佐々木「橘さんの話をまとめると、涼宮さんは4年前突然に世界改変能力を身に付けた。
その能力を涼宮さんは意識していない。無意識で発動している。
涼宮さんの精神が不安定になると閉鎖空間が発生して、放置するとこの世界が崩壊する。
僕の精神は涼宮さんより安定しているので、僕に神様になってほしい」
藤原「橘が言った内容はその通りで間違っていない。」
佐々木「君達の解釈はどうなんだ」
藤原「奴らは神と呼んでいるが、俺達にとっては時空の歪みだ。
閉鎖空間に関しては我々と橘達:超能力者では解釈が別れる。
閉鎖空間を放置すればどうなるかは我々にはわからないし、世界の崩壊も奴らの妄想かもしれない。
涼宮ハルヒ1人が新しい世界に引越しして世界はもとのままかもしれない。
また、超能力者に関しては、事故で死ぬところを涼宮ハルヒに蘇生された、という説を持っている連中がいる。
正直俺には真偽のほどはわからんが。
それ以外については解釈がほぼ同じだと思う。」
佐々木「結構意見が分かれているんだな。
仮に蘇生が本当としたら、涼宮さんが死ぬと能力がとけて超能力者も死ぬのか」
藤原「多分な。それに閉鎖空間が拡大しきった時にも死ぬのかもしれん
そういう意味で超能力者にとって涼宮ハルヒが神かもしれない」
佐々木「橘さんにとっては涼宮さんでなく私が神だとも思うが」
藤原「橘についてはそうかもな。」
佐々木「九曜さんや向こうの宇宙人の解釈は」
藤原「ほぼ同じじゃないのかな」
佐々木「そうか」
佐々木さんは飲み物に手をつけない。
藤原「君は橘の提案をどう思う」
佐々木「正直神様にはなりたくないな」
藤原「君は橘や我々の話をどこまで信じているのか?」
佐々木「まだ半信半疑だよ。本当に涼宮さんにそんな能力があるのか。
橘さんは涼宮さんの能力をそのままにしていれば危険と言ったが。
この前橘さんの対抗組織の人と話し合った時は、涼宮さんの能力は弱まっているらしいから心配いらない、と言われた。
どっちが正しいのだろうかね。」
藤原「対抗組織の人というのは涼宮ハルヒの取り巻きの色男か」
佐々木「いや、そうじゃないよ。美人だけど恐そうな女の人だった。橘さんの所より大所帯で有能な方も多いみたいだった。」
藤原「そうだろうな」
佐々木「君の所はどうなんだ。あの巨乳女の所と比べて。」
藤原「それは言えない。禁則事項だ」
佐々木「そうか、それは残念だよ。
ところで、一度未来旅行に行きたいのだが連れて行ってくれないか。」
藤原「最大級の禁則事項だ」
佐々木「写真だけでも見せてくれないか」
藤原「禁則だ」
佐々木「海はまだあるのか」
藤原「ある」
佐々木「山や川もまだあるのか」
藤原「それもある」
佐々木「どんな建物に住んでいるのか」
藤原「禁則事項」
佐々木「食べ物は同じなのか」
藤原「この時代と同じメニューも多い」
佐々木「服はこの時代と同じなのか」
藤原「一応禁則事項。ところでそろそろ本題に入って良いかな」
はじめて佐々木さんは飲み物に手をつける。
佐々木「涼宮さんの能力が弱まっているのは本当なのか」
藤原「能力が弱まっているというより、ここ数ヶ月、涼宮ハルヒの精神が安定している、と言った方が正しいかもしれない。
どっちにしろ我々にとっては噴火口の上にいるようなもんだよ。」
噴火口の上か、橘さんも似たようなことを言っていた。
佐々木「これから一生ずっと涼宮さんの精神が安定化する可能性は無いのか?」
藤原「橘は安定化があくまで一時的であると言う。
逆に橘の対抗勢力は一生ずっと精神が安定化する可能性もあると言う。
どっちが正しいかは俺にはわからん」
佐々木「僕の方が精神が安定している、と橘さんは言ったが本当なのか?」
藤原「俺には判断できない。
その点については君の元彼氏が最も適任じゃないのかな。
