「我が魂は無敵と共にありぃいいいいいいいいいいいいいいっ!!!」
「喧しい」
「喧しい」
人間であったら鼓膜が破れ兼ねない絶叫を、僅か三文字で切り捨てる。
言葉だけで黙る者でないのは承知の上だ。
重力操作で圧し潰し、騒音の原因は文字通りの一瞬でぺちゃんこ。
煎餅状に潰れた人体のグロテスクさへ、感じ入るものは只の一つもなく。
転がる戦利品を回収すると、最早何の関心も見せず背を向ける。
言葉だけで黙る者でないのは承知の上だ。
重力操作で圧し潰し、騒音の原因は文字通りの一瞬でぺちゃんこ。
煎餅状に潰れた人体のグロテスクさへ、感じ入るものは只の一つもなく。
転がる戦利品を回収すると、最早何の関心も見せず背を向ける。
理解した、そうお決まりの台詞を言うのも億劫だった。
勇者“だった”男と別れ、標的の追跡を開始したものの順調とは言えまい。
タイミングを計ったかのように現れた非参加者、NPC達に余計な足止めを食わされどれくらい経ったか。
『愛』の一文字が特徴的な鎧武者他、時代を間違えたような人間共は今や物言わぬ肉塊。
冥黒王を相手取るならば、この数倍でも足りない。
勇者“だった”男と別れ、標的の追跡を開始したものの順調とは言えまい。
タイミングを計ったかのように現れた非参加者、NPC達に余計な足止めを食わされどれくらい経ったか。
『愛』の一文字が特徴的な鎧武者他、時代を間違えたような人間共は今や物言わぬ肉塊。
冥黒王を相手取るならば、この数倍でも足りない。
戦闘とは到底呼べぬ掃除を終え、さてギギストは何を思ったか。
参加者ですらない雑兵の分際で、己の歩みを邪魔された苛立ちが皆無とは言えない。
だが不思議と内心は大きな波を立てず、なれど平静とも言い難い。
参加者ですらない雑兵の分際で、己の歩みを邪魔された苛立ちが皆無とは言えない。
だが不思議と内心は大きな波を立てず、なれど平静とも言い難い。
現在の最優先事項は一つ、同胞たる青年の遺体を回収。
自我なき屍兵へ成り下がった黒鋼スパナを、他者が排除するより先に手中に収める。
方針へ変更を加える気はない、考え直し中止と言い出すなど論外。
なのに何故だろうか、足取りは数時間前に比べどこかぎこちない。
確固とした意志の元向かっていると、一体誰が言えるのか。
自我なき屍兵へ成り下がった黒鋼スパナを、他者が排除するより先に手中に収める。
方針へ変更を加える気はない、考え直し中止と言い出すなど論外。
なのに何故だろうか、足取りは数時間前に比べどこかぎこちない。
確固とした意志の元向かっていると、一体誰が言えるのか。
「……何を、躊躇する必要がある」
既にスパナがこの世を去った以上、生前程の利用価値は期待出来ない。
しかし、全く使い道が存在しないと言った覚えもない。
未知の金属生命体を片付け、残されたA級錬金術の抜け殻は自身の役に立たせる。
それで良いじゃないか、死んでしまったのは仕方ないで割り切れば簡単だろうに。
しかし、全く使い道が存在しないと言った覚えもない。
未知の金属生命体を片付け、残されたA級錬金術の抜け殻は自身の役に立たせる。
それで良いじゃないか、死んでしまったのは仕方ないで割り切れば簡単だろうに。
人の殻を脱ぎ去った冥黒王故の、常人とは一線を画す思考。
異論を挟む余地が見当たらない筈が、有り得ぬ雑念が顔を出し言う。
スパナがどこの馬の骨とも分からぬ相手に敗れ、あまつさえ死体をNPC如きに奪われた時。
抱いた感情は失望や落胆、それだけで済ませられるのか。
異論を挟む余地が見当たらない筈が、有り得ぬ雑念が顔を出し言う。
スパナがどこの馬の骨とも分からぬ相手に敗れ、あまつさえ死体をNPC如きに奪われた時。
抱いた感情は失望や落胆、それだけで済ませられるのか。
下らない問いかけだ、首を縦に振る以外の答えはないだろうに。
鼻で笑う気にすらなれない、煩わし気に頭から追い出そうとし、
鼻で笑う気にすらなれない、煩わし気に頭から追い出そうとし、
頭部を失った哀れな屍が、死後も傀儡にされる光景が根を張り離れようとしない。
「…………」
呻く自らの声に何を籠めたのか、まるで分からない。
仮にスパナを後継者足り得ないと見なし、己が手で屠ったら。
所詮その程度だったと、一呼吸の間に終わる矮小な失望で終わったのだろうか。
仮にスパナを後継者足り得ないと見なし、己が手で屠ったら。
所詮その程度だったと、一呼吸の間に終わる矮小な失望で終わったのだろうか。
「む……?」
まるで意味のない可能性へ思考を割くのは、幸か不幸か長く続かない。
人の枠に収まらない感覚が、急接近する気配を感知。
前方か?否。
背後か?否。
地中か?否。
となれば残るは一つ、空を仰ぎ見れば答えが自ら降って来た。
人の枠に収まらない感覚が、急接近する気配を感知。
前方か?否。
背後か?否。
地中か?否。
となれば残るは一つ、空を仰ぎ見れば答えが自ら降って来た。
「フンッ」
「ひゃんっ!?」
「ひゃんっ!?」
地面に赤い花が咲くのを見届けるか。
或いは流れ星の気分になった者が、華麗に着地を決めるのを見物するか。
そのどちらも選ばず自身の力を行使、対象は当然落ちて来たばかりの参加者。
重力操作で激突を防ぎ、宙へ逆様の体勢で固定。
ふとアスファルトを見やれば、支給品袋とは違う鞄に数枚のメダル。
ドロップアイテムはとっくに回収しており、見落とした覚えはない。
となれば今現在目の前にいる参加者を捕らえた際、衝撃で落ちたらしい。
或いは流れ星の気分になった者が、華麗に着地を決めるのを見物するか。
そのどちらも選ばず自身の力を行使、対象は当然落ちて来たばかりの参加者。
重力操作で激突を防ぎ、宙へ逆様の体勢で固定。
ふとアスファルトを見やれば、支給品袋とは違う鞄に数枚のメダル。
ドロップアイテムはとっくに回収しており、見落とした覚えはない。
となれば今現在目の前にいる参加者を捕らえた際、衝撃で落ちたらしい。
「え、えっと…助けてくれたのは嬉しいけど…でも…!早く降ろして欲しいかな!」
本人の意志とは無関係に、逆立ちを強制されたに等しい体勢だ。
艶やかな翠緑の長髪は地面に毛先が触れ、豊満な乳房に隠れた顔には朱が走る。
スカートで本来隠すべき場所まで丸見えとあっては、羞恥を抱くなと言う方が無理。
幾ら相手が人に非ざる存在だろうと、無頓着にはなれなかった。
艶やかな翠緑の長髪は地面に毛先が触れ、豊満な乳房に隠れた顔には朱が走る。
スカートで本来隠すべき場所まで丸見えとあっては、羞恥を抱くなと言う方が無理。
幾ら相手が人に非ざる存在だろうと、無頓着にはなれなかった。
「貴様は……」
切実な頼みを聞き流し、落ちて来た少女の顔をまじまじと見やる。
見覚えがあるか否かと聞かれたら、ギギストのみならず全参加者が前者と答えるだろう。
表情も体型も、頭上へ浮かぶ光輪に至るまで一致。
但し唯一、額の縫い目だけが見当たらない。
疲労か羞恥のいずれかは不明だが、汗を浮かべた白い肌があるだけ。
他者の肉体を渡り歩く呪術師が気まぐれで会場を練り歩き、ギギストの前に現れた。のではなく、
見覚えがあるか否かと聞かれたら、ギギストのみならず全参加者が前者と答えるだろう。
表情も体型も、頭上へ浮かぶ光輪に至るまで一致。
但し唯一、額の縫い目だけが見当たらない。
疲労か羞恥のいずれかは不明だが、汗を浮かべた白い肌があるだけ。
他者の肉体を渡り歩く呪術師が気まぐれで会場を練り歩き、ギギストの前に現れた。のではなく、
「理解したぞ。貴様は羂索に肉体を利用された梔子ユメ本人だな」
「う、うん!誤解しない人(?)に会えたのは嬉しいけど…そろそろ降ろしてぇー!」
「う、うん!誤解しない人(?)に会えたのは嬉しいけど…そろそろ降ろしてぇー!」
参加者と遭遇すること複数回、羂索と勘違いされたのは一度や二度じゃなく。
初見で本人と気付いてもらった安堵が、ユメに無いとは言わないがしかし。
それはともかく、いい加減この体勢は勘弁して欲しい。
羂索だと疑われた時とは別の理由で涙目になり、ふっと目線が正しい位置へ戻った。
初見で本人と気付いてもらった安堵が、ユメに無いとは言わないがしかし。
それはともかく、いい加減この体勢は勘弁して欲しい。
