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東方魔蓮記 第四十三話

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匿名ユーザー

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片や皿を持って構え、片や腕を相手に突き付けて構えている。
第三者からすれば奇怪な状態だが、二人はいたって真剣なのである。

数秒の後、女性が皿を投げつけてくる。
ディアボロはそれをエアロスミスの機銃で粉々に破壊すると、そのまま射命丸とマミゾウが逃げた方向に移動を始める。
「(そろそろあいつらとも距離は取れているはずだ)」
「待て!」
当然女性も追いかけてくる。しかも浮遊しているからあちらは疲弊するのが遅い。
だがそれはあまり気にする必要はない。
気にするべきは……『聖人』が彼女と違って友好的であるかどうかだ。


廊下を走る音が一つ。明らかに歩くより速く進んでいる者が二人。
そして時々響く陶器が砕ける音と、出来てから数日も経っていない新築の建物に時々勝手に開く穴。
神霊廟にゴミを散らかし、傷をつけるという事態を引き起こしながら二人は戦闘を続けている。


スタープラチナで女性を視認し、女性が同時に投げてきた2枚の皿を、ディアボロは振り向きながらエアロスミスで撃墜する。
皿の破片を操って飛ばしてきたなら、スタープラチナがそれを全て掴み取って握力で砕く。
まさに、文字通りの膠着状態である。
「(この狭い中で船を使うわけにはいかん……ならば!)」
女性はそう思って何か仕掛けようとしたのだが……。


何かしようとした瞬間、時が止まった。
女性が相手にしているのは、自分よりもずっとずっと戦闘経験を積んできた者。
相手の動きから『何をしてくるか』はともかく、今までとは違う方法を使ってくるのを読むのは容易いのだ。


ディアボロは2秒ほど女性にエアロスミスの機関銃を撃つと、残りの秒で全力で走って距離を取る。
「(まずいな……見取り図も作ってくべきだった)」
ハーミット・パープルで神霊廟の見取り図を念写しなかったことに後悔するが、止まった時はそんなのはお構いなしに動き出す。
「ぬおっ!?」
女性は肌を掠めた何かに驚いて行動を止めたが、距離を取ろうとしているディアボロを見て追跡を再開する。
エアロスミスのレーダーで何人かの反応は検知できるが、建物の構造を今一理解できていない以上、迂回も仕方ない状態になっている。
ディアボロが現在目指している地点は……お互いにとても近い二つの反応だ。
どれがマミゾウと射命丸なのかはわからないが、あの後に何かない限り二人がはぐれるとは思えない。

「(二人と合流するなら、まずはこいつから逃げ切らないとな……)」
ディアボロは女性を振り切るため、エアロスミスを右腕から発進させる。

本来エアロスミスは、先ほどのように腕に出させて機銃を撃つスタンドではない。
戦闘機型であるこのスタンドは、飛行してこそその真価を発揮できる。
ディアボロの腕を離れて飛び立ったことで、先ほどまで使っていた二酸化炭素の探知と機銃だけでなく、爆弾の投下やプロペラを用いて切り刻むことさえできる。
おまけにスタンドなので空気抵抗や重力なんて全く気にする必要はない。

エアロスミスがディアボロの右腕より飛び立つと、彼は一旦動くのを止めて女性の方を振り返る。
すると、彼を追いかけていた女性も、ある程度距離をとったまま止まることになる。
ただ捕まえたかったのならそのまま勢いよく飛びかかればいいのだが、今までの出来事からして、彼が何をしてくるのか推測するのは困難だ。
肉壁で道を塞ぐかもしれない。再び不可視の何かで拘束してくるかもしれない。それとも、まだ見せていない何かを使ってくるかもしれない。
『何をしてくるかわからない』から、急に動きを止めるという些細なことにも警戒しなければならないのだ。

「(炎を放って来たり、どこからともなく皿を取り出してくる時点で、こいつも何かしらの術が使えると見ていい)」
女性が動くのを止めたことを確認すると、ディアボロはエアロスミスを操って女性の近くまで飛ばし、それと同時にウェザー・リポートでスタンドの雷雲を大量に発生させる。
「(ならば……)」
そして、うっかり直撃させないように注意しつつ、女性の目の前の床に爆弾を落とさせる。
爆撃を受けた床は爆発によって砕け、砕けたことによって生じた粉が爆発の衝撃によって勢いよく宙に飛び出す。
「(ちょっとやそっとじゃくたばらないだろう)」
女性がそれに驚いた瞬間に時を止め、ウェザー・リポートで舞い上がった粉に当たらないようにして女性に3発の雷を放つ。
それらはDIOが時間停止中にナイフを投げた結果の時と同様、女性に命中する瞬間に止まる。
「(こいつについても知りたいが、それは後だな)」
ディアボロはそう考えながら、彼女を巻くべく再び動き出す。
その直後時が動き出し、それとほぼ同じタイミングで女性に雷が命中する。
「――――ッ!」
女性は雷撃を受けて声を発することもできないが、どうやらこれでくたばったわけではないようだ。
「(今なら体が痺れて少しは時間が稼げるはずだ)」
ディアボロは女性が感電している隙に走って再び女性との距離を取る。

しかし、やはり物事はうまくいかないものだ。

――ディオ・ブランド―はこう語っている。『人間は策を弄すれば弄するほど、予期せぬ事態で策が崩れさる』と。
故に彼は人間をやめた。人でなくなることで、己の野望を果たそうとしたのだ。
……結局、彼の野望は叶わなかったが。

ディアボロの視界に入っている曲がり角、彼はそこを通るつもりであった。
エアロスミスのレーダーにその付近での反応はなく、問題なく通れる……はずだった。

そこから人がやってこなければ。

「!」
ディアボロは人がそこからやってきたことに気づいて、止まる
……なんてことはなく、そのまま進んで飛び越そうとする。
「屠自古(とじこ)!すまんがその男を捕まえてくれ!」
「えっ?」
突然の女性の呼びかけに困惑しながらも、屠自古と呼ばれたその者はディアボロを捕まえようとする。
ディアボロは走って屠自古に接近する間に、ウェザー・リポートを追加で出す。
一方の屠自古はわけがわからないまま、女性の言う通りにディアボロを捕まえようと接近してくる。
「(何故反応がなかったのか考えるのは後だ。まずはこいつをどうにかする!)」
ディアボロは掴み掛ってきた屠自古をスタープラチナを使って往なすと、ウェザー・リポートで風を起こして体勢を崩していた屠自古を女性の方に吹き飛ばす。
吹き飛ばされた屠自古と巻き込まれた女性が起き上がっている間に、ディアボロはスタープラチナも使って二人を観察する。

屠自古と呼ばれた者には、足がなかった。だが、それ以外は人間と異なる部分はない。
「(……成程、『肉体を持たない』のならば、何かしらの干渉を受けない限りの二酸化炭素はでない。だがらエアロスミスのレーダーに反応しなかったのか)」
ディアボロはそれを見て理解した。屠自古と呼ばれた女性は、所謂亡霊の類だと。
肉体がない以上、亡霊が呼吸をしても二酸化炭素の類は出ない。
だから、二酸化炭素を検知するエアロスミスのレーダーに一切反応しなかったのだ。

「(これは少し厄介だな……敵対したら1発機銃をくらわせておくべきか?)」
例えレーダーに反応しないものでも、レーダーに反応させられるようになる方法がある。
エアロスミスの機銃や爆弾で対象を傷つけることだ。
傷つけることに成功すると、『スタンド硝煙』といえるものが傷つけられたものから出続けるようになる。
エアロスミスのレーダーはこれにも反応するため、機銃や爆弾で傷つけることさえできれば亡霊である屠自古でも検知することができるようになるのだ。

「やれやれ、いきなり弾幕を撃ってきたから応戦しながら逃げていたら、今度は向こうから亡霊がやってくるとはな」
ディアボロは逃げるのをやめ、呆れたふりをしながら二人の様子を伺う。
「おい布都(ふと)、あいつは何なんだ?」
屠自古は先ほどまでディアボロとチェイスを繰り広げていた女性……布都に質問をする。
「俺はただの新聞記者の護衛。あの天狗を『聖人』と呼ばれるやつのところに送り届けるのが、俺の仕事だ」
屠自古の質問を、布都の代わりにディアボロが答える。
「だがどういうわけか、そいつは俺のことを『脅されて連れてこられた』と誤解しているようだがな」
そう言って、ディアボロは軽い溜息をつく。
何故布都があんな誤解をしたのか、彼にはさっぱりわからないからだ。
「……まあ、所詮は誤解だ。影響が出る前に解いてしまえばそれで終わる」
ディアボロは二人に背を向けて、エアロスミスのレーダーを見ながら歩き出す。
勿論、スタープラチナに二人を見張らせて。
「(さて、あの二人はどうでる?)」
布都はともかく、屠自古はどう出るのかわからない。
背後から襲ってくるのなら応戦するが、攻撃してこないのなら見逃しても問題ないかもしれない。

悔しそうな表情でディアボロの背を見る布都と、彼女を落ち着かせようとする屠自古が見える。
今のところ、二人して攻撃を仕掛けてくる気配は見られない。
「(屠自古が布都を説得し、攻撃を止めさせてくれるなら問題なさそうだ)」
仮に屠自古が布都と同じ考えを持っていたとしても、ディアボロは妖怪ではなく、普通では持ちえない力を持った人間である。
布都が屠自古におかしなことを吹き込まない限り、屠自古が攻撃してくることはないだろう。たぶん。
再びエアロスミスのレーダーを見て、反応をチェックする。
「(さて……どう進めば二人と合流できるだろうか?)」
反応の位置は大して変わっていないが、問題は構造である。
どうすれば合流できるのか、さっぱりわからない。
「(スティッキィ・フィンガーズで壁を通り抜ければ楽だが、今はDISCが装備できないな……)」
ディアボロはそう思いながらも屠自古が通ってきた曲がり角を通るために歩いて行こうとする。

「待ってくれ」
屠自古にそう呼びかけられ、それに反応してディアボロは二人のほうに振り返る。
「?」
「先ほどは布都が迷惑をかけたな」
屠自古は布都の非礼を詫びたの聞いて、ディアボロは敵意を向ける必要はないと判断した。
「大丈夫だ、傷は負っていないから気にする必要はない」
ディアボロはそう言って再び二人に背を向ける。
「ところで……天狗とその連れがどこにいるかわかるか?」
ディアボロはエアロスミスのレーダーを見ながら二人に問いかける。
反応の位置ともう一つの反応の距離からして、マミゾウや射命丸と同じ部屋に居るようにも思えるが……?
「……そういえば、太子様に取材したいという天狗がいたな。敵意は感じなかったし、態度も礼儀正しかったから太子様のもとに案内したが……」
「Hmmm(成程)、その天狗に同行している奴はいたか?」
他の天狗がここに来ている可能性は低いだろうが、念の為に屠自古に聞いてみる。
「ああ、一人引き連れていた」
屠自古の答えによって確信を得たディアボロは、彼女にある提案を持ちかける。
「そいつらと合流したい。案内を頼めるか?」
「分かった。ついてきてくれ」
布都との一件について負い目でも感じたのだろうか、屠自古はディアボロの提案をすぐに受け入れる。
その後ディアボロに接近してきたことからして、どうやら聖人のいる部屋は屠自古が来た道の向こう側にあるようだ。
屠自古がすれ違う際に何もしてこなかったことから、ディアボロもその後についていく。
そしてさらにその後を、少し間をあけて布都がついていく。
……どこか(恐らくディアボロが射命丸を擁護したことについて)「理解できない」といいたそうな表情をしながら。

屠自古に案内されてたどり着いたのは、とある部屋の前。
「この部屋に太子様と天狗たちがいる」
「(こいつらは聖人のことを『太子様』と呼んでいるな)」
ディアボロはそこに気づいたが、だからといって何か関連付けられるものがあるか彼の記憶にあるかどうかというと、『心当たりはない』だろう。
「くれぐれも太子様に失礼のないように」
「大丈夫だ。礼節ぐらいは心得ている」
屠自古の忠告に言葉を返し、ディアボロは聖人と射命丸とマミゾウがいるという部屋に入る。