君達二人ともに親しく接していたから。」
佐々木「キョンは僕の精神が橘さんが言うほど安定でなく、涼宮の精神が不安定でない、と思っている。
そして、涼宮さんのコントロールが充分可能だと思っている。
一生涼宮さんをコントロールし続けるつもりなのかもしれない。」
そう言った佐々木さんは寂しそうで、今にも泣き出しそうだった。
藤原「そこまでわかるのか」
佐々木「長い付き合いだから」
藤原「奴はそう思ってなさそうだったが。むしろ涼宮ハルヒの方と」
佐々木「言うな!!」
藤原「すまん、言いすぎた」
佐々木「大声を出してすまない。
橘さんの言うほどには自分は自制的では無いと、思う」
藤原「かもな」
藤原「君の元彼氏が涼宮ハルヒのコントロールが可能だと考えている。
よって移植は必要ないという結論か。」
佐々木「キョンの判断が正しい、という確証は無い」
藤原「おい、それを言ったら何も判断できないじゃないか」
佐々木「それにキョンだけに一生そんな負担を、涼宮さんの尻拭いをさせるのは可哀想だ」
尻拭いと聞いて、藤原はどこかのAVでの特殊なプレイを思い出したが、すぐ真面目モードに戻った。
藤原「だが、向こうは果たして負担と思っているのかね
すいません。睨まないで下さい」
佐々木「負担に思っている。随分疲れた様子だった。成績も落ちているし」
藤原「俺の見立てでは、最近は顔色が良さそうな気がする
入院する前、11月、12月頃は今にも死にそうだったが、退院してからは持ち直してきていると思う。
すいません、すいません。睨まないで下さい」
佐々木「僕はその頃のキョンを見ていないので良くわからない。
キョンが12月に入院したのは過労が原因なのだろうか。
3日間も意識が戻らないなんて普通じゃないし。」
藤原「普通じゃない過労だったんだろうな。」
藤原はコーヒーを飲み干す。
藤原「だが、入院した時、何で見舞いにいかなかったんだ?」
佐々木「キョンの入院は退院してから聞いた。
退院してからでも、電話くらいはした方が良かったのかもしれないが。
涼宮さんが毎日泊まりこみをした、と聞いたので対抗する気も無くなった。」
佐々木さんは、ふうとため息をついてからこう言った
佐々木「涼宮さんの能力については信じるとして、キョンの能力は本物なのか?」
藤原「宇宙人二組のゼロ次遭遇を引き起こすほどの奴だ、タダ者じゃないのは確実だ」
佐々木「このままだとどうなる。キョンは宇宙人に命を狙われるのか?」
藤原「その可能性もあるが、現時点では交通事故に合うのと確率的にはそう変わらない。
君は知らないかもしれないが、情報統合思念体のお人形さんとよろしくやってるし。
むしろ問題は…」
佐々木「どうなるというのか?」
藤原「奴の能力に関する、周防九曜というより天蓋領域の解釈が正しい、という仮定のもとでだが。
実は橘達の解釈とは真っ向から対立するのだが。
ところで彼等の解釈は覚えているかね。」
佐々木「キョンは『涼宮ハルヒの世界改変能力』の鍵となる、と言っていた。」
藤原「そう。橘達だけじゃなく東高校の未来人、超能力者、宇宙人つまり情報統合思念体もその解釈だ。
だが違うかもしれない」
佐々木「九曜さんの解釈はどうなんだ」
藤原「涼宮ハルヒと同等の世界改変能力者」
佐々木「橘さんにはそれを聞いていないが」
藤原「橘はヘタレなので伝えていない。それから、この話はヘタレの橘には秘密だ」
佐々木「橘さんの解釈では涼宮ハルヒと同等なのは私だということだったが」
藤原「君は世界改変の才能を持ちながらその能力を与えられなかった者だ。
九曜さんの伝によると、今の君にも非常に弱いながらも彼女と同じ能力がある。
だが、奴は君とは違う。その能力のレベルが」
佐々木「信じられないな。だとしたら今頃はキョンの望む世界になっていてもおかしくないが」
藤原「君は奴の望む世界がどんな種類かは、知っているか?」
いつか佐々木さんがエンターテイメント症候群と言って馬鹿にしたときの話だ。
佐々木「確か、非現実的世界の主人公になって、向こうの世界の女の子にモテモテになる、という。え?ということは」
藤原「それが確かなら、ほぼその通りになっている、という解釈もできる。実際非現実的世界の主人公になっているし、モテモテだし」
佐々木さんは不機嫌になっている。
佐々木「ということは、やはり巨乳の未来人とショートカットの宇宙人はキョンに恋しているのか?」
藤原「まあ、そう言って間違いじゃない。ここら辺は橘の組織とその敵対勢力の情報だが」
藤原「どうした、佐々木。急に不機嫌になって何かブツブツ言って」
佐々木「いや、すまん。しかし、キョンの今の恋人は涼宮ハルヒじゃないのか?」
藤原「周囲が恋人どうしと見ているのは確かだが。
奴が涼宮ハルヒと付き合っている、という自覚を持っているかは疑問だな。
それは、君の時も同じだったと聞いているが」
佐々木「ぐ、そうだった。だが、涼宮ハルヒの方はどうなんだ」
藤原「さあな、橘達によれば付き合っているつもりになっている様子だ。ということだが
案外どうでもよい三下扱いかもしれんな。
この時代の言葉でミツグ君とかアッシー君とか言う奴じゃないのかな。
不謹慎かもしれないが、その方が面白いと個人的には思う。
どちらにせよ正式には告白していない」
佐々木「それで、彼女達とはどこまで進んだんだ」
藤原「それは橘にでも聞いてくれ。俺達は興味が無いので詳しく聞いてない」
藤原「話がだいぶ脱線したが、そろそろ話を進めるぞ」
佐々木「すまん、どこまで話したっけ」
藤原「九曜情報では奴は涼宮ハルヒと同等の世界改変能力者」
佐々木「そうだった。」
藤原「そして、奴を鍵や触媒だとこれまで考えていた反応は、中和反応や相加反応と呼ぶべきものだと」
佐々木「鍵の場合とどう違うのか。
たかだか、一個人が不自然にモテモテになるだけじゃないか。」
藤原「つまり、橘の言葉で言う神が、我々の言葉で言う時空の歪がふたついるということ。
君が神という言葉が良いのなら神という言葉を使うが。
鍵は暴走しないが、二人目の神は暴走する可能性がある。
だが、二人の神がうまく均衡しており、互いに能力を相殺すれば、神のきまぐれによる世界改変が実質上起こらない。
現在は均衡状態に近い。」
佐々木「それをキョンは知っているのか」
藤原「知らせない方が良い。この能力は意識することにより本来の力が引き出せると思われるから。
だが、すでに手遅れかもしれない。
奴は涼宮ハルヒと違って頭が良いし、他人が何を考えているかを予想する能力もあるし、発想も柔軟だから。
それに、涼宮ハルヒという世界改変能力者の存在を知っている。だから、じきに気付く可能性が高い。」
佐々木「涼宮ハルヒに他人の気持ちを思いやる心が欠けていることは聞いている。
だが、涼宮ハルヒは学校の成績が良いと聞いている。頭は涼宮ハルヒの方が良いのでは」
藤原「それは涼宮ハルヒの能力によるもので、本来の知能や推理能力は奴の方がはるかに高い。
涼宮ハルヒの学業成績の良さは、彼女の能力によりずっとカンニングのようなものを行っているから。というのが我々の解釈だ」
佐々木「私やキョンも、そのカンニングみたいなものを行っている、と言えるのか。」
藤原「詳しくは禁則だが、奴や君の場合は今のところ無い、と言える」
佐々木「女の子の気持ちに気付かないキョンの鈍さから考えて、能力に気付かない可能性もあるのでは」
藤原「橘の対抗組織の情報からは、奴は気付いていないふりをしている、というのが一般的だが
