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くろがねの君主と歴史の聖獣 その六

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匿名ユーザー

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「ん・・・・・。少し・・・寝坊してしまったか。」
香霖堂で買ってきたぜんまい式の時計を、薄明かりの中で確認した。
彼女は普段一人暮らしだが、実は朝ごはんは一人で食べているわけではない。
とんとんとんと言う、包丁の音が聞こえ、出しの匂いが漂う。
「慧音、起きたか?」
そう言って割烹着で料理をしているのは、見覚えのある白い髪の少女だった。
「妹紅か・・・・すまない。寝坊してしまった・・。」
朝食を準備していた友人、藤原妹紅に謝る。
「構わないよ。それより早く昨日は何でも外の人間が教師として来たんだって?」
「あぁ、それで彼の国の面白い本を貰ったんだ。それをつい読み込んでしまって・・。」
「欧羅巴の人間だっけ?幻想郷にはあっちの妖怪はいるけど流石に人間はまだ迷い込んで来てないからねぇ。」
そんな事を離しつつ、妹紅は魚の焼き具合をみる。
「ん、いい匂いだな。」
「だろ?味噌を変えてみたんだ。」
「うまそうだ。」
そう言って慧音は着替えを始める。
夜用の浴衣を脱ぎ、着替えを始める。
幻想郷では、現代までとはいかないが女性の下着はそこそこ近代的である。
ドロワーズが普及しているのが、その例である。
慧音が着替えをしている間にも、妹紅は炊けたご飯をかき混ぜ、沸騰しかけている味噌汁を、慌てて止めた。
そして妹紅が食卓をだし、食事の準備をしている間に慧音は着替えをし、顔を洗った。

妹紅はその体質のせいか、あまり里の人間と交わる事を好まない。
だが、慧音があまりに勧めるので、彼女は朝、慧音と共に食事をとる事にしていた。
そして慧音の努力が実を結んでか彼女はときおり、子供達に古文や漢文を教えるほどになっていた。
「最近は輝夜のやつもあんまりちょっかいをかけてこなくてね、暇でしょうがないよ。」
「この間貸した本はどうだった?」
「あぁ、外の世界の本だね。思想の話だったけど、面白かったよ。」
そんな会話を二人でしながら、朝ごはんを食べていく。
長い間生きているだけあって、妹紅は料理はもちろん家事もできるし、気も効く。
そしてこれでも子供の相手も非常にうまいし、さらに美人である。
「妹紅・・・、私が男だったら間違いなく嫁にしてるのになぁ・・・・。」
本当に残念そうに慧音が妹紅に呟く。
「何だよそれ。大体もう私は半分慧音の通い妻みたいなもんじゃないか・・・いや、お袋か。」
ご飯粒ついてるぞ、と言って妹紅は慧音の頬についた米を取る。
「むっ・・・・、確かに私は妹紅に比べれば全然子供だけどな・・・・。」
「はいはい、もう隠居してるおかーさんを無理やり引っ張りださないでおくれよ。」
不満そうな慧音に、妹紅は呆れたように言う。
「妹紅!!」
「あはははははははは・・・・・・・・。」
楽しそうな二人の様子を、窓から差し込む柔らかい日差しが見守っていた。

「それにしても・・、困ったな。」
リゾットは人間の里を、ぶつぶついいながら歩いていた。
彼は黒いコートを着ており、その下はYシャツにセーター。
眼鏡をかけていれば、間違いなく外の世界の教師そのものである。
実際、今の彼の思考は既に生徒達にいかに英語を教えるかに集中していた。
部下達のことも心配だが、今はそれより仕事に集中しなければならない。
「日本語の文法と英語は全く違う・・・・、そして何より、幻想郷の中では英語を使う事もないからすぐに教えても忘れてしまうだろうな・・・。」
何せ多少の外国文化が入っているとはいえ、幻想郷の生活は、古きよき日本そのものである。
外の世界の子供よりはるかに、早く英語を忘れてしまうだろうし、何よりやる気が起きないし、馴染めないだろう。
「何か・・・・いい方法はないか・・・・?」

