やみのせんしにとって、『敵』とは魔物のことを指していた。
闇に落ちた竜の末裔により、凶暴化した怪物たち。
あえて言ってしまえば、殺意と本能に従うシンプルな怪物たちが、やみのせんしの戦闘経験の大半を占めていた。
闇に落ちた竜の末裔により、凶暴化した怪物たち。
あえて言ってしまえば、殺意と本能に従うシンプルな怪物たちが、やみのせんしの戦闘経験の大半を占めていた。
とはいえその技量が、対人戦闘で役に立たない訳ではないことは、これまでの殺し合いを見れば一目瞭然。
人を殺すことに躊躇いの無いやみのせんしの性質も合わせて、対人・対魔問わず勇者だった男は卓越した技量を誇る。
人を殺すことに躊躇いの無いやみのせんしの性質も合わせて、対人・対魔問わず勇者だった男は卓越した技量を誇る。
「いい動きだ。ならもう少し増やしてもいいかもしれないな。」
魔王グリオンは人形劇を見るように笑いながら、手にした大剣を振りかざす。
元々は益子薫が持っていた、魔獣狩りの大剣。
錬金術により黄金に変質していたその刀身が、無限に伸びる8つの茨に枝分かれしてやみのせんしと学郎へと襲い掛かっていた。
その光景は戦闘というより、虫取りをする子供に似ていた。
やみのせんしにとっての問題は、その『虫』が自分のことであり、仮に捕まったら死ぬより酷い眼に合うことが確定しているということなのだが。
元々は益子薫が持っていた、魔獣狩りの大剣。
錬金術により黄金に変質していたその刀身が、無限に伸びる8つの茨に枝分かれしてやみのせんしと学郎へと襲い掛かっていた。
その光景は戦闘というより、虫取りをする子供に似ていた。
やみのせんしにとっての問題は、その『虫』が自分のことであり、仮に捕まったら死ぬより酷い眼に合うことが確定しているということなのだが。
「数が多いな……」
毒づきながらやみのせんしは背後に飛んだ。
さっきまで自分が立っていたアスファルトに、黄金の茨の一本が叩きつけられ、擦れた地面が突然爆ぜた。
さっきまで自分が立っていたアスファルトに、黄金の茨の一本が叩きつけられ、擦れた地面が突然爆ぜた。
「はぁっ!?」
突然の現象に一瞬意識がそれて、その瞬間を目ざとく察知したグリオンの茨が3本やみのせんしに迫る。
反応の遅れたやみのせんしだが、彼の前にもう1人の黒い影が入り込んだ。
反応の遅れたやみのせんしだが、彼の前にもう1人の黒い影が入り込んだ。
「柱刀骸街(ゼノブレード)!!」
夜島学郎が剣を振るい、3つに分裂した斬撃が的確に3つの茨を弾きとばす。
斬撃で茨がよろめいた隙に、射程から離れたやみのせんしが追従した学郎を睨んだ。
斬撃で茨がよろめいた隙に、射程から離れたやみのせんしが追従した学郎を睨んだ。
「ガクロウ!!何だあの爆発は!?」
「益子さんの剣は、攻撃した場所が爆発するんです!」
「先に言えよ……。」
「益子さんの剣は、攻撃した場所が爆発するんです!」
「先に言えよ……。」
マシコサンなる人のことをやみのせんしは知らないが、よくもやってくれたなと文句を言いたくなっていた。
爆発する剣の刀身を、自在に操る錬金術師。相性は良すぎることこの上ない。
とはいえなってしまったことは仕方なく。グリオンの性質を考えたらマシコサンも本意ではなかっただろうとやみのせんしは思考を切り替える。
爆発する剣の刀身を、自在に操る錬金術師。相性は良すぎることこの上ない。
とはいえなってしまったことは仕方なく。グリオンの性質を考えたらマシコサンも本意ではなかっただろうとやみのせんしは思考を切り替える。
「じゃあガクロウ。お前はさっきの増える斬撃――ゼノブレードっつったっけ?あれで茨を抑え込んでくれ。
斬られるだけではなく擦れるだけで爆発する攻撃なら、武器で受けるわけにはいかねえ。」
「じゃああなたは……」
斬られるだけではなく擦れるだけで爆発する攻撃なら、武器で受けるわけにはいかねえ。」
「じゃああなたは……」
どうするんですか。という質問は、突然迫る気配にかき消された。
顔に『ドラド』と書かれた時計の顔をした仮面ライダーが、黄金の茨を足場にぴょんぴょんと飛び交いながら、2人に向けて迫る。
