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くろがねの君主と歴史の聖獣 その七

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匿名ユーザー

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「・・・・・早く来過ぎたか。」
静かな寺子屋の校庭で、ポツリとリゾットが呟いた。
どうやら彼が寺子屋についたのは、腕の時計で12時前。お昼休みの前である。
静かな教室からは、慧音の声だけが聞こえる。
通常、寺子屋は午前中で授業が終わるのだが、時折午後にも授業を行うらしい。
そしてリゾットは、その授業を任されていたのだ。
ついでにお昼も食べようと持ってきたからいいのだが、慧音もいないのに勝手に上がるわけには行かない。
そして、ふとリゾットが気づいたのは校庭に転がるサッカーボールだった。
そういえば、以前幻想郷でサッカーが流行っていたと言う話を聞いた事がある
「懐かしいな・・・・・。」
イタリアではサッカーはメジャーなスポーツである。
もちろん、リゾットも昔はサッカー少年であり、暇さえあれば友人達とボールを蹴っていた。
キャプテ○翼だって、全巻揃えたものだ。
「よっと・・・・。」
リゾットはふと、サッカーボールを蹴り上げて、リフティングを試みる。
だが、強く蹴り過ぎたのか、ボールはあさっての方向へ飛んでいく。
「む・・・・・。」
そして、しばらくリゾットは、リフティングの練習を続ける。
すると、感を取り戻してきたのか、リゾットがぽんぽんと連続でリフティングできるようになっていた。
「よっ。」
そしてさらには、ヘディングでリフティングまで始めた。
これが出来た事で小学生の頃はクラスの皆から多いに尊敬されたものである。
ただ、これの練習にかまけすぎて成績がおち、家の手伝いもサボったため大いに怒られたのは言うまでもない。
実に彼らしくないエピソードだが、何せまだ自分が将来こんな事になるとは欠片も思っていなかった頃である。
ここに通う子供達同様、実に能天気なものだった。
そして、カーン、カーンと授業の終わりを告げる鐘が鳴る。
それにはっとして、リゾットはリフティングをやめた。
すっかり夢中になってしまっていたらしい。
一度集中したら中々他に気が回らないことが、自分の悪い癖である。
そんな事を考えながらリゾットはボールを片付けようとする・・・・が。
そんなリゾットの服を、後ろから何者かがひっぱる。
「ん?」
後ろを振り向くと、そこにはキラキラと目を輝かせた数人の少年達がいた。
「先生スゲーのな!!あんなの俺見たことねーぞ!」
「僕も僕も!!」
「ねーねー!教えて!教えて!!」
そう言って子供達は目をキラキラと輝かせて、リゾットに教えを請う。
どうやら、教室の窓から自分を見ていたらしい。よくよそ見をしていて慧音に怒られなかったものだ。
「あ・・・・あぁ。」
リゾットは戸惑いながらも、子供達にリフティングのコツを教えることにした。
しかし、彼にはうまく教えられているのか解らない。
何せ授業だけでもう精神的に参っているのに、こんな近距離で、しかもベタベタ触ってくる。
内心テンパりまくりであり、暗殺チームのメンバーが見れば、「リゾットがあんなに慌ててるの滅多にないな。」と写メされていただろう。
「先生!俺にも教えて!!」
「私も!!」
気がつけば先ほどの三人以外の子供達も集まってきてすっかり昼休みはサッカー教室となっていた。


そして、昼休みが終わる後、校庭のベンチにはすっかり燃え尽きたリゾットが残された。
「り・・・・リゾット・・・・・。大丈夫ですか?」
真白になったリゾットに、そーっと慧音は近づく。
「だ・・・・大丈夫だ。」
よろよろと、リゾットは立ち上がる。
疲労のせいでスタンドを制御出来ていないのか、その眼は普段の赤と黒に戻っていた。
だが、すぐに精神を集中させ、彼は目を元に戻す。
「すぐに行こう。授業に間に合わない。」
そう言って、リゾットは歩き出した。
「本当に大丈夫ですか?何なら休みにしても・・・・。」
「大丈夫だ。」
心配そうに話す慧音にリゾットは何事も無かったかのように振舞う。
実際、アレくらいの心労でまいっていては、暗殺者などやっていられないのだ。

先に進むリゾットの背中を、慧音は心配そうに眺めていた。
そして授業も終わり、日は暮れかかっていた。
生徒達は以前よりもリゾットに明るい笑顔を向けて、学校を後にする。
「じゃあね先生!また明日もサッカー教えてね!」
「あぁ、またな。最近妙な妖怪が出るらしいから、皆で帰るんだぞ。」
リゾットのサッカー教室がえらくお気に召したのか、子供達は次から次にそのことについて話をかけて来る。
リゾットの注意もまともに聞いているかどうかだ・・・。
「・・・・今度あいつらにもサッカーが出来るか聞いてみるか。」
大半が波乱万丈な人生を送っていた暗殺チームだが、何人かは子供時代はまともにすごせた奴もいる。
むしろ、チームの皆でサッカーなんて出来たら楽しそうだ。
「・・・・・・・こんな事、考えた事も無かったな・・・・。」
チームのメンバーの事を、リゾットは家族のように考えていたがそれでもまさかそんな事をするなんて、考えてもいなかった。
人殺しに明け暮れる日々だったので、当然といっては当然だが。
そんな人殺しに明け暮れ、部下を無駄死にさせ、それでもボスを倒せなかった自分が穏やかにこんな生活をしている。
日本の死後には、「生まれ変わる」と言う概念がある。
死んだ後、地獄に落ちないのだ。生まれ変わった後の自分は、きっと今より壮絶な人生を送るのだろう。
いや、人になど決して生まれ変われないだろう。
「リゾット?」
いつの間にか隣に来ていた慧音に話しかけられ、リゾットはハッとする。
「す・・すまない。考えこんでしまったようだ。」
「いけない癖ですね。怒られませんか?」
少しぷりぷりと怒りながら、慧音はリゾットに話しかける。
「・・・・よく注意される。直そうとも努力しているんだが・・・・。」
最も、リゾットが思考の海に沈むのは日常生活の誰もそばにいない時だけなのであまり困らないので直せないのが現状である。
しかも子供の時から癖なので、なかなか直らないのだ。
「実は今日の授業の内容について質問があるのですが・・・この後時間は空いていますか?」
「あぁ、大丈夫だ。ただ、帰りが遅くなると同居人に伝えてからでいいだろうか?」
「解りました。」
そしてリゾットはポケットから携帯電話を取り出し、電話をかける。
『pront?』
すると、ソルベが電話に出た。
どうやらジェラートはまだ寝込んでいるらしい。
「あぁ、ソルベか?皆はどうした。」
『あ・・あぁ、まだちょっくら戻ってねぇんだ。映姫さま相当怒ってたらしいからな。』
「まだ戻っていない・・・?解った。今日は少し遅くなるから、その事を皆に伝えておいてくれ。」
『解った。飯はどうする?』
「適当に済ませてくれればいい。俺は自分で何とかする。」
『りょーかい。じゃあな。』
何やら慌てているのか、ソルベは手短に電話を切ってしまった。
「・・・一体どうしたんだ?ジェラートが吐いたのか?」
リゾットはその様子を疑問に思いつつも携帯電話をポケットにしまう。
「・・・・便利ですね。外の世界の道具は。」
感心したように、慧音が呟く。
「映姫さまに出来るだけ幻想郷の住人の前では使わないように言われてるんだが・・・、まぁ、あなたなら大丈夫だろう。」
要するに、幻想郷の住人が外の世界に出来るだけ興味を持たないように、と言うことだろう。
「あまりに便利な道具は人を慢心させ、油断させ、退化させる。」
もっとも、これは道具だけではないが、とリゾットは付け加えた。
最強に近いスタンド能力を持っていたのに油断した結果あっさり死んでしまった部下の事を考えながらだ。
「なるほど・・・・・・・・。」
「実際、これは色々と機能がつき過ぎて使いにくい事もあるしな。」
世間話をしながら、二人は静かに教室を出る。
すでに空は、夕日がかなり沈みかけていた。

「・・・・どうすっかなー。多分あの椛の様子だと俺達狙われるっぽいしなー。」
携帯を閉じたソルベは、ぽつり、と呟いた。
彼は洋館二階のバルコニーで、暗くなる空を見ながらタバコを吸っている。
彼の目は、どろどろに溶かされたジェラートの部屋の壁が見えた。
あまりのショックにソルベの思考は、冷静そのものだった。
「ま、考えても仕方が無いか。」
そう言って家の中に入り、自室のコレクション入れを開ける。
そこには戦闘向けスタンドではない故に、重火器の扱いや裏での顔の広さは相当なものである。
対妖怪用の特殊ハイドラショック弾に、猛獣用の麻酔弾。
拳銃だけでなく、アサルトライフルも必要だろう。
さらには大型獣用の麻酔銃も用意した。
「足りるかなー・・・。多分、この調子だと、プロシュート達も巻き込まれてんな。ちょっと余分に持ってってやるか。」
外から、聞こえてくる、無数のカラスや狼の声、無数の殺気。
どうやらこの屋敷から出るのも一苦労しそうだ。
だが、久しぶりの殺し合い。相手も殺しに掛かってくるのだから問題はない、楽しもう。
「ま、久しぶりの化け物退治、派手に行くか!!」
そう言ってソルベは、どう見ても幻想郷に似つかわしくない恰好で、窓から外へ飛び出した。

「ビーチボーイッ!!」
「ぐあっ?!」
ペッシのスタンドの鈎針を翼に突き刺され、地上に引き摺り下ろさせる。
「兄貴!!」
「おう!!」
引き摺り下ろされたカラス天狗の青年に向かって、プロシュートが拳を向ける。
もちろん、彼に人間以上の力はなく、妖怪に効くはずもない。
だが、彼の傍に起つ彼の精神の具現。
「グレイトフル・デッド!!」
不可視の硬く強力な拳が、天狗の腹を打ち抜く。
それと同時に、天狗の青年は、一瞬で老人へと変化した。
ドサッという音と共に、干物のようになった天狗は地面に落ちる。
「これで全部かペッシ!!」
「へい兄貴!俺達を追ってきてる奴はこれで全部ですぜ!!」
それを聞いて、プロシュートはグレイトフルデッドを消す。
彼らはバラバラになっての調査の途中、突然無数の妖怪達に襲われた。
プロシュートはペッシにあたりの警戒を任せ、仲間に連絡を取ろうと携帯電話を操作する
だが、全員襲われているのか、誰一人電話には出なかった。
とりあえず短いメールを打ち、送信する。
「くそっ・・・!!こんなに寒くちゃグレイトフル・デッドもきかねぇしよ・・・。」
「他の皆は大丈夫ですかね?」
プロシュートにペッシが心配そうに尋ねる。
すると、プロシュートは深呼吸をして、ペッシの方を向いた。
「・・・・・・・仕方がねぇ、ペッシ。殺る気で行くぞ。」
「?!」
そう言ってプロシュートは懐から拳銃を取り出し、安全装置を外す。
その言葉を聴いて、ペッシは息を呑んだ。
「今更あと何十人殺したって今更俺達はどうしようもない悪党だ。だったらここで意地でも生き残るぞ。」
プロシュートはペッシに視線を向ける。
その瞳は、彼にやれるか?と尋ねていた。
以前の彼だったら怯えてプロシュートに泣きついていただろう。
「・・・はい!!」
だが、ペッシはもうあの頃の彼ではない。
ペッシはしっかりとした表情で、ハッキリした声で、プロシュートに答えた。

