにポケットのナイフを握った。
誰だろう、誰が先輩を殺すというのだろう。
誰が、自分達に……ゆたかに、危害を加えようとするのだろう?
恐れを抱きながらも、後ろへ振り向こうとするみなみ。しかしその動作は、後ろにいた彼を見た瞬間に停止してしまった。
(Dボゥイ、さん……?)
☆☆☆
「……くそッ!」
E-3、インターネットカフェの個室スペース。
コンピュータのモーター音の中に悔しげな声とガツッ、と壁を叩く音が混ざった。
コンピュータのモーター音の中に悔しげな声とガツッ、と壁を叩く音が混ざった。
ここへ向かう途中、定時放送で朝倉の名前を聞いたDボゥイは愕然とした。
自分は人間ではない、と自信を込めた笑顔で別れた彼女が、別れた数時間後に死んで……いや、直後に死んだのだろうか。
安易な考えだったのか?
朝倉と別れたのは、よかれと思って彼女達と離れたのは、軽率な行動だったのか?
自責の念に雁字搦めになる寸前に、Dボゥイは疑念という網に掬われる。
自分は人間ではない、と自信を込めた笑顔で別れた彼女が、別れた数時間後に死んで……いや、直後に死んだのだろうか。
安易な考えだったのか?
朝倉と別れたのは、よかれと思って彼女達と離れたのは、軽率な行動だったのか?
自責の念に雁字搦めになる寸前に、Dボゥイは疑念という網に掬われる。
(みなみは、どうなった?)
彼女の名前は呼ばれていない。だが、朝倉が死んだことから何かあったことは明白だ。
彼女達と別れたここへ戻ってみると、そこにいたのは事切れた遺体のみ。
念のためカフェ中を捜してみたが、誰も見つからなかった。
みなみを捜しに行かなくてはと考えたが、かといって、朝倉をこのまま放置するのはあまりにも……。
彼女達と別れたここへ戻ってみると、そこにいたのは事切れた遺体のみ。
念のためカフェ中を捜してみたが、誰も見つからなかった。
みなみを捜しに行かなくてはと考えたが、かといって、朝倉をこのまま放置するのはあまりにも……。
せめて寝かせてやろうと、Dボゥイは朝倉をパソコン前の椅子から抱え上げる。血が抜けたせいだろう、彼女は驚くほど軽かった。
触れた温度はスパイダーマンのスーツに遮られて、伝わらなかった。
だが、関節の柔らかさからまだ死後硬直が始まって間もないのは理解できた。
個室のベッドに仰向けに横たわらせる。
驚いたように見開かれた目の瞼を、そっと下ろす。それでも驚愕に凍りついた表情が和らぐことはなかった。
触れた温度はスパイダーマンのスーツに遮られて、伝わらなかった。
だが、関節の柔らかさからまだ死後硬直が始まって間もないのは理解できた。
個室のベッドに仰向けに横たわらせる。
驚いたように見開かれた目の瞼を、そっと下ろす。それでも驚愕に凍りついた表情が和らぐことはなかった。
左頬、唇の上から鼻梁まで付着していた血液をシーツで拭ってやる。
出会った時も彼女は血だらけだった。
だが鼻血に塗れ頬を赤らめた彼女は、どこか幸せそうだった気がする。
そこで、みなみと良く似た声の少女を思い出した。彼女と朝倉との関係も。
出会った時も彼女は血だらけだった。
だが鼻血に塗れ頬を赤らめた彼女は、どこか幸せそうだった気がする。
そこで、みなみと良く似た声の少女を思い出した。彼女と朝倉との関係も。
「……」
Dボゥイは携えていた日本刀を抜く。
朝倉の首輪に反射した照明が、白銀の刃にも映りより鋭さを増した。
朝倉の首輪に反射した照明が、白銀の刃にも映りより鋭さを増した。
(朝倉、すまない。無茶な頼みをしてしまった。だが……)
軽く力を入れて、Dボゥイは日本刀を振った。この作業、ほんの小さな力でも十分な。
ザクリ。
葉物を刻んだような音が、響いた。
ザクリ。
葉物を刻んだような音が、響いた。
☆☆☆
「本物のお前が、自殺志願者だとはね……柊かがみ。妹のことはどうでもいいのか?」
一瞬だけDボゥイに見えた人物は、顔は良く似てはいたけど別人だった。
驚きの次にみなみが感じたのは、安堵。
いまDボゥイに会っても何を言えばいいのか、分からなかったから。
男の人の言葉を聞いたかがみが、苦々しげに笑う。
驚きの次にみなみが感じたのは、安堵。
いまDボゥイに会っても何を言えばいいのか、分からなかったから。
男の人の言葉を聞いたかがみが、苦々しげに笑う。
「あんたも……うん、まあいいか。最初に言っておくけど、私に妹なんていないわ」
「……どういうことだ?」
「そのままの意味よ……たぶん、だけどね。
私は、自分の家族も友だちも、覚えていないから。
ただ、これだけは言える。私はこれまでの人生で一度も、"柊つかさ"と会ったことも、口をきいたこともないわ」
(先輩……?)
「……どういうことだ?」
「そのままの意味よ……たぶん、だけどね。
私は、自分の家族も友だちも、覚えていないから。
ただ、これだけは言える。私はこれまでの人生で一度も、"柊つかさ"と会ったことも、口をきいたこともないわ」
(先輩……?)
みなみの世界が壊れていく気がした。
みゆきが殺され、その犯人を自分の手で殺し、出逢えた知り合いは、自分の半身をどうでもいいと吐き棄てている。
堪えかねて、みなみは彼女に尋ねた。
みゆきが殺され、その犯人を自分の手で殺し、出逢えた知り合いは、自分の半身をどうでもいいと吐き棄てている。
堪えかねて、みなみは彼女に尋ねた。
「……あなたは、だれですか?
柊先輩じゃないのなら、一体何なんですか……?」
柊先輩じゃないのなら、一体何なんですか……?」
みなみはもう、彼女を柊かがみと認識することができなかった。
"かがみに似た人物"は目を細める。
"かがみに似た人物"は目を細める。
「……どうでもいいじゃない、そんなこと」
「俺も聞きたいね、貴様はなんだ? 柊かがみじゃないのか?」
「このッ、どうでもいいって言っているじゃないッなに、あんたもかがみに恨みでもあるの!?」
「フン、馬鹿かお前は。
さっきの放送を聞いて、柊かがみに関心がない方が変だろう?
おまけにこっちは半日の間に、何度もお前の名前と顔を見聞きしたんだ。
気にするなという方が無理な話さ」
「……そう。あんた、私が"魔女"だったらどうする?」
「殺す」
「俺も聞きたいね、貴様はなんだ? 柊かがみじゃないのか?」
「このッ、どうでもいいって言っているじゃないッなに、あんたもかがみに恨みでもあるの!?」
「フン、馬鹿かお前は。
さっきの放送を聞いて、柊かがみに関心がない方が変だろう?
おまけにこっちは半日の間に、何度もお前の名前と顔を見聞きしたんだ。
気にするなという方が無理な話さ」
「……そう。あんた、私が"魔女"だったらどうする?」
「殺す」
間髪なく、なんの躊躇いもなくそう言った彼の赤い瞳は、嫌な光を湛えていた。
見覚えのある光だと感じたみなみは、やがてその正体に気付いてしまう。
血に濡れたネットカフェの床、とろりとした水面に映ったみなみの目と、同じ光だった。
紛れもない、殺意だった。
見覚えのある光だと感じたみなみは、やがてその正体に気付いてしまう。
血に濡れたネットカフェの床、とろりとした水面に映ったみなみの目と、同じ光だった。
紛れもない、殺意だった。
「"弱者を装って取り入る"なんて、いかにも兄さんが引っかかりそうな相手なんでね。
俺と兄さんの戦いの邪魔になるものは、全て排除させてもらうよ」
「……へえ」
俺と兄さんの戦いの邪魔になるものは、全て排除させてもらうよ」
「……へえ」
かがみに似た人は虚ろにほほ笑んだ。
みなみは分かった。この人は魔女と名乗って殺される気だ、と。
みなみは分かった。この人は魔女と名乗って殺される気だ、と。
「あのっ……」
それを制止するために、みなみは声を上げた。
彼女が"魔女・かがみ"として殺されてしまったら、この男の人はどう思うだろう。
さっきの放送を鵜呑みにしてしまうんじゃないだろうか。
彼女は"柊かがみ"であることを一度は否定したけれど、彼がそれを信じるとは限らない。
信用できない。彼の態度と目からは、危険なことしか感じられない。
彼はかがみ先輩に妹がいることを知っていた。
なら、陵桜学園の制服を知っているんじゃないだろうか。やがて、ゆたかを殺しにかかるのではないだろうか。
さっきの放送を鵜呑みにしてしまうんじゃないだろうか。
彼女は"柊かがみ"であることを一度は否定したけれど、彼がそれを信じるとは限らない。
信用できない。彼の態度と目からは、危険なことしか感じられない。
彼はかがみ先輩に妹がいることを知っていた。
なら、陵桜学園の制服を知っているんじゃないだろうか。やがて、ゆたかを殺しにかかるのではないだろうか。
ぐるぐるとぐるぐるとみなみの思考は迷走していく。
本人に自覚はない。
信用した人物が自分の姉のような存在を殺していたという裏切りを受けて、みなみは人を信じられなくなっていた。
そんな状態で錯乱した柊かがみとそっくりな人物と、異様な雰囲気を漂わせるDボゥイに酷似した人物と遭遇したのだ。
まともな判断力は、彼らの話を聞くのに比例して失われていった。
本人に自覚はない。
信用した人物が自分の姉のような存在を殺していたという裏切りを受けて、みなみは人を信じられなくなっていた。
そんな状態で錯乱した柊かがみとそっくりな人物と、異様な雰囲気を漂わせるDボゥイに酷似した人物と遭遇したのだ。
まともな判断力は、彼らの話を聞くのに比例して失われていった。
「……何だい? 随分とおかしな格好をしているね」
不機嫌そうに男の人が振り向いた。みなみの姿を見て、尚更目つきを鋭くする。
彼に声をかけたのは、もう一つ理由があった。彼に確かめなくてはならないことがあった。
彼に声をかけたのは、もう一つ理由があった。彼に確かめなくてはならないことがあった。
――((Dボゥイさんは、ゆたかを保護するために探しているんですよね……。
決して『殺すために探している』わけではないんですよね……))――
決して『殺すために探している』わけではないんですよね……))――
みなみは自分が抱いた疑念を思い出して、ごくり、と喉を鳴らした。
まだあの人が、ゆたかにとって安全な存在か判明していない。
はっきりしているのは、"ゆたかを捜している"ということだけ。
Dボゥイは、信用できる……はずだ。だってあんなにゆたかを心配してくれていたんだもの。
それでも、この男の目に見た殺意にその期待が邪魔される。
ある人物を捜していると言ったDボゥイが見せた目の鋭さが、先ほどの彼と良く似ていたから。
それを、確かめられるかもしれない。
まだあの人が、ゆたかにとって安全な存在か判明していない。
はっきりしているのは、"ゆたかを捜している"ということだけ。
Dボゥイは、信用できる……はずだ。だってあんなにゆたかを心配してくれていたんだもの。
それでも、この男の目に見た殺意にその期待が邪魔される。
ある人物を捜していると言ったDボゥイが見せた目の鋭さが、先ほどの彼と良く似ていたから。
それを、確かめられるかもしれない。
Dボゥイと似た顔。男の人が言った「兄さん」という言葉。そして、みなみの未知のDボゥイの知り合い。
そこから導き出された名前を言った。
そこから導き出された名前を言った。
「あなたは、相羽シンヤさんですよね……?」
「…………そうだが」
「私は……岩崎みなみといいます。……ゆたかの友人です」
「ッ!」
「…………そうだが」
「私は……岩崎みなみといいます。……ゆたかの友人です」
「ッ!」
ゆたかの名前を聞いた、彼の表情が歪む。ああ、この人も知っていたんだ。
こんな危なそうな人まで、ゆたかのことを知っていたのか。
こんな危なそうな人まで、ゆたかのことを知っていたのか。
「桃色の髪の背の低い女の子です……知っていますよね」
「お前……、誰から聞いた」
「Dボゥイさんです」
「お前……、誰から聞いた」
「Dボゥイさんです」
そう答えた時、彼が少しだけ安心したように見えたのは気のせいだろうか。
みなみは言葉を続ける。あまり長く話すのは得意ではないのだけれども。
みなみは言葉を続ける。あまり長く話すのは得意ではないのだけれども。
「前に、同じようなゲームに巻き込まれたと聞きました。
その時に、彼がゆたかと知り合ったことも……今、彼がどこにいるのかも、知っています」
その時に、彼がゆたかと知り合ったことも……今、彼がどこにいるのかも、知っています」
たぶん、あのインターネットカフェの近くにいるのだろう。交渉材料はある。
「取引するつもりか? お前を痛めつけて吐かせるという手も……」
「……早く行かないと、あの人はどこかに移動してしまうと思います」
「……」
「……早く行かないと、あの人はどこかに移動してしまうと思います」
「……」
二、三秒して、男の人が舌打ちして肯いた。
かがみに似た人が、みなみをまじまじと眺めながら口を挟む。
かがみに似た人が、みなみをまじまじと眺めながら口を挟む。
「シンヤ、だっけ。あんたこの子の血を見て、何も疑わないの?