その正体が少女であることを、2人は知っている。
神戸しおという名も知らないし、グリオンと協力している理由も知らないが。やみのせんしにとってその点はどうでもいいことである。
顔に『ドラド』と書かれた時計の顔をした仮面ライダーが、黄金の茨を足場にぴょんぴょんと飛び交いながら、2人に向けて迫る。
その正体が少女であることを、2人は知っている。
神戸しおという名も知らないし、グリオンと協力している理由も知らないが。やみのせんしにとってその点はどうでもいいことである。
「殺す。」
小さく、無感情な少女の声が2人に刺さる。
さっきの無いグリオンとは対照的に、殺気の塊のような時計のライダー……ジオウⅡの存在は、2人にとって無視できないものであった。
さっきの無いグリオンとは対照的に、殺気の塊のような時計のライダー……ジオウⅡの存在は、2人にとって無視できないものであった。
「決まってんだろ、このクソガキをブッ殺すんだよ。」
あえてはっきりと、やみのせんしは言い切った。
夜島学郎がこの少女を殺せないことなど先刻承知。出来る奴が殺せばいいだけの話である。
夜島学郎がこの少女を殺せないことなど先刻承知。出来る奴が殺せばいいだけの話である。
迎え撃つやみのせんしの剣に、バチバチと黄金の稲妻が纏われる。
対するジオウⅡが手にするジカンギレ―ドの刀身が、真っ黒な光に染め上げられた。
対するジオウⅡが手にするジカンギレ―ドの刀身が、真っ黒な光に染め上げられた。
「ギガスラッシュ」
『フィニッシュタイム!!』『ドラド!!』
『フィニッシュタイム!!』『ドラド!!』
王を殺す剣と、冥黒の力を吸った魔王の剣がぶつかり合う。
学郎はその光景を複雑そうに見ていたが。再度迫る黄金の茨を前に、刃に令力を込めて迎え撃った。
学郎はその光景を複雑そうに見ていたが。再度迫る黄金の茨を前に、刃に令力を込めて迎え撃った。
学郎だって分かっている。
神戸しおを無力化しなければ、自分たちには勝ち目がないのだから。
神戸しおを無力化しなければ、自分たちには勝ち目がないのだから。
◆
殺意というのは戦いにおいて重要なファクターである。
殺す意思もなく他者を倒せるのはよほど実力がかけ離れた相手だけ。
少なくともやみのせんしが見てきた参加者の中で、そんな気の抜けた態度で殺せる存在は1人もいなかった。
殺す意思もなく他者を倒せるのはよほど実力がかけ離れた相手だけ。
少なくともやみのせんしが見てきた参加者の中で、そんな気の抜けた態度で殺せる存在は1人もいなかった。
翻って、やみのせんしが見るに目の前の仮面ライダー……神戸しおは弱い。
動きは隙だらけ、フェイントの1つもなければただやみくもに刃を振り下ろしているだけ。
これが木刀同士の訓練であれば、百回やってもやみのせんしが全勝できると断言できる。
動きは隙だらけ、フェイントの1つもなければただやみくもに刃を振り下ろしているだけ。
これが木刀同士の訓練であれば、百回やってもやみのせんしが全勝できると断言できる。
だが神戸しおの抱く殺意は尋常ではなく。その質が神戸しおを『支給品便りの雑魚』から『無視できない狂犬』に変えていると言っていい。
「気持ちは分かるが、敵になると厄介だな。気が抜けねえ。」
攻撃に躊躇いが無い。急所に当てることも、自分が負傷することも今のしおは意に介さない。
一瞬この少女は衛藤可奈美のようなNPC化した存在ではないかと疑ったが、あまりに濃厚で鮮明な殺気からその可能性を排除した。
――或いは彼女なら、グリオンの手で人形になってでも同じ憎悪と殺気を宿していそうだが。
そんな風に思いいたるほど、その存在感は凄まじい。
自身も『勇者ロトを殺す』という代えがたい恩讐を抱いた身である。目の前の仮面ライダーにシンパシーは感じるが、残念ながら敵であり殺さなければならないのだ。
一瞬この少女は衛藤可奈美のようなNPC化した存在ではないかと疑ったが、あまりに濃厚で鮮明な殺気からその可能性を排除した。
――或いは彼女なら、グリオンの手で人形になってでも同じ憎悪と殺気を宿していそうだが。
そんな風に思いいたるほど、その存在感は凄まじい。
自身も『勇者ロトを殺す』という代えがたい恩讐を抱いた身である。目の前の仮面ライダーにシンパシーは感じるが、残念ながら敵であり殺さなければならないのだ。
「ベギラマ」
灼熱と閃光の魔法を大地に走らせる。
牽制とはいえ今の神戸しおでは避けられない、死角から放った一撃だったのだが。神戸しおは難なく左に飛んで躱してみせる。
同時に、しおの右側――今しがた避けなかった方角から、黄金の茨がやみのせんしを突き刺そうと迫る。
牽制とはいえ今の神戸しおでは避けられない、死角から放った一撃だったのだが。神戸しおは難なく左に飛んで躱してみせる。
同時に、しおの右側――今しがた避けなかった方角から、黄金の茨がやみのせんしを突き刺そうと迫る。
茨を弾き飛ばしながら、やみのせんしはしおの動きの違和感を咀嚼していく。
動きが拙い以上、実戦で磨かれる殺気や気配を掴む感覚も未熟なはずだ。
やみのせんしにさえその技術は発展途上。実戦経験がほとんどゼロの神戸しおに身につくはずもない。
となれば、この完璧すぎる予測と回避の正体も絞られる。
動きが拙い以上、実戦で磨かれる殺気や気配を掴む感覚も未熟なはずだ。
やみのせんしにさえその技術は発展途上。実戦経験がほとんどゼロの神戸しおに身につくはずもない。
となれば、この完璧すぎる予測と回避の正体も絞られる。
「間違いねえな。あのガキ。予知の様な能力を持ってやがる。」
恐らく仮面ライダーの力によるものだろう。
自分の持つ仮面ライダーデザストより、よほど便利そうだとは思うが、付け焼刃の異能に頼るだけでは身を亡ぼすこともまたやみのせんしは知っている。
ヒーロー殺し、ステインがそうだった。支給品やソードスキルよりも彼本来のスタイルの方がよほど手ごわかったことを覚えている。
自分の持つ仮面ライダーデザストより、よほど便利そうだとは思うが、付け焼刃の異能に頼るだけでは身を亡ぼすこともまたやみのせんしは知っている。
ヒーロー殺し、ステインがそうだった。支給品やソードスキルよりも彼本来のスタイルの方がよほど手ごわかったことを覚えている。
だがそれは強者の理屈である。
神戸しおの様なド素人……本来の戦闘スタイルも何もない人間の、支給品と殺意だけに裏打ちされた戦いには、なりふり構わない恐ろしさがあることも、また事実だ。
神戸しおの様なド素人……本来の戦闘スタイルも何もない人間の、支給品と殺意だけに裏打ちされた戦いには、なりふり構わない恐ろしさがあることも、また事実だ。
『ジュウ!!』
ジオウの手元で、剣が銃に切り替わる。
ベルトの左側につけられた、赤黒いライドウォッチを銃のスロットに装填し、しおは構えた。
ベルトの左側につけられた、赤黒いライドウォッチを銃のスロットに装填し、しおは構えた。
『フィニッシュタイム!!』『ドラド!!』『スレスレシューティング!!』
「……さて、俺はこれをどうするべきかな!!」
「……さて、俺はこれをどうするべきかな!!」
撃ちだされた光弾は、おどろおどろしい黒に染まっていた。
直撃すれば致命傷だろう。グリオンの力で強化されていればなおさらだ。
直撃すれば致命傷だろう。グリオンの力で強化されていればなおさらだ。
だが自分が神戸しおならば、間違いなく銃撃を囮に使う。
グリオンの操る黄金の茨に捕えるために、相手の動きを誘導させることも加えて狙いを定める。
神戸しおは子供で素人だ。
そんな戦略など無いと切り捨てるのは容易いが、視野の広がったやみのせんしの『勘』が、そんな油断を否定している。
グリオンの操る黄金の茨に捕えるために、相手の動きを誘導させることも加えて狙いを定める。
神戸しおは子供で素人だ。
そんな戦略など無いと切り捨てるのは容易いが、視野の広がったやみのせんしの『勘』が、そんな油断を否定している。
グリオンと神戸しお。仮面ライダーエルドと仮面ライダージオウⅡ。
その関係はいわば、檻と猟犬のようなものだ。
猟犬の期待通りに動いては、やみのせんしは囚われる。
その関係はいわば、檻と猟犬のようなものだ。
猟犬の期待通りに動いては、やみのせんしは囚われる。
「ベギラゴン!!」
逡巡の末やみのせんしは、避けるでなく迎え撃つことを選んだ。
先ほどよりいっそう強い閃光と灼熱が冥黒の力を込めた黒い銃撃とぶつかり火花を散らす。
しおはさらに数度引き金を引き撃ち続けるが、押し合っていた閃光が黒く染まったかと思えば、しおの撃った銃撃全てを飲み込んで爆ぜた。
相殺という表現がよく似合う。二つのエネルギー消失の余波で、やみのせんしを狙っていた黄金の茨の動きも止める。
彼の予想は正しかった。どのように避けても攻撃を避ける隙を、グリオンの茨はつく算段だったのだ。
先ほどよりいっそう強い閃光と灼熱が冥黒の力を込めた黒い銃撃とぶつかり火花を散らす。
しおはさらに数度引き金を引き撃ち続けるが、押し合っていた閃光が黒く染まったかと思えば、しおの撃った銃撃全てを飲み込んで爆ぜた。
相殺という表現がよく似合う。二つのエネルギー消失の余波で、やみのせんしを狙っていた黄金の茨の動きも止める。
彼の予想は正しかった。どのように避けても攻撃を避ける隙を、グリオンの茨はつく算段だったのだ。
「何をしたの……」
「かわいげのねえガキだ。もう少し悔しがれよ。」
「かわいげのねえガキだ。もう少し悔しがれよ。」
子供らしくない感情の押し殺したような問いだった。
だがやみのせんしには分かる。目の前の少女が、自分に何の興味も抱いていないから、せり上がる感情が存在しないのだ。
ステインの様な信念も。イドラの様な覚悟も。アルカイザーのような正義もない。
あるのはただ復讐心だけ。自分に最も近いはずなのに、その姿がはるか遠い他人事のように思えてならない。
だがやみのせんしには分かる。目の前の少女が、自分に何の興味も抱いていないから、せり上がる感情が存在しないのだ。
ステインの様な信念も。イドラの様な覚悟も。アルカイザーのような正義もない。
あるのはただ復讐心だけ。自分に最も近いはずなのに、その姿がはるか遠い他人事のように思えてならない。
「テメエの真似だ。
呪文に冥黒の力を乗せた。相殺するなら同じ力をぶつけるって、相場が決まってる。」
呪文に冥黒の力を乗せた。相殺するなら同じ力をぶつけるって、相場が決まってる。」
こんなふうにな。そう指をならし、再度ベギラゴンを唱える。
今度は黄金の茨ごと放たれる灼熱の閃光がやみのせんしの手先から徐々に黒く染まっていく。
その黒炎がやがてしおに纏わりつくように形を変え、掃いのけようと藻掻くしおがその熱を前に苦悶の声を上げる。
今度は黄金の茨ごと放たれる灼熱の閃光がやみのせんしの手先から徐々に黒く染まっていく。
その黒炎がやがてしおに纏わりつくように形を変え、掃いのけようと藻掻くしおがその熱を前に苦悶の声を上げる。
「がっ……がぁあ!!!」
だがやみのせんしは、目の前の少女の叫びに眉一つ動かさない。
男は既に英雄(ヒーロー)であることを捨てている。
敵として向き合えば、スライムだろうと子供だろうと手を抜くことはあり得ない。
男は既に英雄(ヒーロー)であることを捨てている。
敵として向き合えば、スライムだろうと子供だろうと手を抜くことはあり得ない。
「闇の呪文……あえて命名するならドルモーアってところか。」
変容する黒炎に名をつけると、魔剣を片手にしおを前に歩み寄る。
やみのせんしは完全に、この少女にとどめを刺すつもりであった。
それも死体さえ残さない、レジスターの破壊という形でだ。
やみのせんしは完全に、この少女にとどめを刺すつもりであった。
それも死体さえ残さない、レジスターの破壊という形でだ。
グリオンは死体さえあれば配下を生み出せる。
しおと呼ばれた少女が生きていようと死んでいようと、その肉体があるだけでグリオンの手駒に成り下がる。
しおと呼ばれた少女が生きていようと死んでいようと、その肉体があるだけでグリオンの手駒に成り下がる。
「胸糞悪い。」
衛藤可奈美――洗練された剣技を扱う動く死体を思い出し、やみのせんしは吐き捨てる。
あの少女がグリオンの支配下にあったのかどうかは、定かではない。
重要なことはやみのせんしが動く死体と出会っている事であり。
イドラの埋葬をデクに頼むような彼の感性に乗ってみれば、そういう存在は許しがたいものであるということだ。
あの少女がグリオンの支配下にあったのかどうかは、定かではない。
