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  • 今際の際際で踊りましょう

真贋バトルロワイヤル

今際の際際で踊りましょう

最終更新:2025年01月18日 20:22

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 「まさか延長戦があるとは思わなかったな。」

 紙でできた蓑を纏う中年の男が、にたりと悪辣な笑みを浮かべた。
 ビルの路地裏にもたれ掛かかる男、レジィ・スターが羂索の携わる殺し合いに参加するのはこれで2度目だ。
 死滅回游。そう銘打たれた戦いで彼は死亡し。地獄に行くかと思っていたその魂は何の因果か羂索の遊戯盤の上にあった。

 「しかしこのバトルロイヤル、死滅回游の感覚で挑むのはよくないね。随分凝ったルールじゃないか。」

 ”経験者”たるレジィだからこそ、殺し合いにおける動きは慎重を期する。
 死滅回游との差異は複数あるが、レジィにとって重要な要素を1つ上げるなら。プレイヤーの戦力差。
 日車寛見や鹿紫雲一を筆頭とする図抜けた強者により数日と経たずに膠着状態になった死滅回游とが明らかに異なる。
 もしレジィを片手間に惨殺できるような強者がいたとしても、バグスターウイルスによる制約で弱体化している。
 レジィが欠伸しながら殺せるような弱者がいたとしても、支給品やソードスキル、エナジーアイテム如何では逆に負けることも現実的に起こりえる。

 「これは少々。本腰入れなきゃかもしれないね。」

 死滅回游とは違いズ抜けた強者による蹂躙で膠着状態になることはないだろう。
 アイテムを駆使し、エナジーアイテムを利用し、徒党を組み、危険な強者を討つ。
 バトルロワイヤルではそれができる。
 いみじくも羂索が言った通り、弱者や非戦闘員であっても覚悟があれば戦える環境と言えた。
 自分の姿が本名ではなく受肉体の名前なのは羂索の手抜きを疑ったが。それ以外はレジィの興味を引くものであった。

「レジィ……さま。」

 鼻歌交じりに思索にふけるレジィを、かすかな声が現実に引き戻す。
 声の主である麗美という少女は、レジィと同じく死滅回游の参加者で、当時はレジィの配下であった女だ。
 だが今彼女は、煤に汚れたビルにもたれ掛かり腹からだらだらと血を垂れ流している。
 原因は明確だ、腹部には包丁が3丁深々と刺さっている。
 止めどなく溢れ出す血が彼女のワンピースを染める。致命傷であることは誰から見ても明らかだった。

「腹に3本もナイフ刺さっているのにまだ死なないのは驚きだよ。思ったより頑丈だったんだね。」
「な……んで。レジィさ……」
「なんでって?羂索も言ってたでしょ。これは殺し合いなんだよ?
 死滅回游に参加した麗美ならその程度……」
「そうじゃ……な……なんで!
 私を守る……って!私を好きって!!言ってくれたのに!」

 死滅回游の時に、麗美を利用するために言った口車。
 他の泳者(プレイヤー)を招く囮としてレジィは麗美を利用していた。
 もちろん。彼の中に麗美に対する庇護の意思もなければ愛情などこれっぽちもない。
 指摘されるまで忘れていた言葉に。何よりこの現状でもそんな言葉を信じていた麗美の馬鹿さ加減に思わずレジィは噴き出した。

 「死滅回游の時は、プレイヤーごとに持ち点があった。
 羂索は色々裏で動いていたみたいだけど、表向きの泳者の目的は『点の取り合い』
 参加者であることが1つの価値だったし、参加者を労せず釣れる君のような人間がいると手間が省けたのは確かだね。」
 「わた……しなら!レジィさ……の仲間としてまだ……」
「どうやら麗美はルールを聴いていなかったみたいだね。
 このバトルロワイヤルで羂索は一度でも”他人を殺すことで得られるボーナス”や”プレイヤーが持つ得点”のような話をしてたかな?」

 してないよね?
 そう続ける男の目は、死にかけている虫を見るかのように冷たい。

 「”ゲームを放棄するな””ゲームを崩壊させるな””最後まで生き残った一人には理想を叶える権利がある”
 羂索が言ったのはこれだけだ。プレイヤーを積極的に殺すメリットや点数のなんてどこにもなかったよ。
 隠しルールの1つや2つはあるだろうとは思うけど。それでもこのゲームが死滅回游とは別物だっていい加減理解してよ。」

 レジィはあきれたように吐き捨てる。
 既にその眼は、麗美を捉えてなどいなかった。

 麗美の片隅に転がったリュックを、レジィは我が物顔で拾い上げる。
 支給品1つ1つに「へえ。」「なるほどねぇ。」と楽しそうな声をあげ、残らず自分のリュックにしまい込む。

「かえ……し……」 
 手を伸ばす麗美に、レジィは舌打ちと共に手を払いのける。

 レジィ・スターは理解していた。
 このバトルロワイヤルにおいて、殺人に抵抗がない強者が弱者と手を組むメリットは極めて薄い。
 死滅回游のようにプレイヤーの持ち点などがない以上、彼らにとっては下手な参加者より支給品や令呪のほうがよほど価値が高い。
 ひと言でいえば殺して奪ったほうが早かった。

 蓑から二枚のレシートをちぎり指に挟む。
 レジィの呪力によりレシートが音を立てて燃え、消え去ったレシートと入れ替わるように、2丁の包丁がレジィの前に出現した。
 レジィの術式。再契象。
 その能力は、契約書を元にした契約の再現。
 一言で言えば、レシートの内容の具現化である。

 具現化した包丁がレジィの指示で麗美に突き刺さる。
 1つは心臓を。1つは喉を。
 血を吐くこともできず、穴の開いた風船のような風切り音が麗美の喉から漏れる。

「ついでに言っておくけど。
 価値がないのなら。俺の術式知ってるやつを生かしておくわけないでしょ。」

 虚ろな目をして血だまりに倒れる少女に、レジィの声は届いていなかった。

 死滅回游で手を組んでいた麗美は、当然レジィの術式を知っていた。
 術師にとって己の術式は秘匿すべき情報である。
 そして過去を生きた術師にとって、仲間以外の命はさして大切なものではない。
 それこそ、重要な情報を守るためなら殺してもいいくらいには。どうでもいいものだ。
 麗美が死んだ理由をあえて述べるなら、その程度のことであった。

【麗美@呪術廻戦 死亡】

 ◆◇◆◇◆

 麗美の死亡を確認していたレジィは、路地の入口で何かがぶつかる音を聞いた。
 レジィが振り向いた先で、麗美と同年代の少女が「ひっ!」と悲鳴を上げ、足早に逃げていく。
 全身にレシートを纏った中年の男が、血まみれの女の子を調べているのだ。さぞ奇怪で恐怖を覚える光景だったろう。

「見られちゃったか。」

 当のレジィはさしたる焦りも見せていない。
 肌色の上着と紺色の長い髪が視界の端で見えた。おそらく死滅回游と近い時代の人間だろう。
 あの青ざめた表情から見るに人の死に慣れてはいない。少なくとも呪術師ではないだろう。

「だからと言って手を抜くわけないし。
 見逃してやる気もないんだけどね。」

 蓑からレシートを何枚かめくると、包丁の時と同様呪力で焼き切る。
 プロペラのついたドローンが4台現れ、少女の逃げた先へと飛び出した。
 ドローンはレジィの持つスマホ――むろんこれも術式で具現化した――を通じ、リアルタイムで周辺の様子を映し出す。

 画面の中では人のいない都市を大人しそうな女学生が息を切らして逃げ続ける。
 烏が飛びさる街の中、ドローンに気づいた少女が何度も振り返り交差点を曲がり振り切ろうともがいていた。
 人並み以上には動けてはいるがスタミナや運動能力が抜きんでて高いわけではない。しばらくすればどこかに腰を落ち着けるだろう。

 スクーターあたりを再契象して、落ち着いた先まで追って殺すか。
 女学生の行方を観察するレジィであったが、画面の中で異変が起きる。

「……ドローンが壊された?」

 レジィが放った4台のドローンのうち、1つの映像が途切れた。
 瞬間、別のドローンに人影が映り込む。
 白い肌と銀色の髪をした、無表情な少女だった。追いかけている女学生と同じくらいの年代だろうか。
 動きやすそうな白い無地の服に青いマフラーをつけた姿が一瞬だけ映り込み、少女が黒い何かを振るうとドローンからの映像が途切れる。
 続けて3つ。4つ。上空5mは浮いているはずのドローンを少女は残らず叩き切り。
 真っ暗になった液晶が困惑するレジィの顔をはっきりと映し出した。

「まさか壊されるとはね。俺の呪力も上乗せされているはずなんだけど。
 見たことない装備だったけど同業者かな?」

 レジィの興味はドローンを破壊した少女の側に移りつつあった。
 再契象で出したものはレジィの式神に近い。
 レジィの呪力が乗っているそれらの物体は、ただのドローンとはいえ少女が容易く破壊できるものではない。
 あの少女がもともと持っていたものか、それとも支給品によるものか。
 どちらにせよこのまま学生服の少女を逃がせば、銀髪の少女もレジィの敵になるだろう。

「見逃すのはちょっとリスクが大きいな。
 せっかくだし、麗美から貰った支給品。試してみよっか。」

 リュックから5つのシリンダーを備えたトランペット状の支給品を取り出すと、これまた麗美から奪った鍵状の支給品をシリンダーに差し込み吹き鳴らす。
 支給品の名はラッパラッター。
 軽快な音が鳴り終わると、レジィの前には2mほどの機械が佇んでいた。

 とある宇宙海賊が持っていたその楽器は、スーパー戦隊の力の結晶であるレンジャーキーを傀儡の兵士として実体化させることが出来るアイテムだ。
 だが今回レジィが刺しこんだのはレンジャーキーではなく、羂索が用意した起動キー。
 必然、実体化されるのもカラフルな正義の味方などではない。

 「それじゃ、よろしくぅ。」

 レジィの指示を受け、機械は2人の少女を殺すために足早に駆けだす。
 ラッパラッターの力で現れた何か。
 口が裂け、背には無数のチューブが突き刺さる鈍色の機械。
 その正体はレジィの知らない異世界のロボット兵器――ではない。
 くしくもレジィや麗美と同じ世界から持ち込まれたものだった。

 ――究極メカ丸 絶対形態。
 傀儡操術を操る術師の青年の切り札。
 搭乗者もいない傀儡が悪意を持って解き放たれた。

◆◇◆◇◆ 

 大通りにいる人間は、藤乃代葉ともう一人の少女だけだ。
 周囲の電柱には無数の烏が止まり、それ以外の生き物の気配はない。
 異様な空気が周囲を支配する中。代葉が手を振ると烏が一斉に飛び立った。

 「式神を出していてよかった。おかげで消耗は少なくて済む。」
 4基のドローンを破壊したのは、真っ黒い槍を握る代葉だった。
 周囲を蠢く烏の正体は代葉の式神 眇の鴉合(すがめのあごう)。
 その能力で烏と位置を入れ替えることで、代葉は空中を飛び回るドローンを破壊したのだ。

「なんだったんだろう。あのドローン
 令力みたいな感じがしたけど……。幻妖じゃないし陰陽師が使うにはセオリーから離れすぎてる。」

 先ほど破壊した相手は、代葉にとって予想外の存在だった。
 彼女が普段相手にするのは幻妖と呼ばれる怪物たちだ。
 だが代葉が令力らしきものを感じてきてみれば、そこにあったのは幻妖でも陰陽師でもなく4基のドローン。
 女の子を追いかけていた以上操作していた黒幕がいるのだろうと破壊することを選んだが、その正体は代葉にはわからない。

 彼女の世界の陰陽師とレジィの世界の呪術師は、似た存在ながら能力の性質は全く異なる。
 代葉の世界では陰陽師が扱うのは霊衣と呼ばれる装備や盡器と呼ばれる固有の武器だ。
 現代機械を用いて戦う陰陽師など代葉の知る限り一人もいない。というよりも彼女の常識から大幅に外れていたのだ。

 「あ、ありがとうございます!」

 頭を悩ませる代葉の後ろから、よく通る声が響いた。
 紺色の髪した穏やかそうな少女が、代葉に深々と頭を下げる。
 その様子にきょとんとした顔を浮かべ、代葉は自身と相手の少女を交互に指さした。

「……見えているの?」
「え?」

 少女もまたきょとんとした顔をして、「見えているけど」と困ったような顔を向けた。
 先ほどの相手も常識外なら、目の前の少女が代葉のことを近くできたことも常識外。
 霊衣と呼ばれる陰陽師の戦闘装備。
 それを身に纏っている今の代葉は、普通の人間からは見えないはずなのだ。
 目の前の人間が代葉と同じ陰陽師か、はたまた人と変わらぬ姿をしたレベル4の幻妖であるなら話は別だが。
 怯えた顔でドローンから逃げていた少女だ、その可能性はごく低いだろう。

「見えているなら都合がいい。早く逃げて。」

 見えている理由は分からない――恐らく羂索が言っていた”制限”のせいだろうか。
 だがそれを気にする余裕は、代葉には残っていなかった。

「あのドローンはただ捜索のためだけに飛んでいた。
 貴女、何かから逃げていたんでしょ?多分追手が来る。」
「え。なら貴女も逃げないと!」

 学生服の少女が慌てて代葉の手を掴む。
 足が震えているのに、今にも泣きだしそうなのに。
 一人で逃げ出さず、代葉にも逃げようと伝える彼女。
 いい人だな。 
 少女の手を振りほどいた代葉は、僅かに柔らかな笑顔を浮かべていた。

「私は大丈夫。
 貴女が近くにいて気を張っているほうがむしろ困る。」

 本心だった。今の代葉は無関係の他人を見捨てる選択は出来ない。
 ドローンさえどうにかできない人間であるならば、下手に近くにいるより離れてくれた方がやりやすい。
 それでも、可能な限り棘の内容に言おうとしたが。冷たい印象を与えてしまっただろうか。
 それでも仕方がない。そう自分に言い聞かせ女の背中を押す。
 顔を歪める少女だったが、悩んだ末に「ごめんなさい。」と言い残し走り去った。

「謝ることなんてないのに。」

 1人残った代葉の前に、上空から何かが降ってくる。
 機神は交差点の中心に降り立ち、顔に二対3つずつ並んだ水色の発光体でじっと代葉を眺める。
 レジィの手で実体化した、究極メカ丸 絶対形態。
 感情を感じさせない鈍色の機械は呪術に深くかかわる傀儡だからか、正体を知らない代葉にも先ほどのドローンよりなじみ深い感覚があった。

 (羂索の言っていたパワードスーツ?
 じゃあ中にドローンの主が入ってる?
 その割には令力が薄い気がするけど……)

 無言のまま代葉は槍を構え、周囲の烏を呼び戻す。
 疑念も情報不足も、後回しだ。
 息を整え、意識を全て目の前の機械に向ける。

 「関係ない、夜島くんや先輩ならきっとこうする。」

 メカ丸の周囲を烏の群れが覆い、鈍色の剛腕が寄りかかる群れを必死に振り払う。
 わざわざ目のようなパーツを造っているのだ。視野は兎も角視覚情報は顔から得ているだろうと代葉は推測した。
 メカ丸の背後を飛んでいた一匹と位置を入れ替えた代葉は、手にする黒い槍――染離という名をした彼女の盡器を右腕に突き刺した。
 鈍色をした装甲に、先端部分がわずかに突き刺さる。
 牽制のつもりで放った一撃ではあるが、薄皮を斬った程度のダメージしか与えられないというのは代葉にしてもショックだ。

 「……硬い。」

 鈍色の装甲は張りぼてじゃなかったらしい。
 刀身はわずかにしか刺さらず、地面に突き刺したかのように手ごたえを感じない。
 代葉の槍はメカ丸の腕よりリーチが長いとはいえ、決定力が不足しているのは如何ともし難かった。

 背後から右腕を刺す代葉に、メカ丸は左手を開く。
 びっしりと装甲で覆われた掌の中央に、逆三角形の射出口が開いていた。
 普段の色は不明だが、急速にエネルギーを溜めた射出口は鉄を溶かしたように真っ赤に光っている。

 急いで染離を引き抜き、軽快な動きで代葉はメカ丸から距離をとる。
 射出口の周辺を烏で妨害し、とっさに払いのけようと反らした左手から光線が放たれた。
 大祓砲(ウルトラキャノン)。メカ丸が撃ち放つ呪力の光線。
 本来の大きさの絶対形態ではメカ丸1年分ほどの呪力を消費し、その代わりとしてダムを破壊するほどの熱量と威力を誇る。
 2mほどまで縮小したこの場のメカ丸でも木々を焼き払う威力がある。
 大きく上に向けて放たれた光線はビルに焼け焦げた穴をあけ、軌道上にいた烏が3匹ほど消滅した。

「今のは令力の塊?
 光線上にして撃って来るなんて。なんて出力。」

 直撃すれば霊衣を着ていてもただではすむまい。
 攻撃力も防御力も上の相手。まごうことなき格上だ。
 甘く見ていたわけではないが「どれだけ温存して勝つか」という思考だった代葉は、認識を改めた。

 「普通の攻撃じゃ効果は薄い。
 ……狂骨がいてくれたら楽だったんだけど。
 いないならいないで、出来ることをするだけ。」

 距離を取り、烏で周囲を攪乱させる。
 視界と両掌を中心に烏を囲ませ、槍を鎌状に変化させ中距離からメカ丸を斬りつけ続ける。
 相手は鬱陶しそうに烏を払い、時折手のひらから光線を放つ。
 一発放たれるごとに周囲の地面や建物が焼き削れ、烏も次々と姿を消していた。

 街灯が焼け落ち視界が狭まる。
 その中心で、メカ丸の6つの目が人魂のように不気味に光っていた。
 厄介なことに光線は両手から撃てるらしく、堅牢な装甲は一発ごとに熱を帯び近づくだけで肌が焼けそうになる。

(狙いは関節。そして……『あそこ』ならダメージが通るはず)

 それでも代葉の表情は変わらない。
 疲労を感じさせない涼しい顔で、淡々と動き回りメカ丸の攻撃をいなし続ける。
 チャンスになったのは5回目の光線。
 メカ丸はその腕をまっすぐに伸ばし、右腕から大祓砲(ウルトラキャノン)を放つ。

「来た。」

 光線が地面を抉り、余波で数匹の烏が倒れ消える。
 機を見計らった代葉は近くの烏入れ替わり、焼けた地面の上メカ丸の正面に立った。

 アスファルトの焼け焦げた匂いが立ち上る中、鎌状に伸ばしていた盡器を巨大な槍に変化させメカ丸に突き刺す。
 狙いは一か所。
 大祓砲の射出口。
 鈍色の装甲よりも遥かに脆いだろう右掌の真ん中を、代葉の槍が深々と貫いた。

 「外から刺しても効かないなら、脆いところを奥まで貫けばいい。
 まっすぐ伸びた腕、これなら中にいる貴方にもダメージが入るはず。」

 代葉の読み通り射出口は装甲より脆かった。
 掌から差し込まれた槍は中にいる人物の右腕を貫通している。
 痛みを感じる人間であればまともに動くことは出来なくなるダメージに違いない。
 間違いなく隙ができる。あわよくばこのまま無力化できる代葉は考えていた。

 代葉の誤算は1つだけ。
 理由は明確だ。彼女の前にいるのはラッパラッターによって生み出された傀儡だ。
 起動キーとして支給された他のアイテムと変わらない姿ではあるものの。

 ・・・・・・・・・・・
 中に人など入っていない。

 槍で突き刺した中身は、まるで何も入っていないかのように手ごたえがない。
 肉を貫いた質感もなければ流れ出る血もない。
 パワードスーツの中にいるだろう誰かは声もなければ動きもない。
 槍の切っ先がカツンと何かに触れた。
 腕を貫いているはずの槍はメカ丸の右肩に位置する装甲まで届いている。
 なのに、代葉には何の手ごたえも感じられない。

「……もしかして遠隔操作?」

 その事実を理解した代葉の顔が驚愕の色に染まる。
 対峙していた機械の中身は張りぼてだ。
 原理は分からないが、遠隔操作か自動操作か。
 同時に、そう考えれば納得できる点もあることに気づく。
 烏が近付けば払いのけ、タイミングを見計らい掌から光線を放つ。
 目の前の相手の動きはオート進行のように機械的。
 だから、光線をチャージしたまま鳥を払いのけ、上空に光線を撃つなどという悪手も打つ。
 彼女が戦っていたのは人間ではなく。どこかの誰かが扱う意思なき兵器。
 それはこの戦闘が相手を破壊するまで終わらないということを意味していた。

 「嘘。リモートでこの性能って。」

 深々と右手に槍を突き刺したまま、代葉の思考が一瞬困惑に包まれる。
 それは実質、リーチの優位を捨てたに等しい。
 自立稼働するメカ丸を前に、その数瞬の隙は致命的であった。

 ただでさえ硬いメカ丸の装甲。
 一月後の代葉ならばともすれば破壊できただろう。
 この場に狂骨が居れば、その力を引き出し対応できただろう。
 だが今この場では、バグスターウイルスの制約もありメカ丸にダメージを与えることは出来ても破壊するには出力が足りない。
 右腕に槍を突き刺した程度では、メカ丸の”攻撃”は止まらない。

 向けられた左腕、その中心に空いた穴にエネルギーが集約されていく。
 反応が遅れた代葉は間近に熱を感じつつ、回避ができないことを理解させられた。

 「しまった。」

 飛び上がる?それとも烏と位置を変える?
 どちらも間に合わない。間に合ったとしても今いる位置の真後ろであの少女逃げている。
 大祓砲(ウルトラキャノン)。左手から放たれた令力(じゅりょく)の波を代葉は正面から受け止める。
 周囲の烏ごと狙い範囲を広げたためか、威力は抑えられている。
 それでも焼けつくような息苦しさが全身を襲う。代葉の盾として波にのまれた20匹ほどの烏は残らず消えた。

 数十メートルを押し込まれ、土埃と煤で汚れた体で片膝をついた。
 式神を盾とし霊衣を着ていなければ、器官や粘膜が焼け戦闘不能になっていただろう。
 実際のダメージはそれほど致命的ではなかったが、霊衣の所々が焼け焦げ耐えがたい熱さと息苦しさが全身に残り続けている。
 ガードに使った両腕に至ってはやけどになっているだろうか。針に刺されたような痛みが代葉の腕を蝕んでいた。

 機動力なら代葉に分がある。
 だが、狂骨もおらずバグスターウイルスで弱体化を受けている今の代葉では、特級呪霊とも渡り合ったメカ丸相手では決定力に欠けていた。
 相手は恐らく遠隔操作(リモート)だが、先ほどの光線はあと何発撃てるのだろうか。
 烏も残りも数えられるほどしか残っていない。
 仮に目の前のロボットのエネルギーが遠くのマスターから供給され続けるなどの理由で潤沢であれば、代葉に勝ち目はないだろう。

「性能だけで結果は分からない。
 貴女に勝てないまでも、絶対に負けない。」

 それでも、藤乃代葉には退く選択はない。
 自分が格上だと知ったうえで、夜島学郎は代葉に挑んだ。
 大言を吐き、底なしに善人で。代葉より弱かったはずの彼は代葉を倒し代葉を救った。
 彼に出来たことを全部できるとは、今の代葉は思わない。
 少しでも彼のように、誰かを守れる戦いをしたかった。

 槍を支えにして立ち上がる代葉。
 その耳元で、プシュと何かが吹きかけられる音がして、首筋に冷たいものがかかる。

 「何!?」
 思わず振り返った代葉の後ろで、逃げたはずの学生服の少女がしっかりとこちらを見つめていた。
 右手に何か液体の入ったスプレーを持っている、代葉にかけたものだろう。
 その中身は分からない。
 ただ花のような甘い香りが、代葉の鼻をくすぐった。

 何故戻ってきた。喉まで出かかった言葉を代葉はぐっと飲みこむ。
 手にぬいぐるみを抱えた彼女の目が。確かな決意を秘めた強い瞳が。
 代葉を救った青年を思い出させたからかもしれない。

 ◆◇◆◇◆


 亀井美嘉という少女は。ことこの場においては無力と言って差し支えない。

 人命が軽い時代を生き抜いた一流の呪術師のレジィ・スター。
 幼いころから陰陽師として戦場に立ち、美嘉と変わらぬ年齢ながら熟練の戦士である藤乃代葉。
 ”殺し合いの場での立ち回り”を考えていた両者と違い。美嘉は未だ”自分が殺し合いの場にいること”そのものを受け入れられないでいた。

 振り向きざまに見たロボットが、さっきまでのドローンとは比べ物にならない相手なのは素人の美嘉にも理解できる。
 あの場に自分が居ても、むしろ槍を持った彼女の邪魔になる。彼女の言葉はどうしようもなく真実だった。

 背後から烏の羽ばたきと、レーザーが撃ちだされたような射出音。アスファルトが削れる破壊音が響く。
 不自然なほど鳴かない烏の羽音は、どんどんと少なくなっていた。
 少女の足音も息遣いも、破壊音に遮られ聞こえない。


 「私は、また逃げるの?」

 足が鉛のように重く感じられ。美嘉は足を止める。

 東ゆうが立ち去ったスタジオで、彼女は追いかけることは出来なかった。
 自分を救ってくれたヒーローに、恩を返せていないと。彼女の夢を壊してしまったと。
 悩み、悔やみ、悲しみ、苦しみ。その上で東ゆうと再会する。
 この場の彼女は、ババハウスでの再会も、公園での再会も経験していない。
 伝えたいことも、伝えるべきことも。まだ何も言えていない。
 崩れ去った関係性の中、後悔を抱えたまま、彼女は戦場に投げ出されれていた。

 「……大丈夫かな。あの子。
 同い年くらいだよね?」

 逃げてと言った少女の言葉が離れない。
 あの場で戦う彼女にとって、美嘉はたまたまそこにいただけの人間だ。
 だが彼女は、足手まといの自分を囮にするでもなく、逃げるように言った。
 やさしい人だ。
 狙われていたのは私なのに。年もそう変わらないのに。
 彼女に逃げてと言われて。すべての戦いを彼女に押し付けて。
    ・・・・・・・・
 内心、とてもほっとした。
 安心して背を向けて走り出した。
 そんな自分が、美嘉には許せない。
 東ゆうなら絶対にそんなことはしなかった。

 「何度私は自分を救ってくれた人から目を背けるの?」
 顔を変えて。環境を変えて。それでも彼女は変わらなかったのだろうか。
 恩人と出会い。友達が出来て。それでも彼女は弱いままなのだろうか。

 レジィ・スターにとって、亀井美嘉は大したことのない獲物だった。
 藤乃代葉にとって、亀井美嘉は守る必要のある人物だった。
 亀井美嘉を戦力として数えている人間は、この場に一人もいないのだろうか。

 ごそごそと、リュックの中で何かが動いたような気がした。
 ひっくり返してみると、中からライオンのぬいぐるみとスケッチブックが音を立てて落ちた。
 めくれ上がったスケッチブックの上には、既に何かが書かれていた。

 「これって……」

 恐る恐るスケッチブックに目を通すと、小学生が描いたようなたどたどしい文字で支給されたアイテムの使い方が書かれていた。
 美嘉に支給されたライオンのぬいぐるみ。
 その名前。その力。その制約。その正体。
 その全てがスケッチブックに、子供らしい文字と幼げな言葉で書かれていた。
 愛らしいライオンのぬいぐるみの中には、極大の呪いが宿っているのだと。
 ともすれば状況を一変できる力が、美嘉の手にはあるのだと。
 自分が殺し合いの場にいることも、戦うための力があることも。亀井美嘉は理解させられた。

 ――覚悟さえあれば、戦えないことはない!
 自分たちをデスゲームに巻き込んだ。羂索の言葉。
 元より強力な支給品は、美嘉のような戦えない人間を戦場に解き放つためのシステムだ。
 決して善意でできた制度ではない。
 それでも、今の美嘉には必要なものだ。

 レジィも代葉も。美嘉自身も信じていなかった自分を。羂索だけが戦力になりえると思っていたのだろうか。
 真意は分からない。
 分からないがそれを理由にここで立ち止まることは、東ゆうなら絶対にしない。
 ただ狩られるだけの亀で終わるか。牙を研ぎ飛び立つ龍となるか。
 覚悟はできていた。

「行かなくちゃ。」

 意を決して振り返ると、彼女を守って戦ってくれる少女は、息を切らせて片膝をついていた。
 後ろ姿だけでも少女が――藤乃代葉が疲弊しているのが見て取れる。
 リュックから取り出したぬいぐるみをかかえ、美嘉は走る。
 大きく押し込まれたのか、代葉との距離は近かった。――大祓砲(ウルトラキャノン)の一撃は、美嘉にまでは届いていない。
 代葉のそばにつくまで30秒も要らなかった。

 スケッチブックの指示通り。支給されていた香水のスプレーを代葉に振りかける。
 「何!?」と声をあげた代葉だが。美嘉が戻ってきたことに目を丸くし、かけられた場所をくんくんと嗅ぐ。
 戦場には似合わない。甘い花のような香りがした。

「……香水?」
「ごめんなさい。これをかけないとダメだって”この子”が言ってたの。」

 愛らしい姿をしたライオンのぬいぐるみを抱え、美嘉は代葉の前に出た。
 見た目だけは普通のぬいぐるみだが、代葉の直感がその中にある”何か”を感じ取る。
 この光景をどこかから眺めるレジィ・スターも同様だった。
 美嘉が口を開く。
 ぬいぐるみの中にいる何か。それを引き出す言霊を。

 「盈たして」

 呪術師と陰陽師はその瞬間、空気が冷え己の肌が粟立つのをはっきりと知覚した。

 美嘉の言葉に合わせ、ぬいぐるみの両目が赤黒い泥を垂れ流す。
 泥は月のような円を描き、その中央には少年が立っている。
 スケッチブックを持った小学生ほどの少年の姿に、美嘉は思わず目を背ける。
 全身に刻まれたような傷を持ち、光を写さない真っ黒の目からは泥が延々と垂れ流されている。



 「月蝕尽絶黒阿修羅」



 美嘉に与えられた支給品。
 それはぬいぐるみ。そして髑髏の目をした少女によりぬいぐるみに封じされた一人の霊。
 亀井美嘉にはその姿は痛々しい少年に見えている。
 生前の死因は虐待を受け、実の母の手で滅多刺しにされたこと。
 その傷を色濃く残す青年を、こんな戦場に引きずり出すことに心が張り裂けそうなほど痛い。

 今にも泣きだしそうな悲痛な顔で、「おねがい。」と。
 美嘉が懇願すると同時に足元から無数の手が浮かび上がり、満月のを形作った泥の中央で少年はスケッチブックを塗りつぶす。

 何かを噛み砕いたかのような音が、交差点に響きわたった。
 美嘉と代葉の視線の先で、メカ丸の右肩の前半分がごっそり削れ右腕がプラプラと垂れ下がる。
 使い物にならないことは、誰の目からも明らかだった。

 「「効いた!」」

 思わぬ有効打に少女たちは歓声を上げる。
 一方の少年霊は、手元のタッパーに湧き出た肉団子を貪りながら首をかしげていた。
 彼がスケッチブックで塗りつぶした範囲は、削れるどころか消滅するはずだ。
 消し去った量に応じて湧き出る黒阿修羅の肉団子が、平時より明らかに少ない。
 出力が大きく落ちている。表に出せる時間も数分が限度だろう。
 代葉の姿が見えることと同様、これもゲームを崩壊させないために用意された制約だった。

 では、この盤上において黒阿修羅は弱いのか。
 当然ながら答えは否だ。
 特級呪霊の真人ならば破壊できるメカ丸の装甲。
 彼と同じ世界にいたならば間違いなく特級に数えられるであろう黒阿修羅ならば、弱体化しても破壊できることは不思議ではなく。
 単純な破壊力では代葉どころかレジィさえ凌駕しているといっても過言ではなかった。

 そしてその機を逃すほど、藤乃代葉は甘くない。
 メカ丸が左腕を構えるより早く代葉は烏と位置を変え、メカ丸のすぐそばにまでやってきていた。

(幻妖……じゃない。でもよく似た存在。
 それも間違いなくレベル4。)

 新しい戦力。危険性まで含めて冷静に判断し、その上で代葉は少年霊に背を向けた。
 数ヶ月前の代葉なら、眼前のロボットではなく少年霊こそを相手にしただろう。
 それをしない理由は、言葉にすれば簡単なこと。

 自分の恐怖を押し殺しても共に逃げることを勧める、学生服の彼女は信用できるし。
 その彼女に姿させ見せずに殺しにかかる、ロボットの主は信用できない。

 右肩を狙って振り下ろされた代葉の一閃を、メカ丸は無事な左腕で防ごうと機械的に動く。
 どこからかその光景を眺めるレジィは、この瞬間敗北を確信した。
 オート操作の防御では、代葉の機敏な動きに対応するには反応があまりにも遅かった。

「遅い」

 大鎌のような形に変化した代葉の槍が、左腕がガードするより早く右腕を斬り飛ばす。
 地面に落ちた腕を見て、代葉は自分の予想が正しいことを知った。
 本来は誰かが装着するパワードスーツだろうその腕は、中にぽっかりと空洞になっていた。

 残った左腕が代葉の頭を掴んだが、その握力は随分と弱弱しい。
 エネルギーを使い果たしたのか、はたまた右腕の破壊がそれほど効いているのか。
 だが、手のひらはわずかに熱を帯びている。散々撃ってくれた光弾をまた撃つつもりだろう。

「もうそれは当たらない。」

 代葉が烏と位置を入れ替え、メカ丸の左腕が烏を勢いよく握る。
 何度も光線を撃たせたことで、チャージまでに数秒ラグがあることに代葉はとっくに気づいていた。

「お願い!!!」

 美嘉が叫ぶ。
 先ほどまで代葉を掴んでいた左手。その手首が、美嘉の言葉に呼応し黒阿修羅によって大きく削り取られる。
 放出されるはずだった大祓砲の呪力は行き場を失い、バチバチとメカ丸の左腕が音を立て膨れ上がる。
 逆流した呪力の渦はメカ丸の左腕を内側から粉々に破壊し、両腕を失ったメカ丸が削れた地面に背をつけた。

 代葉が振り返ると、美嘉と目が合った。
 自然と親指を立て。美嘉も同じことをした。
 少女たちの初白星だった。




「これって、起動キー?」
「だと思う。」

 戦場になっていた交差点には既にロボットの姿は無く、代わりにロボットをそのまま縮小化したような起動キーが落ちていた。
 代葉は拾い上げ、まじまじと眺める。
 ドローンほど令力は――正確には呪力だがさして違いはない――感じられない。
 少なくとも呪いの類はなく、勝手に暴れることはないだろう。

「能力か支給品かは分からないけれど、起動キーからロボットを実体化できる人がいるみたい。」
「そんなことが……。
 でも、ここに起動キーは残っているのよね?」
「うん。多分安全。手元に戻ったりはしないみたい。
 これは貴女に渡しておく。
 戦える私より、貴女が持っていたほうがいいと思う。」

 拾い上げたメカ丸の起動キーを、代葉は美嘉に握らせた。
 「えっえっ。」と慌てた美嘉が突き返すが、代葉はにべもなく断った。
 安全だと確信したのは彼女だ。ならこのロボットは強力な戦力になるはず。
 ただ立っていただけの美嘉が貰うのは分不相応。
 美嘉にはそう思えたのだが、代葉は違う意見だった。

 「どうして?私は何にも出来てなくて。全部貴女とこの子がやってくれたことなのに?」
 「気にしないでいい。戦力的な効率をとっただけだから。
 逃げろと言われたのに貴女は戻ってきたけど、そのおかげで助かった。
 それに――」

 ――そのぬいぐるみは危険かもしれない。
 既にぬいぐるみの中に納まり、大人しくなっている黒阿修羅に代葉は視線を落とす。

 代葉の認識にあてはめるなら、レベル4の幻妖に限りなく近い少年霊。
 それを簡素とはいえ封じあまつさえ使役できる状態に抑え込んでいるというのは、味方であれば頼もしいが不安はぬぐえない。
 その気になれば目の前の少女どころか、代葉を殺すことすら造作もないだろう。

 だが、あの少年霊のおかげで助けられたことは事実だ。
 香水をかけなければ巻き込んでしまうと美嘉は言っていた。本来は敵味方関係なく無差別に攻撃をするものなのかもしれない。
 美嘉に対する叛意や敵意はないのだろうか。

 「どうしたの?」
 「……なんでもない。」

 不安そうに代葉を見つめる美嘉に、代葉はそのことを追求しなかった。
 少なくとも、目の前の彼女は優しい人だ。
 傷だらけの少年霊を戦場に出すことを心苦しく思うくらいには。
 彼女ならば、あの少年霊の力を悪用したりはしないだろう。

 「そういえば、自己紹介がまだよね?
 私は亀井美嘉。助けてくれて本当にありがとう。」

 美嘉が差し出した右手を、代葉は強く握る。
 傷のない柔らかな手は、彼女の優しさを示すようにあたたかかった。

「藤乃代葉。お礼は別にいい。
 でも、無事だったなら良かった。」

 美嘉もまた、代葉の手をしっかり握る。
 歴戦の戦士である代葉の手は美嘉に比べて固く、霊衣の影響か僅かに冷たい。
 その水晶のような美しさに。自分の知らない強さに。美嘉は心からかっこいいと思った。

 土埃に汚れても、陰陽師の少女は綺麗だ。
 東ちゃんがいれば声をかけてるんじゃないかななどと、美嘉はらしくないことを考えていた。

【亀井美嘉@トラペジウム】
状態:困惑(小) レジィに対する恐怖(大)
服装:学生服
装備:ライオンのぬいぐるみとスケッチブック/月蝕尽絶黒阿修羅@ダークギャザリング
令呪:残り三画
道具:究極メカ丸 絶対形態@呪術廻戦 
 香水@ダークギャザリング ランダムアイテム×0〜1、ホットライン
思考
基本:生きて帰る 東ゆうと再会する
01:本当に殺し合いなんだ……
02:(黒阿修羅に対して)ごめんね。そんなボロボロなのに戦わせて。
03:代葉さん。同い年くらいなのにすごいなぁ。
参戦時期:東西南北解散後東ゆうと再会する前
備考


【藤乃代葉@鵺の陰陽師】
状態:ダメージ(小) 軽いやけど(両腕)
服装:普段の制服/霊衣
装備:自身の霊衣 盡器:染離(ぜんり)
令呪:残り三画
道具:ランダムアイテム×0〜3、ホットライン
思考
基本:殺し合いを止める 彼ならきっとそうする
01:美嘉を助けられてよかった。
02:あのドローンとロボットの主、多分同業者かな。危険かも。
参戦時期:美執村から戻った後
備考 ※霊衣状態でも誰でも姿が見えるようになっています。



◆◇◆◇◆


「なんであんなもん支給品にだすかね?
 薄々感じてたけど羂索ってバカだろ。」

 双眼鏡を投げ捨てると、レジィはあきれ顔で肩をすくめた。
 戦況の一部始終を彼は見ており。結果だけで言えば大敗と言って差し支えない。
 亀井美嘉を殺せず。藤乃代葉を殺せず。おまけに起動キーを1つ失った。
 だが、レジィ自身はさして焦りを感じていない。むしろラッキーとさえ思っていた。

 無論、その理由はあの少年霊の存在が大きい。
 ぬいぐるみの中から噴き出た呪霊。
 怨霊の類だと思われるそれは間違いなく特級相当の危険な存在だ。

「俺には分かるぜ。アレ弱体化してあの強さだろ?
 生贄だの令呪だの使ったらどんなことになるのやら。くわばらくわばら。」

 空間を削り取る能力。烏の式神を操り転移さえ可能とする代葉も大概であったが。
 殺傷性・危険性という点ではあの少年霊……ひいては、それを手にする亀井美嘉は数段上になるだろう。
 そんな相手を早期に知れたことは、レジィにとってまたとない収穫だ。

 「覚悟さえあれば、戦えないことはない!だっけか?
 呪術師は嘘ついてナンボだろうが。
 羂索の馬鹿め、ここまでマジの戦いが成り立つとは思わねえよ。」

 悪態をつきつつも、レジィの顔は笑顔を浮かべている。
 呪術と似た力を持つ代葉しかり。
 特級呪霊相当の戦力を与えられた美嘉しかり。
 誰も彼もがレジィを殺しうる力を持っている。

 殺し合いの皮を被った儀式でしかなかった死滅回游とは違い、このバトルロワイヤルは純然たる殺し合いだ。
 ある意味では代葉や美嘉以上に、レジィはその事実に気づくのが遅く。
 ここで彼はようやく「自分も狩られる側になりえる」ことを理解した。

 「いいじゃねえか羂索。面白くなりそうだ。」

 認識を改めたレジィだが。だからといって怯えるような男ではなかった。
 元より、傍観者として死滅回游に参加した男だ。
 面白そうな予感があればその選択に従う。そんな人物だ。
 その勘が言っていた。
 この戦いはもっと面白くなると。
 あの女たちは、もっと楽しめると。

 「俺も本命の道具は残っているしな。
 殺し合いはここからが本番だぜ。お嬢ちゃんたち。」

 蓑の中から取り出したアイテムを前に、レジィは口角をあげた。
 メカ丸とは違う起動キー。レジィに支給されたアイテムは宇宙を駆ける禁忌の兵器。
 ガンダム・ファラクト。
 遥かな宇宙に人が及んだ未来に生まれた、禁忌の兵装。
 ラッパラッターを持つレジィにとっては文字通り手駒となるその兵器が、手元で妖しく輝いていた。



【レジィ・スター@呪術廻戦】
状態:健康 
服装:レジィの蓑@呪術廻戦
装備:レジィの蓑@呪術廻戦 ラッパラッター@海賊戦隊ゴーカイジャー
令呪:残り三画
道具:ガンダム・ファラクトの起動キー@機動戦士ガンダム 水星の魔女
 ランダムアイテム×0〜2、ホットライン
思考
基本:殺し合いを楽しむ あわよくば生き返る
01:あの人形(月蝕尽絶黒阿修羅)は流石にヤバい。特級相当だろ。素人に配るとか羂索は馬鹿か?
02:見どころのあるガキどもだな。楽しめそうだ。
参戦時期:死亡後
備考 
 ※麗美@呪術廻戦の荷物を回収しています


【支給品まとめ】

 ライオンのぬいぐるみとスケッチブック/月蝕尽絶黒阿修羅@ダークギャザリング
 ・亀井美嘉に支給
 旧I水門にて亡くなった少年の悪霊を封じたぬいぐるみ
 「盈たして」「月蝕尽絶黒阿修羅」の言葉で起動し。無数の刺し傷が残る少年霊が解放されその能力を行使できる。
 無数の腕、スケッチブックを介した消滅と捕食の呪いといった多様な能力を持ち、本来の持ち主曰く「群を抜いて強い」
 本ロワでは令呪の使用もしくは何らかの外的要因によるエネルギーの増強がない限りは「削り取る」程度に弱体化されており。解放できる時間も数分程度。

 香水@ダークギャザリング
 ・亀井美嘉に支給
 市販の香水 だが月蝕尽絶黒阿修羅は敵味方を匂いで区別しており。
 この香水が掛かっている人間のみ味方として判断する。
 そういう意味では必須となるアイテム

 究極メカ丸 絶対形態@呪術廻戦
 ・麗美に支給
 傀儡操術の青年が持つ切り札の姿
 莫大な呪力を消費することで特級呪霊さえ相手にできる火力を撃ちだすことを可能とする決戦兵器。
 本ロワにおいては起動キーとして支給されており、呪術以外のエネルギーも打ち出すことが可能だが。その威力は搭乗者の呪力に左右されるもののため無人では十分な性能を発揮できない。

 レジィの蓑@呪術廻戦
 ・レジィ・スターに支給
 無数のレシートや契約書で構成された蓑
 それ以上のものではなく防御力も低いが、レジィ・スターの術式の元となる重要なアイテムである
 なお本ロワにおいて、構成されているレシートや契約書の中身は「2018年の日本(呪術廻戦の世界)で一般人が購入可能なもの」に限られる

 ラッパラッター@海賊戦隊ゴーカイジャー
 ・麗美に支給
 赤き宇宙海賊が持つラッパ型のアイテム
 レンジャーキーを挿すことで元となった戦士を傀儡として使役できるほか、スーパー戦隊の大いなる力を奪うことが出来る
 本ロワにおいては、起動キーとして支給されているアイテム群を使役することも可能になっている

 ガンダム・ファラクトの起動キー@機動戦士ガンダム 水星の魔女
 ・レジィ・スターに支給
 ペイル社が生み出したGUND-ARMの1つ。
 機動力とGUNDビットをによる制圧力を有する機体であるが、GUND-ARMの欠点として使用者に廃人化するほどの負荷が流れ込む可能性がある
 支給品となっている以上GUND-ARMのデメリットは軽減されているとレジィは考えているが、実際は不明

候補作141:優しさと悲しみの交差路 投下順 候補作149:“La vie est drôle”
時系列順
GAME START 麗美 GAME OVER
亀井美嘉 019:Reweave
藤乃代葉
レジィ・スター 039:Brand New Wave Upper Ground

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