君の解釈は違うのか」
佐々木「いや、僕もキョンは気付いていないふりをしている、と思う。
そうすると、能力についても気付いていないふりをする可能性がある」
藤原「そうだな、すでに気付いているのかも。そうなると、対処無しだが。」
佐々木「しかし、どうやって九曜さんはキョンの能力を調べた」
藤原「何でも、雪山の閉鎖空間に閉じ込めたらしい」
佐々木「閉鎖空間?」
藤原「密室と同じ意味で、誰も入れず誰も出れない空間のことだ」
佐々木「ずいぶんひどいな」
藤原「俺もそう思う」
佐々木「そして、キョンの能力は涼宮ハルヒの能力と、強さまで同じなのか?」
藤原「九曜さんに聞いても今のところ判らないらしい。
だが最低でも涼宮ハルヒの10分の1の潜在能力があるらしい。
奴は涼宮ハルヒと異なり、強い願いを持っていなかったので、今まで発現しなかったと考えられる。」
佐々木「最高ではどれくらいだ」
九曜「――――最高では―――涼宮……ハルヒの―――100倍」
佐々木「うわ、九曜さん。何時の間に」
藤原「お帰りなさい。九曜さん」
佐々木「九曜さん。本当に100倍なんですか」
九曜「――――100倍――――」
佐々木「九曜さん。100倍は10倍の10倍で合ってますね?」
九曜「――――10倍の――――10倍――――」
佐々木「今までどこにいました?」
九曜「――――ユキ――――女の子――――」
佐々木「雪女?」
藤原「長門有希というショートカットの宇宙人の所に行っていたらしい。」
貴緑「追加のご注文いかがですか」
佐々木「びっくりした、何時の間に」
九曜「――――お友達――――」
九曜さんは貴緑さんの手首をつかむ。視線を合わせないので不気味だ
貴緑「失礼ですがお客さん。お放しいただけますか。」
九曜さんは貴緑さんの手首をゆっくり放す。
藤原「九曜さんはあんたと友達になりたいらしい」
と、藤原は不気味な笑みを浮かべながら言った。
貴緑「それでご注文は」
佐々木「良いです。ありがとう」
藤原「レモンティー二つ」
貴緑「かしこまりました、そちらは」
九曜「――――レモンティー二つ――――レモンティー二つ――――」
貴緑「合計でレモンティー六つですね」
藤原「いや、そうじゃなくて」
貴緑「かしこまりました。すぐお持ちいたします。」
藤原「いや、そうじゃなくて。待ってくれ」
佐々木「彼女はキョンの上級生だったな」
藤原「そうだ」
佐々木「涼宮ハルヒの関係者か?」
藤原「そうだ」
佐々木「人間なのか?」
藤原「長門というショートカットと同類の宇宙人だ」
佐々木「彼女はキョンのことをどう思っているんだ」
藤原「さあな、本人に聞いた方が早いんじゃないのか」
貴緑「お待ちどうさま。レモンティー六つです」
げ、早い
佐々木「あなたは、お名前は、そのー、キョンとは」
貴緑「貴緑です。学校の方にはアルバイトのこと内緒にして下さいね」
佐々木「それは判りましたが、そのー」
貴緑「もうすぐお休みなのでその時話しましょう」
気まずい沈黙が続く
貴緑「お待たせしました」
佐々木「いえ、それほどは。」
九曜「――――お友達――――」
貴緑「ゴリャー胸を掴むんじゃない。このポンコツ」
佐々木「失礼ですが、あなたは長門さんと同類の宇宙人ですか?」
貴緑「まあ、そんなところですね。あ、皆には内緒ですよ。」
佐々木「あなたとキョンの関係は何なのですか?」
貴緑「同じ高校の上級生と下級生」
佐々木「それだけの関係ですか?」
貴緑「そこら辺はご想像にお任せしますわ」
佐々木「非常に聞きにくいことですが、あなた方と地球人で結婚というか、子供を作ることは可能なのですか?」
貴緑「それは」
佐々木&藤原「それは」
貴緑「禁則事項」
藤原「そんなに元恋人が気になるんなら、連絡入れれば良かったのだ。
