ジョジョの奇妙な東方Project@Wiki

空条貞夫 プリズムリバー楽団に会う

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
……男は気が付けば川のほとりを歩いていた。
病に伏せっていた妻が快復し、一安心したため、久しぶりに
“相棒”と共に馴染みの店に向かっていた時のことだった。
見慣れない景色に眉をしかめ辺りを見渡す。
何やら奇妙なことに巻き込まれたらしい。
……やれやれ、と言わんばかりに、ふう、と息を吐く。
妻や息子、妻の父が何やら重い運命を背負っているとは知らされていた。
しかし、まさか自分まで巻き込まれるとは。
そうして困惑している彼の耳に、不思議な音が届いた。
それは魂を揺さぶる音、それは何処か掴み処のない音。
好奇心に狩られ、男はその音のする方へと歩みを進めた。

演奏をしていたのは、三人の少女達であった。
少女達の演奏に、男はしばし聞き惚れる。
こんなに魂に訴える演奏を聞いたのはどれくらいぶりだろうか。
熱に浮かされようにるフラフラと前に進み、彼女達に近付こうとする。
「あまり前に出ると危ないですよ」
そんな彼を、一人の男性が引き止めた。
「あれは、幽霊や妖怪が楽しむための音楽らしいですから。
あなたのような生きた人間はあまり近付かない方がいいそうです」

成程それで、か。納得して男は口に出した。
明確な形を持たない幽霊や妖怪のための音楽だから、
あれはあんなにも魂に響いてくるのか、と。
「へえ、凄い推察力ですね」
相槌を打ったのは、彼を止めた青年だ。
いや、青年というにはまだ少し若いかもしれない。
息子と同じくらいかな、と彼は思った。
よく見れば着ている服は緑色をしていささか奇抜だが、学生服である。
「何にせよ、いい演奏ですね」
赤みがかった髪を揺らしながら、彼は演奏に聞き惚れる。
……そこに至り、男は彼が誰かを思い出した。
ふと思い立って、演奏を聞いている他の人々の姿を見やる。
羽飾りをつけた青年がいた。
タイル模様の帽子を被った青年がいた。
何処か見覚えのある優しげな表情と強い意志のこもる瞳をした恋人達がいた。
ぐるりと見渡す内、ライブをしていた少女達と目が合った。
少女達は、彼の気持ちを察したのだろうか。
「よかったら一曲演奏してくださいませんか?」
呼びかけられた声に従い彼女達の下へ向かう。
長年の相棒を、サックスを取り出す。
会場の中、いつかの幽霊達への想いを込めて彼は息を吹き込む。
それは感謝、祈り、愛情。
ありがとう、私に彼女と彼を与えてくれて。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー