16時45分。藤丸立香は同行者(ギャラリー)に見守られながら相棒のデミ・サーヴァントのマシュが常用し、今は地面に設置しているラウンドシールドを見据えていた。
「ふーっ……」
カルデアで、あるいは特異点でいつもやっている英霊召喚。今からするのはそれだ。
普段より緊張しているのが自分でもわかる。その原因は緊迫した今の状況故か、あるいは立香に先んじて英霊召喚に成功した少女を前にしているからか。
サーヴァントを使役するマスターであることを鼻にかけるわけではないけれど、男の子なりの意地もある。ここで失敗したら格好悪いなあ、などと考えてしまう。
普段より緊張しているのが自分でもわかる。その原因は緊迫した今の状況故か、あるいは立香に先んじて英霊召喚に成功した少女を前にしているからか。
サーヴァントを使役するマスターであることを鼻にかけるわけではないけれど、男の子なりの意地もある。ここで失敗したら格好悪いなあ、などと考えてしまう。
(何故こうなったかと言うと―――)
☆
「先に言っておきますね。参加者(プレイヤー)の個人情報は大まかなことしかインプットされてないです」
立香に銃を突きつけられた特殊NPC、柊シノアは表情一つ変えずに「知っていることを全て話してもらう」という質問に答えた。
そしてその答え自体は立香の想定から大きく外れてはいなかった。
そしてその答え自体は立香の想定から大きく外れてはいなかった。
「いやお前色々知ってるって言ってただろうが」
「知ってるというのはゲーム内の情報ですよ。ゲームに直接関係ない個人情報なんて記憶容量(メモリ)の無駄遣いじゃないですか」
「まあ当然って言えば当然かしらね。こうやって特殊なNPCを探して脅せば他のプレイヤーの情報が簡単に手に入るなんて遊戯(ゲーム)として健全(まとも)じゃないもの」
つまりアルジュナ・オルタを倒したと思しき人物について深い情報は期待できないということ。
しかし今はそれだけのことで引き下がれるほど余裕はない。
しかし今はそれだけのことで引き下がれるほど余裕はない。
「わかった、それで構わない。逆に言えばゲーム内の情報なら話してくれるってことだな?
それならまずさっきの伽藍洞な仮面ライダーについて教えてほしい。ああいうことを可能にする能力や支給品に心当たりは?」
それならまずさっきの伽藍洞な仮面ライダーについて教えてほしい。ああいうことを可能にする能力や支給品に心当たりは?」
「あれはディエンドライバーで召喚した仮面ライダーだと思います。二種類あるんですけど、襲ってきたのが仮面ライダーマッハだったことから考えたらネオディエンドライバーの方でしょうね。
ディエンドライバーやネオディエンドライバーで呼び出される仮面ライダーは戦闘人形みたいなものなんで中身が空っぽの伽藍洞なのはそんなにおかしなことじゃありません。
ただ強さや姿は何もかもおかしいです。あの形態(フォーム)で出てくるなんて基本有り得ませんし、何より出力が異常です。まるで令呪か心意システムでブーストでもしたみたいな……」
ディエンドライバーやネオディエンドライバーで呼び出される仮面ライダーは戦闘人形みたいなものなんで中身が空っぽの伽藍洞なのはそんなにおかしなことじゃありません。
ただ強さや姿は何もかもおかしいです。あの形態(フォーム)で出てくるなんて基本有り得ませんし、何より出力が異常です。まるで令呪か心意システムでブーストでもしたみたいな……」
「つまり、運営側のシノアさんからしてもあのような仮面ライダーが出てくることは本来なら有り得ない、異常な状況である、と……?」
「もしくは参加者固有の能力で強化してる、とか?」
マシュ、ピルツの補足にシノアは暫し黙り込む。
即答できないということはそれだけ事態は複雑であるということだ。
即答できないということはそれだけ事態は複雑であるということだ。
「ちょっと断言はできませんけど、こんな無法(チート)ができるのは私が知ってる範囲だと四凶の参加者ぐらいしか……。
確かネオディエンドライバーは茅場様がアルジュナ・オルタさんの支給品にと強く推していたと聞いています」
確かネオディエンドライバーは茅場様がアルジュナ・オルタさんの支給品にと強く推していたと聞いています」
「四凶?何だそりゃ?それもキリキリ吐けよチビ」
「そういう言い方されると喋りたくなくなりますけど、そうも言ってられませんね。
四凶というのはクルーゼ様が選定(キャスティング)した、殺し合いに乗ることを想定された者の中でも更に特別な強さを持った参加者四人の総称ですよ。
もう想像がついてると思いますけどアルジュナ・オルタさんも四凶のうちの一人です。
アルジュナ・オルタさんがネオディエンドライバーを使って仮面ライダーマッハに思いっきり力を与えてたと考える方が自然じゃありませんか?」
四凶というのはクルーゼ様が選定(キャスティング)した、殺し合いに乗ることを想定された者の中でも更に特別な強さを持った参加者四人の総称ですよ。
もう想像がついてると思いますけどアルジュナ・オルタさんも四凶のうちの一人です。
アルジュナ・オルタさんがネオディエンドライバーを使って仮面ライダーマッハに思いっきり力を与えてたと考える方が自然じゃありませんか?」
「そうですよリツカ。お願いですから落ち着いて銃を下ろしてください。
彼女だってこうしてちゃんと答えてくれてるじゃないですか」
彼女だってこうしてちゃんと答えてくれてるじゃないですか」
真剣そのもののニコルの懇願に応え、立香は銃を仕舞いこそしないまでも下ろした。
シノアにわざとこちらをはぐらかそうという意図がないことは十分に伝わった。
しかし立香もマシュもシノアが立ててニコルが追従した仮説には頷くことはできない。その理由がある。
シノアにわざとこちらをはぐらかそうという意図がないことは十分に伝わった。
しかし立香もマシュもシノアが立ててニコルが追従した仮説には頷くことはできない。その理由がある。
「シノアさん、ニコルさん。それは決して有り得ないのです。
わたしたちカルデアが旅をした世界の一つ、正しい歴史から枝分かれした異聞帯(ロストベルト)の一つにアルジュナ・オルタさんはただ一柱の絶対神として君臨していました。
その世界ではインド神話のあらゆる神性取り込んだ彼こそが絶対。裏を返せばその絶対という法則(ルール)を疑ったり、破られて綻ぶようなことがあればそれだけで彼は弱体化してしまうのです。
もちろんこのゲームにまでその縛りが厳密に適用されているとまでは思いません。でもアルジュナ・オルタさんの在り方それ自体はここでも変わりがないはず」
わたしたちカルデアが旅をした世界の一つ、正しい歴史から枝分かれした異聞帯(ロストベルト)の一つにアルジュナ・オルタさんはただ一柱の絶対神として君臨していました。
その世界ではインド神話のあらゆる神性取り込んだ彼こそが絶対。裏を返せばその絶対という法則(ルール)を疑ったり、破られて綻ぶようなことがあればそれだけで彼は弱体化してしまうのです。
もちろんこのゲームにまでその縛りが厳密に適用されているとまでは思いません。でもアルジュナ・オルタさんの在り方それ自体はここでも変わりがないはず」
「そういうことなんだ。アルジュナ・オルタが支給品に頼るというのは彼の神としての在り方からして絶対に有り得ないんだよ。
有り得るとしたら、アルジュナ・オルタを倒してその力だけを奪い取った何者かの仕業だ。
あの仮面ライダーの運用の仕方もその線を裏付けてる。いくら何でも動き方が野放図で行き当たりばったりすぎた。
きっとあれは一枚か数枚程度しか用意できない貴重な戦力なんかじゃない。いくらでも雑に使い捨てられる程度の雑兵でしかないんだ」
有り得るとしたら、アルジュナ・オルタを倒してその力だけを奪い取った何者かの仕業だ。
あの仮面ライダーの運用の仕方もその線を裏付けてる。いくら何でも動き方が野放図で行き当たりばったりすぎた。
きっとあれは一枚か数枚程度しか用意できない貴重な戦力なんかじゃない。いくらでも雑に使い捨てられる程度の雑兵でしかないんだ」
「あれが!?嘘でしょ!?」
「おい、いくら何でもそりゃ―――」
「有り得ません!」
「お、おいチビ?」
流子たちが出会ってから初めてシノアが声を荒らげた。
その尋常ならざる様子にいつもシノアに突っかかる流子の方が冷や水を浴びせかけられたように勢いを削がれてしまった。
その尋常ならざる様子にいつもシノアに突っかかる流子の方が冷や水を浴びせかけられたように勢いを削がれてしまった。
「一体か多くて数体が限度ならともかく、あのマッハに匹敵するような戦力を雑兵扱いで使役できるような参加者なんて存在するはずがありません。
そんなの四凶の枠さえ遥かに超えた、このゲームで羂索様、茅場様、クルーゼ様が定めた戦力の上限ラインをオーバーした怪物ですよ!
万が一存在したとしてもあのお三方、特に茅場様がゲームバランスを破壊する参加者なんて許容するとは思えません。今頃とっくにレジスターを強制停止しているはず…」
そんなの四凶の枠さえ遥かに超えた、このゲームで羂索様、茅場様、クルーゼ様が定めた戦力の上限ラインをオーバーした怪物ですよ!
万が一存在したとしてもあのお三方、特に茅場様がゲームバランスを破壊する参加者なんて許容するとは思えません。今頃とっくにレジスターを強制停止しているはず…」
「でもシノアちゃん、あの仮面ライダーがいた時点でそういう強制ゲームオーバーみたいな措置はされてないってことになるよね?」
「そ、それは……」
「ヤベえな。こいつが慌ててるのは相当だぞ」
ちひろたちも段々と事態の深刻さを肌で理解していく。運営側NPCのシノアが持つデータにもないような緊急事態が起きている。
全てを呑み込む異常戦力(イレギュラー)と呼ぶべきものを過去の旅路で何度も見てきた立香とマシュにとっては驚愕するほどではないが、それでも不味い状況には変わりない。
孔富もまた努めて冷静に状況を分析せんとしている。
全てを呑み込む異常戦力(イレギュラー)と呼ぶべきものを過去の旅路で何度も見てきた立香とマシュにとっては驚愕するほどではないが、それでも不味い状況には変わりない。
孔富もまた努めて冷静に状況を分析せんとしている。
「茅場様が、って言ったわよね?じゃあクルーゼと羂索はどうなの?
もし主催で意見が一致してないんだったら今ごろそいつの処遇を巡って内乱(モメ)てる最中ってこともあるんじゃないの?」
もし主催で意見が一致してないんだったら今ごろそいつの処遇を巡って内乱(モメ)てる最中ってこともあるんじゃないの?」
「もし主催者側での強制排除が起きない、あるいは起こせないんだとしたら解決できるのは俺たちプレイヤーだけだ。
だからシノアちゃん、教えてくれ。アルジュナ・オルタを倒した上で力をそっくり奪えるような参加者に誰か心当たりはないか?」
だからシノアちゃん、教えてくれ。アルジュナ・オルタを倒した上で力をそっくり奪えるような参加者に誰か心当たりはないか?」
「もしかしてあの男ですか?僕たちを襲った紫髪の大男と一緒にいて、サチを攫っていった……」
ニコルの問いにシノアは小さく頷いた。
全員が赤い服を着た道化師めいた立ち振る舞いの男を思い出す。
全員が赤い服を着た道化師めいた立ち振る舞いの男を思い出す。
「四凶の一人、メラ。仮面ライダーX(クロス)ギーツの変身者で自他ともに認める『神殺し』の二つ名を持っています」
「まんまじゃねえか!どう考えてもそいつで決まりだろ!」
「断言しちゃうのは危険だと思いますけどね。『神殺し』が本人の能力(スキル)に基づくものなのか単なる称号なのかまでは知らされてないんで。
それにあの人は単純なステータスでは四凶で一番弱いですよ。一般の参加者(プレイヤー)が最初に倒す四凶になることを想定されてたとか何とか。
当たり前ですけど弱いと言ってもあなた方一般参加者が無策で束になってかかったぐらいじゃ絶対勝てない程度の強さはありますよ?」
それにあの人は単純なステータスでは四凶で一番弱いですよ。一般の参加者(プレイヤー)が最初に倒す四凶になることを想定されてたとか何とか。
当たり前ですけど弱いと言ってもあなた方一般参加者が無策で束になってかかったぐらいじゃ絶対勝てない程度の強さはありますよ?」
「だからさっき変なことを吹き込んでアタシたちと戦わないように仕向けたってわけ?ちひろが神だとか何とかデタラメ言って」
ピルツの指摘にシノアは数秒ほど黙り込んだ。
事情を知らない立香とマシュに孔富が先ほどのバルバトスとの戦闘で起きたメラの不可解な動きについて教えた。
事情を知らない立香とマシュに孔富が先ほどのバルバトスとの戦闘で起きたメラの不可解な動きについて教えた。
「全部が全部デタラメってわけでもありませんよ?はとっちさんはクルーゼ様主導の『単なる端役が主役に並び立つことがあるのか?』という実験のテストベッドに選ばれた参加者ですからね。
メラさんはショートケーキの苺を最後まで取っておく派だったみたいで良い感じに動かせました。サチさんを攫われたのは私も想定外でしたけど無意味に全滅するよりはマシでしょう」
メラさんはショートケーキの苺を最後まで取っておく派だったみたいで良い感じに動かせました。サチさんを攫われたのは私も想定外でしたけど無意味に全滅するよりはマシでしょう」
「実験って……何それ!?」
「でもそれで説明がつくことはいくらかあります。土壇場でのチヒロの爆発力。あれを密かにクルーゼ隊長が後押ししていたのなら……」
「はい。ネタバレするとそういうことです。ルルーシュほど露骨じゃありませんが、はとっちさんがちょっとずつ力を手に入れていけるように色々細工がされてたわけですね」
「じゃあアストルフォを召喚できたのもそういうこと?」
立香がその疑問に行き着いたのは自然なことだった。
藤丸立香が通常の英霊召喚どころか戦闘時のサーヴァントの霊基の影すら召喚できなくなっている一方で魔術師でもなく立香のような組織のサポートもない鳩野ちひろは英霊召喚を成し遂げた。
主催者側が最初からそのように調整していたとすれば辻褄は合うのだが、シノアは首を横に振った。
藤丸立香が通常の英霊召喚どころか戦闘時のサーヴァントの霊基の影すら召喚できなくなっている一方で魔術師でもなく立香のような組織のサポートもない鳩野ちひろは英霊召喚を成し遂げた。
主催者側が最初からそのように調整していたとすれば辻褄は合うのだが、シノアは首を横に振った。
「あれは完全イレギュラーですね。羂索様と茅場様はカルデア式召喚への対策、カルデアからこの世界への経路の封鎖を念入りにされていましたが藤丸さん以外が英霊召喚をすることまでは想定できなかったんじゃないでしょうか。
結果英霊の座からアストルフォさんが召喚された、と。さすがにもうそっちのルートも封鎖されてるでしょうけど」
結果英霊の座からアストルフォさんが召喚された、と。さすがにもうそっちのルートも封鎖されてるでしょうけど」
「随分な警戒ぶりですね。逆に言えばリツカはそれだけ恐れられている、と?」
「当たらずとも遠からず、ですね。英霊召喚を可能にしてしまうということは、外部の存在がこの世界に介入する隙を与えてしまうということです。
私見ですけどセキュリティを万全にしておきたい、というのが一番の本音だったんじゃないでしょうか」
私見ですけどセキュリティを万全にしておきたい、というのが一番の本音だったんじゃないでしょうか」
なるほど、と立香が頷く。
このような理不尽極まる悪趣味なゲームは完全クローズドサークルでこそ成り立つものだ。
外部から警察組織のような存在が容易に発見・介入できたらゲームを開く意味自体がないだろう。
このような理不尽極まる悪趣味なゲームは完全クローズドサークルでこそ成り立つものだ。
外部から警察組織のような存在が容易に発見・介入できたらゲームを開く意味自体がないだろう。
「結局メラという男がアルジュナ・オルタさんを倒し、その力を手に入れた犯人なのかどうかはハッキリしませんね……。
有力候補ではありますが、今ある情報で断定するには証拠が足りないかと」
有力候補ではありますが、今ある情報で断定するには証拠が足りないかと」
「これだけ色々な世界から人やモノが集められてることを考えたら、考えを変えたり何かの切っ掛けで変質したアルジュナ・オルタ本人の仕業って線もまだ残るしね」
「それに……こんなこと言いたくないけど、今の戦力(メンツ)でサチを救済(すく)いに行くのは無理ね。敵の強さは半端なくてこっちは皆満身創痍(ボロボロ)よ。
今のまま突っ込もうって言うならドクターストップを掛けさせてもらうわ。この先さっきの神将(ライダー)が何人もいたらどうする気?」
今のまま突っ込もうって言うならドクターストップを掛けさせてもらうわ。この先さっきの神将(ライダー)が何人もいたらどうする気?」
神将仮面ライダーマッハの存在とマッハによって齎されたダメージは立香やちひろたち一行の道行きに暗い影を落としていた。
彼らは人数こそ対主催のグループとしては多い部類に入るが個々の戦力のアベレージは決して高くない。
孔富だけは切り札としてウルトラマンZへの変身を隠し持っているが出し惜しみをしすぎたと言わざるを得ない。
変身経験も積まないままに神将クラスの存在やそれ以上の相手と戦うには本来のウルトラマンZの劣化コピー品に過ぎない変身では荷が重い。何せ三分しか保たない力だ。
サチを助け出すどころか空蝉丸やホシノとの合流を目指して移動することですらリスクが大きすぎる。一度キリトの家あたりにでも引き返すしかない。
流子ですら口惜しさに歯ぎしりしながらも反論できずにいる中、立香が勢いよく手を挙げた。
彼らは人数こそ対主催のグループとしては多い部類に入るが個々の戦力のアベレージは決して高くない。
孔富だけは切り札としてウルトラマンZへの変身を隠し持っているが出し惜しみをしすぎたと言わざるを得ない。
変身経験も積まないままに神将クラスの存在やそれ以上の相手と戦うには本来のウルトラマンZの劣化コピー品に過ぎない変身では荷が重い。何せ三分しか保たない力だ。
サチを助け出すどころか空蝉丸やホシノとの合流を目指して移動することですらリスクが大きすぎる。一度キリトの家あたりにでも引き返すしかない。
流子ですら口惜しさに歯ぎしりしながらも反論できずにいる中、立香が勢いよく手を挙げた。
「孔富さん、逆に言えば十分に戦える味方を呼ぶことができればいいんですよね?」
「何かアテでもあるの?」
「先輩、もしや……」
「ああ。ここでサーヴァントを召喚しよう!」
手持ちの戦力で勝てない相手がいるのなら勝てるものを用意すればいい。何時だったかエルメロイ二世の魔術講座で教わったことを思い出す。
少なくとも先ほどのマッハに勝てるレベルの強力なサーヴァントを召喚することができれば当初の予定通りサチの救出に向かえる。
シノアが肩をすくめて即座に反対意見を返す。
少なくとも先ほどのマッハに勝てるレベルの強力なサーヴァントを召喚することができれば当初の予定通りサチの救出に向かえる。
シノアが肩をすくめて即座に反対意見を返す。
「藤丸さん、シノアちゃんのお話聞いてました?あなたのカルデア式召喚は羂索様たちに徹底的に対策されてるんですって」
「確かにそうかもしれない。だけどほんの僅かでも可能性があるなら試したいんだ。
ゲームが始まった直後と今で違うのは心意システムってやつが実装されてることだ。上手く使えればもしかするかもしれない」
ゲームが始まった直後と今で違うのは心意システムってやつが実装されてることだ。上手く使えればもしかするかもしれない」
「はあ、まあ失敗しても休憩時間にはなるんじゃないですか?」
「お前はいちいち盛り下がることばっか言うんじゃねえよ……」
かくてダメで元々、成功すれば良しということから藤丸立香による英霊召喚が行われることになった。
そして時は冒頭へと戻る。
そして時は冒頭へと戻る。
☆
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
手を翳し、詠唱を始める。
意識するのは心意システム。名称からして精神の集中や想い、イメージの強さが鍵になると見た。
意識するのは心意システム。名称からして精神の集中や想い、イメージの強さが鍵になると見た。
「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。
繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する。―――告げる」
繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する。―――告げる」
召喚の陣に魔力光が灯る。まだだ、まだ成功していない。気を抜くな。
イメージするのはカルデアで契約している槍の英霊、カルナ。
アルジュナ・オルタもしくはその力を持つ者に対抗する英霊として彼の施しの英雄の姿を強くイメージする。
必ず成功させる。必ず召喚する。今この時に限りマイナスのイメージは全て破却する。
イメージするのはカルデアで契約している槍の英霊、カルナ。
アルジュナ・オルタもしくはその力を持つ者に対抗する英霊として彼の施しの英雄の姿を強くイメージする。
必ず成功させる。必ず召喚する。今この時に限りマイナスのイメージは全て破却する。
「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ───!!」
誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ───!!」
―――その願い、叶えてやるよ。
「え……?」
不意に声が耳に届いた。誰の声だろうか、聞き覚えがない。
直後、円卓の盾から凄まじい光が放たれた。立香とマシュにとっては見慣れた光景―――即ち、成功したということだ。
直後、円卓の盾から凄まじい光が放たれた。立香とマシュにとっては見慣れた光景―――即ち、成功したということだ。
「まさか、本当に……」
「マスター!サーヴァント召喚、成功です!」
「うん、でも……」
立香には予感があった。
立ち昇る光の中にいるのはきっと英霊カルナではない。ならば一体誰だ。
段々と光が晴れ、その中にいたヒトガタの姿が露になっていく。
立ち昇る光の中にいるのはきっと英霊カルナではない。ならば一体誰だ。
段々と光が晴れ、その中にいたヒトガタの姿が露になっていく。
「サーヴァント・アーチャー、召喚に従い参上した。―――で、いいんだろ?マスター」
光の中から姿を現したのは一人の青年だった。
黒髪で日本人的な顔立ち、服装は現代的なタキシード。
立香と同じ現代日本人のように見える。
黒髪で日本人的な顔立ち、服装は現代的なタキシード。
立香と同じ現代日本人のように見える。
(―――知らない英霊(ひと)来ちゃった!)
少なくともカルデアで契約したサーヴァントたちの誰とも合致しない。
何となくだが、知っている誰かの異霊(オルタ)とか幼少期(リリィ)とも思えなかった。
というより根本的な違和感がある。まるで立香やマシュ、ひいてはカルデアの人々とは住む世界観(ばしょ)そのものが異なっているような違和感が。
何となくだが、知っている誰かの異霊(オルタ)とか幼少期(リリィ)とも思えなかった。
というより根本的な違和感がある。まるで立香やマシュ、ひいてはカルデアの人々とは住む世界観(ばしょ)そのものが異なっているような違和感が。
「どうした?まるで狐にでも化かされたみたいな顔だな?」
揶揄うように悪戯っぽく微笑むアーチャーのサーヴァントを名乗る青年。
いや、揶揄うようにではなくこれは実際に揶揄われている。
いや、揶揄うようにではなくこれは実際に揶揄われている。
「あ、あの!初対面の英霊(かた)に失礼ですが、真名(おなまえ)を伺ってもよろしいでしょうか!?
あっ、申し遅れました!わたしは先輩のファーストサーヴァント、シールダーのマシュ・キリエライトと申します!」
あっ、申し遅れました!わたしは先輩のファーストサーヴァント、シールダーのマシュ・キリエライトと申します!」
「へえ、ファーストサーヴァント…。君みたいな可愛い子と同僚になれるとは光栄だね。
自己紹介をしてやってもいいんだが、その前に招かれざるお客さんだ。向こうからすれば俺の方がそうだろうけどな」
自己紹介をしてやってもいいんだが、その前に招かれざるお客さんだ。向こうからすれば俺の方がそうだろうけどな」
アーチャーがI-5とI-6の境目を見やり言った時、ズン、と空気が重くなった。
肌にまとわりつくような嫌な空気。その空気感に立香とマシュを除くちひろたち一行には覚えがあった。
知らず流子の身体が一瞬震えあがった。
肌にまとわりつくような嫌な空気。その空気感に立香とマシュを除くちひろたち一行には覚えがあった。
知らず流子の身体が一瞬震えあがった。
「この危険(ヤバ)い気配は……!」
「メラフェルやゲートと同じ……!」
ズドン、と。何かが地面に落ちる衝撃音。
濛々と立ち込める土煙から姿を現すは三人の女。
彼女らの目を一瞬見ただけで流子の背筋が凍る。やはり同じだ、ヤツと。
濛々と立ち込める土煙から姿を現すは三人の女。
彼女らの目を一瞬見ただけで流子の背筋が凍る。やはり同じだ、ヤツと。
「対象発見。侵入者(イレギュラー)を排除する」
「男の相手よりあっちの可愛い子たちの相手をしたいけど、羂索様の指令は絶対だものねえ」
「最初は私から~♪どうせ茅場様に施された制約で三人同時に仕掛けることは禁止されちゃってるものね~♪」
―――闇檻六天使、トゥーラ、ノーチェ、コア、襲来。
アーチャーの召喚を観測した羂索により配置されていたエリアから緊急招集された、一人一人がボス級の格を誇るNPCたちだった。
メラフェルやゲート一体ずつにすら苦戦を強いられたちひろたちに戦慄が走る。
彼女らに代わり前に出ようとする立香とマシュよりも先にアーチャーが悠然とした足取りで三人の前に立った。
アーチャーの召喚を観測した羂索により配置されていたエリアから緊急招集された、一人一人がボス級の格を誇るNPCたちだった。
メラフェルやゲート一体ずつにすら苦戦を強いられたちひろたちに戦慄が走る。
彼女らに代わり前に出ようとする立香とマシュよりも先にアーチャーが悠然とした足取りで三人の前に立った。
「お前らは休んでろ。初回サービスってやつだ。あのぐらいの連中なら俺一人で片付けてやる」
「無茶です!あれはNPCと言えど一人一人が相当な強さを持っています!あれの同類と戦った僕らにはわかる!」
負傷と疲れを押して加勢しようとするニコルを立香とマシュが制止した。
「何を!?彼をみすみす死なせるつもりですか!?」
「多分だけど…大丈夫だと思う。ここは彼のやりたいようにやらせてあげて」
「危なくなったらわたしがフォローに入りますので!」
立香とマシュも何も棒立ちで見守る気はない。
何時でも援護に入れるよう戦闘準備を整えている。
現状このグループで比較的継戦能力が残っているのが自分たちだという自覚がある故に。
一方アーチャーの前には露出度の高い扇情的な女、トゥーラが立ち塞がった。
何時でも援護に入れるよう戦闘準備を整えている。
現状このグループで比較的継戦能力が残っているのが自分たちだという自覚がある故に。
一方アーチャーの前には露出度の高い扇情的な女、トゥーラが立ち塞がった。
「俺にやられるために黒幕さんの指示でわざわざ出張ってきたんだろ?ご苦労さん。
そっちのお仲間と一緒にかかってこなくて大丈夫か?」
そっちのお仲間と一緒にかかってこなくて大丈夫か?」
「うふふ、口の減らない男は嫌いよ~♪そもそも貴方は戦うことすらできない。
すぐに精神(こころ)を壊して肉体(からだ)はポイ捨てしてあ・げ・る♪」
すぐに精神(こころ)を壊して肉体(からだ)はポイ捨てしてあ・げ・る♪」
運営側NPC全体でも上位の実力者揃いの闇檻の六天使。
その加虐性の高さ、一度決まれば打開困難な凶悪な魔法『闇檻』もあり、一歩間違えれば参加者の試練になるどころか蹂躙してしまいかねない彼女らには当然の措置としていくつかの制約が施されていた。
例えば共通の敵に対して六天使複数人で共闘することの禁止。六天使複数で役割分担をしながら闇檻を使うようなことがあれば半数以上の参加者が足切りされかねない故の茅場が施した制約だ。
例えば自分たちの持ち物を除いた会場内に存在する他の武器・アイテムの使用禁止。元々個々の足切り性能が高い六天使にさらに利便性の高い装備を使われることのないようにするための制約だ。
また直接的な制約ではないがイノセンスそのものやイノセンス系統の技を使用可能にする支給品などの対抗手段が配布されたり、故意に六天使に敵対的なNPCを近場に配置していたりもしている。
その加虐性の高さ、一度決まれば打開困難な凶悪な魔法『闇檻』もあり、一歩間違えれば参加者の試練になるどころか蹂躙してしまいかねない彼女らには当然の措置としていくつかの制約が施されていた。
例えば共通の敵に対して六天使複数人で共闘することの禁止。六天使複数で役割分担をしながら闇檻を使うようなことがあれば半数以上の参加者が足切りされかねない故の茅場が施した制約だ。
例えば自分たちの持ち物を除いた会場内に存在する他の武器・アイテムの使用禁止。元々個々の足切り性能が高い六天使にさらに利便性の高い装備を使われることのないようにするための制約だ。
また直接的な制約ではないがイノセンスそのものやイノセンス系統の技を使用可能にする支給品などの対抗手段が配布されたり、故意に六天使に敵対的なNPCを近場に配置していたりもしている。
――― 闇檻六天使 トゥーラ ―――
――― 固有魔法 タイムオブパニッシュメント ―――
「貴方の深層心理に問いかけます。犯してきた罪の分だけ償いなさ~い♪」
トゥーラの固有魔法、タイムオブパニッシュメント。
相手の深層心理から罪の記憶を引きずり出し、精神を破壊する。罪深き者には戦う機会すら与えない、ある意味六天使の魔法の中で最も凶悪なものだ。
こんな男は早々に処理して奥にいる可愛い女の子たちを玩具にしたい。だからこそタイムオブパニッシュメントを持つトゥーラが先陣を切った。
勝利を確信するトゥーラだがその笑みは瞬時に崩れる。魔法に掛かったはずのアーチャーが戦意の灯った目で腰にベルトを出現させ、トゥーラの知識にもあるデバイスを両手に握った。
相手の深層心理から罪の記憶を引きずり出し、精神を破壊する。罪深き者には戦う機会すら与えない、ある意味六天使の魔法の中で最も凶悪なものだ。
こんな男は早々に処理して奥にいる可愛い女の子たちを玩具にしたい。だからこそタイムオブパニッシュメントを持つトゥーラが先陣を切った。
勝利を確信するトゥーラだがその笑みは瞬時に崩れる。魔法に掛かったはずのアーチャーが戦意の灯った目で腰にベルトを出現させ、トゥーラの知識にもあるデバイスを両手に握った。
《SET》 《SET》 《DUAL ON》
「どうして廃人にならないのかしら~?」
「俺は俺の世界のことを何一つ忘れちゃいない。自分の願いも、罪もな。お前に思い出させてもらう必要はない」
確かにアーチャーには罪がある。二千年もの人類史を転生し続けてきた彼には常人では積み上げられない数の罪だ。
しかしそれらを忘れたことはない。決して忘れないという信念を持っているが故にトゥーラの魔法で揺らぐことはない。
いつものようにパチンと指を鳴らし、戦いの始まりを告げる。
しかしそれらを忘れたことはない。決して忘れないという信念を持っているが故にトゥーラの魔法で揺らぐことはない。
いつものようにパチンと指を鳴らし、戦いの始まりを告げる。
「変身!」
《GET READY FOR BOOST&MAGNUM》
アーチャーの姿が変わった。狐を模した頭部、白い上半身の装備に手に握ったハンドガン、噴射口がついた赤い脚部装備。
後ろ姿からでもシノアにはその仮面ライダーの名を与えられた知識から口に出すことができた。
後ろ姿からでもシノアにはその仮面ライダーの名を与えられた知識から口に出すことができた。
《READY FIGHT》
「支給品による変身じゃない、本物の仮面ライダーギーツ……」
そのライダーに変身するためのツールは井上たきなに支給された。だがあれは模造品。
今シノアたちを守るように立つ仮面ライダーギーツはサーヴァントという枠組みの中にある存在なれど紛れもない本物。
即ち、その変身者の名は。
今シノアたちを守るように立つ仮面ライダーギーツはサーヴァントという枠組みの中にある存在なれど紛れもない本物。
即ち、その変身者の名は。
「浮世、英寿……」
《for DESIRE》
四凶の一人に数えられる男、メラの因縁の敵手であり、主役の一人に選ばれた仮面ライダーガッチャード、一ノ瀬宝太郎と共闘したことのある創世の神。
クルーゼが選んだ参加者候補から外れていたはずの男が今、この真贋交わる殺し合いの戦場に立った。
クルーゼが選んだ参加者候補から外れていたはずの男が今、この真贋交わる殺し合いの戦場に立った。
| 158:人間じゃない人たち/近くにいるのはかみごろし 逃げていくのはひとごろし | 投下順 | 159:絶望F:ここからがハイライトだ |
| 144:手札断殺 | 時系列順 | |
| 153:神将討伐LIVE! | 藤丸立香 | |
| マシュ・キリエライト | ||
| 鳩野ちひろ | ||
| ニコル・アマルフィ | ||
| 纏流子 | ||
| ピルツ・デュナン | ||
| 繰田孔富 | ||
| 柊シノア | ||
| アストルフォ | ||
| ENTRY | 浮世英寿 | |
| 138:光の果て、無惨の淵 | 真人 |