「おや」
「!」
「おお、無事だったか」
部屋に入ると、ディアボロがやってきたことに部屋にいた者は皆気付き、マミゾウが声を掛ける。
「ああ、ちょっと大変な目にあったが大丈夫だ」
ディアボロはそう言ってマミゾウと射命丸に近づきながら、横目で聖人と呼ばれる者の姿を確認する。
その姿はまさに写真通り。だが、写真ではわからないことも実際に接触して分かった。
彼女が醸し出す雰囲気は、どことなく白蓮に近く、けれども彼女とは確実に『何かが異なって』いる。
「どうやら、布都が迷惑をかけたようですね」
「気にすることはない。大して傷も負っていないしな」
『聖人』のお詫びに、気にすることはないとディアボロは言葉を返す。
だがその言葉とは裏腹に、聖人の挙動に対する警戒は怠っていない。

「それでは、取材を始めるとしましょう」
聖人が射命丸にそう呼びかける。
取材を行うことは、聖人も屠自古か射命丸から聞いていたのだろう。
ディアボロがこの部屋にくるまで取材が始まっていなかったのは、聖人の配慮のおかげだろうか。
「はい。よろしくお願いします」
聖人の呼びかけに、射命丸は礼儀正しく答える。
『取材をする相手には常に礼儀正しく』。それも射命丸の一面である。


射命丸の取材を聞く中で、色々な事を知ることができた。
「私は豊聡耳神子。人は私を『聖徳王』と呼びます」
まず分かったのは聖人の名前は豊聡耳神子(とよさとみみの みこ)。
そして布都と屠自古のフルネームは「物部布都(もののべの ふと)」と「蘇我屠自古(そがの とじこ)」ということだ。
「(聖徳王か……あの二人は太子様と呼んでいたな)」
「(…………ん?)」
とここで、ディアボロはあることに気づく。
似たような名前を承太郎などの記憶から思い出したからだ。
「(まさか、あいつらの正体は……)」

蘇我と物部――それは、二つとも飛鳥時代に隆盛を極めた豪族の一族の姓だ。
そして聖徳王(今では聖徳太子の名が一般的だが)といえば、所謂冠位十二階や十七条憲法を定め、遣隋使を派遣し、仏教を厚く信仰して興隆につとめた存在……と語り伝えられている。
虚構説が最近出てきたが、今射命丸達の目の前にいる聖人は、本人の主張通りなら紛れもなく聖徳王その人だ。
つまり三人は、飛鳥時代の……およそ1400年ほど前の者達。


「(蘇我に物部、おまけに聖徳太子ときたか)」
ディアボロは取材内容を一文一句聞き漏らさず聞きながらも、思考を巡らせる。
「(……俺の予想を超えた展開だな)」
ディアボロには聖人と彼女に仕える二人の正体を予想することは流石にできなかった。
しかし、承太郎たちの記憶を得たおかげで物部や蘇我、聖徳太子に関する知識をある程度持てていたことは幸いだ。
もしもそうでなかったら、ディアボロは話についていけなかっただろう。


そして取材の中で、神子自身には妖怪に対して敵対的ではなく、闘う理由もなければ無駄な争いもしないことが本人の口より語られた。
これがある意味、ディアボロとマミゾウにとって最も欲しかった情報である。
「(よし、この話を妖怪に広めていけば、布都はともかく神子の方は妖怪にとって問題ないと理解してもらえるはずだ)」
ディアボロは表情を変えることなく軽く安堵する。
この情報を持ち帰り、広めることさえできれば、妖怪の群れが神子たちと戦うという最悪の事態になるのは避けられそうだ。



その後も色々なことが神子によって語られ、射命丸の取材は何事もなく終了した。
ディアボロにとってまだまだ聞き出したいことはあるが、射命丸の取材に便乗している以上、それは無理な話である。
「……それでは、本日は取材に応じてくださって、ありがとうございました」
射命丸がメモを全てとり、カメラで神子たちの写真を撮り終えると、神子達に取材のお礼を言う。
「どういたしまして」
神子は穏健な感じでそういうと
「布都、屠自古、皆様を入口まで案内してあげなさい」
布都と屠自古に出口まで案内するように指示を出す。
「はい」
「わかりました」
布都と屠自古はその指示を受けると、すぐに射命丸達を入口へと案内すべく動き始めた。
射命丸達もその後に続いて、部屋から出ていく。
「(……貴方には興味がありますが、今回は仕方ありませんね)」
部屋を出ていく射命丸達の背を見ながら、仕方がなさそうな表情で神子は思う。
「(『違う世界』からやってきた人よ、いずれまた会いましょう)」
自分たちとは異なる世界からやってきたことに興味を持ちながらも、彼とは話せないことを残念に思いながらも、いずれ再び会えることを信じて。


幻想郷と神霊廟のある空間を繋ぐ『道』の手前。
布都と屠自古に神霊廟の入口まで案内してもらい、その後幻想郷に戻ってきた射命丸達は、そこで軽く会話をしていた。
「布都は案内の時、終始無言で不機嫌そうだったな」
「亡霊の奴は、同じ無言でも申し訳なさそうにしていたがのう」
ディアボロとマミゾウは雑談をしている。と、そこに射命丸が割って入った。
「それでは、取材も終わりましたし、私はこれにて失礼します」
射命丸はそう言って少し歩き、飛び立つ……前に、ディアボロ達の方を振り返る。
「今回は聖人の住処とその位置を特定してくれたから許しますが、今度同じことをやったら許しませんよ」
やっぱりあの件は本人にとっては許しがたかったのだろう。
射命丸は、いつもと違って相手を威圧する感じでそう言った。
「分かった。警告として聞き入れておこのう」
ディアボロがそう答えたのを聞くと、射命丸は無言で山の方に飛び去って行った。
きっと自宅に戻ったら、早速今回の取材で得た情報をもとに記事を作るのだろう。
……その情報を得る為に、二人の協力者がいたことは書かれないかもしれないが。

「さて、命蓮寺に帰るとしよう」
「うむ。もう変化を続ける必要もあるまい」
ディアボロはイエローテンパランスを解除し、マミゾウは変化を解いて元の姿を見せる。
そして命蓮寺の方に向けて、二人とも飛び始めた
「聖人の能力などについて聞き出せなかったのは残念だが、妖怪についてどう考えているか聞きだせただけでもよしとするか」
「そうじゃな。後はこの情報を広めれば、妖怪たちも一安心できそうじゃ」
「……布都については注意は促しておくべきだろうとは思うがな」
あの時、布都は射命丸を攻撃することになんの躊躇いも見せなかった。
ディアボロはそれを警戒すべき事として受け止めていた
「飛鳥時代の人間はまだ妖怪への対抗手段を碌に持っておらんかったからな。あやつの妖怪への敵意は、例えどんな理由であれ妖怪が人を襲う事を許せぬからかもしれぬ」
マミゾウはそう言って、布都が妖怪に敵意を持つ理由を軽く説明した。
流石に長く生きているだけあって、当時の出来事を知っているし、知識も持っている。
「己の快楽の為だけに人を殺す奴に比べれば、生きる為に喰らうなんてまともな方だ」
ディアボロは、生きる為に喰らうよりも酷いことをする者を知ってしまっている。
人が痛みや死の表情を観察したり、死にゆく者が生きることに執着するその表情をビデオで観察して無上の楽しみを見出す……
そんな者のやることからすれば、妖怪が人を襲うことなどまだまともなのだ。
「……そうじゃのう」
マミゾウも、その意見に賛同する。
それは妖怪が人を喰らうことがあることに、比較されながらもある程度の理解をしてもらえたからだろうか……?
流石にこればかりは、それぞれの基準があるだろうから何とも言い難いものである。


その後、ディアボロとマミゾウから命蓮寺の皆に、マミゾウから部下の狸たちに、射命丸から新聞を通じて読者に、取材を通じて得た情報が伝わっていった。
それは時間の経過とともに広まっていき、『聖人』そのものが妖怪に敵対的ではないと分かったおかげで、妖怪界隈の騒ぎは沈静化を迎えていった。

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