案その1 洋楽
  • ビートルズなどの、洋楽を聞かせる。
 ただ、問題として幻想郷には精々蓄音機しかなく、それでさえ喫茶店や稗田家などの所にしかない。
 子供達に興味を持たせるには不完全。

案その2 漫画
  • 外国の漫画を読ませて、それで英語を覚えさせる。
 しかし、日本は漫画大国であり、幻想郷にも少なくない数の漫画が入ってきている。
 英語の漫画にも面白いものはあるが、あまり興味をしめすとは考え付かない。

案その3 文学
  • 世界的に子供に人気の英国文学を勧める・・・・がリアルファンタジーな幻想郷でどこまで受けるかが不安である。

「駄目だな・・どれもいまいち決定打にかける・・・・。」
そう言ってリゾットはため息をついた。
すると、考え事をしていると、人と彼はぶつかってしまった。
「いたっ?!」
「す・・すまないっ!!」
其処にいたのは、リゾットとよく似た色の髪をリボンで飾った少女だった。
「いや・・、大したことないからだいじょ・・・・。」
少女はリゾットに謝ろうとして、ハッとする。
「あんた・・・・慧音のいっていたリゾットって奴かい?」
どうやら少女は、慧音の知り合いらしかった。
「あぁ、自分はリゾットだが・・・あなたは?」
「あ・・すまないね。こっちから名乗るべきだったな・・・・。」
そう言って戸惑うリゾットに対し、少女は頭を掻きながら名乗った。
「私は藤原妹紅だ。慧音の友達だよ。」
それを聞いて、リゾットは慧音との会話を思い出す。
彼女がとても楽しそうに、話していた気難しい友人の話である。
「宜しく頼むよ。」
そう言って妹紅が手を差し出してきた。
リゾットはそれに少し驚きつつも、彼はその手を握り返す。
「改めて名乗らせてもらうと、俺はリゾット・ネエロ。一応、死神で・・・今は臨時教師といった所か。」
そして、リゾットは意外そうに言った。
「驚いたな・・・、まさか幻想郷の日本人に握手を求められるとは・・・・。」
「あー・・・、私も実は慧音と同じように特殊な分類の人間でね。長く生きてるから多少人より色んな事に詳しいのさ。」
妹紅は手をひらひらと動かしながらリゾットに告げた。
「なるほど。」
リゾットは納得したのか、頷いた。
「それより、行かなくて大丈夫なのかい?」
そう言われてリゾットはハッとする。
時計を見ると、結構な時間になっていた。
今日はこっそり部下の様子を見に行ってたため、ギリギリの時間だったのだ。
「す・・・すまない!失礼する!!」
そう言って慌ててリゾットは、妹紅の元を去っていった。
その後姿をを、妹紅は微笑みながら眺めていた。

