ジョジョの奇妙な東方Project@Wiki

クラフト・ワークは動かせない 第七話

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
第七話「とある執事の日常 後篇」


―――――――――――人里:和菓子屋――――――――――――

「売り切れだとォーッ!?」
「す、すいません。つい先ほどすべてお買い上げになられた方がおりまして…」
サーレーがハーレーを飛ばして人里につき、『塩羊羹』の暖簾を見つけるまで約2分。
そしてこのザマである。
「ちょっとは残ってねーのかよ、買って帰らねーとあのクソチビ(※レミリア)にバカにされるんだよッ!」
レミリアが自分をバカにしているシーンを想像すると、一瞬鬼の形相となった。
「ひっ…も、もう材料がないのです。買った方に追い付けば譲っていただけるかも…しれません…」
「何ッ、本当かよ!?そいつはどんなやつだったんだ!?」
サーレー、必死である。掴みかかりそうな勢いだ。
「え、えーと確か…あなたのような男の外人さんで…変わった化粧をしておられました」
「男で化粧だと…ヘヴィーだなオイ。まあ分かった、グラッツェ!」
感謝を伝え店を飛び出す。ハーレーにまたがり、人里の大通りを駆け抜けていった。

そして和菓子屋店長は飛び出したサーレーを眺め、一言。
「……………今度から一度に全て売るのはやめようかな…」
経営方針を考えていると、店員が店長に声をかける。
「店長~材料の在庫ありましたよ。羊羹作りますか?」
「えっ?」
「えっ」

サーレー、不運すぎる。幸運Eとでも言うべきか。不運と踊っちまってるとでも言うべきか。
もはや運命に翻弄されているとしか言えないあたり、救いようがない。
しかも、次から次にイベントに向かっていくのだから始末が悪い。

―――――――――――人里:大通り――――――――――――

そんなこんなで大通りを抜けてきた。
「化粧した男、化粧した男…オカマ?」
そんな風に呟きながらハーレーを飛ばすサーレー。
しばらくしていると2つの人影が見えてきた。どうやら何か話し合っているようだ。

「はい、大丈夫です。それくらいなら全部持っていけます」
「いや、ならば半分私が持とう。それが紳士だ」
その人影…2人とも大きな荷物を持っている。
1人は刀を2本差している少女。もう1人は長身の男性。
「紳士ですか…とても賭博を生業としている者の言葉ではありませんね」
「いいや、それは間違っているよ妖夢。ギャンブラーとは生き様だ」
なにやら話しているのを見て、サーレーは思いつく。

「聞き込みしてみるか…刑事みてーによ」
そしてその2人にバイクで近付き…
「あのー、すいません。この近くで大量の塩羊羹を買っていったヤロー…じゃなくて、方を見かけませんでしたか?」
なんとサーレー、敬語が使えるようになっている。素晴らしい成長だ。しかし、
「「…………」」
黙りこくっている2人、それもそうである。執事っぽくない顔の執事がバイクに乗って話しかけてきたら誰でもそうなる。
「あのー…ですから。塩よ…ん?おい、てめーらが抱えてるそれって…羊羹じゃあねーか?」
そしてやっと気付く。2人が抱えているのは大量の塩羊羹が詰まった風呂敷だった。
「妖夢、半分持って先に行ってくれるか?」
「承知しました」
次の瞬間、片割れ…妖夢と呼ばれた少女は忽然と消えてしまった。

「…それで、大量の塩羊羹を買っていったヤローはわたしの事だが、何か用かな」
「化粧っていうかメイクじゃあねーか…じゃなくて、頼みがある。1つ譲ってくれ」
あの店長が言っていた化粧とは顔の側面のメイクのことだったようだ。
「断る。これはある人に頼まれたものでね、あげるわけにはいかないんだ」
「頼む、1つだけでいいんだ。こっちも頼まれごとなんだよ」
「…なるほど、この全く躾のなっていない執事の主からということか…
いいだろう、ただし賭けだ。お前が勝てばくれてやる」
躾がなっていないといわれ少しコメカミを痙攣させつつも冷静に対応する。やはり成長している。
「賭け…ってなにをやるんだ?」
「ジャンケンだ」
思いもよらない返答に思わずコケる。
「それは賭けじゃないだろ」
「いいや、相手の手の内を読む、物を賭ける。これがあるなら立派なギャンブルだ」
「別にいいけどよ…じゃあいくぜ…」
そしてあっさりと決まるのがジャンケンでもある。
「「最初はグー、ジャンケン…」」
出されたのはパー。サーレーが出したのはグー。

「うわっ、負けた。オレの運、低すぎ…?」
「…違う、運ではない。お前はジャンケンすることを訝しみ手が硬直した…それがお前の敗因だ。
ついでに名乗っておこう。わたしはダニエル・J・ダービー。ギャンブラーだ、覚えておくといい」
「いや、たかがジャンケンごときで偉そうに自己紹介までされても…」
サーレーが発した『たかがジャンケンごとき』という言葉を聞き、ダービーが顔をしかめる。
「…今、何と言った?ジャンケンごとき、だと?おしえてやろう、ジャンケンとは…」

―――――――――――3分経過――――――――――――

「世界には限定ジャンケンという凝ったジャンケンもあって…」

―――――――――――5分経過――――――――――――

「…ということだ。ジャンケンとはれっきとした勝負なのだ。理解したか?」
「あー、わかった。分かった。お前がめんどくさい奴だってのはよーく理解した」
長々とジャンケンについて語られハーレーに寄りかかりながらうなずくサーレー。
「分かったならいいんだ。それでは…」
「うおっと、待てよ、第2ラウンドだぜ」
「もう勝負する必要は無いはずだ、帰らせてもらう」
そのまま立ち去って行こうとするダービーに必死に食いつく。
「おいおい、1竿でいいんだよ。譲ってくれたっていいだろ」
「だめだ、幽々子は大食漢だからな。妖夢の分を合わせても足りん。
それとも何か?君はこれに見合う対価を持っているのか?」
塩羊羹を手にサーレーに向ける。それにそこまで偉そうにふるまう価値があるとは思えないが。
サーレーがポケットを探るといろいろ出てくる。
「銃弾とか…ああ、CDとかあるぞ、グニャグニャだけど」
「いらん…だが、まあ、塩羊羹はくれてやろう」
塩羊羹をサーレーに投げつける。サーレーは驚きつつも落とさずキャッチする。
「なんだ…気が変わったのか?」
ただ、ダービーのセリフは終わっていなかった。

「ただし…条件付きだッ!」
その瞬間、ダービーの背中からお世辞にもカッコイイとは言えないスタンドが出現した。
「テメーもスタンド使いかッ、なら、『クラフト・ワーク』ッ!」
それに応じサーレーを守るように『クラフト・ワーク』が前面に出現する。
それぞれのスタンドは向かい合う形になった。が、しかし…
「なるほど、君はスタンド使いだったか。だが無意味だ。君はもう、私に借りを作ったのだから」
すると彼のスタンド『オシリス神』は『クラフト・ワーク』を両手で挟んだ。
次の瞬間、『クラフト・ワーク』がコインへと変わり、ダービーの手の中へ吸い込まれた。

「て、てめー…何しやがった!くそッ、『クラフト・ワーク』ッ!
…あれ?『クラフト・ワーク』ッ!どうした!?」
なんど試せどスタンドが出ない。サーレーは焦って頭に血が上る。
「無駄だ、無駄だよ、ハーレー君。君のスタンドは私の手の中だ。
さっきも言ったが、これは『貸し』なのだ。きみはさっき私から羊羹を受け取った。
…私は君に『貸し』を作った。君は私に『借り』を作った。
『貸し』は返されなければならず、『借り』は返さなくてはならない。
分かるかね?ハーレー君。君の半身、君の魂の半分ともいえるこのスタンドはいわば…『担保』なのだよ。
今度この『貸し』に見合う働きをしてもらうから覚悟しておくんだな」
羊羹1つ分に見合う働きとは一体どれぐらいなのだろう。
ダービーは『クラフト・ワーク』の顔がデザインされたコインを片手で弄りながら話す。

とても挑発的なセリフ、だがサーレーはすました顔で自分の愛車…ハーレーに腰掛けている。
「…いつまでもオレの愛車に語りかけてないでオレの相手もしてくれよ。なあ、バービーさんよ」
基本頭の回転「だけ」は速いサーレー、長話で頭が冷えていい切り返しを思いついていたようだ。
ニヤッと笑って逆に挑発する。
「……!このガキ…つけあがりやがって!いいだろう、サーレー君。気が変わった。
明日、白玉楼に来るといい。そこでもう1度勝負してやろう。
…だが、覚えておけ。お前は私を、昔のあのジジイのようにコケにしたのだ。
すっぽかしたらどうなるか、その無い脳みそで考えるんだな」
コインを指でギリギリ締めながらそう言うと、怒りの足取りで帰っていった。

「白玉楼か…ひとまず帰って報告でもしとくか。
…というか、オレなんで毎回カニミソとか脳無しとか言われるんだ?そんなにアホに見えるのか?」
サーレーもまた、へこみつつも愛車にのって悪魔の待つ館へ帰っていった。

―――――――――――紅魔館:大広間――――――――――――

「モグモグ…つまり、あんたはスタンドを奪われちゃったって訳ね…あははははははは!傑作だわ!」
「だまれクソチビ。外に放り出してやろうか?今日はいい天気だぜ?」
サーレーが紅魔館に帰ると咲夜が出迎えたが、その時時間停止に気づかなかったことを見破られ今に至る。
塩羊羹をつつきながらサーレーをなじるおやつの時間が始まった。
「あら?出来るのかしら?あの固定能力の無いあなたが今ここに居る1人でも相手にできて?」レミリアの攻撃!
「うっ」1Hit
「うーん、たしかに今のサーレーじゃ…もぐもぐ、最弱もいいところだよね~」フランドールの攻撃!
「くっ」2Hit
「スタンドのないあなたでは研究対象にもならないわ」パチュリーの攻撃!
「う…う」3Hit
「何の価値も無いわね」咲夜の攻撃!
「うがっ」K.O!
4人から言葉の集中攻撃を喰らって精神的に敗北しテーブルに突っ伏したサーレーをみて、レミリアが呟く。
「確かにこのままでは使えないわね。サーレー、命令よ。明日白玉楼でそのギャンブル男を倒してきなさい。
そいつはおそらく、私が前に話した『賭けを持ちかけた外来人』よ」

その言葉に反応し頭をあげてうなだれながら返答する。
「前に話したってあれか?勝って商品を持ってったとかいう。ギャンブルつながりか?」
「それもあるけど、能力が似てるじゃない。何かを持ってく辺りとか、スタンドのルールは知らないけど。
そのなんだっけ…バービー?ダービー?がスタンド使いな以上、なにかほかの異変の情報を掴んでるかもしれないし、何より…」
もったいぶって間を開けるレミリア。
「な、何より…何だよ」
「あんたは今のままでは『使えない』からね、はやく能力を取り戻してもらわなくっちゃ」
使えないを強調する所に悪意が感じられる。サーレーは言い返せず、イライラしながら席を立つ。
「分かった。だが咲夜は連れていくぜ。」
「もぐもぐ。あら、私?何故かしら?」
謎のご指名にサーレーの分の塩羊羹まで食べながら首を傾げる咲夜。
「相手はギャンブラーだからな。ギャンブルといえばイカサマ、だろ?」
そう言ってサーレーは不敵な笑みを浮かべるのだった。
「ところで、何でお前はオレの菓子を食ってんだ…」

―――――――――――紅魔館:浴室――――――――――――

とっぷり夜も更け、サーレーは(レミリアとフランのお守り含める)激務を癒そうと浴室に足を運んだ。
「あー、まったく…疲れるぜ。スタンドが無いとこうも疲れるとはな…
まあ、明日のギャンブルは安心だな、勝てない勝負はしなくてすみそうだ。
…ん?明かりが付いてる。誰か入ってるってことか?それとも付けっ放しなだけか?」
明かりのついた脱衣所に入ると衣服が置いてある。どうやらメイド服のようだ。
「ちっ、咲夜が入ってたか…ん?何だこの丸いの」
サーレーが足元に転げ落ちている、なにか『平たくて丸いもの』を見つける。
どうやら衣服の置いてある棚の上にももう1個あるようだ。

「…!はっはーん。なるほどな、これPA「【幻世「ザ・ワールド」】ッッッ!」
禁断の名称をサーレーが口にし終える前に時が止まる。
そこにはバスタオルを体に巻いた咲夜さんが立っていた。息が切れている。
「ハァー、ハァー、ふぅ。危なかったわ…サーレーがスタンドを奪われていてよかった…」
もしスタンドを持ったままだったら、止まった時の中でも見る事は最低限出来るからだ。
そそくさと体を拭き、サーレーの手から『アレ』を取り上げると、ぱぱっと着替えて出ていった。
「Dか…ってあれ?ねーぞ?風呂にもいねー。さては時を止めて逃げたな。
ちっ、せっかくだから覗こうかとも思ったがな…いや、それは意味ねーか。なにしろ…」
執事服を脱ぎながら侮蔑たっぷりに呟く。
「驚異の胸囲(笑)だからな」
…黙っておけばいいものを、言わなくてもいい一言を言ってしまうのが、彼の悪い癖。
次の瞬間、彼の周りに大量のナイフが出現したのは言うまでも無い。
その夜、紅魔館には悲鳴が轟き、浴室は以前より紅く染まったという。

…スタンドを取り戻しに行く以前に、彼に明日は来ないかもしれない。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー