「自分が幽霊だ」と名乗る美少女に初めて会ったのは12月終わりのことだった。それは「自分は超能力者だ」と名乗る少女に会うだいぶ前のことだった。
いや、「幽霊と名乗る」は不正確で彼女は本当の幽霊だった、と思う。私の幻覚でなければ。
そう、何故か彼女は私にしか見えなかったのである。
彼女は彼のことをよく話してくれた。私がそれしか聞かなかったためであるが。
今回は彼女が話した「雨の日」の1シーケンス。最も多く、全部で256あったシーケンスの内192、ちょうど75%を占めたシーケンスについて述べたいと思う。
俺はその日、偉大なる団長様の命令があったので部室で使うストーブを運んだ。部室に帰ると長門一人が黙々と読書していた。
「長門、お前だけか」
「そう」
「ハルヒ達はどこにいるか知っているか?」
「知らない」
「そうか、ありがとう」
もしかして、長門はハルヒの場所を知っていて嘘をついているのか?まさかなー
俺は疲れていたのか、しばらくすると眠りはじめた。
目が覚めると長門はいなくてハルヒだけがいた。読みかけの本が置いてあった。俺の肩にかかっているのは、長門のジャケットか?
「おいハルヒ、顔が赤いぞ」
「うるさいわね。そんなことより、目が覚めたのならすぐ帰るわよ」
「いつの間にか雨が降ってるぞ」
「大丈夫、職員室からパクってきたのがあるから」
「って一本だけか。俺はどうするんだ。職員室には他に無かったのか」
俺はもう一本パクるために職員室に行った。
「待ちなさいよ。一本だけしか無かったのよ」
「本当なのか?あ、本当だ」
(え?さっきは何本かあったのに?)
「何か言ったか、ハルヒ。 そうだ教室だ」
「待ちなさいよ」
「谷口の机の中の折り畳み傘を使わせてもらおう。谷口には明日何か奢るということで」
(何でそんなに行動的なの。それはそうと谷口は明日死刑よね)
「おいハルヒ、帰るぞ」
途中で長門に会ったので三人で帰った。ハルヒは何故か不機嫌そうだった。
おい、ストーブを運んだ礼も無しか。
不機嫌なのは長門も同じなのか?宇宙人の表情は読みきれん。
ハルヒと長門と別れた後、俺は不意に中学時代の親友のことを思い出した。その中学時代の親友にばったり出会った。
「やあ、偶然だな」
「キョン、久しぶり」
「元気そうだな」
「そうでもないよ、毎日忙しくて。ところで傘を持ってないので入れてくれないか」
「それは良いが、彼氏に誤解されないか」
「残念ながら誤解されて困るような相手がいなくてね。君の方はどうかな」
「俺の方も、まだ恋人ができていないな。」
なんだ親友、その疑い深そうな目は。
というわけで、親友を家まで送って行くことになった。
「君と二人で歩くのも久しぶりだね」
「あの頃は楽しかったな」
「それは僕の台詞さ、君の方は僕のことなど完全に忘れていたのじゃないのかね?君の噂は有名だよ」
「すまん」
SOS団の悪名が既に他の高校にも流れていたのか。うーん。
「そういえば25までに両方とも結婚相手がいなかったら結婚しよう、という約束してたね」
「そういやそんな約束したな。まだ有効だっけ?」
「そうじゃないと保険の意味がないじゃないか」くつくつ
「もしその時が来たらお願いするよ」
そんな話をしながら、俺達は土曜日、会う約束をして、そして別れた。谷口にも電話しないと。
「キョン、今度の土曜日は不思議探索するわよ。9時集合ね」
「悪い、その日は中学時代の友人に会うんだ」
「あんたSOS団の活動を何と思ってるの」
「ただの暇つぶしだろ」
「な!宇宙人と未来人と超能力者を見つけ出すという崇高な」
「わかった、わかった。でもたまには中学の友達と友好を深めても良いだろう。
中学時代の友達がいないお前にはわからないだろうが。」
げ、怒ってる
「すまん言い過ぎた」
「その人って男、女?」
「どっちでも良いだろう。気になるのか?」
「へー、まあ良いけど」
なんだハルヒ、その疑い深そうな目は。俺と佐々木の間には特別なものは何もないぞ。
「なーキョン、お前昨日俺の傘借りたよな」
「そうだサンキュー、メロンパンで良いか」
「いやトンカツ定食で。いやそれは良いのだが」
「何だよ」
「キョンあのな。友人として忠告しておくが」
「だから何だよ」
「二股だけはやめておけよ」
俺がいつ二股かけたんだ。そんなうらやましい経験ないぞ。
土曜日当日待ち合わせた俺達。
「お前本当に大丈夫か、二人きりで会って彼氏に誤解されたり」
「そんな心配するということは、君には誤解されたら困る彼女がいるのか?」
「そういうわけじゃないが」
俺の一押しは朝比奈さんだが、彼女には帰るべき場所があり、この時代の誰とも付き合うことができない。だから気にすべき相手などいないのだよ
俺はハルヒ達が途中から後をつけているのに全く気付かなかった。
(あれはキョンの元彼女の佐々木さんだよ)
(俺と国木田まで駆り出されてスパイごっこか。勘弁しろよ)
(谷口君が口を滑らすからだよ)
(キョンたらあんなに親しそうに。何が「女の子とお付き合いしたことないよ」だ)
(涼宮さん落ち着いて下さい)
(あ、キョン君また手を握った)
(・・・・・・ノイズ発生・・・・・・)
(涼宮さん達だな。あれで隠れているつもりだな。よーしそれなら)
「この前も確認したけれど、あの結婚の約束だけどね。僕としては25まで待たなくても良いような気がするのだが」
「20くらいでか?それは早すぎるような」
「まあ、それについては後で議論するとして」
(何?結婚ですってー!怒)
(お二人はもう婚約なさってたのですか?)
「ちょっと目をつぶってくれないか」
「こうか?」
俺が目をつぶると不意に佐々木の唇が重なってきた。
「キョーン!!」我が団長殿が鬼の様な形相でやってくる。
「どういうつもりよ、キョン」
「いやどういうつもりって言われても(どういうつもりだよ)」
佐々木は俺の方を向いて言う
「僕はキョンと今すぐにでも結婚したいと思っている。その気持ちに偽りは無い」
「すまん佐々木。お前が俺をそんなに思っていたなんて。今まで気付かなかった俺を許してくれ」
「何二人の世界に入っているのよ」
涼宮ハルヒのストレスが臨界値を超えました。
涼宮ハルヒはフリーズしました。再起動します。
「ちょっと待って朝倉さん。私はそんな恥ずかしくて、うらやましい記憶持ってないのですけど」
「だから涼宮ハルヒが時間を巻き戻して、あの日を無かったことにしたのよ。夏休みの時と同じね」
「私にはそんな行動力無いのですけど」
「あの時は行動力あったわね。勇気を出して行動すれば彼はOKしてくれたわ。100%じゃないけれど」
明日、勇気を出して行動してみよう。きっとうまくいく。
「残りのシーケンスどうなったか聞かないの?面白いのだけれど。ねー」
(勇気を出すのは良いけれど。また巻き戻しかな?面白いから良いけれど。この日、この話をするのも30回目か)
(終わり)
最終更新:2013年02月03日 15:29