「あー、もう弾幕勝負じゃ拉致があかないね。ベイビィ・フェイスもう一体くらい作っとくべきだったなぁ。」
レティの影に隠れながら、メローネがそう呟いた。
彼らは、空からカラス天狗に、地上からは山伏天狗や白狼天狗に襲われていた。
メローネに大して戦闘力がないのを把握しているのか、激しい風の攻撃で彼らをしとめようとする。
それに対抗する為、レティは粉雪を降らせ風の動きを把握する。
だが、それでもメローネは他人事のようにその様子を見ていた。
「じゃあどうするのよ?!ベイビィ・フェイスは間に合わないし、ギアッチョ達とも連絡がつかないんでしょ!!」
そんなメローネに、半ばキレかけながらレティは彼を庇う。
すると、連続する破裂音と共にレティ達を襲っていた天狗の翼が突然何かに撃ち抜かれる。
天狗は悲鳴を上げて、地面に落ちた。
「え・・・?」
レティが驚いて後ろを振り向くとそこにはオートマチック拳銃を構えて、平然としているメローネがいた。
「うん、だから殺しちゃおうぜ。レティって昔の人だからこう言うの割かし慣れてるでしょ。」
メローネはそう言ってくるくると拳銃を回した。
メローネが無力な物と思っていた天狗達は、外の兵器の威力に驚いているようだ。
「あー、寒い寒い。とっとと皆殺しにして皆探し出して帰ろう。ギアッチョの位置はレティ解るんだよね、使い魔って便利ー。」
まるでコンビニから出てきた瞬間のような台詞を言って、メローネは再び拳銃の標準を敵へと向ける。
「んー、やっぱ致命傷に当てるのは少し難しいかな。反動も大きいしこれ。レティ、俺は空の天狗狙えるだけ狙うから、地上よろしく。
 レティって昔の神様だから、血なまぐさいのは慣れっこだよね?」
「た・・・確かにそうだけど・・、殺して上司に怒られないの?」
メローネの言葉に、少し戸惑いながら、レティがメローネに質問する。
「大丈夫大丈夫!映姫さまに出された条件は『俺達が死なない』だけだからさ!!」
そう言ってメローネは、笑いながら、鼻歌さえ歌ってレティに答えた。
次の瞬間、メローネは空高く舞い上がる。
リボルバーの反動を計算しながら、敵の風の攻撃を避ける。
「あははははは!!これで二挺拳銃で剣を持ってたら、ゲームの主人公そのものなのになぁ!!
そして西部劇のように、クルクルと拳銃を回して、敵に撃ち込む。
既に、敵は外の世界の武器の威力ではなく、笑いながら殺そうとしてくるメローネに、恐怖を覚え始めていた。
「まったく、毒蛇が襲い掛かってくるーなんてアクシデントはともかく、突然何かに襲い掛かられるなんて結構日常茶飯事だったぜ?」
メローネは相手の妖怪たちを笑いながら、カートリッジをリロードする。
「人殺しをするなら、きちんと敵の状態を調べておかなくちゃ。あんたらの健康状態は良好かい?」
そう言いながらメローネは目の前にいる妖怪達を眺める。
男ばかりと思っていたが、どうやら何人か女もいるようだ。
それを見て、メローネは舌なめずりをする。
「あぁ、よかった。『母親』にはしばらく困りそうにないなぁ。」

「覚悟しろっ!!幻想郷を乱す悪漢め!!」
そう言って、ギアッチョに襲い掛かってきたのは年若い白狼天狗である。
ギアッチョの周りには、無数の天狗が、彼の周りを取り囲んでいた。
巨大な刀を振り下ろし、ギアッチョを切り裂かんとす。
「クソッ!!」
ギアッチョはスタンドを出現させた右手で攻撃を受け止め、弾く。
そしてそのまま地面を滑走して敵の間を縫って移動する。
だが、敵は弾幕を撃ってギアッチョを攻撃しようとする。
「チッ・・・!!」
ギアッチョは舌打ちをして、仕方が無く狭い木々の間に入り込んだ。
(やばいな・・・・、この間々だと追い込まれちまう・・・・・。アレを使うか・・・・。)
「追え!!奴はまだ弾幕勝負には慣れていない!!凍った植物を追っていけ!!」
司令塔らしき人物が、部下にそう指示をする。
それを聞いて、ギアッチョは最終手段を取ることにした。
(使わせてもらうぜ・・・、レティ。)
そう言ってギアッチョは、積もった雪のような輝きを持つカードを懐から取り出す。
「寒符【コールドスナップ】!!」
ギアッチョはそう言って白いカードを発動させる。
スペルカードとは、一種のプログラムである。
ある一定の技を札にプログラムして、そこにエネルギーを入れることで技を発動させる。
本来、それは美しさを競うための攻撃で、負傷はほんの少ししかしない。
しかし、それは彼のスタンドの短い射程距離を庇うのには十分だった。
「っ?!」
ギアッチョを追っていた天狗たちは、突然吹いてきた冷たい風に目を閉じる。
そして、次の瞬間絶句した。
一瞬の間で森の木々は凍りつき、月明かりを反射し、冷たく輝いていた。
ギアッチョのホワイトアルバムのエネルギーを受けたスペルカードは、「寒さ」をより鋭くし、一瞬で周囲を凍らせてしまったのだ。
(これで何処行ったかわかんねえだろ。)
ギアッチョは心の中で敵に向かって呟きながら、スタンドを解除し、移動した痕跡を残さないようにおそるおそる森の中を飛んで移動していった。