「じゃあ、チルノはここの妖精たちを纏めてね。危なくなったら皆空に向かって弾幕撃つように。」

「「「「「はーい!!」」」」」

妖精たちが、無邪気に返事をする。
そしてそんな妖精たちを纏めるのは、我らがレティ・ホワイトロックである。
彼女の目の前にいる無数の妖精たちは、チルノや大ちゃんの友達である。
特に力の強い二人は、仲間も多い。
妖精達はそれぞれ、特殊な妖力を探知する器具を持っていた。
ようするに、人海戦術である。
だが、自由奔放な妖精達は、ただ頼まれただけならすぐに飽きてしまうだろう。
もちろん、それに対する対策もしてある。
「もし見つけられた子には・・・・これよ!!」
そう言ってレティが高らかに掲げたのは・・・・大量のコンビニスイーツ(三千円分)の入った袋だった。
「「「「おぉーーーー!!」」」」
妖精たちから、歓声があがった。
子供のような嗜好を持つ妖精たちにとって甘い物は大好物である。
なおかつ、彼女達は人間の里から頑張って盗まなければプリンやケーキなど作るのに複雑な技術を要する甘い物は食べられない。
特に今回の場合は外の世界のお菓子と言うところが、さらに彼女たちの興味をそそっていた。
「じゃあ・・・よーい・・ドンッ!!。」
レティのその言葉と共に打ち上げられた白い弾幕を合図に、妖精たちは森へと散っていった。
「こんな按配でどうかしら?」
レティがそう言って後ろで待機していた一同の下へ振り向く。
「助かったぜ・・・、もうガキの面倒はこりごりだ。」
そう言ってプロシュートがため息を付いた。
「しかし・・・・また大量に集めたよな・・・大体・・100はいたか?」
わいわいとひしめく大小の妖精を思い出して、ホルマジオがため息を付いた。
「あたいと大ちゃんの手にかかればこんなもんよ!!」
「「「「うわっ?!」」」」
突然飛び出してきたチルノに、一同は声を上げた。
「どうしたんだよ?!探しに行かなくてもいいのか?!」
「あたいはせれぶのフランちゃんと友達だからね!!あんな安物のおかしにはつられないのよ!」
ギアッチョの台詞に、チルノはふんぞり返って答えた。
「・・・・つまり、紅魔館に忍び込んでフランにおやつ分けてもらってるのか。」
確かにチルノなら、うっかりフランに破壊されてしまっても復活できるだろう。
「またチルノちゃん紅魔館にいってたの!?危ないって言ってるじゃん!!」
「だいじょーぶよ!あたい最強だもん!!」
大妖精はチルノが紅魔館に行く事が心配らしい。
能天気そうなチルノの発言に、彼女は不満そうな顔になる。
そこで、一つの疑問が一同に浮かんだ。
「しかし、どうやって忍び込んでるんだ?」
まさか、自分達みたいになぎ倒すわけでもあるまいし、と思ったのかプロシュートがチルノに尋ねた。
すると、チルノはあっさり言った。
「門番が普通に通してくれるけど?」
チルノの言葉に、一同はずっこけかけた。
あの門番は、どうやら相当フランドールに甘いらしい。
495と何年目かに出来た友達をこっそりフランにあわせてるようだ。
「通りで最近ベイビィ・フェイスからの通信が減ったはずだ・・・・・。」
そう言ってメローネがため息をついた。
まぁ、こんな変態と付き合うよりチルノと付き合った方がいい。
レミリア達もそう考えて、チルノを黙認しているのだろう。
「メローネ、寂しいなぁ。」
「別にー。」
ニヤニヤと笑いながらからかおうとするイルーゾォに、珍しく拗ねたようにメローネがそっぽを向いた。
「じゃ、これで私達が担当するのは・・この辺りね。」
レティが地図に、サインペンでキュッと○をした。
予定していた範囲より、大分狭い範囲である。
「おっ!大分楽になったな!!」
「これで見つからなかったら、別のところに潜伏しているんでしょうね。」
嬉しそうなプロシュートに、レティがそう告げる。
「私も大分力が戻ったから、ギアッチョと別行動できるから全員で散りましょう。そうすればお昼には終わるわね。」
仕事が早めに終わることに、一同は歓声をあげる。
「ほら!じゃあとっとと調査しちまうぞ!終わる頃には映姫様の機嫌も直ってんだろ!」
ホルマジオの掛け声と共に一同は意気揚々とそれぞれの担当地区へと向かっていった。