お兄さんがこの子に殺された、とか」
「こんな虫けらが兄さんを殺す? ありえないね」
お兄さんがこの子に殺された、とか」
「こんな虫けらが兄さんを殺す? ありえないね」
どうしてこの人は、こんなどす黒く人を見下す目をしているのだろう。
みなみは疑問に思った。同時に、彼と知り合いであるDボゥイへの不信感が募る。
みなみは疑問に思った。同時に、彼と知り合いであるDボゥイへの不信感が募る。
「話を戻す……お前は、何が知りたいんだ?」
同時にゆたかを守るためには、彼らのことを知らないままではいけないという思いが、強くなった。
「教えて下さい……あなた達はどうして、ゆたかを捜しているんですか?
あなた達は……何者なんですか?」
あなた達は……何者なんですか?」
☆☆☆
現在位置は……さて、どこだろう。判断つかない。
分からないのは、地図も周りの風景も自分からは見られないからだ。決して、オツムが足りないからじゃない。
支給品・レッドアイズブラックドラゴンのカードこと南夏奈は、高らかに笑うシンヤのジャケットのポケットの中で、彼らの会話を聞いていた。
分からないのは、地図も周りの風景も自分からは見られないからだ。決して、オツムが足りないからじゃない。
支給品・レッドアイズブラックドラゴンのカードこと南夏奈は、高らかに笑うシンヤのジャケットのポケットの中で、彼らの会話を聞いていた。
「っ、ハハ、ハハハッ! なんだ、"また"知らせてなかったのか、兄さん。
でも安心したよ。ゆたかのことを知っているなら、ここにいるのは俺の知っている兄さんだ。
……感謝するよ、人間。
御礼に教えてやろうじゃないか。俺とタカヤ兄さん……Dボゥイの正体を」
「タカヤ……さん?」
でも安心したよ。ゆたかのことを知っているなら、ここにいるのは俺の知っている兄さんだ。
……感謝するよ、人間。
御礼に教えてやろうじゃないか。俺とタカヤ兄さん……Dボゥイの正体を」
「タカヤ……さん?」
静かな口調で話す、みなみという女の子。
彼女の声を聞いた時は、チアキが見つかった! と思ったが、喜びはすぐに収束した。
喋り方が千秋にしては大人びすぎているし、大人しすぎていたのだ。
なにより、姉妹センサーが作動していな……ん? あれは冗談だったっけ?
彼女の声を聞いた時は、チアキが見つかった! と思ったが、喜びはすぐに収束した。
喋り方が千秋にしては大人びすぎているし、大人しすぎていたのだ。
なにより、姉妹センサーが作動していな……ん? あれは冗談だったっけ?
さっきまで騒いでいたかがみは、黙ったままだ。シンヤの話にまるで興味ないらしい。
かがみの「つかさは妹じゃない」という言動が少し気になったが、夏奈は気にしないでおいた。
どうせこいつのことだ、「こなたも6/もつかさも私の嫁!」というつもりで言ったんだろう。肉欲的な意味で。
かがみの「つかさは妹じゃない」という言動が少し気になったが、夏奈は気にしないでおいた。
どうせこいつのことだ、「こなたも6/もつかさも私の嫁!」というつもりで言ったんだろう。肉欲的な意味で。
(それとも、悪口言われて拗ねてんのか?)
さっきの流れた誰かの言い争いの内容が、ショックだったんだろうか。
いや、あれ以上にもっとひどいことを前のロワで言われていたし、それはないか。
シンヤは、嬉しそうに楽しそうに語っている。
そういえば、自分が話すばっかりでこいつのことはあまり知らなかったなあ、と夏奈は思った。
いや、あれ以上にもっとひどいことを前のロワで言われていたし、それはないか。
シンヤは、嬉しそうに楽しそうに語っている。
そういえば、自分が話すばっかりでこいつのことはあまり知らなかったなあ、と夏奈は思った。
「そう、君がDボゥイと呼ぶあの人の本名は、相羽タカヤ。俺とは正真正銘血を分けた兄弟さ。
Dは……兄さんの気質を考えるとやっぱり、デンジャラスの略だろうね」
Dは……兄さんの気質を考えるとやっぱり、デンジャラスの略だろうね」
シンヤは語り続ける。
ラダムという宇宙生命体が、第二の故郷を求めていること。その場所を地球に定めたこと。
自分がラダムによって造り出された、地球を侵攻するための化け物、テッカマンであること。
ラダムという宇宙生命体が、第二の故郷を求めていること。その場所を地球に定めたこと。
自分がラダムによって造り出された、地球を侵攻するための化け物、テッカマンであること。
「そうだ、兄さんはある支給品を探していなかったか? ……宝石のような奇妙な結晶とか」
「あ……」
「覚えがあるんだな。どうして、それを求めているか考えたかい?