一年も連絡入れずに放っておかずに」
佐々木「今は後悔している」
そう言った佐々木さんは不意に泣き出した。
藤原「どうした、しっかりしろ」
キョンが入院した頃の僕は、とりあえずの毎日を過ごしていた
過去を振り返れば息がつまって溺れそうな気分で、
家路を急ぐ人に紛れて歩き、記憶に蘇る君を想った
あの頃隠してた不安、今は涙を隠すことができない
あの頃のキョンの涙の理由が今更わかる。キョンは僕と別れたくなかったんだ
再び会えた時、キョンは雲を見て笑っていた。出会えた日と同じように
中学時代は終ることも始まることも、考えはしなかった
かじかんだ手を重ねた朝、陽だまりの教室での他愛のない会話
無邪気に笑って伸びた影を一つにした夕暮れ、星空のバス停
出会いの春、灼熱の夏、落ち葉の秋、木枯らしの冬
積み上げた思い出をキョンは今も覚えてますか?
僕は、いっしょに北高に行こう、という約束を破った
その僕なのに今もキョンを求めている、変わらない記憶と共に
僕がキョンにしてあげられることは何も無いのだろうか
九曜「――――ボンジー――――泣かした――――」
藤原「藤原だって何度言わせるんじゃ」
九曜「――――ボンジー――――お仕置――――」
藤原「やめてそれは、癖になるから、やめて」
貴緑「貴方達、いつもこんなことをしているの?」
佐々木「もっと早くにキョンに連絡していれば、キョンと同じ高校に行ってれば、卒業式の日、キョンに告白していれば」
藤原「お前が奴を好きなのはわかった。
でも過去を悔やむより、これから何をするかが重要じゃないのか?」
佐々木「タイムマシン」
藤原「え?」
佐々木「タイムマシン使わせてくれ」
藤原「もしかして、過去をやり直すために?そんなつまらんことでか?
できないにきまっているだろうが」
佐々木「だったら教えてくれ。キョンは誰と結婚するんだ。知っているんだろ」
藤原「突然何を言い出すんだ」
佐々木「教えてくれ」
藤原「禁則なので教えられない」
しばらく佐々木さんは泣き止まなかった。
九曜「――――あなたの――――瞳は――――とても――――きれいね……」
藤原「九曜さんが慰めてくれているらしい」
貴緑「そんな色恋沙汰は置いといて、もっと重要なことを話しましょう、未来人さん。
えーと、ポンジーさんだっけ?」
藤原「藤原だ」
ようやく佐々木さんは泣き止む
佐々木「君の言うとおり過去を悔やむのは止めにするよ」
藤原「それが良い。俺もできることは手伝うから」
貴緑「あたしも」
九曜「――――わたしも――――」
佐々木「貴方は涼宮さんサイドじゃなかったのか」
貴緑「あたしはあたしの考えで行動する。」
佐々木「藤原、いくつか聞いていいか」
藤原「質問ならいくらでも。答えられるかどうかはわからないが」
佐々木「もしかして、君の世界と巨乳女の世界でキョンの結婚相手は違うのか」
藤原「違っててもおかしくない。それ以上は禁則だ。」
佐々木「僕がいつ死ぬのかわかるか」
藤原「それも禁則だ」
佐々木「タイムマシンはいつできるのか」
藤原「教えられない」
佐々木「君の世界と巨乳女の世界でタイムマシンのできる時期は違うのか」
藤原「禁則事項」
佐々木「君の世界と巨乳女の世界でタイムマシンの原理は違うのか」
藤原「奴の世界でのタイムマシンの原理は知らないが、知っていても多分禁則事項だ」
貴緑「多分原理は同じだったはず。名称は違うけど」
藤原「そうだったのか、って禁則事項なのに話さないで下さい」
佐々木「もしかして禁則事項というのは放送禁止用語の類か」
その冗談に未来人藤原は笑い出した。よほど笑いに飢えていたのだろうか。
つられて笑う佐々木さんと貴緑さん。いつしか涙は消えていた。
佐々木「君の世界と巨乳女の世界は違う世界なのか?
それとも同じ世界の違う階級出身なのか?」
藤原「違う世界らしいな。どこまで信用できるのかは怪しいが」
佐々木「君の未来と巨乳女の未来は共存不可能なのか?」
藤原「どうもそうらしい。分岐点はかなり先らしいが。
おっと、これ以上は禁則だ」
佐々木「貴緑さん達と九曜さんは」
貴緑「共存できるように頑張っているのよ」
九曜「――――お友達――――」
佐々木「橘さんの組織と対抗組織は共存可能だよね」
藤原「全く奴らは何で喧嘩しているんだろうか」
貴緑「本題に入りましょう、ポンジーさん」
藤原「藤原だ」
貴緑「ポンジーさん、さっきから聞いていれば嘘八百並べて。
キョン君が世界改変能力者なら情報フレアが観察されるはずじゃないの」
藤原「藤原だと言ったろうが」
佐々木「盗聴したのですか」
貴緑「ポンジーさん達が聞いて良いって言ったので盗聴じゃないですわ」
藤原「誰がポンジーだ。藤原だと言ったろうが」
藤原は泣きそうになった。
識別信号ならポンジーでも良いはずなのに、そんなに藤原の名前に愛着あったのか。
藤原「世界改変時に情報フレアが観察されるのは涼宮ハルヒに特異的な現象であり、他の者には当てはまらない」
貴緑「何を根拠に」
藤原「涼宮ハルヒの願いを考えれば当たり前のことだ。
彼女は宇宙人達と友達になりたいのだろ。だから宇宙人を呼ぶ怪電波を発している」
貴緑「なるほどね。気付かなかったですわ。」
藤原「九曜さん、あなたが頼んだレモンティー。全然飲んでないじゃないですか」
貴緑「あ、私が飲みます。紅茶好きなんです私」
藤原「結局また俺におごらせることになるのか」
佐々木「君達はよく会うのか」
藤原「最近よく情報交換する」
佐々木「藤原さんと九曜さんの関係は?」
藤原「実は同居しているんだ。おかげで彼女との会話がだいぶ成り立つようになった。」
はあ、お幸せなことです。かな?
佐々木「藤原さんは橘さんの言う能力の移植には反対なのか?」
藤原「我々にとってどっちでも同じだ。
君の精神が安定しているので時空の歪が生まれない。というのは橘の伝だが、
我々はそれを信用する材料を持っていないのでね
やりたければご自由に、と言うしかない。」
佐々木「能力の移植など本当にできるのか?」
藤原「さあな、九曜さんに聞いてくれ。俺は何も知らん。」
佐々木「九曜さん、能力の移植は本当にできるのですか?」
九曜「――――できる――――」
佐々木「副作用は無いのですか?」
九曜「――――ある――――」
藤原「副作用があるらしいぞ。やっぱり止めておくか?」
貴緑「興味深いのですけど、どうやってやるのですか」
九曜「――――説明は……困難――――」
貴緑「能力の移植にキョン君が必要なのはどうしてですか」
九曜「――――彼の――――能力を――――利用――――」
貴緑「他に必要なものはあるのですか?」
九曜「――――ある――――でも――――手に入る――――」
必要な物の一つがキョン君家の猫だった。
(驚愕に続く)
最終更新:2007年08月17日 22:56