『サタンの存在』
「君はサタンの存在を信じたことあるかな?」
塾に行く途中、佐々木が突然電波を発信した。
「クリスマスにプレゼント運ぶおじさんのことは、小学生の時には既に信じて無かったな」
我ながら、ませたガキだった。
「違うねサタン。悪魔のことだよ」
「悪魔ね。サンタクロースの方がよっぽど有り得るんじゃないのか」
「キミのことだから、そう言うと思ったよ。キミらしい」
何故か嬉しそうに言う佐々木。俺の行動を予測できるのか。この調子だと、一生佐々木に頭が上がらないな。やれやれ
塾からの帰り道、同じ話をされた。
「もし僕がサタンだったらどうするかな?」
冗談でないマジな顔だった。
「そうだな、かわいい娘が欲しいな。お前に似て美人で優しくてかわいいのを…」
「三人、いや、四人ほど。それから、男の子も一人か二人くらい欲しいかな」
「そうか。合計6人。キミがそう言うのなら、大変だけど頑張ってみるよ」
おい佐々木。何か変な話になってないか。何故顔を赤らめる。
その後、子供の教育論についての話になった。そして、教育論の話題もつきかけた頃
「さっきの話だけど、僕がサンタクロースでなくサタン:悪魔だったらどうする?」
いつもの思考実験にしては、やけに真剣な顔付きだ。
「お得意の思考実験か?そうだな、宇宙人なら宇宙旅行に連れて行って欲しい。未来人なら未来旅行。超能力者なら遊覧飛行かな」
「なるほどね。ごく一般的な解答ではあるね」
「そういうお前ならどうする?」
「キミが神でも悪魔でも、今と変わらず接したい。接したいけど…」
急に涙目になる佐々木。かわいそうに。思考実験のやりすぎでとんでもない杞憂を抱え込むなんて。
思わず佐々木を抱き締めて言う。
「約束する。俺も佐々木が神でも悪魔でも宇宙人でも妖怪でも、今と同じように接する」
そして、俺達は指切りをした。
(終わり)
最終更新:2008年08月31日 17:09