……殺し合いの中で、金目のものに手を出すとは思わないだろう?」
(あたしなら出すなあ……)
「兄さんがその結晶――テッククリスタルを求めているのはね、"変身"に必要なものだからだ」
「あ……」
「覚えがあるんだな。どうして、それを求めているか考えたかい?
……殺し合いの中で、金目のものに手を出すとは思わないだろう?」
(あたしなら出すなあ……)
「兄さんがその結晶――テッククリスタルを求めているのはね、"変身"に必要なものだからだ」
「黙ってろ」と言われた手前、沈黙している夏奈だったが、次第に落ち着かなくなってきた。
そんな夏奈をよそに、シンヤはみなみに告げた。
そんな夏奈をよそに、シンヤはみなみに告げた。
Dボゥイも同じラダムのテッカマン……化け物ということを。
ショックだったのか、みなみが息を飲む音が聞こえた。
ビーム打ち放題だったり遊戯王カードが実体化したりカード化されたりと、チートや変なもんが蔓延しているバトロワで、一体なにがショックだったのだろうか。
かがみのことといい、何かおかしい。
みなみの反応に気を良くしたのか、シンヤはより饒舌になる。
というか、首輪を回収した時のイライラを発散させているんじゃないだろうか、こいつ。
なーんか不機嫌みたいだったし。
ビーム打ち放題だったり遊戯王カードが実体化したりカード化されたりと、チートや変なもんが蔓延しているバトロワで、一体なにがショックだったのだろうか。
かがみのことといい、何かおかしい。
みなみの反応に気を良くしたのか、シンヤはより饒舌になる。
というか、首輪を回収した時のイライラを発散させているんじゃないだろうか、こいつ。
なーんか不機嫌みたいだったし。
「信じるか?
前のゲームじゃ、ある馬鹿が参加者の前で派手に変身してみせたから、ゆたかにも説明しやすかったんだが」
「あなたが、教えた……? Dボゥイさんは、ゆたかにそのことを言ってなかったんですか?」
「人間――お前ら虫けらに、兄さんは知られたくたんだろうね。
地球で保護された時も、記憶喪失を装っていたくらいだ。ゆたかは、俺と兄さんが殺し合いを始めた時は驚いていたよ」
「…………っ」
「あの時はクリスタルがなくて、勝負は保留にしたんだ。
ゆたかは……その時、兄さんが連れていたのを俺が預かった。それだけの関係さ。
そう、まだだ……。まだ俺は兄さんに勝っていない……、俺も兄さんも死んでいない……!」
前のゲームじゃ、ある馬鹿が参加者の前で派手に変身してみせたから、ゆたかにも説明しやすかったんだが」
「あなたが、教えた……? Dボゥイさんは、ゆたかにそのことを言ってなかったんですか?」
「人間――お前ら虫けらに、兄さんは知られたくたんだろうね。
地球で保護された時も、記憶喪失を装っていたくらいだ。ゆたかは、俺と兄さんが殺し合いを始めた時は驚いていたよ」
「…………っ」
「あの時はクリスタルがなくて、勝負は保留にしたんだ。
ゆたかは……その時、兄さんが連れていたのを俺が預かった。それだけの関係さ。
そう、まだだ……。まだ俺は兄さんに勝っていない……、俺も兄さんも死んでいない……!」
こいつは、変なヤツだ。夏奈はない首を傾げた。
シンヤはDボゥイと戦って勝ちたいと言っていた。殺し合いが前提のゲームで、だ
いま話していることを聞くと、バトロワに巻き込まれる前も、しつこく兄を狙っていたという。
こいつは兄弟――家族との殺し合いを望んでいる。それが理解できない。
シンヤはDボゥイと戦って勝ちたいと言っていた。殺し合いが前提のゲームで、だ
いま話していることを聞くと、バトロワに巻き込まれる前も、しつこく兄を狙っていたという。
こいつは兄弟――家族との殺し合いを望んでいる。それが理解できない。
(そりゃあ、あたしだってロワ中に千秋に襲い掛かったことはあったけれど……う、ごめんなさい忘れてくださいッ。
あの時はバイトをクビになって、むしゃくしゃしてたんだよぉ…………)