羂索だと疑われた時とは別の理由で涙目になり、ふっと目線が正しい位置へ戻った。
「わわっ!?」
急に地へ両足を着けた体勢となり、フラつくユメを見据える異形の貌。
ギギストが親切心から助けたのではない。
錬金アカデミーの人間達ならともかく、冥黒王に善意の行動を期待する方がどうかしている。
殺すのも、マルガムに変えて手頃な駒にするのも難しくない。
事実、殺し合いが始まった直後のギギストなら迷わずそうしただろう。
ギギストが親切心から助けたのではない。
錬金アカデミーの人間達ならともかく、冥黒王に善意の行動を期待する方がどうかしている。
殺すのも、マルガムに変えて手頃な駒にするのも難しくない。
事実、殺し合いが始まった直後のギギストなら迷わずそうしただろう。
だが先の6時間はある種の慢心を拭い去るのに、十分な体験だったと言えよう。
死者を支配下に置く不死の傭兵、凍てつく竜へ堕ちたコーディネーター、進化を続ける“やみのせんし”。
何よりも、ギギストが知るのとは余りに違う闇の錬金術師。
理解した気になっていた驕りに亀裂を生み、手当たり次第にマルガムを増やし勝てる戦いに非ずと考え直す機会を得た。
自身の後継者が、早々に退場した事実も含まれているかはさておき。
早い話、殺し合い開始時と比べ慎重さがギギストにはあった。
死者を支配下に置く不死の傭兵、凍てつく竜へ堕ちたコーディネーター、進化を続ける“やみのせんし”。
何よりも、ギギストが知るのとは余りに違う闇の錬金術師。
理解した気になっていた驕りに亀裂を生み、手当たり次第にマルガムを増やし勝てる戦いに非ずと考え直す機会を得た。
自身の後継者が、早々に退場した事実も含まれているかはさておき。
早い話、殺し合い開始時と比べ慎重さがギギストにはあった。
ユメに未だ危害を加えずにいるのは、彼女の持つ情報を聞き出していないから。
容易く玉座を得られる戦場で無いと分かった以上、闇雲に動き回るのは己の首を絞める愚行に他ならない。
持ち得る情報を素直に言うなら良し。
仮に戦闘になったとて、見た所は彼女は手負いの身。
油断は持ち込まないが少なくとも、氷竜と化したキラや魔王を自称するグリオン程の脅威は感じない。
胸中で渦巻く理解不可能な感情を誤魔化す目的かは、本人も自覚が無いまま。
スパナの追跡を一旦中断するだけの価値があれば良いと思い、
容易く玉座を得られる戦場で無いと分かった以上、闇雲に動き回るのは己の首を絞める愚行に他ならない。
持ち得る情報を素直に言うなら良し。
仮に戦闘になったとて、見た所は彼女は手負いの身。
油断は持ち込まないが少なくとも、氷竜と化したキラや魔王を自称するグリオン程の脅威は感じない。
胸中で渦巻く理解不可能な感情を誤魔化す目的かは、本人も自覚が無いまま。
スパナの追跡を一旦中断するだけの価値があれば良いと思い、
『はじめまして、我々の集めた紳士淑女諸君』
その機会は少しばかり先延ばしにせねばなるまい。
一人と一体の持つホットライン、付近のテレビやラジオから響く聞き覚えの無い声。
何が始まったのかを、今更理解出来ない者はここにおらず。
まして耳を塞ぐ真似に出る馬鹿もいない。
殺し合いの監視者の一人による定時放送、間髪入れずに起こった悪逆皇帝の放送。
耳を傾けざるを得ない男達の声が終わり、静けさを取り戻し数十秒。
軽い混乱も引き、ユメは改めて告げられた事実を噛み締める。
一人と一体の持つホットライン、付近のテレビやラジオから響く聞き覚えの無い声。
何が始まったのかを、今更理解出来ない者はここにおらず。
まして耳を塞ぐ真似に出る馬鹿もいない。
殺し合いの監視者の一人による定時放送、間髪入れずに起こった悪逆皇帝の放送。
耳を傾けざるを得ない男達の声が終わり、静けさを取り戻し数十秒。
軽い混乱も引き、ユメは改めて告げられた事実を噛み締める。
「うてなちゃん……シノンちゃん…………」
分かっていたことだ。
彼女達の名が呼ばれると、予め知っていた。
セリカに託し、薄暗い路地で息絶えるうてなを己が目で見た。
自分達を命懸けで逃がした直後、首をへし折られたシノンは見間違いなんかじゃない。
実は二人とも生き延びて、今の放送は嘘っぱち。
なんて現実逃避に似た言葉を、どうやったら言えようか。
ユメを含め、参加者達は最初の場で見せしめにされた少年少女をハッキリと見ている。
ここはアビドス地区で度々起こった、ゴロツキ同士の小競り合いで済む場所じゃない。
人が死ぬ、人が殺される、さっきまで話していた仲間の命が呆気なく散らされる殺し合いだ。
彼女達の名が呼ばれると、予め知っていた。
セリカに託し、薄暗い路地で息絶えるうてなを己が目で見た。
自分達を命懸けで逃がした直後、首をへし折られたシノンは見間違いなんかじゃない。
実は二人とも生き延びて、今の放送は嘘っぱち。
なんて現実逃避に似た言葉を、どうやったら言えようか。
ユメを含め、参加者達は最初の場で見せしめにされた少年少女をハッキリと見ている。
ここはアビドス地区で度々起こった、ゴロツキ同士の小競り合いで済む場所じゃない。
人が死ぬ、人が殺される、さっきまで話していた仲間の命が呆気なく散らされる殺し合いだ。
「……っ」
理解しているのと、死を仕方ないで流すかは全く別。
ホシノと比べれば共有した時間はずっと短い。
だけど、自分を羂索じゃないと信じてくれた。
気を遣ってもらい、肩を並べて戦い、命まで救ってくれた。
一緒に殺し合いを阻止し、無事に元の世界に帰る光景は決して現実にならない。
うてなが友人達と再会する機会は失われた、キリトが本当は悪人でないとシノン自身の目で確かめるのだって不可能。
喪失を実感し、目に見えぬ傷となってじくじくと血を流し続ける。
直接の面識はないが、うてなから聞いたイドラとレッドとも会う事は出来ない。
あれだけ怒りを向けたダークマイトの退場にも、安堵や喜びなど抱けず。
この世のどこにもいない現実として、後味の悪さがユメを蝕んだ。
ホシノと比べれば共有した時間はずっと短い。
だけど、自分を羂索じゃないと信じてくれた。
気を遣ってもらい、肩を並べて戦い、命まで救ってくれた。
一緒に殺し合いを阻止し、無事に元の世界に帰る光景は決して現実にならない。
うてなが友人達と再会する機会は失われた、キリトが本当は悪人でないとシノン自身の目で確かめるのだって不可能。
喪失を実感し、目に見えぬ傷となってじくじくと血を流し続ける。
直接の面識はないが、うてなから聞いたイドラとレッドとも会う事は出来ない。
あれだけ怒りを向けたダークマイトの退場にも、安堵や喜びなど抱けず。
この世のどこにもいない現実として、後味の悪さがユメを蝕んだ。
「……」
表情を曇らせるユメを視界に入れ、ギギストは無言。
悲しみの理由は理解出来る。
永き時を生き、その都度こういった者は飽きるくらいに見た。
家族、友、恋人等々。
親しき者の死を嘆くその感情、人間ならば持ち合わせて当然。
尤も、理解しているだけで同調する気は微塵もない。
根本的に価値観の異なる冥黒王が、死者へ心を揺さぶれるなど天地が引っ繰り返っても起こり得ない。
悲しみの理由は理解出来る。
永き時を生き、その都度こういった者は飽きるくらいに見た。
家族、友、恋人等々。
親しき者の死を嘆くその感情、人間ならば持ち合わせて当然。
尤も、理解しているだけで同調する気は微塵もない。
根本的に価値観の異なる冥黒王が、死者へ心を揺さぶれるなど天地が引っ繰り返っても起こり得ない。
と、言い切れないのが今のギギストだった。
(奴らは生きている、か)
一ノ瀬宝太郎、九堂りんね、そしてグリオン。
連中の生存に驚きはなく、そうだろうなと納得さえあった。
忌々しくも自分を一度は打ち破った小僧と、ガエリヤを撃破した小娘。
記憶にあるのとは異なる、魔王を名乗る男。
簡単に死ぬようなら拍子抜けというもの、6時間程度生き延びるくらいはやってのけて当たり前。
連中の生存に驚きはなく、そうだろうなと納得さえあった。
忌々しくも自分を一度は打ち破った小僧と、ガエリヤを撃破した小娘。
記憶にあるのとは異なる、魔王を名乗る男。
簡単に死ぬようなら拍子抜けというもの、6時間程度生き延びるくらいはやってのけて当たり前。
(黒鋼スパナはやはり……)
生存者の中に己の後継者がいないのは、深く考えないようにする。
でなければ、眼前のユメや数時間前の柊篝をどうこう言えない。
死体をこの目で見て、脱落者として主催者直々に名を呼ばれた。
どうやったって覆しようのないスパナの死に、魂へ不快なざわめきが起きる。
そんな己を、死者への感傷に引き摺られていないと誰が言えるのか。
でなければ、眼前のユメや数時間前の柊篝をどうこう言えない。
死体をこの目で見て、脱落者として主催者直々に名を呼ばれた。
どうやったって覆しようのないスパナの死に、魂へ不快なざわめきが起きる。
そんな己を、死者への感傷に引き摺られていないと誰が言えるのか。
「梔子ユメ、お前の嘆きは理解する。だが我とて、無償の奉仕でお前を助けたつもりはない。見聞きした全てを話してもらうぞ」
「…………うん」
「…………うん」
目尻へ僅かに浮かんだ涙を、袖で拭い頷く。
ともすれば反感を買ってもおかしくはない、気遣いを排除した物言い。
しかしユメに噛み付く様子は見られず、赤らんだ瞳で真っ直ぐに見据える。
悲しみに身を浸しても進展しないと、分かっている為か。
喪失を背負ってでも、戦わねばならないと覚悟したからか。
梔子ユメという娘の強さの一端なのかを考え、どうでもいいとすぐに思い直す。
手間を掛けずに情報聞ける、それで構わないだろうに。
ともすれば反感を買ってもおかしくはない、気遣いを排除した物言い。
しかしユメに噛み付く様子は見られず、赤らんだ瞳で真っ直ぐに見据える。
悲しみに身を浸しても進展しないと、分かっている為か。
喪失を背負ってでも、戦わねばならないと覚悟したからか。
梔子ユメという娘の強さの一端なのかを考え、どうでもいいとすぐに思い直す。
手間を掛けずに情報聞ける、それで構わないだろうに。
近場の廃倉庫の奥に移動し、早速情報開示へと移る。
本質的に騙す行為を好まないユメが、偽りを混ぜる真似は起きよう筈もなく。
ホムンクルスの少年との出会いに始まり、アビドス高校での死闘に至るまでを明かす。
本質的に騙す行為を好まないユメが、偽りを混ぜる真似は起きよう筈もなく。
ホムンクルスの少年との出会いに始まり、アビドス高校での死闘に至るまでを明かす。
「……成程。理解した」
より正確に言うと、理解せざるを得なかった。
この殺し合いは、ギギストの想定を明らかに超えている。
参加者の中で特に強く警戒すべきは己に土を着けた宝太郎と、ジェルマンの賢者の石を取り込んだグリオン。
二人の錬金術師こそ最大の障害と思っていたが、訂正の必要がある。
片や別行動中、片や二度と会えないユメの仲間。
ジークとうてなから齎された、規格外極まる参加者について。
前者の情報、アルジュナ・オルタについては未だ不明瞭な部分も少なくないが。
ノワルなる魔女の脅威は確定な上、当然の如く生存中。
この殺し合いは、ギギストの想定を明らかに超えている。
参加者の中で特に強く警戒すべきは己に土を着けた宝太郎と、ジェルマンの賢者の石を取り込んだグリオン。
二人の錬金術師こそ最大の障害と思っていたが、訂正の必要がある。
片や別行動中、片や二度と会えないユメの仲間。
ジークとうてなから齎された、規格外極まる参加者について。
前者の情報、アルジュナ・オルタについては未だ不明瞭な部分も少なくないが。
ノワルなる魔女の脅威は確定な上、当然の如く生存中。
更に死んだとはいえ、ダークマイトと名乗った男もまた只者ではない。
俗物極まる人間性はさておき、錬金術の腕はギギストをして目を見張る程。
所謂お人好しの類と察しが付くユメですら、どこか苦い顔で話していた。
仮に生きてる内に自分と会っても、秒で悪(ヴィラン)認定されただろう。
別にどうだっていいが。
俗物極まる人間性はさておき、錬金術の腕はギギストをして目を見張る程。
所謂お人好しの類と察しが付くユメですら、どこか苦い顔で話していた。
仮に生きてる内に自分と会っても、秒で悪(ヴィラン)認定されただろう。
別にどうだっていいが。
よくよく考えればおかしな話でもない。
冥黒王たる己がいて、支給品の影響とはいえ氷竜となったキラも参加しているのだ。
自分達に匹敵どころか、遥かに上回る者がプレイヤーに登録されるのはむしろ自然とさえ言える。
以前のギギストだったら頭を抱え理解を拒んだかもしれない。
皮肉な事に敗北を経験し、且つ数時間前に痛い目を見た為受け入れるのは難しくなかった。
尤もダークマイトはもとより、風都タワー前で散々暴れ回った仮面ライダーエターナルも討伐済。
後者は放送の内容を信じるなら、ルルーシュに始末された事になる。
あれだけ大々的にパフォーマンスを行った以上、エターナルを排除可能な戦力を持つのはむしろ当然か。
冥黒王たる己がいて、支給品の影響とはいえ氷竜となったキラも参加しているのだ。
自分達に匹敵どころか、遥かに上回る者がプレイヤーに登録されるのはむしろ自然とさえ言える。
以前のギギストだったら頭を抱え理解を拒んだかもしれない。
皮肉な事に敗北を経験し、且つ数時間前に痛い目を見た為受け入れるのは難しくなかった。
尤もダークマイトはもとより、風都タワー前で散々暴れ回った仮面ライダーエターナルも討伐済。
後者は放送の内容を信じるなら、ルルーシュに始末された事になる。
あれだけ大々的にパフォーマンスを行った以上、エターナルを排除可能な戦力を持つのはむしろ当然か。
(ダークマイトなる俗物の退場はともかく、その場にグリオンが現われたのは面倒だな……)
シノンが殺されたのに然して興味はないが、下手人がグリオンとあっては軽く見れない。
支給品と、付近に転がっているかもしれないダークマイトの死体。
そしてシノンの骸をグリオンが纏めて回収したとすれば、間違いなく風都タワー前での邂逅時より戦力が強化されている。
あえて奴の言葉を借りるなら、ケミストリーに必要な素材を苦労せず手に入れたのだ。
厄介だとは思えど、義憤に駆られはしない。
何せギギスト自身が同じ状況にあれば、死体を錬金術に利用するのだから。
例えば、行方を追っている後継者の成れの果てだとか――
支給品と、付近に転がっているかもしれないダークマイトの死体。
そしてシノンの骸をグリオンが纏めて回収したとすれば、間違いなく風都タワー前での邂逅時より戦力が強化されている。
あえて奴の言葉を借りるなら、ケミストリーに必要な素材を苦労せず手に入れたのだ。
厄介だとは思えど、義憤に駆られはしない。
何せギギスト自身が同じ状況にあれば、死体を錬金術に利用するのだから。
例えば、行方を追っている後継者の成れの果てだとか――
「私からも良いかな?」
沈み掛けた意識を引き戻され、声の主を見やる。
ユメの方からはこれまでのいきさつを教えたが、その逆は無し。
精々自分の名前を告げた程度で、傍から見ればアンフェア。
今度はそっちの番だと、情報開示を求めてるのだろう。
殺し合いでの動向、元々の知り合いはいるのか否か、そもそも一体何者なのか等。
尋ねて当然の質問が次々浮かぶ中、ユメは真っ先に聞く。
ユメの方からはこれまでのいきさつを教えたが、その逆は無し。
精々自分の名前を告げた程度で、傍から見ればアンフェア。
今度はそっちの番だと、情報開示を求めてるのだろう。
殺し合いでの動向、元々の知り合いはいるのか否か、そもそも一体何者なのか等。
尋ねて当然の質問が次々浮かぶ中、ユメは真っ先に聞く。
「あなたは……大事な人と離れ離れになったの?」
「……………………は?」
「……………………は?」
ギギストにとって、予想外にも程がある内容を。
「お前は何を言っている?」
余りにも理解不能だった。
一体全体自分の何を見れば、そのようなトチ狂った質問へ行き付くのか。
互いにあれやこれやと言葉を交わし、何らかの勘違いを起こした。
と言うのならまだ分かる。
現実には名前を言った程度であり、そこからどうやって今の言葉に発展するという。
怒りや不快感より先に、意味が分からな過ぎて困惑を率直に返していた。
一体全体自分の何を見れば、そのようなトチ狂った質問へ行き付くのか。
互いにあれやこれやと言葉を交わし、何らかの勘違いを起こした。
と言うのならまだ分かる。
現実には名前を言った程度であり、そこからどうやって今の言葉に発展するという。
怒りや不快感より先に、意味が分からな過ぎて困惑を率直に返していた。
「先のダークマイトとの闘争で、脳に傷でも負ったのか?」
「ち、違うよ!ボロボロにされちゃったけど、しっかりしてるよ!」
「ち、違うよ!ボロボロにされちゃったけど、しっかりしてるよ!」
失礼なと言わんばかりの反応で、どこか緩い空気が流れるも長続きはしない。
ス、と真剣な顔で冥黒王の異形の貌から目を逸らさない。
ス、と真剣な顔で冥黒王の異形の貌から目を逸らさない。
「私の話を聞いてる間ずっと…ううん、私と会った時から心ここに非ずって顔してたから」
「……なんだと」
「私が話してるのを聞いてた時も、私じゃない誰かの事が頭から離れない。そんな風に感じたよ?」
「……なんだと」
「私が話してるのを聞いてた時も、私じゃない誰かの事が頭から離れない。そんな風に感じたよ?」
梔子ユメという少女は、いつだって他人の為に動く善性を持つ。
生前はそれが原因で幾度も貧乏くじを引かされ、小鳥遊ホシノが頭を痛めた事態は数知れず。
馬鹿と嘲笑う者だって、一人や二人ではない。
だがユメの在り方が無意味だったと、断じるのも出来はしない。
悪意の対極に位置するその強さが、亀井美嘉に変化を齎したのは紛れも無い事実。
誰よりも他人の為に動けるからこそ、他者をよく見ている。
生前はそれが原因で幾度も貧乏くじを引かされ、小鳥遊ホシノが頭を痛めた事態は数知れず。
馬鹿と嘲笑う者だって、一人や二人ではない。
だがユメの在り方が無意味だったと、断じるのも出来はしない。
悪意の対極に位置するその強さが、亀井美嘉に変化を齎したのは紛れも無い事実。
誰よりも他人の為に動けるからこそ、他者をよく見ている。
アビドス高校から吹き飛ばされた先で出会った男は、まず間違いなく人間じゃあない。
キヴォトスにも人以外の者は多々いたが、このような異形は初めて見た。
しかしダークマイトのように、問答無用でメチャクチャな言い掛かりを付けはせず。
こちらの落下を防ぎ、情報開示の場を設け、危害を加える様子もない。
故に落ち着いて一対一で相手を見る事ができ、気付けたのだ。
キヴォトスにも人以外の者は多々いたが、このような異形は初めて見た。
しかしダークマイトのように、問答無用でメチャクチャな言い掛かりを付けはせず。
こちらの落下を防ぎ、情報開示の場を設け、危害を加える様子もない。
故に落ち着いて一対一で相手を見る事ができ、気付けたのだ。
自分の話を聞いているけど、一方で全く違う所を見ているように時折外れる視線。
自分の話を租借しているのに、別のものが浮かんだように微かな動揺が混じる雰囲気。
上手い表現が見付からないが、言葉に出すとすれば。
無くしたナニカを取り戻す方法を、見付けられずにいるみたいだった。
自分の話を租借しているのに、別のものが浮かんだように微かな動揺が混じる雰囲気。
上手い表現が見付からないが、言葉に出すとすれば。
無くしたナニカを取り戻す方法を、見付けられずにいるみたいだった。
「……理解出来ん。お前の口にする全てが」
絞り出した声は自分でも驚く程、苦々しさに溢れていた。
黒鋼スパナを指し大事な人と言うのは、見当違いも甚だしい。
確かに、後継者として目を掛けていたのは認めよう。
だがそこへ人間達が口にする絆や友情、それこそ一ノ瀬宝太郎がケミー相手に抱く類が含まれてるなど断じて否。
つまらない価値観に自分が囚われてると思われるのは、虫唾が走る。
狂人の妄想如きで冥黒王たる己を理解した気になるなど――
黒鋼スパナを指し大事な人と言うのは、見当違いも甚だしい。
確かに、後継者として目を掛けていたのは認めよう。
だがそこへ人間達が口にする絆や友情、それこそ一ノ瀬宝太郎がケミー相手に抱く類が含まれてるなど断じて否。
つまらない価値観に自分が囚われてると思われるのは、虫唾が走る。
狂人の妄想如きで冥黒王たる己を理解した気になるなど――
「……っ」
では他ならぬギギストは、自分を理解出来ているのかと。
ふいに浮かんだ疑問が、苛立ちに冷水を浴びせる。
逸る怒りに身を任せ、ユメを黒炎に包む殺意へ自分自身への問いが待ったを掛けた。
理解してるに決まってる、冥黒王ギギストを誰よりも分かっているのは本人以外に存在しない。
ふいに浮かんだ疑問が、苛立ちに冷水を浴びせる。
逸る怒りに身を任せ、ユメを黒炎に包む殺意へ自分自身への問いが待ったを掛けた。
理解してるに決まってる、冥黒王ギギストを誰よりも分かっているのは本人以外に存在しない。
なら答えられるのか。
スパナの死を知り、屍すらも弄ばれるのを見た時から。
感じているのが本当に失望だけなのかを。
理解したと断言出来るのか。
無自覚のままでいた、理解不能な感情が向き合えとばかりに顔を出す。
スパナの死を知り、屍すらも弄ばれるのを見た時から。
感じているのが本当に失望だけなのかを。
理解したと断言出来るのか。
無自覚のままでいた、理解不能な感情が向き合えとばかりに顔を出す。
「下らん、そもそも理解する意味など……」
「意味ならちゃんとあると思うよ?」
「意味ならちゃんとあると思うよ?」
逃避の為に切り捨てた思考が、優しく拾われ目の前に差し出される。
触れられていないにも関わらず、両手を包まれたかのように。
放り投げた疑問を、大事なものだとでも言うように返された。
触れられていないにも関わらず、両手を包まれたかのように。
放り投げた疑問を、大事なものだとでも言うように返された。
「理解するのに時間が掛かったり、理解したら凄くつらくなるかもしれないけど」
仲間の喪失は今もユメの心を突き刺し、絶えず痛みを与える。
捨ててしまえば、若しかしたら楽になれるのかもしれない。
理解出来ないと見ない振りをして、自分を誤魔化せば多少は苦痛も和らぐのだろう。
でもそれは、ユメにとっては絶対に取れない選択だった。
永遠に残る傷で、治す方法なんて見付からない痛みなのだとしても。
失った悲しみが無かった事になるのはきっと、出会いまで否定するのと同じだから。
望まない形の別れだろうと、出会いには必ず意味があった筈だから。
柊うてなとシノン、二人の仲間の死を理解しなければ悲しむ事だって出来ないから。
捨ててしまえば、若しかしたら楽になれるのかもしれない。
理解出来ないと見ない振りをして、自分を誤魔化せば多少は苦痛も和らぐのだろう。
でもそれは、ユメにとっては絶対に取れない選択だった。
永遠に残る傷で、治す方法なんて見付からない痛みなのだとしても。
失った悲しみが無かった事になるのはきっと、出会いまで否定するのと同じだから。
望まない形の別れだろうと、出会いには必ず意味があった筈だから。
柊うてなとシノン、二人の仲間の死を理解しなければ悲しむ事だって出来ないから。
「沢山考えて理解出来たなら、あなたにとってもきっと意味があることだって思うの」
「………………お前、は」
「………………お前、は」
微笑み言うユメに、ギギストは言いようの無い感覚を覚えた。
自分を上回る力を見せ、ケミー達を味方に付けた宝太郎を前にした時。
理解不能の存在が現われたような、恐怖にも似た薄ら寒さ。
かといって宝太郎とユメに感じたものが本当に同じかどうかも、まるで分からない。
返す言葉を見付けられないまま、案山子同然に棒立ちとなり、
自分を上回る力を見せ、ケミー達を味方に付けた宝太郎を前にした時。
理解不能の存在が現われたような、恐怖にも似た薄ら寒さ。
かといって宝太郎とユメに感じたものが本当に同じかどうかも、まるで分からない。
返す言葉を見付けられないまま、案山子同然に棒立ちとなり、
コツコツと響く足音に、思考の中断を余儀なくされた。
○
「おっと、逢引の真っ最中だったか?女一人と着ぐるみ一匹なんざ、随分変わった組み合わせだな?」
わざとらしく驚いた風を装い、廃倉庫へ現れた一人の男。
黒一色のコーデを完璧に着こなす、モデルのような体型と顔立ち。
刃の如く輝く銀髪の持ち主と会うのは、ユメもギギストもこれが初めて。
黒一色のコーデを完璧に着こなす、モデルのような体型と顔立ち。
刃の如く輝く銀髪の持ち主と会うのは、ユメもギギストもこれが初めて。
異性からさぞ黄色い歓声を浴びるだろう外見なれど、友好的とは言い難い。
見つめる瞳に宿るは親愛の証に非ず。
まるで世界そのものを見下し、足蹴にするかの傲慢な色。
遊戯盤へ無造作に転がった駒をどう弄ぶか、生命を生命と思わぬ悪辣な輝きがそこにあった。
見つめる瞳に宿るは親愛の証に非ず。
まるで世界そのものを見下し、足蹴にするかの傲慢な色。
遊戯盤へ無造作に転がった駒をどう弄ぶか、生命を生命と思わぬ悪辣な輝きがそこにあった。
「あい……びき……?綱引きの派生種目のこと?」
頭上へクエスチョンマークを複数浮かべ、すっとぼけたように首を傾げる。
「ユメ先輩はちょっと黙っていてください」、との辛辣な返しはない。
ふざけているのではなく素でこうだと、一番に知る彼女の後輩は不在。
「ユメ先輩はちょっと黙っていてください」、との辛辣な返しはない。
ふざけているのではなく素でこうだと、一番に知る彼女の後輩は不在。
「……理解したぞ、貴様は人ではない。いや、人を捨てたな?」
「着ぐるみにしちゃ大した名推理だ、拍手の一つでも送ってやろうか?」
「着ぐるみにしちゃ大した名推理だ、拍手の一つでも送ってやろうか?」
嘲る態度は崩さず、かといって否定も返ってこない。
外見こそ人間のソレに相違なくとも、所詮見せかけとギギストには分かった。
外見こそ人間のソレに相違なくとも、所詮見せかけとギギストには分かった。
人の世に生きるチンケな犯罪者などと訳が違う。
一人二人の血を浴びた程度では、爪先にすら到底及ばない。
魂を闇の奥底に沈め、純黒となるまで浸し続けた正真正銘の悪。
道理を外れ外法を良しとし、人間社会に混沌を齎す災厄。
尊き命をケミストリーと称し狂わせる錬金術師、或いは冥黒王たる己と同じ側に属する。
闇へ魅せられた魔人。
一人二人の血を浴びた程度では、爪先にすら到底及ばない。
魂を闇の奥底に沈め、純黒となるまで浸し続けた正真正銘の悪。
道理を外れ外法を良しとし、人間社会に混沌を齎す災厄。
尊き命をケミストリーと称し狂わせる錬金術師、或いは冥黒王たる己と同じ側に属する。
闇へ魅せられた魔人。
「日が昇ってる時間だってのに、どういう訳か流れ星が三つ振って来てな。勘に任せて一つを追っかけてみりゃ、当たりを引いたって訳だ」
ホラー喰いのホラー、ジンガの言葉に嘘はない。
複数ある行き先の内どれを選ぶか、暫し思案の末にアビドス高校と決めた。
ドロップアイテムの試運転がてら、NPCを蹴散らし進んでいた時だ。
目的地がある方角から三方向へ向けて、人らしきものが空を駆けて行ったのは。
単なる空中を経由した移動と能天気には捉えず、何らかのアクシデントによるものと察し。
ひょっとすれば祭りはとっくに終わり、着いた時には死体が転がってるだけの可能性も否定は出来ず。
であるならアビドス高校へ行き無駄足を食うより、生存者らしき人物を追う方がマシじゃないか。
予定を急遽変更し、最も近くに落ちただろう位置へ赴き今に至る。
複数ある行き先の内どれを選ぶか、暫し思案の末にアビドス高校と決めた。
ドロップアイテムの試運転がてら、NPCを蹴散らし進んでいた時だ。
目的地がある方角から三方向へ向けて、人らしきものが空を駆けて行ったのは。
単なる空中を経由した移動と能天気には捉えず、何らかのアクシデントによるものと察し。
ひょっとすれば祭りはとっくに終わり、着いた時には死体が転がってるだけの可能性も否定は出来ず。
であるならアビドス高校へ行き無駄足を食うより、生存者らしき人物を追う方がマシじゃないか。
予定を急遽変更し、最も近くに落ちただろう位置へ赴き今に至る。
「じゃああなたも、アビドス高校に行くつもりだったの?」
「最初はな。もし俺が間に合ってたらどうなったのか、気にはなるが――」
「最初はな。もし俺が間に合ってたらどうなったのか、気にはなるが――」
特級呪霊達と共に様子見へ徹したか。
象徴の意味を履き違えた悪(ヴィラン)と、アビドスの地を守らんとする少女達。
双方にとって予期せぬ結果を生んだか。
或いは、魔王との接触を果たしていたか。
象徴の意味を履き違えた悪(ヴィラン)と、アビドスの地を守らんとする少女達。
双方にとって予期せぬ結果を生んだか。
或いは、魔王との接触を果たしていたか。
全ては起こり得なかった可能性に過ぎない。
アビドス高校での争乱に、ジンガは関わらなかった。
ならば終わった闘争は早々に捨て置き、新たな混沌を引き起こすまで。
ゆっくりと突き出した人差し指が睨むは、アビドス生徒会長の少女。
アビドス高校での争乱に、ジンガは関わらなかった。
ならば終わった闘争は早々に捨て置き、新たな混沌を引き起こすまで。
ゆっくりと突き出した人差し指が睨むは、アビドス生徒会長の少女。
ではなく、冥黒王を真っ直ぐに射抜いた。
「なに……?」
「羂索がわざわざ器に選ぶ女だ、興味がないとは言わない。だがまずは、色々試すのにお前の方が丁度良い」
「ま、待って!あなたは殺し合いに……」
「羂索がわざわざ器に選ぶ女だ、興味がないとは言わない。だがまずは、色々試すのにお前の方が丁度良い」
「ま、待って!あなたは殺し合いに……」
乗っているの、と最後まで言わせはしない。
「逆に聞くが、乗らない理由があるんなら是非教えて欲しいもんだ」
心底不思議でたまらないと言わんばかりに、目を見開き首を傾げる。
オーバーなリアクションの裏に嗤いが見え隠れし、口を噤んだユメをどう思ったか。
ジンガとしては楽しい“お喋り”に興じてやっても構わないが、優先するのがどちらかは今言った通り。
愛用の魔戒剣は鞘に納めたまま、代わりの玩具を取り出す。
オーバーなリアクションの裏に嗤いが見え隠れし、口を噤んだユメをどう思ったか。
ジンガとしては楽しい“お喋り”に興じてやっても構わないが、優先するのがどちらかは今言った通り。
愛用の魔戒剣は鞘に納めたまま、代わりの玩具を取り出す。
白い箱状のバックルを腰に当て、自動でベルトが巻き付く。
刻まれたクレストの戦士達を己が道具として使い捨てる、『破壊者』の通り名が相応しい戦士になる時だ。
取り出したカードをヒラヒラと揺らし、挑発交じりの仕草と共に装填。
魔戒騎士とは異なる鎧が、ジンガに新たな力を授ける。
刻まれたクレストの戦士達を己が道具として使い捨てる、『破壊者』の通り名が相応しい戦士になる時だ。
取り出したカードをヒラヒラと揺らし、挑発交じりの仕草と共に装填。
魔戒騎士とは異なる鎧が、ジンガに新たな力を授ける。
「この玩具がどこまで役立つか、テストしてやるか。変身」
『KAMEN RIDE DECADE!』
折り重なった影が装甲を形作り、マゼンタに染まる。
複数枚のプレートが突き刺さった仮面に浮かぶは、悪鬼さながらの形相。
9つのライダー世界を旅し、絆を繋いだ果てに世界の真実を受け入れた破壊者の真の姿。
仮面ライダーディケイド・激情態が変身者を変え降臨。
複数枚のプレートが突き刺さった仮面に浮かぶは、悪鬼さながらの形相。
9つのライダー世界を旅し、絆を繋いだ果てに世界の真実を受け入れた破壊者の真の姿。
仮面ライダーディケイド・激情態が変身者を変え降臨。
「我を試すか…大口の代償が如何に高いかを知らぬと見える」
「生憎着ぐるみ相手にくれてやれるものは、そこまで多くない。精々死に方のリクエストを聞いてやるくらいだなぁ!」
「ほざけ!下賤な小童めが!」
「生憎着ぐるみ相手にくれてやれるものは、そこまで多くない。精々死に方のリクエストを聞いてやるくらいだなぁ!」
「ほざけ!下賤な小童めが!」
あからさまに見下されて尚、笑って済ますおおらかな性質ではない。
怒りを籠め斬り掛かれば、望む所だと敵が返すのも刃。
途端に殺意が金属音となり響き、人を捨てた者同士の戦闘が勃発。
怒りを籠め斬り掛かれば、望む所だと敵が返すのも刃。
途端に殺意が金属音となり響き、人を捨てた者同士の戦闘が勃発。
「っ、私も……!」
一手遅れる形になったが、ユメもまた肩掛けバッグへ手を伸ばす。
争いを好まず、対話で解決可能なら迷わずにそちらを選ぶ。
されど武力を用いねば打破不可能な状況が多々あると、分からない程鈍くもない。
ダークマイトのようなヴィランとの交戦を経た以上、同じ事態が起きた際に迷いで己を縛り付けはしない。
敵が破壊者の仮面を被るなら、こちらは守護者として立ち向かうまで。
取り出したメダルを装着しようとし、
争いを好まず、対話で解決可能なら迷わずにそちらを選ぶ。
されど武力を用いねば打破不可能な状況が多々あると、分からない程鈍くもない。
ダークマイトのようなヴィランとの交戦を経た以上、同じ事態が起きた際に迷いで己を縛り付けはしない。
敵が破壊者の仮面を被るなら、こちらは守護者として立ち向かうまで。
取り出したメダルを装着しようとし、
「うっそマジ!?あーしが一番乗りじゃーん!ラッキーはなまるうれピー!」
聞こえる筈のない声が聞こえた。
「えっ……?」
幻聴を疑い振り向き、両の瞳が現実を映し出す。
顔立ち、服装、髪の色に至るまで全てが記憶にあるのと同じ。
唯一、軽薄を絵に描いた笑みは彼女に無かった。
この目で終わりを見せ付けられ、無感動に死を告げられた仲間。
顔立ち、服装、髪の色に至るまで全てが記憶にあるのと同じ。
唯一、軽薄を絵に描いた笑みは彼女に無かった。
この目で終わりを見せ付けられ、無感動に死を告げられた仲間。
「シノンちゃん……?」
掠れた声で名を呼ばれた彼女は、まるで今気付いたというように視線を合わせる。
暫し見つめ合うこと数秒、先に表情を変えたのは向こうから。
ニタニタと不快に頬を歪め、油を差したように舌が回り出す。
暫し見つめ合うこと数秒、先に表情を変えたのは向こうから。
ニタニタと不快に頬を歪め、油を差したように舌が回り出す。
「あーんユメせんぱーい!聞いてくださいよー!あーしがめ~っちゃいい子だから、神様が奇跡をサプライズしてくれた的な?ヤッバ!感動し過ぎて――」
「違う、よね?」
「違う、よね?」
知っている声で延々と垂れ流される内容を、静かに否定する。
実は運良く生き延びていただとか、都合の良い展開は最初から考えていない。
時に夢物語となじられる、楽観的な事を言い出すユメであれど。
現実を理解した上で、他者に言わせると「甘い考え」を実現させるべく奮闘する少女だ。
だから此度も、覆せない仲間の死は既に受け入れている。
何より、殺されたシノンが現われた理由についても察しは付く。
実は運良く生き延びていただとか、都合の良い展開は最初から考えていない。
時に夢物語となじられる、楽観的な事を言い出すユメであれど。
現実を理解した上で、他者に言わせると「甘い考え」を実現させるべく奮闘する少女だ。
だから此度も、覆せない仲間の死は既に受け入れている。
何より、殺されたシノンが現われた理由についても察しは付く。
「ノノミちゃんと同じで、グリオンがあなたを生み出したんでしょ?」
悲しみと、同じくらいの怒りを籠めて言葉を紡ぐ。
仲間の命を奪っただけでは飽き足らず、死後も道具として使われたのだ。
知らず知らずの内、爪が食い込む程に拳を握る。
仲間の命を奪っただけでは飽き足らず、死後も道具として使われたのだ。
知らず知らずの内、爪が食い込む程に拳を握る。
「ちぇー即効バレテーラでやんの。だいせいかーい!てっきり栄養全部そのデカパイに取られて、米粒みたいな脳みそしかないって思ってたけどやるじゃーん」
失った仲間への想いも、冥黒のデスマスクには毛先程も届かない。
唇を尖らせ小馬鹿にする有様を見て、誰がコレをシノンと言えるのか。
黒の剣士の誤情報で心へ亀裂を生み、命を懸けて仲間を逃がした少女の面影は微塵もない。
悪意で構成された人形に、オリジナルの人格を期待する方が間違いだが。
唇を尖らせ小馬鹿にする有様を見て、誰がコレをシノンと言えるのか。
黒の剣士の誤情報で心へ亀裂を生み、命を懸けて仲間を逃がした少女の面影は微塵もない。
悪意で構成された人形に、オリジナルの人格を期待する方が間違いだが。
「てかさー……グリオン“様”だろうがっ!呼び捨てにしてんじゃねえよホルスタイン女ァッ!!!」
「っ……!」
「っ……!」
気の抜けた態度から一転、怒りを露わにユメへ蹴りが飛ぶ。
怒声と共に放った一撃を咄嗟に身を捩り躱せたのは、キヴォトス出身由来の身体能力の恩恵か。
靴底が頬を薄く裂き、赤い一本線が走るもシノンの動きはまだ終わりじゃない。
怒声と共に放った一撃を咄嗟に身を捩り躱せたのは、キヴォトス出身由来の身体能力の恩恵か。
靴底が頬を薄く裂き、赤い一本線が走るもシノンの動きはまだ終わりじゃない。
『TRIGER!』
いつの間にやら右手に握られた、水色のUSBメモリ。
己の存在を示すかの如く、電子音声が鼓膜を劈く。
敬愛する主から渡された凶器(プレゼント)へ、さも愛おしそうに口付けて。
躊躇なく自身の肉体へ突き刺した。
目を見開くユメへ嘲笑を一つ返し、次の瞬間にはその顔も異形へ変貌。
己の存在を示すかの如く、電子音声が鼓膜を劈く。
敬愛する主から渡された凶器(プレゼント)へ、さも愛おしそうに口付けて。
躊躇なく自身の肉体へ突き刺した。
目を見開くユメへ嘲笑を一つ返し、次の瞬間にはその顔も異形へ変貌。
自身の髪と同じ色の、メカニカルな胴体。
頭部へ張り付く単眼は、スコープを思わせる形状。
最も特徴的なのは右腕だ、大口径のライフルと一体化し標的を貫くのを待ち侘びていた。
トリガードーパント。
風都最大の危機を迎えたNEVERとの戦いで、仮面ライダーアクセルに撃破された怪人がユメと対峙する。
頭部へ張り付く単眼は、スコープを思わせる形状。
最も特徴的なのは右腕だ、大口径のライフルと一体化し標的を貫くのを待ち侘びていた。
トリガードーパント。
風都最大の危機を迎えたNEVERとの戦いで、仮面ライダーアクセルに撃破された怪人がユメと対峙する。
「あーしにピッタリな力をくださるんだもん、グリオン様さっすがー!」
馬鹿なNPCどもの額に銃口を突き付け、絶望の表情を拝んでから引き金を引く。
とびっきりの快感を味合わせてくれるメモリを、自身へ渡した主には感謝してもし切れない。
我が子を愛でるようにライフルを撫でつつ、チラと視線をユメとは別の方へ移す。
とびっきりの快感を味合わせてくれるメモリを、自身へ渡した主には感謝してもし切れない。
我が子を愛でるようにライフルを撫でつつ、チラと視線をユメとは別の方へ移す。
「本当はあっちのオクラ頭をぶっ殺す予定だったけどー。あのバーコード仮面が削ってくれるなら、美味しいとこだけゲッチュすりゃパーペキだよねー」
シノンを含めた配下三人が受けた命令は、ギギストの排除及び賢者の石の回収。
なので見付けた当初は自分が一番乗りで殺そうと思ったが、状況を見て予定変更。
現在ギギストはマゼンタ色のライダー、ディケイドと交戦中。
向こうが勝手に標的を消耗させるのなら、慌てて手を出す必要もあるまい。
なので見付けた当初は自分が一番乗りで殺そうと思ったが、状況を見て予定変更。
現在ギギストはマゼンタ色のライダー、ディケイドと交戦中。
向こうが勝手に標的を消耗させるのなら、慌てて手を出す必要もあるまい。
となればその間、自身の悦楽を選んだとて何も問題はないだろう。
グリオンからの命令を遂行し、尚且つ戦利品で死体や支給品を献上。
自分も楽しめるのだからメリットだらけで、やらない理由を探す方が困難。
シノンの記憶で知った、生前共闘したこの女を仲間の見た目で殺す。
一体どれ程に絶望の表情を見せ、惨めに死ぬのか楽しみで仕方ない。
グリオンからの命令を遂行し、尚且つ戦利品で死体や支給品を献上。
自分も楽しめるのだからメリットだらけで、やらない理由を探す方が困難。
シノンの記憶で知った、生前共闘したこの女を仲間の見た目で殺す。
一体どれ程に絶望の表情を見せ、惨めに死ぬのか楽しみで仕方ない。
「つーわけでユメせんぱぁい…あーしに絶望した顔を見せて、とっとと死ねよ!オラ!」
「悪いけどそれは出来ないよ!シノンちゃんの姿で、誰かを傷付けさせたりしないから!」
「悪いけどそれは出来ないよ!シノンちゃんの姿で、誰かを傷付けさせたりしないから!」
シノンが殺意に溢れるように、ユメだって戦意は十分高まっている。
仲間の尊厳と生きた証を、これ以上踏み躙られない為に。
絶対に殺されてなんかやらないし、他の誰も殺させない。
必ずやここで倒すと決意を固め、メダルを強く握り締めた。
仲間の尊厳と生きた証を、これ以上踏み躙られない為に。
絶対に殺されてなんかやらないし、他の誰も殺させない。
必ずやここで倒すと決意を固め、メダルを強く握り締めた。
『スフィスフィ スフィンクス!』
「戴天身!」
『PATCH UP!!』
ピラミッド状のエネルギーで我が身を覆い、戦装束を纏う。
人と獣の特徴を併せ持つ、古代の神の力を宿す。
太陽の森の防人アメン、アビドス高校での戦いに続き二度目の変身。
一度は肩を並べ戦った仲間の登場へ、胸を打たれる異常事態(イレギュラー)はシノンに起きない。
抵抗に出るならそれはそれで良い、無駄と思い知った時の絶望はより甘美なのだから。
人と獣の特徴を併せ持つ、古代の神の力を宿す。
太陽の森の防人アメン、アビドス高校での戦いに続き二度目の変身。
一度は肩を並べ戦った仲間の登場へ、胸を打たれる異常事態(イレギュラー)はシノンに起きない。
抵抗に出るならそれはそれで良い、無駄と思い知った時の絶望はより甘美なのだから。
突き出した拳と銃声が開幕の合図、どちらかが倒れるまで幕引きは訪れない。
○
冥黒王ギギストの強みとは何か。
神働術に由来する非常に高度な錬金術。
地獄の業火もかくやの火力を誇る、冥黒の炎。
そこへ加え、己の肉体を駆使した近接戦闘の技術も並の枠には収まらない。
少し先の未来で、二刀流のヴァルバラドを苦も無くあしらったように。
錬金術に頼らずとも、確かな強さを我が物としていた。
神働術に由来する非常に高度な錬金術。
地獄の業火もかくやの火力を誇る、冥黒の炎。
そこへ加え、己の肉体を駆使した近接戦闘の技術も並の枠には収まらない。
少し先の未来で、二刀流のヴァルバラドを苦も無くあしらったように。
錬金術に頼らずとも、確かな強さを我が物としていた。
「着ぐるみにしちゃ悪くない腕だな?褒めてやるよ!」
「我を図るとは度し難いぞ貴様!」
「我を図るとは度し難いぞ貴様!」
しかし此度の敵は一瞬で決着が付く雑魚に非ず。
繰り出す刃は速く、それでいて破壊力にも秀でた斬撃。
渾身の一撃としてではない、軽口交じりで連続し放たれるのだ。
只の人間であれば殺された回数は、とっくに三桁を超えている。
一生分の幸運を使い最初の攻撃で即死を免れる程度が、人に許された精一杯だろう。
繰り出す刃は速く、それでいて破壊力にも秀でた斬撃。
渾身の一撃としてではない、軽口交じりで連続し放たれるのだ。
只の人間であれば殺された回数は、とっくに三桁を超えている。
一生分の幸運を使い最初の攻撃で即死を免れる程度が、人に許された精一杯だろう。
「そらよっと!」
数歩分の開いた距離を一度の踏み込みで詰め、突き出された破壊者の剣。
人間時代から振るった魔戒剣は、出番を控え舞台袖で待機中。
主の手で豪快に振るわれる得物、ライドブッカーが狙うは標的の顔面部分。
人体とは異なる形状の冥黒王だとて、脆い箇所は人と然程変わらない。
大ショッカーの技術を結集させ生み出した、世界の破壊者専用武器だ。
数多の怪人と、ライダー達を斬り刻んだディヴァインオレ製の刃。
そこへ変身者自身の剣技が加わり、ただの突きでありながら必殺の威力を叩き出す。
人間時代から振るった魔戒剣は、出番を控え舞台袖で待機中。
主の手で豪快に振るわれる得物、ライドブッカーが狙うは標的の顔面部分。
人体とは異なる形状の冥黒王だとて、脆い箇所は人と然程変わらない。
大ショッカーの技術を結集させ生み出した、世界の破壊者専用武器だ。
数多の怪人と、ライダー達を斬り刻んだディヴァインオレ製の刃。
そこへ変身者自身の剣技が加わり、ただの突きでありながら必殺の威力を叩き出す。
「小賢しい!」
しかし侮るなかれ、この程度で決着が付くなら冥黒王の肩書は返上確定だ。
弾き返す得物は千本桜、悪しき魂を浄化する死神の刀。
始解時のメリット・デメリットを把握した上で、未だ解号はせずに打ち合う。
あらぬ方へと逸らされた剣を引き戻す余裕を、与えてやる奇特な性質は持っていない。
装甲越しの喉へ狙いを定め、射出と見紛う勢いで刃を放つ。
喉を貫き、仮面の下で蟹のように血の泡を吹かせるのも時間の問題。
弾き返す得物は千本桜、悪しき魂を浄化する死神の刀。
始解時のメリット・デメリットを把握した上で、未だ解号はせずに打ち合う。
あらぬ方へと逸らされた剣を引き戻す余裕を、与えてやる奇特な性質は持っていない。
装甲越しの喉へ狙いを定め、射出と見紛う勢いで刃を放つ。
喉を貫き、仮面の下で蟹のように血の泡を吹かせるのも時間の問題。
命中すれば、という前提が覆されなければだが。
成程確かに警戒が必要な威力ではある、とはいえ慌てふためく必要も無し。
鬱陶しい羽虫を避けるように頭を動かす、回避動作などそれで事足りる。
急所スレスレを横切った刀へ見向きもせずに、唸りを上げ迫る破壊者の蹴り。
剣以外を使ってはいけませんなどのルールはない。
ライドブッカー同様の鉱石で覆われ、打撃力を増した脚が腹部へ捻じ込まれんとし、
成程確かに警戒が必要な威力ではある、とはいえ慌てふためく必要も無し。
鬱陶しい羽虫を避けるように頭を動かす、回避動作などそれで事足りる。
急所スレスレを横切った刀へ見向きもせずに、唸りを上げ迫る破壊者の蹴り。
剣以外を使ってはいけませんなどのルールはない。
ライドブッカー同様の鉱石で覆われ、打撃力を増した脚が腹部へ捻じ込まれんとし、
「小賢しいと言ったばかりだろう!」
「ああ悪いな、聞いてなかったんでもう一回言ってくれ」
「ああ悪いな、聞いてなかったんでもう一回言ってくれ」
ギギストもまた、片脚を振り上げ相殺。
互いの蹴りによる衝突で弾かれ、間髪入れず再接近。
チマチマと急所以外を小突く真似はどちらもせず、十全の殺意を乗せた剣が駆ける。
互いの蹴りによる衝突で弾かれ、間髪入れず再接近。
チマチマと急所以外を小突く真似はどちらもせず、十全の殺意を乗せた剣が駆ける。
頭上から振り下ろされた剣を弾いた傍から、胸部目掛けて切っ先が襲い来る。
躱した先でも刃が待ち構えており、防いだと思えば既に次の剣が振るわれた後。
遥か十数手先までもを読んだ悪夢同然の猛攻が、ギギストから徐々に逃げ場を奪う。
やがてその時が来た、何度目かの回避へ動いた瞬間に生じる隙。
数秒と掛けずに終える立て直しを、むざむざくれてやる物好きではなく。
必然、対処敵わぬ斬撃を受け入れる他ない。
躱した先でも刃が待ち構えており、防いだと思えば既に次の剣が振るわれた後。
遥か十数手先までもを読んだ悪夢同然の猛攻が、ギギストから徐々に逃げ場を奪う。
やがてその時が来た、何度目かの回避へ動いた瞬間に生じる隙。
数秒と掛けずに終える立て直しを、むざむざくれてやる物好きではなく。
必然、対処敵わぬ斬撃を受け入れる他ない。
ギギスト以外なら回避不可能な末路を、自身の術を駆使し否と答えた。
ライドブッカーが異形の肉体を斬った手応えは無し。
ついでに言えば、破壊者の瞳にも冥黒王を捉えられていない。
白紙へ墨汁を垂らした際にも似た黒穴が、ギギストを吸い込み消失。
まんまと逃れ、どこへ行ったかを律儀に言葉で伝えはしない。
空間転移で背後へ出現、答え代わりの斬撃を見舞う。
ついでに言えば、破壊者の瞳にも冥黒王を捉えられていない。
白紙へ墨汁を垂らした際にも似た黒穴が、ギギストを吸い込み消失。
まんまと逃れ、どこへ行ったかを律儀に言葉で伝えはしない。
空間転移で背後へ出現、答え代わりの斬撃を見舞う。
『ATTACK RIDE ONIBI!』
「ヌゥッ!?」
尤も、答えを聞くまでもなく予想の範囲内。
カード装填と同時に振り向き、口に当たる箇所から火炎を吐き出す。
魔化魍を怯ませる灼熱も、ギギストを焼き潰すには程遠い。
だが多少なりとも隙を作れれば問題無い。
カード装填と同時に振り向き、口に当たる箇所から火炎を吐き出す。
魔化魍を怯ませる灼熱も、ギギストを焼き潰すには程遠い。
だが多少なりとも隙を作れれば問題無い。
『FINAL ATTACK RIDE DE・DE・DE DECADE!』
カードを読み取り、ディケイドライバーの根源たる次元エネルギーを解放。
刀身へ付与し破壊力を急激に上昇、斬り付ける獲物は目と鼻の先だ。
腕が消えたと錯覚を抱かん速さで振るわれ、下手な対処は不可能と確信。
であればギギストが選ぶは空間転移一択、僅かにタイミングがズレれば浅くない傷を刻まれたろう。
刀身へ付与し破壊力を急激に上昇、斬り付ける獲物は目と鼻の先だ。
腕が消えたと錯覚を抱かん速さで振るわれ、下手な対処は不可能と確信。
であればギギストが選ぶは空間転移一択、僅かにタイミングがズレれば浅くない傷を刻まれたろう。
「便利な力で羨ましい限りだ。生憎こっちは魔鏡が無きゃ使えない、不公平と思うだろ?」
転移で距離を取ったギギストへ、気安い口調で話しかけた。
自身が使っていたのもあって、相手の術の面倒さは理解しているが強く警戒を抱くレベルには至らない。
そも、魔戒騎士時代に相手取ったホラーは正に千差万別。
特異な能力で手を焼かせた個体も数知れず。
ましてジンガは以前、魔戒法師リュメとの戦いで転移術に対処し切って見せた
今更同じ力に一々大騒ぎはしない。
自身が使っていたのもあって、相手の術の面倒さは理解しているが強く警戒を抱くレベルには至らない。
そも、魔戒騎士時代に相手取ったホラーは正に千差万別。
特異な能力で手を焼かせた個体も数知れず。
ましてジンガは以前、魔戒法師リュメとの戦いで転移術に対処し切って見せた
今更同じ力に一々大騒ぎはしない。
第一魔戒騎士にとって、視界に頼らず殺気を感じ取るのは基本中の基本。
人間だった頃はホラーを、ホラーに堕ちてからは魔戒騎士を相手取り磨き抜いた感覚は健在。
死角からの攻撃を察知する程度、ジンガに言わせればやれない方がどうかしている。
破壊者の装甲も力にはなっているが、本質的な強さはそこじゃない。
神の牙とまで称された実力は偏に、踏みつけて来た無数の屍に裏打ちされたもの。
人間だった頃はホラーを、ホラーに堕ちてからは魔戒騎士を相手取り磨き抜いた感覚は健在。
死角からの攻撃を察知する程度、ジンガに言わせればやれない方がどうかしている。
破壊者の装甲も力にはなっているが、本質的な強さはそこじゃない。
神の牙とまで称された実力は偏に、踏みつけて来た無数の屍に裏打ちされたもの。
「理解したぞ、口先だけのつまらぬ男ではないらしい」
「お褒めに与り光栄ですってか?称賛ついでに首でも差し出してくれれば、泣いて喜んでやるよ」
「お褒めに与り光栄ですってか?称賛ついでに首でも差し出してくれれば、泣いて喜んでやるよ」
とことん他者を馬鹿にし切った態度だが、強さを疑えはしない。
ガッチャードライバーとは異なる機械を使った戦士。
未知の能力という点では勿論警戒の対象なれど、敵にとっては遊びの延長戦。
ディケイド以上に脅威と見なすは他でもない、純粋な戦闘技術。
仮面ライダータイクーンや刀使達、刀剣類を得物とする者との交戦を経た上で。
連中にも匹敵か、未だ見えない底に或いはそれ以上やもしれぬと認めざるを得ない剣術の使い手だ。
ガッチャードライバーとは異なる機械を使った戦士。
未知の能力という点では勿論警戒の対象なれど、敵にとっては遊びの延長戦。
ディケイド以上に脅威と見なすは他でもない、純粋な戦闘技術。
仮面ライダータイクーンや刀使達、刀剣類を得物とする者との交戦を経た上で。
連中にも匹敵か、未だ見えない底に或いはそれ以上やもしれぬと認めざるを得ない剣術の使い手だ。
羂索一派が始めたこの遊戯、つくづくこちらの予想を上回る。
理解したつもりがその実、まるで分かっていなかったと幾度も突き付けられた。
理解したつもりがその実、まるで分かっていなかったと幾度も突き付けられた。
「褒めてくださった礼だ、遠慮しないで受け取れ!」
『ATTACK RIDE STRIKE VENT!』
鬱々とした思考になりかけるも、戦闘は未だ継続中。
嫌でも気を引き締め直す電子音声に、新たな攻撃を察知。
破壊者の右腕に装着されたのは、赤龍の頭部を模したガントレット。
数時間前に脱落済の参加者、浅倉威が殺し合いで使ったのと同じ装備。
ドラグクローが5000℃の火炎を放射、火達磨の末路を引き寄せんと目論む。
嫌でも気を引き締め直す電子音声に、新たな攻撃を察知。
破壊者の右腕に装着されたのは、赤龍の頭部を模したガントレット。
数時間前に脱落済の参加者、浅倉威が殺し合いで使ったのと同じ装備。
ドラグクローが5000℃の火炎を放射、火達磨の末路を引き寄せんと目論む。
「脆弱な炎が我に届くなどと、思い上がりも甚だしい!」
ミラーモンスターを生きたまま炙る龍のブレスも、冥黒の炎の足元にも及ばない。
迎え撃つべく両腕を翳し、黒炎が敵の炎を飲み込む。
勢いを維持し破壊者の元へ到達、装甲諸共灼熱に閉じ込める。
マグマの中でも耐えられる、ディケイドのスーツだろうと無関係。
冥黒王が下す灼熱地獄の刑は、死以外を認めない。
迎え撃つべく両腕を翳し、黒炎が敵の炎を飲み込む。
勢いを維持し破壊者の元へ到達、装甲諸共灼熱に閉じ込める。
マグマの中でも耐えられる、ディケイドのスーツだろうと無関係。
冥黒王が下す灼熱地獄の刑は、死以外を認めない。
「この力、魔導火とも良い勝負が出来るかもなぁ?着ぐるみに使わせるにゃ勿体ない」
判決を覆す実力を、忌々しい事に此度の罪人は有する。
黒き炎に包まれる寸前で疾走、弾丸よりも速き身一つで肉薄。
無人の位置を虚しく燃やす火炎を鼻で笑い、姿勢を低くし回転。
腰の捻りを加え斬撃の勢いを増し、ライドブッカーが胴体へと襲来。
真っ二つに両断され、尚も生きていられるか見物だ。
刃の到達まで残り数秒も残っていない。
黒き炎に包まれる寸前で疾走、弾丸よりも速き身一つで肉薄。
無人の位置を虚しく燃やす火炎を鼻で笑い、姿勢を低くし回転。
腰の捻りを加え斬撃の勢いを増し、ライドブッカーが胴体へと襲来。
真っ二つに両断され、尚も生きていられるか見物だ。
刃の到達まで残り数秒も残っていない。
「ヌゥウウウ…!!
だがギギストが反応を見せるには十分な時間だ。
斬魄刀を防御に翳し、直後起こる刃同士の激しい衝突音。
押し返さんと力を籠めるも、逆に体勢を崩されたのはギギストの方。
馬鹿正直に鍔迫り合わず、足払いを繰り出した。
作り上げた隙へ追撃の剣が迫り、寸前で中断し跳び退く。
僅かに遅れ、ジンガがいた位置をギギストが作り出した空間が飲み込む。
斬魄刀を防御に翳し、直後起こる刃同士の激しい衝突音。
押し返さんと力を籠めるも、逆に体勢を崩されたのはギギストの方。
馬鹿正直に鍔迫り合わず、足払いを繰り出した。
作り上げた隙へ追撃の剣が迫り、寸前で中断し跳び退く。
僅かに遅れ、ジンガがいた位置をギギストが作り出した空間が飲み込む。
「多彩な奴だ、次はどんな手品を見せてくれるんだ?」
「貴様の減らず口を永遠に黙らせる術とだけ、先に教えてやる」
「貴様の減らず口を永遠に黙らせる術とだけ、先に教えてやる」
隠そうともしない嘲笑へ吐き捨て、更なる力を引き出す。
言って黙らぬ男なら、力で強制的に口を閉じさせれば良い。
両腕へ赤黒い稲妻を迸らせ、視界の端を掠めた光景に動きが止まる。
言って黙らぬ男なら、力で強制的に口を閉じさせれば良い。
両腕へ赤黒い稲妻を迸らせ、視界の端を掠めた光景に動きが止まる。
理解不能の、いっそ恐怖すら覚えた娘が膝を付く姿がそこにあった。
094:亀井美嘉:ライトニング/大河くるみ:リオリジン | 投下順 | 095:梔子ユメ:ライジング/冥黒王:ホワット・イフ |
087:ワタシだけのアルジサマ | 時系列順 | |
069:確立したモノ、揺らぐモノ、変わらぬモノ | 冥黒王ギギスト | |
071:空と虚④ ナラティブ | 梔子ユメ | |
061:plazma/ヘミソフィア─目の前をぶち抜くプラズマ─ | ジンガ | |
088:冥黒色の舞台裏にて | 冥黒シノン | |
069:確立したモノ、揺らぐモノ、変わらぬモノ | ELSスパナ |