「・・・・・・・・・・・・・・。」
ソルベは、無言で居間でノートPCを叩いていた。
それは彼の私物の一つであり、このチームに入る前から所有してるものである。
彼は真剣な表情で、そのモニターを見つめていた。
「収穫・・・・・なしか。参ったな・・・・イタリアに戻って墓を暴く・・・・・いや、もう壊れちまってるな・・・。
 南米あたりの奴らを通じてあっちにある組織と接触すれば・・・いや、でもデータが残ってるかどうか・・・・。」
ぶつぶつと意味の分からない事を呟きながら、ソルベはPCからメールを送信する。
「早くどうにかしてやらないとな・・・・・・・。」
ため息をついてソルベが考え事をしていると、突然、ピンポーンと呼び鈴がなった。
「げ・・・っ?!」
もしかして仕事をさぼってこんな事をしているのがばれたのだろうか?
ソルベは思わず冷や汗を流す。
(だ・・・・大丈夫だよな?ジェラートの面倒見てたのは本当だし・・・・・。)
そんな事を考えながら、ソルベは玄関の方へ歩いていく。
「はいはーい、どちら様ですかー?」
そう言ってソルベが玄関の扉を開けると、そこには椛が立っていた。
今日は非番なのか、萌黄色の着物に象牙色のケープを羽織っており、その手には風呂敷を抱えている。
「突然の訪問、大変失礼致す。」
「どうした?お前が家に来るなんて初めてじゃないか?」
そう言うと椛は笑いながら風呂敷を差し出してきた。
「いやなに、昨日なんでも宴会をしていたと聞きましてな。二日酔いにと柿を持ってきたのでござるよ。
 すっかり熟してとろけておる故、食欲がなくても食べれるでござる。」
そう言って椛は風呂敷包みをソルべに渡した。
「お、悪いな。茶でも飲んでいくか?」
ソルベは普段と代わらない様子で、椛に対応する。
だが、椛はふと気づいてしまった。
「ソルベ殿・・・・・、ジェラート殿は?」
それを聞いて、ソルベの身体が硬直する。
が、それも一瞬だった。
「あぁ、あいつなら二日酔いで寝てるぜ。そっとしておいてやってくれ。」
そう言ってソルベは居間に向かおうと椛に背をむける。
「嘘でござるな。」
ソルベの背後に、椛が近づく。
「・・・・何のマネだ?」
「・・・・。」
椛は、ソルベの背中に懐刀を突きつけていた。
「・・・・最近、妖怪の山近くにすむ妖怪が何者かに痛めつけられ怪我をする事件が多発しているでござる。」
「そりゃお前、最近幻想郷に入ってきた魂食い妖怪じゃねえのか?」
「・・・・痛めつけられた妖怪は、あるものは火傷を負い、あるものは皮膚が蝋細工のように解けており、あるものは腹を切り裂かれていた。
 さらに別の物は、まるで雷に撃たれたような状態でみつかっていたでござる。」
椛の言葉に、ソルベはため息をつく。
「なるほど、俺達のスタンドの能力じゃないかってわけか。
 でも、そんなたくさんの能力が詰め込まれてる素敵なスタンドは俺達は持ってないぜ?
 大体、あいつら喧嘩は好きだけど、殺しはあんまり好きじゃないんだよなぁ・・・・・。」
もったいないよなぁ、と言ってソルベは肩を竦める。
少しおどけた態度のソルベとは対照的に、椛の殺気がどんどん鋭くなっていく。
「・・・・・・・ジェラート殿のスタンドを確認させていただきたい。」
「だーかーらー、出せねーんだよ今は!まだ精神的に全然不安定だからな!ちょっとした衝撃で暴走しちまうんだよ!
 第一、あいつのスタンドも俺と同じように戦闘向きのスタンドじゃない!!」
ジェラートに対しての疑いに気を悪くしたのか、ソルベの言葉が刺々しくなる。
椛はその様子を、鋭い目つきで見ていた。
「・・・・・ならば、これだけお聞きしたい。」
そう言って椛は、ソルベの背中から刀を放した。

「ジェラート殿は・・・、本当に人間でござるか?」

その言葉を聴いた瞬間、ソルベは上着の下の隠しホルダーに入れてあった拳銃を抜き、椛に向かってそれを構えた。
「何言ってやがるてめぇ・・・・・・・。」
ソルベの言葉は、完全に怒りが込められていた。目を見開き、今にも椛を殺そうとしているのがはっきりと解るほどである。
だが、椛は動じない。
「我々は鼻が聞く。ジェラート殿の匂いは、幻想郷の人間とも、外の人間とも・・・・・妖怪とも違う・・・・。」
だが、椛の言葉は続かなかった。
「がっ・・・?!」
ソルベが銃身を、椛の口に捻り込んだのだ。


「・・・・・帰れ。今すぐ帰れ。じゃねえとこのまま脳髄ぶっとばすぞ。」


切れ長のソルベの目が、冷たく光った。

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