あの時はバイトをクビになって、むしゃくしゃしてたんだよぉ…………)
なんにしろ、全てはバトルロワイアル法という馬鹿な法案が可決したことが原因だ。
あれはバトル・ロワイアルという、狂った環境が前提の事態だった。
あれはバトル・ロワイアルという、狂った環境が前提の事態だった。
家族っていうものは、好んで殺し合いをする相手じゃないと、夏奈は思う。
そりゃあ楽しみにしていたプリンを食べられたり、朝、強引に起こされたりといった些細なきっかけでの喧嘩くらいあるだろう。
養子に出された子どもがそれを決めた親と、親と共に安穏と暮らせる兄弟も憎む、なんて話もあるだろう。
けど、根底にある家族への愛情は変わらないはずだ。
仕返しや喧嘩にしても、梅雨に相手の傘を隠す程度だろう、常識的に考えて。
馬鹿な理由で妹に襲い掛かって、怒られて、許してもらって、嬉しくて泣きはらした夏奈は心底そう思う。
マムクートの一族とか、ラダムとか、平行世界の違いとか、そんなことは関係ないだろうに。
しかも双子だ。本気で嫌いあうはずなんてないだろう。
夏奈は次第に、そう言いたくなってきた。
そりゃあ楽しみにしていたプリンを食べられたり、朝、強引に起こされたりといった些細なきっかけでの喧嘩くらいあるだろう。
養子に出された子どもがそれを決めた親と、親と共に安穏と暮らせる兄弟も憎む、なんて話もあるだろう。
けど、根底にある家族への愛情は変わらないはずだ。
仕返しや喧嘩にしても、梅雨に相手の傘を隠す程度だろう、常識的に考えて。
馬鹿な理由で妹に襲い掛かって、怒られて、許してもらって、嬉しくて泣きはらした夏奈は心底そう思う。
マムクートの一族とか、ラダムとか、平行世界の違いとか、そんなことは関係ないだろうに。
しかも双子だ。本気で嫌いあうはずなんてないだろう。
夏奈は次第に、そう言いたくなってきた。
「ゆたかは……ゆたかはどうなったんですか?」
「……、……さあね。
俺はあいつを連れている途中で、このゲームに参加させられたんだ。ゆたかが最終的にどうなったのかは知らない。
もしかしたら、僕らの知っているあいつがここに呼ばれているのかもしれないね。
……今度こそ目の前でテッカマン同士の殺し合いを見れば、ゆたかの甘い考えも……」
「……、……さあね。
俺はあいつを連れている途中で、このゲームに参加させられたんだ。ゆたかが最終的にどうなったのかは知らない。
もしかしたら、僕らの知っているあいつがここに呼ばれているのかもしれないね。
……今度こそ目の前でテッカマン同士の殺し合いを見れば、ゆたかの甘い考えも……」
ああ、もの凄くまどろっこしい。声だけしか聞こえないのが、またこそばゆい。
「……ラグ」と、かがみの小さな独り言が聞こえる。
こっちも口挟もうかな。「このブラコン野郎め」と、言ってやろうかな。
そう夏奈が思った時だった。
「……ラグ」と、かがみの小さな独り言が聞こえる。
こっちも口挟もうかな。「このブラコン野郎め」と、言ってやろうかな。
そう夏奈が思った時だった。
聞きなれないフレーズを唱える、妹と似た声が聞こえたのは。
124:Fuck you all niggaz wanna do! | 投下順 | 125:そして少女は死んだ -The Elfin Knight- (後編) |
: | 時系列順 | 125:そして少女は死んだ -The Elfin Knight- (後編) |
100:魅音の不幸とラッキースターワンダーランド(前編) | 柊つかさ | 125:そして少女は死んだ -The Elfin Knight- (後編) |
パピヨン | ||
108:true my heart(食べ物的な意味で) | 相羽シンヤ | |
109:爆裂的に鎮火せよ! | Dボゥイ | |
119:mind crash | 岩崎みなみ | |
クールなロリスキー |