「・・・くそっ!!見失ったか!!」
そう、河童と天狗の混合部隊の隊長を負かされた多少年老いた鴉天狗は呟く。
彼が見失ったのは、ホルマジオである。
姿を自由に小さく出来る彼は、あっという間に彼らの前から逃げてしまった。
一応、白狼天狗の鼻である程度は追いかけられたが途中で見失ってしまったのだ。
「仕方がない・・河童隊!!やれ!!」
「「はいっ!!」」
そう言って河童達は、自分達の力を発動させる。
彼らはその高い技術に隠れがちだが、水を自由自在に操ることが出来る。
近くの川の水を複数人の意識を集中させ、まるで津波のように高く高く立たせる。
これを一気に森に被せれば、自分達はともかく人形のようなホルマジオは元の大きさに戻らなくては溺死してしまうだろう。
「よし・・!!はな・・・・・っ?!」
放て、と命令しようとした天狗は、一瞬立ちくらみのような間隔を覚える。
他の天狗や河童達も同様の感覚を覚えたのか、彼らの身体が一瞬揺らぐ。
だが、すぐに気を持ち直し、身体を起こす。
「な・・なんだ?!敵の攻撃か・・・?!」
そう考えた彼らは、辺りを見渡した。
そこには、変わらず森の風景のみが広がっていたが・・・・・、何か、おかしかった。
だが、彼らには、その違和感は解らない。
「はぁ・・・・。」
突然、ため息が彼らの頭上から聞こえた。
「俺さ・・・、こう・・、プロシュートとか聞いてたら暗殺者が何言ってんだって怒られそうだけど・・・、スプラッタ系とかグロいの苦手なんだよな。」
一同が声のした方を見ると、長い黒髪を複数に結んだ、陰気な青年が木の枝に腰かけていた。
憂鬱そうな顔で、脚をぶらぶらと動かしながら、一同を見ている。
なにやらぶつぶつと、独り言のような事を呟いている、不気味な青年だった。
一同は彼を敵と見なし、攻撃しようとする。
だが、刀も、天狗の団扇も、河童の最新兵器も、彼らの手にはなかった。
「だからさ・・・、まぁこれをきっちりやって止めを刺さなかったから俺は死んだんだけど・・・。やりたくないなぁ・・・・。」
そう言うと、青年はんーと唸ってから、呟いた。
「あー、じゃあ天狗は・・・『翼』を許可しない事にするか。」
突然、彼らの足元で何かがキラリと光る。
「え・・・・・・・?」
そして、次の瞬間、天狗は突然、自分に背に生えていた翼が消滅した事に目を疑い。
「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁっ!!」」」」
身体の一部を失った痛みに、彼らはもだえ苦しむ。
そんな様子を見て、木の上の青年は、うわぁと声を上げる。
だからと言って、彼は決して容赦はしない。
「じゃー、河童は・・・・『爪』は許可しないでいいか。」
そして、彼の宣言の後、悲鳴の声がさらに重なる。
「うわー、マジで痛そう・・・・。」
その言葉とは裏腹に、青年の口にはサディスティックな笑みが浮かんでいた。
「おいおい・・・・、ちょっとノリすぎじゃねえのか?」
ポケットからひょこっと顔を出したのは、ホルマジオである。
サディスティックな笑みを浮かべる青年・・・・イルーゾォを呆れたように見ている。
「いやぁ、だって久しぶりに痛めつけてもいい敵だからさ。ついつい・・・・。それに妖怪って丈夫だから、これくらい再生できるだろ?」
「お前、ほんとスイッチ入るとサディストだよなぁ。ジェラートとかソルベといい勝負じゃねえか?」
「な・・・っ?!俺は別に快楽殺人なんてした事ねえよ!!毎回お仕事だから殺してたんですー!!」
痛みに苦しむ敵をよそに、彼らは雑談を繰り広げる。
「あ、ホルマジオ。そろそろ連絡を取れなくなった事に気がついた別の敵が来るんじゃないか?何か無線みたいので連絡しあってたんだろ?」
「お・・、じゃあ行って来るわ。」
「いってらっしゃーい。」
そう言ってイルーゾォは、鏡の外へホルマジオが出る事を許可する。
そして呻く妖怪達をよそに、イルーゾォは木の枝に横になる。
「あー・・・、アリスにはぜってぇ見せられないなー。」
そんなことを呟きながら、『鏡のイルーゾォ』は仲間が次の獲物を連れてくるのを待つことにした。

ジェラートは、森の中を必死に走っていた。
その左腕は、怪我を追っており、傷口を右手で押さえている。

「駄目だ駄目だ駄目だ・・・!!敵意を向けられただけだろ!!ちょっと怪我しただけだろ・・!!」

自分の身体に変化が起こったのは、最近だった。
地獄から、幻想郷に越してきて、また皆と馬鹿な事をやって、ソルベが傍にいて、最高だと思っていた。
だが、いけなかった。久々に現世の空気を・・・生きているということを感じてしまったのがいけなかったのだ。
自分の中で眠っていた『こいつ』は、ゆっくりと目を覚まし始めた。

「何で起きるんだよ・・・!!リゾットが頑張ってるときに・・・!!問題なんて起こしたくないのに!!」

それだけなら、問題なかった。生前は常に『こいつ』と一緒だったのだから。
だが、今は駄目だ。ここはあまりに、自分に危険が多い。その事を、『こいつ』は感じ取っている。
妖怪は、問題はない。何度か手合わせしたが、平均であの程度なら、『殺そう』と思えば殺せる。よっぽど強力な妖怪に危害を加えなければ攻撃されない。
問題は自分が殺し合いをしなくなる事、しなくては狂い『死んで』しまう事を一番、『こいつ』はそれが怖い。
自分が死ねば、『こいつ』も死ぬしかないのだから。
でも、自分は今の生活が気に入っていて、殺し合いをしなくても、楽しかったから、それでよかった。

頭が痛い、身体が熱い。

でも、これ以上傷つけられるわけにはいかない。
『こいつ』は臆病だ。俺の身体が少しでも傷つけば、すぐに直そうとする。
そのくせ、俺の身体に危害を加えなければ、自分の力を使おうともしない。
ソルベが目の前で殺されている時も、一切の力を貸そうとしなかったのだ。
だが、致命傷など負ってしまったら、『こいつ』は完全に目覚める。
そしたら自分の意思など関係ない、ただただ、暴れまわる。
その暴力に抗うものも、怯えるものも、そして自分の大切なものも関係なく、こいつは暴れ回ってしまう。

「来るなよ!!来るなよぉ!!」

ジェラートは頭を抱えて、必死に押さえ込もうとする。

自分の大好きな椛が、家を訪問してきたのは、気配でわかった。
彼女は、チーム以外で初めて出来た大切な人で、大好きだった。
そんな彼女が、ソルべに、そして自分に殺意を向けたのを自室にいながら自分は感じ取ってしまった。
そして、その明確な殺意と、自分の意思が揺らいだ隙に、『こいつ』は自分を侵食しはじめた。

敵が追いかけてきた、椛と同じ、白狼天狗だ。

彼は椛とは違う細身の日本刀を構え、ジェラートに向かってくる。

「来るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

白狼天狗の刀が、ジェラートを貫いた。

「・・・・・あっけないな。」
そう白狼天狗の青年は、呟いた。
彼は刀をジェラートの体から抜き、血をぬぐって鞘に収める。
人間など、こんな物だ。もろく、弱い。
幻想郷の妖怪達をたぶらかしていると言う、外の人間。
それを殺し、幻想郷の均衡を守るのが彼が上から命じられた使命だった。
たとえそれが閻魔様の部下であり、地獄行きが確定している事だとしても、彼は引き受けた。
彼は非常に、幻想郷を愛しているからである。
この自然も、少女達が気まぐれにおこす異変も、卑小な人間達も、彼には全ていとおしかった。


だが、彼は不幸だった。

彼は妖怪の山、また幻想郷と言う、小さな世界しか知らなかった。

だから知らない、理解できない。外の人間の罪深さを。目の前の青年の、その正体を。

「ん・・・・・・・?」

彼の耳は捉えた。バルバルバルバルと言う、奇妙な音を。

その音は、既に事切れているはずのジェラートの身体から聞こえてきた。
白狼天狗は警戒し、刀を構える。
次の瞬間、彼は目を疑った。
ジェラートの身体の傷が、綺麗に治っているのだ。
「っ?!」
ジェラートがゆっくり起き上がり、身体を起こす。
起き上がりながら、彼の身体は変化を起こしていた。
皮膚は青く、硬質化して行き、その髪は長く長く伸びてく。
そして、額は割れ、そこからは赤く真っ赤な第三の瞳が現れた。

「WOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!」



そいつに触れることは、死を意味する。



ジェラートの身体の中に潜むもの『バオー』は、完全に彼の身体を侵食した。

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