「じゃあ、嬢ちゃんも死んでるのか。奇遇だな。」
「全くね。お互い逝くところにもいけないでこんなところでフラフラしてるなんて、ままならないわ。」
「違いねえ。」
「全くね。お互い逝くところにもいけないでこんなところでフラフラしてるなんて、ままならないわ。」
「違いねえ。」
歪んだ月の照らすビル街の一角で、2人の笑い声が響く。
より正しく言えば、一人の少女とその傍らに浮く骸骨が、どこか虚しそうにからからと笑い合っている。
より正しく言えば、一人の少女とその傍らに浮く骸骨が、どこか虚しそうにからからと笑い合っている。
笑う少女、その体の名をシノブという。
彼女の傍らに浮くドクロは彼女の父だ。霊媒の仕事の最中ドクロの身体になってしまった。そんな父をもとに戻すことが、本物のシノブの目的だ。
無論、このシノブもドクロも魘夢の手によって中身は別人に変わっていた。
彼女の傍らに浮くドクロは彼女の父だ。霊媒の仕事の最中ドクロの身体になってしまった。そんな父をもとに戻すことが、本物のシノブの目的だ。
無論、このシノブもドクロも魘夢の手によって中身は別人に変わっていた。
「それで、これからどうするんだ?禪院の姉ちゃん。」
傍らのドクロの問いかけに、禪院と呼ばれたシノブは苛立ちを持って答える。
傍らのドクロの問いかけに、禪院と呼ばれたシノブは苛立ちを持って答える。
「名字で呼ばないでって言ったわよね。シルバーのおじさん」
「悪い、そうだったな。それで、真依の嬢ちゃん。これからどうする?」
「一先ず、安全地帯を見つけないとね。状況がさっぱり分かんないし」
「同感だな。」
「悪い、そうだったな。それで、真依の嬢ちゃん。これからどうする?」
「一先ず、安全地帯を見つけないとね。状況がさっぱり分かんないし」
「同感だな。」
シルバーと呼ばれたドクロの問いに堅実な答えを返し。一人とドクロはビル街の片隅を行く。
シノブの体に宿る精神の名は、禪院真依。
呪術の名家にあって、出来損ないと蔑まれた女。
父に斬り捨てられ、姉に願いと呪いを託して死んだ妹。
呪術の名家にあって、出来損ないと蔑まれた女。
父に斬り捨てられ、姉に願いと呪いを託して死んだ妹。
ドクロの中宿る精神の名は、シルバー・フルバスター。
悪魔によって殺され、悪魔によって蘇させられた男。
悪魔を滅する力を息子に託し、息子の胸の中で二度目の死を迎えた父親。
悪魔によって殺され、悪魔によって蘇させられた男。
悪魔を滅する力を息子に託し、息子の胸の中で二度目の死を迎えた父親。
共存する存在として扱われた二人は、一人だけが生き残るデスゲームの中行動を共にする関係である。
廃ビルの一角で休む場所を見つけた真依は、タブレットで自分たちの情報を確認する。
それを見た真依は、自身の中の常識はやっぱり随分歪んでいるのだと、死んだ後ながら自覚した。
それを見た真依は、自身の中の常識はやっぱり随分歪んでいるのだと、死んだ後ながら自覚した。
何より大きいのは、父親との関係だろう。
ドクロ親父という青い炎を持ち周囲に浮かぶドクロ。体の少女の父親である彼は、スケベで難儀な性格をしていながらも、娘への愛は本物だ。
その中に宿ったシルバーという男。彼もまた悪魔に殺され死霊術により隷属されながら、息子のことを思い息子の成長を見届けて消えた優しき父親だ。
その中に宿ったシルバーという男。彼もまた悪魔に殺され死霊術により隷属されながら、息子のことを思い息子の成長を見届けて消えた優しき父親だ。
真依のことを産まれたときから出来損ないと蔑み、挙句の果てに致命傷を追わせた実の父とはえらい違いだ。
タブレットを読み進めながら真依は自嘲気味に笑う。
タブレットを読み進めながら真依は自嘲気味に笑う。
そして真依の体となっているシノブという少女。
霊媒師や退魔師としての技能を持つ体であり、呪術師である真依との相性は抜群に良い。
むしろ呪術師としての素質をいうのであれば、真依より遥かに高いのではないか。そう確信できる程度にはシノブの呪術適性は高かった。
霊媒師や退魔師としての技能を持つ体であり、呪術師である真依との相性は抜群に良い。
むしろ呪術師としての素質をいうのであれば、真依より遥かに高いのではないか。そう確信できる程度にはシノブの呪術適性は高かった。
おそらくシノブの体であったならば、真依の術式は平安の術師のような蟲の鎧とまではいかずとも、弾丸一つ作るのが限界になるチャチなものではなかっただろう。
あるいは生前がこの体であったなら、辛酸と苦汁を舐め続けた人生も多少は変わっていたかもしれない。
あるいは生前がこの体であったなら、辛酸と苦汁を舐め続けた人生も多少は変わっていたかもしれない。
「複雑ね...いまさら気にもしないけど。」
何から何まで真依を虐めんばかりの人選で固められた現状に、つまらなそうにため息をつく。
もし生前の真依であったなら、多少なりとも心が揺さぶられていたかもしれない。
姉にすべてを託し、ぜんぶを壊すことを望んで死んだ今となっては、その感情も凪いだものだ。
もし生前の真依であったなら、多少なりとも心が揺さぶられていたかもしれない。
姉にすべてを託し、ぜんぶを壊すことを望んで死んだ今となっては、その感情も凪いだものだ。
この全てが魘夢の仕込みであるのならば、実に質の悪い話である。
ウタという少女の陰に隠れた主催者。その本来の姿は芋臭いブサイクに違いないなと真依は思い、バカにしたようにクスリと笑った。
ウタという少女の陰に隠れた主催者。その本来の姿は芋臭いブサイクに違いないなと真依は思い、バカにしたようにクスリと笑った。
「シルバーのおじさん。ちょっといいかしら。」
「なんだ。嬢ちゃん。」
タブレットを読み終えた真依は、気になる文面を見つけシルバーに手招きする。
ふわふわと寄ってきたシルバーに、真依はタブレットの画面を見せる。そこにはドクロ親父の、すなわちシルバーの能力が書かれていた。
「なんだ。嬢ちゃん。」
タブレットを読み終えた真依は、気になる文面を見つけシルバーに手招きする。
ふわふわと寄ってきたシルバーに、真依はタブレットの画面を見せる。そこにはドクロ親父の、すなわちシルバーの能力が書かれていた。
シルバー・フルバスターがこの会場で持つ能力は、大きく2つ。
一つは、ドクロ親父の体が持つ占いの力。
中身がシルバーでは百発百中とはいかないが、あてずっぽうよりは参考になる力だ。
一つは、ドクロ親父の体が持つ占いの力。
中身がシルバーでは百発百中とはいかないが、あてずっぽうよりは参考になる力だ。
そしてもう一つが、シルバー自身が会得していた、『氷の滅悪魔法』。
真依の興味を引いたのはこちらの能力だ。
魔法という真依にはなじみのない言葉。魔女のような友人はいたが、彼女は呪術師であり魔女ではないのだ。
真依の興味を引いたのはこちらの能力だ。
魔法という真依にはなじみのない言葉。魔女のような友人はいたが、彼女は呪術師であり魔女ではないのだ。
「魔法...って。具体的に何ができるのよ。」
「ああそうか。真依の嬢ちゃんは魔導士じゃねえもんな。」
「ああそうか。真依の嬢ちゃんは魔導士じゃねえもんな。」
真依は詳細の知らないものに対しての警戒を半分、魔法というファンタジックなものに対する興味半分といった眼でシルバーを見つめる。
警戒が期待を上回ったような少しだけ光る眼をむける少女に、「ちょっとまてよ、今見せるからよ」とシルバーはドクロの体に力を籠める。
警戒が期待を上回ったような少しだけ光る眼をむける少女に、「ちょっとまてよ、今見せるからよ」とシルバーはドクロの体に力を籠める。
変化はすぐに起きた。
ピキリという音とともに、真依のすぐ横の地面に氷が生まれる。
紫色に光る氷は周囲の瓦礫を吹き飛ばしつつどんどん大きくなり、みるみるうちに真依を超える高さの氷柱が生み出される。
曇り一つない氷は隣に立つ真依の姿を奇麗に映し、呪力とは似て非なるエネルギーを放ち佇む。
下手な炎では溶かせない、魔力を秘めた滅魔の氷だ。
ピキリという音とともに、真依のすぐ横の地面に氷が生まれる。
紫色に光る氷は周囲の瓦礫を吹き飛ばしつつどんどん大きくなり、みるみるうちに真依を超える高さの氷柱が生み出される。
曇り一つない氷は隣に立つ真依の姿を奇麗に映し、呪力とは似て非なるエネルギーを放ち佇む。
下手な炎では溶かせない、魔力を秘めた滅魔の氷だ。
「.....へぇ。やるじゃない。」
「ざっとこんなもんだ。息子に託したはずだったが、残滓程度は残っているらしいな。」
「ざっとこんなもんだ。息子に託したはずだったが、残滓程度は残っているらしいな。」
紫の氷を見て満足げに笑う真依をよそに、前より出力は落ちてるなとシルバーはぼやく。
冥府の門にいたころは村一つ凍結させ得た滅魔の氷も、ドクロ親父の姿では広範囲に力を振るうのは難しい。
それでもこのデスゲームを生き抜くにあたり、頼もしい武器だ。
冥府の門にいたころは村一つ凍結させ得た滅魔の氷も、ドクロ親父の姿では広範囲に力を振るうのは難しい。
それでもこのデスゲームを生き抜くにあたり、頼もしい武器だ。
「思わぬ収穫ね。」
「そりゃあどうも。」
「そりゃあどうも。」
自分の手札を再確認した真依。思わぬ戦力に高揚を冷めやらぬまま、今後の方針を決める。
真依とシルバー。二人に共通していたことは、率先して人を殺すつもりはないということだ。
2人とも人を殺す覚悟が無い人間ではないが、好き好んで殺したいわけではない。
だが、バトルロワイヤルである以上率先して人を殺す参加者は少なくない数居るだろうし、それに対する備えは必要だ。
その点、シノブの体もシルバーの魔法も『備え』としては十分といえた。
2人とも人を殺す覚悟が無い人間ではないが、好き好んで殺したいわけではない。
だが、バトルロワイヤルである以上率先して人を殺す参加者は少なくない数居るだろうし、それに対する備えは必要だ。
その点、シノブの体もシルバーの魔法も『備え』としては十分といえた。
一先ず、他の参加者を探し、上手くいけば協力関係を気づく方針で。二人は纏まる。
真依は移動をしようと腰をあげ、荷物を纏めながら。一つ思い出したように振り返り尋ねた。
真依は移動をしようと腰をあげ、荷物を纏めながら。一つ思い出したように振り返り尋ねた。
「そういえばシルバーのおじさん。純粋な興味で聞くんだけど。なんで氷なの?」
「なに簡単な話だ、俺の標的だった最強の悪魔にE.N.Dってやつがいてな。」
「ああ、その悪魔に対抗するためってことね。」
「なに簡単な話だ、俺の標的だった最強の悪魔にE.N.Dってやつがいてな。」
「ああ、その悪魔に対抗するためってことね。」
成程と頷く真依に、シルバーは続ける。
「そうだ。E.N.Dは炎の悪魔だった。だから対抗するために、氷の滅悪魔法を会得した。」
それだけの話だ。とシルバーは締めくくる。
ゼレフ所の悪魔
シルバーの世界で、最強最悪の黒魔導士が生み出した。正真正銘の怪物たち。
悪魔のギルドに居ながら、悪魔に殺され滅魔の力を会得したシルバーの怨敵達。
そのギルドのマスターであるE.N.Dは、シルバーが最大の敵と定めた相手だ。
悪魔のギルドに居ながら、悪魔に殺され滅魔の力を会得したシルバーの怨敵達。
そのギルドのマスターであるE.N.Dは、シルバーが最大の敵と定めた相手だ。
無論、それは真依の敵ではない。真依の敵は別にいる。
炎の悪魔。シルバーからすれば質問に答えただけの純然たる事実。
だが、その言葉を聞いた真依の脳裏には、一つの姿が浮かぶ。
それは、炎を纏った巨人でも鉄を溶かす火を吐く竜でもない。
だが、その言葉を聞いた真依の脳裏には、一つの姿が浮かぶ。
それは、炎を纏った巨人でも鉄を溶かす火を吐く竜でもない。
頭に浮かぶのは、炎を纏った剣を振るう呪術師。
実の父である禪院扇の姿。
実の父である禪院扇の姿。
生前は勝つことなど考えもつかなかった、恐怖の象徴。
悍ましいほどの罵声と嘲笑により、戦う気力は幼少の頃より折られていた。
何より彼は、真依の死の直接の要因となった傷を負わせた相手。
悍ましいほどの罵声と嘲笑により、戦う気力は幼少の頃より折られていた。
何より彼は、真依の死の直接の要因となった傷を負わせた相手。
ドクロ親父やシルバーとは比べることさえおこがましい、クソ親父にしてろくでなし。
自身の死後、姉が真依との誓いを果たし、扇を一刀のもとに下したことも。願い通りに姉妹を縛るすべてを壊してくれたことも、ここにいる真依は知らない。
知っていることがあるとすれば。真依の死に際の約束を姉が絶対に守ってくれるという信頼。
知っていることがあるとすれば。真依の死に際の約束を姉が絶対に守ってくれるという信頼。
そして、強くなんてなりたくなかった少女の手に、炎の悪魔を倒すための魔法があること。
シルバーの返答に真依の口角は無意識のうちに上がる。
真依本人がそのことに気づいているかはわからない。
望みさえしなかった力を、全てを失った後に得た少女は、ただ答える。
真依本人がそのことに気づいているかはわからない。
望みさえしなかった力を、全てを失った後に得た少女は、ただ答える。
「悪くないわね。それ。」
「そうか。なら存分に使ってくれ。」
「そうか。なら存分に使ってくれ。」
真依の答えに声を上げて笑うシルバー。彼は真依の言葉の真意を知らないし、聞くつもりもない。
ただ、息子とそう変わらない年で自身と同じように生者に託して死んだ少女に力を貸す。
父親に愛されなかった少女を前に、死んでまでも息子を愛した父親は、少女の力になる覚悟を、とっくの前にきめていた。
ただ、息子とそう変わらない年で自身と同じように生者に託して死んだ少女に力を貸す。
父親に愛されなかった少女を前に、死んでまでも息子を愛した父親は、少女の力になる覚悟を、とっくの前にきめていた。
【禪院真依@呪術廻戦】
[身体]:シノブ@プリンセスコネクト!Re:Dive
[状態]:健康 興奮(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺されてやる気はないけど、殺し合いに乗るかは状況次第。率先して殺す気はなし
1:炎の悪魔を殺すための氷...悪くないわね
[備考]
※参戦時期は死亡直後。死んだ後の出来事は把握していません
※術式の使用・呪力の操作などが可能かは後続の書き手様にお任せします
[身体]:シノブ@プリンセスコネクト!Re:Dive
[状態]:健康 興奮(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺されてやる気はないけど、殺し合いに乗るかは状況次第。率先して殺す気はなし
1:炎の悪魔を殺すための氷...悪くないわね
[備考]
※参戦時期は死亡直後。死んだ後の出来事は把握していません
※術式の使用・呪力の操作などが可能かは後続の書き手様にお任せします
[副人格キャラ状態表]
【シルバー・フルバスター@FAIRY TAIL】
[身体]:ドクロ親父@プリンセスコネクト!Re:Dive
[状態]:万全 真依の周囲に浮遊
[思考・状況]基本方針:真依に同調 基本的に彼女の意志を尊重する
[備考]
※参戦時期は消滅後
※氷の滅悪魔法の規模は弱体化しています
【シルバー・フルバスター@FAIRY TAIL】
[身体]:ドクロ親父@プリンセスコネクト!Re:Dive
[状態]:万全 真依の周囲に浮遊
[思考・状況]基本方針:真依に同調 基本的に彼女の意志を尊重する
[備考]
※参戦時期は消滅後
※氷の滅悪魔法の規模は弱体化しています
122:其は太陽の化身 | 投下順に読む | 124:DANGER!! |