厄介な事になった。
放送が終わり、ドクトルが真っ先に思ったことはそれだった。
己が罪の象徴である真莉愛がこの世界に呼ばれていない事には安堵したが、もう一つ問題が発生した。
『リグレット』。リドゥの管理者たる彼女までもが肉体として、この世界に呼ばれていると言う事だ。
放送が終わり、ドクトルが真っ先に思ったことはそれだった。
己が罪の象徴である真莉愛がこの世界に呼ばれていない事には安堵したが、もう一つ問題が発生した。
『リグレット』。リドゥの管理者たる彼女までもが肉体として、この世界に呼ばれていると言う事だ。
元々ドクトルがいたリドゥという世界は人為的に作られた仮想現実であった。
その世界では自分が望むならどんな姿にもなれた。
楽士の中には機械の身体を得た者だっている。
ドクトルが問題とする点は、それと同様にこの身体もアバターとして与えられたものなのかということだ。
それなら構わない。この世界のリグレットを殺したとしても、元いた世界のリグレットには何ら影響がないからだ。
その世界では自分が望むならどんな姿にもなれた。
楽士の中には機械の身体を得た者だっている。
ドクトルが問題とする点は、それと同様にこの身体もアバターとして与えられたものなのかということだ。
それなら構わない。この世界のリグレットを殺したとしても、元いた世界のリグレットには何ら影響がないからだ。
だが、本物のリグレットの身体を奪ったうえで、別の人間に与えたのならば話は変わる。
まず、疑問となるのは、『リグレットの精神』が現状どうなっているかだ。
先ほど考えていたように、この世界がリセット中のリドゥを奪って作ったものであれば、彼女から抜き取った精神は主催者の手に囚われている可能性はある。
まず、疑問となるのは、『リグレットの精神』が現状どうなっているかだ。
先ほど考えていたように、この世界がリセット中のリドゥを奪って作ったものであれば、彼女から抜き取った精神は主催者の手に囚われている可能性はある。
「……天吹真理恵の例もあるしな」
天吹真理恵、リドゥの核となる少女だ。
リドゥは彼女の為に作られた小さな世界を、リグレットがアップデートしたことで作られている。
故に彼女に何かあれば、連動してリドゥは崩壊してしまう。
だからこそ以前ドクトルは万が一に備え、天吹真理恵を捕らえて手元に置いた。
同様に、この世界がリドゥを改変したものであれば、核となる彼女とそれを管理するリグレットは主催者の手元にある可能性が高い。
リドゥは彼女の為に作られた小さな世界を、リグレットがアップデートしたことで作られている。
故に彼女に何かあれば、連動してリドゥは崩壊してしまう。
だからこそ以前ドクトルは万が一に備え、天吹真理恵を捕らえて手元に置いた。
同様に、この世界がリドゥを改変したものであれば、核となる彼女とそれを管理するリグレットは主催者の手元にある可能性が高い。
ただ、これはあくまで予想だ。主催がリドゥとは関係のない別組織の可能性もある。
もしかしたら、既に用済みとして抜き取ったリグレットの精神は削除されているかもしれない。
もしかしたら、既に用済みとして抜き取ったリグレットの精神は削除されているかもしれない。
「さて……どうする」
ドクトルの行動理由のすべては、クランケこと井手口真莉愛の為だ。
手術の失敗を無かった事に出来るなら、殺し合いに乗って優勝を目指すという行為自体は構わない。
だが、リドゥにおいて全能のリグレットの力ですらクランケの足は治せなかったのだ。
仮に優勝して願いの権利を手にしたとしても、またあの時のように失敗する可能性だってある。
ドクトルの心はもう、再び失敗することに、患者である真莉愛に自分を責める目で見られることには耐えきれない。
セカンドオピニオンというわけではないが、本来の目的通りにリ・リドゥを作り出す道筋も可能なら確保しておきたいのだ。
だからこそ、不測の事態に備え、リグレットの身体だけは無事にリドゥに戻しておきたいのだが、優勝するうえでは彼女を殺さねばいけない。
その矛盾した思いを解決する方法が一つだけある。
手術の失敗を無かった事に出来るなら、殺し合いに乗って優勝を目指すという行為自体は構わない。
だが、リドゥにおいて全能のリグレットの力ですらクランケの足は治せなかったのだ。
仮に優勝して願いの権利を手にしたとしても、またあの時のように失敗する可能性だってある。
ドクトルの心はもう、再び失敗することに、患者である真莉愛に自分を責める目で見られることには耐えきれない。
セカンドオピニオンというわけではないが、本来の目的通りにリ・リドゥを作り出す道筋も可能なら確保しておきたいのだ。
だからこそ、不測の事態に備え、リグレットの身体だけは無事にリドゥに戻しておきたいのだが、優勝するうえでは彼女を殺さねばいけない。
その矛盾した思いを解決する方法が一つだけある。
「身体を入れ替える装置、か……」
放送で告知のあった、身体を入れ替える装置。
それを見つけ出し、『リグレット』の身体と自分の身体を一時的に交換する。
それならば、優勝を狙っても『リグレット』を殺さずに済む。
そして、本物のリグレットの精神が、予想通り主催者の手の内にあるのなら、再び入れ替え装置を使い身体を返却する。
これなら当初の目的通りのリ・リドゥを作り出すという道筋も残すことが出来る。
それを見つけ出し、『リグレット』の身体と自分の身体を一時的に交換する。
それならば、優勝を狙っても『リグレット』を殺さずに済む。
そして、本物のリグレットの精神が、予想通り主催者の手の内にあるのなら、再び入れ替え装置を使い身体を返却する。
これなら当初の目的通りのリ・リドゥを作り出すという道筋も残すことが出来る。
とはいえ、これは厳しい道程となる。
3日という時間で現在地不明の彼女と入れ替え装置の2つを探さねばいけない。
見つけ出しても素直に相手が従うとは限らない。
リグレットの強さは、楽士として協力関係を組んでいた自分自身が一番よく知っている。
彼女は、彼女を信仰する者達の思いを力とする。
この世界においてどれほどの力を持っているかは不明だが、生半可な実力では相手になるか不明だ。
仮面ライダーの力で無理矢理従わせるというのも、通用するかは分からない。
3日という時間で現在地不明の彼女と入れ替え装置の2つを探さねばいけない。
見つけ出しても素直に相手が従うとは限らない。
リグレットの強さは、楽士として協力関係を組んでいた自分自身が一番よく知っている。
彼女は、彼女を信仰する者達の思いを力とする。
この世界においてどれほどの力を持っているかは不明だが、生半可な実力では相手になるか不明だ。
仮面ライダーの力で無理矢理従わせるというのも、通用するかは分からない。
「……現実的ではないな」
迷ったところで、拒否権は自分に無い。
決めるのは自分じゃない。
ここは最低、救いがない。
決めるのは自分じゃない。
ここは最低、救いがない。
ドクトルが救われるには誰かを犠牲にしなくてはいけない。
それは自分も例外でない。
それは自分も例外でない。
■ ■ ■
500個以上のアトラクションを兼ね備える『ハレルヤランド』。
その中央に位置するマネーキャッスルにドクトルはいた。
ハレルヤランドは開始地点の近くであったこともあり、入れ替え装置の情報を集めるために訪れた。
これだけ広大な遊園地である、装置が隠されている可能性は高いとの判断であった。
マネーキャッスルに来た理由は、中心部に大きく備わっており、取り急ぎの探索場所として丁度良かったからだ。
アトラクションの中から装置のありそうな所の目星を付けるというのも考えたが、
場内に設置されたハレルヤランドマップがなんの嫌がらせか、縮尺が日本列島サイズとなっており探索が困難であった。
その中央に位置するマネーキャッスルにドクトルはいた。
ハレルヤランドは開始地点の近くであったこともあり、入れ替え装置の情報を集めるために訪れた。
これだけ広大な遊園地である、装置が隠されている可能性は高いとの判断であった。
マネーキャッスルに来た理由は、中心部に大きく備わっており、取り急ぎの探索場所として丁度良かったからだ。
アトラクションの中から装置のありそうな所の目星を付けるというのも考えたが、
場内に設置されたハレルヤランドマップがなんの嫌がらせか、縮尺が日本列島サイズとなっており探索が困難であった。
マネーキャッスルは、本来はこの施設のオーナーであり、身体としても呼ばれているハレクラニが居城としている場所である。
ドクトルの目の前にはいかにも成金趣味のような、札束とコインで埋まったプールがある。
真上のモニターには各アトラクションの売上が表示されており、金銭に浸かりながら業績を見ることが出来るという代物だ。
ドクトルの目の前にはいかにも成金趣味のような、札束とコインで埋まったプールがある。
真上のモニターには各アトラクションの売上が表示されており、金銭に浸かりながら業績を見ることが出来るという代物だ。
「理解できん趣味だ」
モニターの近くにはリモコンが転がっていた。
調べてみると、好きなアトラクションをここから爆破処分することができるという代物であった。
実際ハレクラニは儲からないと判断したアトラクションは即座にこの場所から爆破している。
とは言え、殺し合いの場において爆破という手段は余りに目立ちすぎる。
威力自体は大きいだろうが、使いどころが難しい。
それに入れ替え装置まで巻き込んで爆破してしまったら元も子もない。
調べてみると、好きなアトラクションをここから爆破処分することができるという代物であった。
実際ハレクラニは儲からないと判断したアトラクションは即座にこの場所から爆破している。
とは言え、殺し合いの場において爆破という手段は余りに目立ちすぎる。
威力自体は大きいだろうが、使いどころが難しい。
それに入れ替え装置まで巻き込んで爆破してしまったら元も子もない。
「支配者という奴は……」
一見すると天国のように映るハレルヤランドであるが、その『裏側』は地獄だ。
オーナーであるハレクラニは、不要なアトラクションは客が居ることなどお構いなしに爆破するうえ、ボーボボに敗北した部下も弁明を聴くことなく一円玉へと変換する程に冷酷な男だ。
また、ドクトルがこの城に辿り着くまでにも、立ち入り禁止と称された建設現場があった。
辺りに転がった鞭や乱暴に毟られた髪の毛などを見れば、恐怖がこの天国を支えている事が分かる。
オーナーであるハレクラニは、不要なアトラクションは客が居ることなどお構いなしに爆破するうえ、ボーボボに敗北した部下も弁明を聴くことなく一円玉へと変換する程に冷酷な男だ。
また、ドクトルがこの城に辿り着くまでにも、立ち入り禁止と称された建設現場があった。
辺りに転がった鞭や乱暴に毟られた髪の毛などを見れば、恐怖がこの天国を支えている事が分かる。
「どこも同じ、か」
彼が居たリドゥも、どんな願いも叶う天国のような世界であるが、それを維持するには『裏側』に犠牲がある。
強制的に現実世界から拉致し、元の世界への帰宅は許されず、反抗的な者は洗脳して無理やりリグレットの信者とする。
理想を叶えるには綺麗事だけでは通用しないのは、ドクトルにとって分かり切った事だ。
強制的に現実世界から拉致し、元の世界への帰宅は許されず、反抗的な者は洗脳して無理やりリグレットの信者とする。
理想を叶えるには綺麗事だけでは通用しないのは、ドクトルにとって分かり切った事だ。
「……下らん」
この地の支配者と同じようなことを自分はしてきた。
少女の脚を治すためだけに、大勢のそれ以外の命を犠牲にする。
プライオリティの順序がおかしいと言われようが、そんなことは分かっている。
それでもこれ以上、少女の未来を奪った後悔に苦しめられることは耐えられなかった。
少女の脚を治すためだけに、大勢のそれ以外の命を犠牲にする。
プライオリティの順序がおかしいと言われようが、そんなことは分かっている。
それでもこれ以上、少女の未来を奪った後悔に苦しめられることは耐えられなかった。
「あらあら?こんな大きなお城だもん♡王子様もいると思ったんだけどぉ」
不意に声が響いた。
くるりとした眉毛に、清潔感のあるスーツと革靴。
その身体には似つかぬ、媚びる様な女性口調。
肉体は四皇の料理人サンジ、精神は檻に閉じ込められたお姫様の影、シャドウ雪子である。
くるりとした眉毛に、清潔感のあるスーツと革靴。
その身体には似つかぬ、媚びる様な女性口調。
肉体は四皇の料理人サンジ、精神は檻に閉じ込められたお姫様の影、シャドウ雪子である。
「キャッ♡お医者様なんてス・テ・キ♡これより雪子の逆ナンコーナー始まるゾ♡」
「……これより、執刀を開始する」
「……これより、執刀を開始する」
両手でハートマークを作り誘惑する雪子に答えることなく、ドクトルはガシャットを挿入し、レバーを引く。
覚悟はとうに出来ている。
覚悟はとうに出来ている。
『タドルメグル、タドルメグル、タドルクエスト』
ゲームエリアが展開され、周囲にエナジーアイテムが出現する。
光に包まれればドクトルの姿は青と白の勇者、仮面ライダーブレイブレベル2へと変わった。
光に包まれればドクトルの姿は青と白の勇者、仮面ライダーブレイブレベル2へと変わった。
「あら、勇者様みたい。囚われのお姫様を助けてくれるのかしら?」
ドクトルはそんな期待に耳を貸すことはない。
ガシャコンソードを構え、雪子へと向き直った。
ガシャコンソードを構え、雪子へと向き直った。
「……ふうん……遊園地にヒーローショーはつきものだけど……」
その行為だけで雪子はドクトルに対しての興味が冷めた。
自分を連れ出してくれるヒーローじゃないのなら、なんの興味も抱かない相手だ。
自分を連れ出してくれるヒーローじゃないのなら、なんの興味も抱かない相手だ。
「もう私、フェザーマン見るって歳じゃ無いのよね!」
彼女が探偵少女のシャドウであれば、朝の特撮番組の様な姿に惹かれただろう。
だけど雪子が望むのは絵空事のヒーローではなく、実際に自分を救い出してくれる王子様だ。
だけど雪子が望むのは絵空事のヒーローではなく、実際に自分を救い出してくれる王子様だ。
「それにこういうの、もう見た!」
シャドウ雪子は異なる世界ではあるが、放送前に仮面ライダーとの戦闘を終えている。
襲い来るドクトルの剣術を、炎を纏った脚で軽く弾く。
中身は単なる女子高生の影、まだ完全に使い切れていないとはいえ、その身体は四皇幹部としてのスペックを誇る。
慣らし時間のうちに戦闘を経験し、コツを掴んでいた雪子が一歩有利となる。
襲い来るドクトルの剣術を、炎を纏った脚で軽く弾く。
中身は単なる女子高生の影、まだ完全に使い切れていないとはいえ、その身体は四皇幹部としてのスペックを誇る。
慣らし時間のうちに戦闘を経験し、コツを掴んでいた雪子が一歩有利となる。
「そうか、お前も機械か」
医者というものは人間の構造ならば嫌でも頭に入っている。
攻撃を受けた衝撃が人とまるで違う、鋼鉄に殴られたような感触だった。
相手が、同じオスティナートの楽士に所属するマキナのように、全身を機械に変えたサイボーグなのだと理解した。
彼の様な強者ならば、中途半端は通用しない。
ならば、さらなる力が必要だとガシャットを差し替える。
攻撃を受けた衝撃が人とまるで違う、鋼鉄に殴られたような感触だった。
相手が、同じオスティナートの楽士に所属するマキナのように、全身を機械に変えたサイボーグなのだと理解した。
彼の様な強者ならば、中途半端は通用しない。
ならば、さらなる力が必要だとガシャットを差し替える。
『Let's Going King of Fantasy!』
『タドルメグルRPG! タドールファンタジー!』
『タドルメグルRPG! タドールファンタジー!』
白を基調としたブレイブのスーツの上に鎧となるファンタジーゲーマが装着された。
その名は、先ほどまでのレベル2のブレイブを遥かに上回る、仮面ライダーブレイブ ファンタジーゲーマー レベル50。
その姿はテレビゲームの魔王の様な、禍々しい漆黒の衝動を放っている。
その名は、先ほどまでのレベル2のブレイブを遥かに上回る、仮面ライダーブレイブ ファンタジーゲーマー レベル50。
その姿はテレビゲームの魔王の様な、禍々しい漆黒の衝動を放っている。
「……執刀準備完了」
「なぁんだ、勇者様かと思ったら魔王なんだ」
「なぁんだ、勇者様かと思ったら魔王なんだ」
興味がそがれた様に雪子のテンションが下がる。
ドクトルが漆黒の万能マント『ウォーフェアマント』を翻せば、魔王には配下が必要だろうととはかりに異形の怪人、バグスターウイルスの群れが現れる。
ドクトルが漆黒の万能マント『ウォーフェアマント』を翻せば、魔王には配下が必要だろうととはかりに異形の怪人、バグスターウイルスの群れが現れる。
「あいにくだけど、私、魔王なんかに用は無いの!」
魔王とは、王子様と同じくお姫様を外へと連れ去っていくものだ。
ハイラル王家の王女。キノコ王国の王女。カイミーン国の女王。
この地に呼ばれし達と関係深き、彼女らを振り返っても分かる、伝統的な役割だ。
ハイラル王家の王女。キノコ王国の王女。カイミーン国の女王。
この地に呼ばれし達と関係深き、彼女らを振り返っても分かる、伝統的な役割だ。
「魔王なんて大っ嫌い!ほんっと、お姫様を閉じ込めるなんて酷いことするわよね!」
だけど王子と魔王がお姫様に与えるものは真逆だ。
檻から救い出すのが王子様であるが、
拉致した彼女らを狭い檻の中へと閉じ込め、自由を与えないのが魔王である。
檻から救い出すのが王子様であるが、
拉致した彼女らを狭い檻の中へと閉じ込め、自由を与えないのが魔王である。
「私の王子様じゃないなら、死んじゃってよ!クズ男!」
檻に閉じ込められたシャドウ雪子にとって気持ちを苛立たせる相手だ。
指示により襲い掛かるバグスターウイルスの群れに八つ当たりをするように、シャドウ雪子もまた、ジェルマの科学を起動する。
指示により襲い掛かるバグスターウイルスの群れに八つ当たりをするように、シャドウ雪子もまた、ジェルマの科学を起動する。
「本気のアタシ、見せてあげる!」
漆黒のスーツに包まれ、同色のマントとマスクが装着される。
ジェルマの科学に身を包んだ『ヒーロー』あるいは『怪物』。
その名は『おそばマスク』あるいは『ステルス・ブラック』。
ジェルマの科学に身を包んだ『ヒーロー』あるいは『怪物』。
その名は『おそばマスク』あるいは『ステルス・ブラック』。
足元のブースターによる加速がバグスターウイルスの群れを向かい打つ。
勢いを増した『アサルトダイブ』の突撃。
大勢いた彼らは一撃も入れることなく焼き尽くされ、瞬く間に消滅した。
四皇幹部相手に戦闘員如きでは、僅かな時間稼ぎ程度にしかならない。
勢いを増した『アサルトダイブ』の突撃。
大勢いた彼らは一撃も入れることなく焼き尽くされ、瞬く間に消滅した。
四皇幹部相手に戦闘員如きでは、僅かな時間稼ぎ程度にしかならない。
『コ・チーン!』
時間稼ぎだけで魔王には十分だった。
刀から湧き出た冷気が、凍てつかせんと雪子の足元へと迫る。
ガシャコンソードは炎剣と氷剣を切り切り替える事が出来る
刀から湧き出た冷気が、凍てつかせんと雪子の足元へと迫る。
ガシャコンソードは炎剣と氷剣を切り切り替える事が出来る
「そんなもの!」
すぐさま、雪子は『白の壁』を展開。
氷属性を弱点としたシャドウ雪子にとっての身を護る盾だ。
障壁に塞がれた氷の侵食は急激に速度を落とし、雪子には届かない。
相手の策を封じた雪子は、この機を逃さない。
体制を立て直す隙をついて蹴り飛ばしてやろうとし、
氷属性を弱点としたシャドウ雪子にとっての身を護る盾だ。
障壁に塞がれた氷の侵食は急激に速度を落とし、雪子には届かない。
相手の策を封じた雪子は、この機を逃さない。
体制を立て直す隙をついて蹴り飛ばしてやろうとし、
ドクトルの姿が目の前から消えた。
「な、……ええ!?」
いつの間にか背後へと回っていた、ドクトルの斬撃を紙一重で躱す。
バグスターウイルスも氷結もブラフであった。
本命はこの一撃。ウォーフェアマントには瞬間移動機能がある。
その機能を使い背後を取ったのだ。
バグスターウイルスも氷結もブラフであった。
本命はこの一撃。ウォーフェアマントには瞬間移動機能がある。
その機能を使い背後を取ったのだ。
一撃だけでは終わらない。
魔王は何度も瞬間移動し、予期せぬ方向からの攻撃を繰り返す。
海軍大将の放つレーザーにすら反応出来るサンジの肉体であるが、
予想も付かず、止まない斬撃に何時までも対応し続けるには雪子はまだ経験が足りない。次第に追い詰められていく。
魔王は何度も瞬間移動し、予期せぬ方向からの攻撃を繰り返す。
海軍大将の放つレーザーにすら反応出来るサンジの肉体であるが、
予想も付かず、止まない斬撃に何時までも対応し続けるには雪子はまだ経験が足りない。次第に追い詰められていく。
「こ、これでも喰らいなさい!」
彼女らしくなく、思わず焦る。
咄嗟に放った『焼き払い』の業火は魔王へと覆い被さらんと襲い掛かる。
だけど、魔王とは絶望を与えるものだ。
希望を容易く蹂躙できるからこそ魔王なのだ。
咄嗟に放った『焼き払い』の業火は魔王へと覆い被さらんと襲い掛かる。
だけど、魔王とは絶望を与えるものだ。
希望を容易く蹂躙できるからこそ魔王なのだ。
「え……」
苦し紛れに放ったその炎が届くことはない。
咄嗟に放った炎は魔王の持つ剣に全て吸い込まれていく。
火炎を操るガシャコンソードには炎を吸収する能力もある。
かの世界のラスボスが放った炎すらも容易く受け止める程にだ。
想定外の特性により、雪子に隙が生まれた所を魔王は追撃する。
咄嗟に放った炎は魔王の持つ剣に全て吸い込まれていく。
火炎を操るガシャコンソードには炎を吸収する能力もある。
かの世界のラスボスが放った炎すらも容易く受け止める程にだ。
想定外の特性により、雪子に隙が生まれた所を魔王は追撃する。
『キメワザ』『TADDL CRITICAL SLASH』
魔王は高く飛び上がり、ぐるりと回転力を付ける。
さながら少女の心に沸いた、シャドウという悪性腫瘍を身体から切除してやるかのように。
さながら少女の心に沸いた、シャドウという悪性腫瘍を身体から切除してやるかのように。
「嫌っ!こんな所で、消えたくない!」
ジェルマの科学で作られた身体といえど、扱うのはあくまで女子高生の影。
弱虫で、強くなんかない、一人で何もできない閉じこもった鳥。
自分の攻撃が通じず、迫りくる魔王の姿に、恐怖を抱くなというには無理なものだ。
打つ手の無い雪子は逃げるしかない。
弱虫で、強くなんかない、一人で何もできない閉じこもった鳥。
自分の攻撃が通じず、迫りくる魔王の姿に、恐怖を抱くなというには無理なものだ。
打つ手の無い雪子は逃げるしかない。
「あ……」
逃げる?どこへ?
気付いたときには、目の前に壁。
この城は檻だ。自分から閉じ込められた鳥に、逃げ場なんて最初から無かった。
気付いたときには、目の前に壁。
この城は檻だ。自分から閉じ込められた鳥に、逃げ場なんて最初から無かった。
「王子さまっ!王子さまっ!」
目前に迫った死が迫る。
どれだけ助けを呼んだところで、彼女の兵たる白馬の王子さまはもう来ない。
どれだけ助けを呼んだところで、彼女の兵たる白馬の王子さまはもう来ない。
「なんで……なんで来てくれないのっ!」
ドクトルは雪子へと狙いを付け急降下。
マネーキャッスルの壁を突き破り、遥か外へと飛び出した。
マネーキャッスルの壁を突き破り、遥か外へと飛び出した。
■ ■ ■
がらがらと、音を立てて崩れる城の壁を背にドクトルは呟く。
「……まず、一人か」
願いの為に人をこの手で殺していくことに、抵抗が無いかと言えばある。
リドゥにいた際は、毒を飲ませての殺人を試みた事はあるものの、それとはまた違う不快感が付き纏う。
リドゥにいた際は、毒を飲ませての殺人を試みた事はあるものの、それとはまた違う不快感が付き纏う。
「先は長いな……」
魔王の仮面に隠された医者の顔は窺うことが出来ない。
その奥で何を思うのかは、本人にしか分からないことだ。
その奥で何を思うのかは、本人にしか分からないことだ。
だが、これだけは言える。ドクトルは決して悪には成り切れない男だ。
以前、毒を盛った際も、人知れず泣きそうな声で何度も謝り続けたのだ。
かつて『命を奪うならせめて自分の手で』と言ったように、一度は命と向き合った医者として最後の矜持も持つ。
悪に成りきれない中途半端な男だからこそ、罪悪感に苦しみ続け、開放されない日々を送り続ける。
以前、毒を盛った際も、人知れず泣きそうな声で何度も謝り続けたのだ。
かつて『命を奪うならせめて自分の手で』と言ったように、一度は命と向き合った医者として最後の矜持も持つ。
悪に成りきれない中途半端な男だからこそ、罪悪感に苦しみ続け、開放されない日々を送り続ける。
口調からして中身は女だったのだろう。
もしかしたら、真莉愛と近い歳だったのかもしれない。
真莉愛の未来の為に、別の少女の未来を奪った。
もしかしたら、真莉愛と近い歳だったのかもしれない。
真莉愛の未来の為に、別の少女の未来を奪った。
そんな思いも泡沫の様に浮かび上がるが、ドクトルは魔王となると決めたのだ。
全ては贖罪。奪ってしまった真莉愛の幸福の為だ。
そう自分に言い聞かせ、進むしかない。
全ては贖罪。奪ってしまった真莉愛の幸福の為だ。
そう自分に言い聞かせ、進むしかない。
「あははははははは!」
背後から笑い声が響く。
いや、そんなはずはない、とドクトルは思わず振り返る。
その声は確かに倒したはずの少女の声であった。
いや、そんなはずはない、とドクトルは思わず振り返る。
その声は確かに倒したはずの少女の声であった。
「私……飛んでる!」
逃げる場所はただ一か所だけあった。
だから、跳ねた。
攻撃の直撃する直前、僅か刹那の時間。雪子はドクトルを飛び越え、瞬時にはるか天井付近まで飛躍し、回避していた。
だから、跳ねた。
攻撃の直撃する直前、僅か刹那の時間。雪子はドクトルを飛び越え、瞬時にはるか天井付近まで飛躍し、回避していた。
“空中歩行”〈スカイウォーク〉
この技は元々、サンジが逃げたいと強く思った事で身についた技術だ。
サンジという男は2年程、カマバッカ王国というオカマ達の国で修行をしていた事がある。
サンジ自身もオカマになりかけた程に辛く厳しい修業であった。
ある意味では女性より女性らしい彼らから受けた経験は、その身体にトラウマとして染み付いている。
その経験が男と女を併せ持つ現在の雪子の状態と、追い詰められた状況により想起され、直撃を回避出来た。
サンジという男は2年程、カマバッカ王国というオカマ達の国で修行をしていた事がある。
サンジ自身もオカマになりかけた程に辛く厳しい修業であった。
ある意味では女性より女性らしい彼らから受けた経験は、その身体にトラウマとして染み付いている。
その経験が男と女を併せ持つ現在の雪子の状態と、追い詰められた状況により想起され、直撃を回避出来た。
「あっはははははは!なぁんだ、【私】って飛ぼうと思えば飛べるんだ!」
笑いのツボに入ったかの様にゲラゲラと笑う。
飛ぼうと思えば何処までも飛べる。単に勇気が出なくて言い訳していただけ。
心の何処かでわかりきっていたそのことに、どこか自虐的に笑い、雪子も外へと飛び出す。
そうして、空高く飛び上がり、空中で反撃体制をとる。
飛ぼうと思えば何処までも飛べる。単に勇気が出なくて言い訳していただけ。
心の何処かでわかりきっていたそのことに、どこか自虐的に笑い、雪子も外へと飛び出す。
そうして、空高く飛び上がり、空中で反撃体制をとる。
「お返し!“悪魔風脚”〈ディアブル・ジャンブ〉!!!」
先ほどの逆の構図。光と影の様に攻守が反転する。
ドクトルの真似をするように、回転しつつ勢いを増してゆく。
ドクトルの真似をするように、回転しつつ勢いを増してゆく。
「まだよ!何倍にもして返してあげる!」
『コンセントレイト』、魔法技の威力を倍以上に上げるスキルを発動。
精神を集中させ高まった魔力により炎はさらなる勢いを増し、次第に全身を包み込む。
精神を集中させ高まった魔力により炎はさらなる勢いを増し、次第に全身を包み込む。
「これで消えてしまいなさい!」
脚の加速装置が更に威力を上乗せする。
二度目のステルスブラックへの変身に伴い、サンジの肉体を包む科学は以前より進行が進んだ。
その姿はさながら流星。
“流星おそばキック”。身体の料理人がそう名付けた技によく似ていた。
二度目のステルスブラックへの変身に伴い、サンジの肉体を包む科学は以前より進行が進んだ。
その姿はさながら流星。
“流星おそばキック”。身体の料理人がそう名付けた技によく似ていた。
『キメワザ』『TADDLE CRITICAL FINISH』
向かってくる雪子に対し、魔王も迎え撃たんと駆け出す。
相手が力を高めるならば、こちらもさらなる力を望む。
相手が力を高めるならば、こちらもさらなる力を望む。
『マッスル化』
迎え撃つ先のエナジーアイテムを回収し、魔王の力がさらに膨れ上がる。
ガシャコンソードの火炎と氷結が勢いを増し、混ざり合う。
そのままX字を描き、雪子へと振るわれる。
ガシャコンソードの火炎と氷結が勢いを増し、混ざり合う。
そのままX字を描き、雪子へと振るわれる。
「さよなら!ガッカリ王子様!」
その彼女の、迫りくる脚へと向けて。
■ ■ ■
二人の必殺技の衝突により、身を劈く轟音が鳴り響いた。
それは余波だけで周囲のアトラクションを軽く吹き飛ばす。地を鳴らし、削り取り、炎が舞い上がる。
元々ハレルヤランドには不要なアトラクションを処分するための爆破設備が備わっている。
舞い上がった炎はそれに引火し、周囲の被害を更に加速させた。
さながら災害の後だ。わずか一瞬で天国は地獄へと変わった。
崩壊が落ち着いた後、立っていたのはただひとり。
それは余波だけで周囲のアトラクションを軽く吹き飛ばす。地を鳴らし、削り取り、炎が舞い上がる。
元々ハレルヤランドには不要なアトラクションを処分するための爆破設備が備わっている。
舞い上がった炎はそれに引火し、周囲の被害を更に加速させた。
さながら災害の後だ。わずか一瞬で天国は地獄へと変わった。
崩壊が落ち着いた後、立っていたのはただひとり。
過剰強化≪Overdose≫された二人の技。
方や四皇幹部、方や魔王。
聞こえは良いが、その力を扱うのは女子高生と中年男性という素人だ。
両者共に本来の肉体所持者程に熟練していない。
少なくとも今この瞬間において、二人の必殺技の威力は同等であった。
体と技で差が付かないならば、勝敗の決め手となるのは心だ。
自ずと信念の強さとなる。
方や四皇幹部、方や魔王。
聞こえは良いが、その力を扱うのは女子高生と中年男性という素人だ。
両者共に本来の肉体所持者程に熟練していない。
少なくとも今この瞬間において、二人の必殺技の威力は同等であった。
体と技で差が付かないならば、勝敗の決め手となるのは心だ。
自ずと信念の強さとなる。
■ ■ ■
「あら?貴方、思ったより弱いのね」
立っていたのは、シャドウ雪子だった。
雪子の蹴りは剣圧を突き破り、ドクトルへと到達した。
雪子の蹴りは剣圧を突き破り、ドクトルへと到達した。
「俺は……何を」
ドクトル自身も気づいていなかったことだが、彼は無意識の内に力を抜いてしまった。
その理由はシャドウ雪子の脚技を、思わず斬撃で防ごうとしたことによるものだ。
脚とはドクトルにとって原罪の象徴であり、手に持つガシャコンソードは飛彩曰くメスである。
言わば女の足をメスで切り刻まんとしたのとなんら変わらない。
それはドクトルにとって、かつてのトラウマを想起させる行為だった。
ドクトルは決して非情になりきれない男だ。
再び女の足を機能不全にすることに、僅かながら『心の奥』で躊躇があった。
脚とはドクトルにとって原罪の象徴であり、手に持つガシャコンソードは飛彩曰くメスである。
言わば女の足をメスで切り刻まんとしたのとなんら変わらない。
それはドクトルにとって、かつてのトラウマを想起させる行為だった。
ドクトルは決して非情になりきれない男だ。
再び女の足を機能不全にすることに、僅かながら『心の奥』で躊躇があった。
「あ、わかった!貴方……もしかして【宮司桐人】ね?」
納得がいった様にシャドウ雪子は呟く。
なぜ、自分の名前を知っている、とドクトルが疑問を上げる前に言葉は続く。
なぜ、自分の名前を知っている、とドクトルが疑問を上げる前に言葉は続く。
「あはは!そっか!そりゃそうよね!怖いわよねぇ!女の脚を痛めつけるのは!」
誰も知らないはずの自分の原罪まで把握されている。
そのことに心の奥を撫で回すような、ねっとりとした苛立ちと不快感を与える。
そのことに心の奥を撫で回すような、ねっとりとした苛立ちと不快感を与える。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
ドクトルの心の奥に踏み込みますか?
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「あの子を外に連れ出してあげたかったんでしょ?白馬の王子様気取りで助けられると舞い上がって」
「……黙、れ」
「黙らない!だけど、お前は王子様じゃなくて魔王様!女の子の人生を台無しにして。一生出られない籠の中に閉じ込めた!」
「……黙、れ」
「黙らない!だけど、お前は王子様じゃなくて魔王様!女の子の人生を台無しにして。一生出られない籠の中に閉じ込めた!」
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本当に踏み込みますか?
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「ねぇ、そうでしょ……『せんせい』」
か細い『声』だった。
「たすけてよ」
恐怖、恨み、絶望、悲観。
それらが混ざった様な、今にも泣きそうな言葉。
ドクトルがずっと直視するのを避けてきた真莉愛の、その言葉を勝手に突き付けてやるかのようで。
それらが混ざった様な、今にも泣きそうな言葉。
ドクトルがずっと直視するのを避けてきた真莉愛の、その言葉を勝手に突き付けてやるかのようで。
「違う……お前は真莉愛じゃない!」
その言葉を否定するようにドクトルは立ち上がり、再び剣を構える。
胴を狙い、駆け出そうして。
胴を狙い、駆け出そうして。
「な……!」
そこから先は進むことが出来なかった。
鎧となるファンタジーゲーマが、RPGの呪いの装備の様にドクトルの動きを封じたからだ。
ガシャットギアデュアルβは扱うのが難しいガシャットだ。
身を包むファンタジーゲーマは、本来の所持者である飛彩でさえ意識を乗っ取られかけた程に強大な力を持つ。
長期の変身は難しく、使い始めた当初は気を失う事すらあった。
それでも、飛彩は人の命を預かるという、世界一のドクターとしての強い意志があったからこそ乗り越えることに成功した。
鎧となるファンタジーゲーマが、RPGの呪いの装備の様にドクトルの動きを封じたからだ。
ガシャットギアデュアルβは扱うのが難しいガシャットだ。
身を包むファンタジーゲーマは、本来の所持者である飛彩でさえ意識を乗っ取られかけた程に強大な力を持つ。
長期の変身は難しく、使い始めた当初は気を失う事すらあった。
それでも、飛彩は人の命を預かるという、世界一のドクターとしての強い意志があったからこそ乗り越えることに成功した。
ただ、飛彩と違いドクトルは悪人になりきれないと称されるように軸のぶれている男だ。
彼のような、人を救いたいという強い意志を持たず、その心は贖罪と後悔が占めている。
シャドウ雪子の煽り≪テラーボイス≫によってトラウマを揺さぶられ、『恐怖』を抱いた今、魔王の維持は困難となる。
飛彩の様に現実に立ち向かうことではなく、突き付けられた現実からの『逃走』が頭をよぎるドクトルに制御出来るわけが無い。
彼のような、人を救いたいという強い意志を持たず、その心は贖罪と後悔が占めている。
シャドウ雪子の煽り≪テラーボイス≫によってトラウマを揺さぶられ、『恐怖』を抱いた今、魔王の維持は困難となる。
飛彩の様に現実に立ち向かうことではなく、突き付けられた現実からの『逃走』が頭をよぎるドクトルに制御出来るわけが無い。
「なんだ、これは」
よって迎える結末は、飛彩の逆となる。
目が赤く染まり、衝動が全身を支配する。
目が赤く染まり、衝動が全身を支配する。
「あ……うぐ」
自発的意思が薄れていき、心が塗りつぶされていく。
さながら、リドゥにおけるデジヘッドのように。
その姿を雪子の影は熱を帯びた視線で見つめている。
さながら、リドゥにおけるデジヘッドのように。
その姿を雪子の影は熱を帯びた視線で見つめている。
「消えてしまいなさい!」
雪子が手を振れば、ドクトルの周囲を高熱の炎が囲みこむ。
そのまま炎を脚に宿し、身動きの取れないドクトルに蹴りを叩き込む。
『戦慄のロンド』、お姫様が可憐に舞い踊るかのようにリズムよく何発も。
見様見真似であり、身体の料理人には似合わぬ美しく無い動きだ。
そのまま炎を脚に宿し、身動きの取れないドクトルに蹴りを叩き込む。
『戦慄のロンド』、お姫様が可憐に舞い踊るかのようにリズムよく何発も。
見様見真似であり、身体の料理人には似合わぬ美しく無い動きだ。
それだけでは終わらない。
ダウンした魔王へと総攻撃として、何度も蹴りやスキルを重ねていく。
さながら、料理が絶望的に下手な天城雪子が手に取った材料を思いつきのまま調理する様に。
乱雑な技も、シャドウのスキルとジェルマの科学に後押しされれば、残り体力を表すライダーゲージはあっという間に0へと近づけていく。
ダウンした魔王へと総攻撃として、何度も蹴りやスキルを重ねていく。
さながら、料理が絶望的に下手な天城雪子が手に取った材料を思いつきのまま調理する様に。
乱雑な技も、シャドウのスキルとジェルマの科学に後押しされれば、残り体力を表すライダーゲージはあっという間に0へと近づけていく。
「どーん!」
最後に追撃として、彼女のかつてのヒーローである里中千枝のマネで締める。
空へと天高く突き上げた蹴りは、魔王をはるか地平の彼方まで吹き飛ばした。
空へと天高く突き上げた蹴りは、魔王をはるか地平の彼方まで吹き飛ばした。
■ ■ ■
シャドウとは、人々の抑えこまれた心の奥の象徴だ。
だから先ほど、剣を振るうのを一瞬躊躇したドクトルに対して、後ろめたい過去があるのだと察することが出来た。
だから先ほど、剣を振るうのを一瞬躊躇したドクトルに対して、後ろめたい過去があるのだと察することが出来た。
「読んだ通りだったみたいね」
雪子が取り出したのは二冊の手記だ。
支給品として配られていたそれには、ある医者とある患者の後悔が記されていた。
手術の失敗によって少女の足を不全にした医者と、その患者の物語だ。
支給品として配られていたそれには、ある医者とある患者の後悔が記されていた。
手術の失敗によって少女の足を不全にした医者と、その患者の物語だ。
「貴方……まるで【私】みたい」
それはある患者―――クランケこと井出口真莉愛のことだ。
彼女はリドゥにおいて自分の脚が治っているのに、医者と患者という関係が変わってしまうのが怖くて治っていないフリをしている。
一歩踏み出す勇気が無く、自分から檻に幽閉されることを望んだ少女。
要素を抜き出せば、本来の天城雪子とよく似ている。
彼女はリドゥにおいて自分の脚が治っているのに、医者と患者という関係が変わってしまうのが怖くて治っていないフリをしている。
一歩踏み出す勇気が無く、自分から檻に幽閉されることを望んだ少女。
要素を抜き出せば、本来の天城雪子とよく似ている。
だから、ある種の自己嫌悪感を抱いた。
半ば八つ当たりに近い。思わず苛立ちをドクトルにぶつけてしまうほどに。
吹き飛ばしたドクトルを追う気は無い。
受け身な天城雪子の影は、自発的には動かない。
必殺技の直撃を受けたところにさらなる連撃を浴びせたのだ。仮に生きていたとしても長くないだろうと結論付ける。
半ば八つ当たりに近い。思わず苛立ちをドクトルにぶつけてしまうほどに。
吹き飛ばしたドクトルを追う気は無い。
受け身な天城雪子の影は、自発的には動かない。
必殺技の直撃を受けたところにさらなる連撃を浴びせたのだ。仮に生きていたとしても長くないだろうと結論付ける。
「じゃあ次の王子様、首を洗って待ってろヨ♡」
飛べようになったたからと言って、本来の天城雪子の問題は何一つ解決していない。
依然として檻の中に閉じこもる。
これからも、やることは変わらない。
願わくば、今度こそ白馬の王子様に出会える事を、
依然として檻の中に閉じこもる。
これからも、やることは変わらない。
願わくば、今度こそ白馬の王子様に出会える事を、
祈っているだけ。
※ハレルヤランド内マネーキャッスルが一部破損。
また場内の一部施設に崩壊、爆発、火災が発生しました。
また場内の一部施設に崩壊、爆発、火災が発生しました。
【一日目/C-4 ハレルヤランド/深夜】
【シャドウ天城雪子@ペルソナ4】
[身体]:ヴィンスモーク・サンジ@ONE PIECE
[状態]:健康、疲労(小)、レイドスーツによる科学の目覚め(小)
[装備]:レイドスーツNo3(ステルス・ブラック)@ONE PIECE
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1、ドクトルとクランケの後悔@Caligula2
[思考・状況]基本方針:ここではないどこかへ自分を連れてってくれる人を探す。
1:我は影、真なる我。私じゃない天城雪子/ヴィンスモーク・サンジは殺す。
2:誰かぁ私をここから連れ出して♡できないなら死んじゃってよ。
[備考]
※参戦時期は本編で雪子の体に戻る前です。
※召喚を除くシャドウとしてのスキルを使用できます(二連牙、白の壁、焼き払い、アギ、コーチング、テラーボイス、戦慄のロンド、アサルトダイブ、マハタルンダ、コンセントレイト)。
※アギを纏うことで悪魔風脚を発動できるようになりました。
※レイドスーツを装備したことで肉体の科学が目覚めつつあります。具体的な影響や進展は後続の書き手にお任せします。
※空中歩行を発動できるようになりました。
【シャドウ天城雪子@ペルソナ4】
[身体]:ヴィンスモーク・サンジ@ONE PIECE
[状態]:健康、疲労(小)、レイドスーツによる科学の目覚め(小)
[装備]:レイドスーツNo3(ステルス・ブラック)@ONE PIECE
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1、ドクトルとクランケの後悔@Caligula2
[思考・状況]基本方針:ここではないどこかへ自分を連れてってくれる人を探す。
1:我は影、真なる我。私じゃない天城雪子/ヴィンスモーク・サンジは殺す。
2:誰かぁ私をここから連れ出して♡できないなら死んじゃってよ。
[備考]
※参戦時期は本編で雪子の体に戻る前です。
※召喚を除くシャドウとしてのスキルを使用できます(二連牙、白の壁、焼き払い、アギ、コーチング、テラーボイス、戦慄のロンド、アサルトダイブ、マハタルンダ、コンセントレイト)。
※アギを纏うことで悪魔風脚を発動できるようになりました。
※レイドスーツを装備したことで肉体の科学が目覚めつつあります。具体的な影響や進展は後続の書き手にお任せします。
※空中歩行を発動できるようになりました。
【ドクトルとクランケの後悔@Caligula2】
シャドウ天城雪子に支給。
リセット段階のリドゥに残された二人の記憶の残滓。
本編クリア後に彼らとの記憶に打ち勝つことにより閲覧可能となる二冊の手記。
二人の現実でのプロフィールから語られなかった後悔まで記載されている。
シャドウ天城雪子に支給。
リセット段階のリドゥに残された二人の記憶の残滓。
本編クリア後に彼らとの記憶に打ち勝つことにより閲覧可能となる二冊の手記。
二人の現実でのプロフィールから語られなかった後悔まで記載されている。
■ ■ ■
ライダーゲージは体力を表す。
0になったとき、変身者はゲームオーバー。即ち死亡する。
0になったとき、変身者はゲームオーバー。即ち死亡する。
「……生き残ったか」
ドクトルは生きていた。
過剰強化された蹴りにより、周囲の湖を飛び越え隣のエリアの川岸まで吹き飛ばされはした。
しかし、勢いのまま地面に叩きつけられた事で、ゲージが0になる直前にガシャットギアが外れ、幸か不幸か変身は解除された。
ライダーゲージは変身を解除すればリセットされる。
雪子がその仕様を知らなかったが故に一命を取り留めた。
過剰強化された蹴りにより、周囲の湖を飛び越え隣のエリアの川岸まで吹き飛ばされはした。
しかし、勢いのまま地面に叩きつけられた事で、ゲージが0になる直前にガシャットギアが外れ、幸か不幸か変身は解除された。
ライダーゲージは変身を解除すればリセットされる。
雪子がその仕様を知らなかったが故に一命を取り留めた。
「うっ…………ぐ」
とはいえ、限界を超えた力の代償は肉体を蝕む。
ファンタジーゲーマーの強化装置『エンハンスギアベータ』は戦闘に関わる全機能のリミッターを強制解除し、変身者の負担と引き換えに強大な力をもたらすものだ。
かつての飛彩のようにドクトルは地面に伏せる。
ファンタジーゲーマーの強化装置『エンハンスギアベータ』は戦闘に関わる全機能のリミッターを強制解除し、変身者の負担と引き換えに強大な力をもたらすものだ。
かつての飛彩のようにドクトルは地面に伏せる。
「……かっこわるいな……俺は」
魔王としての覚悟を突き通せず、中途半端な自分に嫌気が指す。
どれだけ分かっていても自分の限界を感じてしまう。
どれだけ分かっていても自分の限界を感じてしまう。
それでも、最後までやり遂げなければいけない。
気を失う前にデイバッグに入っていた薬を飲み、脳内物質を全開放し、無理やり目を覚ます。
成分もはっきりしていない薬品に頼ることに医者としての抵抗はあったが、この状況下で休むわけには行かない。
身体に鞭を打ち、倒れそうになりながらも、もう一度立ち上がる。
3日間という限りある時間。果たせねばならぬ贖罪と恐怖が、嫌でも身体を動かす。
気を失う前にデイバッグに入っていた薬を飲み、脳内物質を全開放し、無理やり目を覚ます。
成分もはっきりしていない薬品に頼ることに医者としての抵抗はあったが、この状況下で休むわけには行かない。
身体に鞭を打ち、倒れそうになりながらも、もう一度立ち上がる。
3日間という限りある時間。果たせねばならぬ贖罪と恐怖が、嫌でも身体を動かす。
「……早く、俺を解放してくれ」
願わくば、いずれ辿り着く救いの為に。
叶うか分からない夢物語であれ進み続けるしかない。
叶うか分からない夢物語であれ進み続けるしかない。
報われるか、果てるか、決めるのは僕じゃない。
【一日目/D-4/深夜】
【ドクトル@Caligula2】
[身体]:鏡飛彩@仮面ライダーエグゼイド
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:ゲーマドライバー@仮面ライダーエグゼイド
[道具]:基本支給品、ズバリ・アドレナリン(残り9個)@ニンジャスレイヤー、タドルクエストガシャット@仮面ライダーエグゼイド、ガシャットギアデュアルβ@仮面ライダーエグゼイド
[思考・状況]
基本方針:真莉愛の理想と幸福を叶え、贖罪を終える
1:医者が人の命を奪う。その行為に、最早躊躇いはない。
2:入れ替え装置及びリグレット(肉体)を捜索する。
3:リグレット(肉体)と一旦身体を入れ替え、優勝後にリグレット(精神)と装置を使い身体を返す。
[備考]
※参戦時期は第8章前
※リグレットの精神及び天吹茉莉絵が主催の手の内にある可能性を考えています。
【ドクトル@Caligula2】
[身体]:鏡飛彩@仮面ライダーエグゼイド
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:ゲーマドライバー@仮面ライダーエグゼイド
[道具]:基本支給品、ズバリ・アドレナリン(残り9個)@ニンジャスレイヤー、タドルクエストガシャット@仮面ライダーエグゼイド、ガシャットギアデュアルβ@仮面ライダーエグゼイド
[思考・状況]
基本方針:真莉愛の理想と幸福を叶え、贖罪を終える
1:医者が人の命を奪う。その行為に、最早躊躇いはない。
2:入れ替え装置及びリグレット(肉体)を捜索する。
3:リグレット(肉体)と一旦身体を入れ替え、優勝後にリグレット(精神)と装置を使い身体を返す。
[備考]
※参戦時期は第8章前
※リグレットの精神及び天吹茉莉絵が主催の手の内にある可能性を考えています。
【ズバリ・アドレナリン@ニンジャスレイヤー】
ドクトルに支給。
ヨロシサン製薬が製造する精神安定系の薬剤。10個セット。
重症を負ったニンジャ達の気付け薬や鎮痛薬として使われる。
オーバードーズを繰り返すと中毒症状を起こし、切れると頭痛や思考の鈍化などが起こって最悪死に到る。
注射器を介しての接種が主であるが、作中では粉末型や食料品に含まれたものもありバリエーションが豊富。
今回はZBR錠剤として支給。
ドクトルに支給。
ヨロシサン製薬が製造する精神安定系の薬剤。10個セット。
重症を負ったニンジャ達の気付け薬や鎮痛薬として使われる。
オーバードーズを繰り返すと中毒症状を起こし、切れると頭痛や思考の鈍化などが起こって最悪死に到る。
注射器を介しての接種が主であるが、作中では粉末型や食料品に含まれたものもありバリエーションが豊富。
今回はZBR錠剤として支給。
31:変な病院 | 投下順に読む | 33:「また会えるよね」って、声にならない声 |
時系列順に読む | ||
登場話195:変身するわ、変身するの。私は貴方、貴方は私。変身するぞ、変身したぞ。我は汝、汝は我。 | シャドウ天城雪子 | |
登場話98:決めるのは僕じゃない | ドクトル | 38:切って貼った 誇張されたラピュタ王が居たよ 虚構のコラージュを貼るよ |