重要なことはやみのせんしが動く死体と出会っている事であり。
イドラの埋葬をデクに頼むような彼の感性に乗ってみれば、そういう存在は許しがたいものであるということだ。
とはいえ、神戸しおをここで殺すことを、善行だとか救済だとかいうつもりはなかった。
そんなまともな感性は勇者(ヒーロー)に任せればいい。
その精神を捨てたから、彼は闇の戦士なのだ。
そんなまともな感性は勇者(ヒーロー)に任せればいい。
その精神を捨てたから、彼は闇の戦士なのだ。
間合いに入り、剣を振るって闇の炎をかき消した。
既にジオウⅡの鎧はなく、息を切らせた年若い少女が、恨みの籠った淀んだ目でやみのせんしを見上げるだけだった。
既にジオウⅡの鎧はなく、息を切らせた年若い少女が、恨みの籠った淀んだ目でやみのせんしを見上げるだけだった。
「じゃあな。クソガキ。」
それだけ言い捨てて、やみのせんしはしおに刃を振り下ろし――
「まだだよ。
ねえ――グリオンさん。」
ねえ――グリオンさん。」
今わの際に少女は微笑み。
その体が――闇の戦士の刃が届くより速く、血しぶきを上げた。
そして次にやみのせんしが意識を向けた時、彼の体には黄金の茨が巻き付いていた。
その体が――闇の戦士の刃が届くより速く、血しぶきを上げた。
そして次にやみのせんしが意識を向けた時、彼の体には黄金の茨が巻き付いていた。
(何が起こった――どこから現れた!?警戒は怠ってないはず――)
あまりに突然のことに目を走らせ、やみのせんしは気づく。
彼に巻き付いた黄金の茨は……神戸しおの胸を貫いてやみのせんしに纏わりついていたのだ。
彼の目の前で、心臓を黄金の茨でえぐり取られたしおが、笑顔のまま血を噴き出した。
彼に巻き付いた黄金の茨は……神戸しおの胸を貫いてやみのせんしに纏わりついていたのだ。
彼の目の前で、心臓を黄金の茨でえぐり取られたしおが、笑顔のまま血を噴き出した。
見るまでもなく致命傷。
それがまるで計画通りであるかのような勝ち誇った顔に。仮にも仲間を殺す攻撃を当たり前のようにこなす魔王に。勇者だった男は本能的な嫌悪を抱かざるを得なかった。
それがまるで計画通りであるかのような勝ち誇った顔に。仮にも仲間を殺す攻撃を当たり前のようにこなす魔王に。勇者だった男は本能的な嫌悪を抱かざるを得なかった。
「クソ野郎どもが!!!!」
茨が擦れる。
爆発する大剣の性質を残した攻撃がやみのせんしを切り裂き、切っ先から火花が散って。
男の叫びは、爆発に呑み込まれた。
爆発する大剣の性質を残した攻撃がやみのせんしを切り裂き、切っ先から火花が散って。
男の叫びは、爆発に呑み込まれた。
【神戸しお@ハッピーシュガーライフ 死亡】
◆◇◆
「……は?」
その出来事を目の前で受けて、学郎の顔が困惑に歪む。
自分を指したのは黄金の刃、魔王グリオンの一撃だ。
ではなぜその刃が、仲間のはずのしおの命まで奪う?
自分を指したのは黄金の刃、魔王グリオンの一撃だ。
ではなぜその刃が、仲間のはずのしおの命まで奪う?
――魔王グリオンは、死体さえも己の配下に作り替える。
「お前……お前は……」
事前に聞いていた情報と、目の前の光景。最悪の情報が掛け合わさり、最悪の想定が学郎の中で組みあがる。
やみのせんしが人を殺すことを躊躇わない人間であることは、学郎にも分かっていた。
彼はきっと、レジスターを壊そうとしたのだろう。
グリオンがいる戦場で『死体を残す』というのはグリオンを知る者にとってタブーも同然だ。
やみのせんしが人を殺すことを躊躇わない人間であることは、学郎にも分かっていた。
彼はきっと、レジスターを壊そうとしたのだろう。
グリオンがいる戦場で『死体を残す』というのはグリオンを知る者にとってタブーも同然だ。
グリオンは、そこに目を付けた。
しおの肉体を死角に、ノコノコ近づいたやみのせんしを捕らえ倒す。
完璧な作戦だ。仲間の命を使い捨てる前提であるという一点を除けばだ。
しおの肉体を死角に、ノコノコ近づいたやみのせんしを捕らえ倒す。
完璧な作戦だ。仲間の命を使い捨てる前提であるという一点を除けばだ。
「グリオン!!!!!!!」
体中に流れる血が別物に変わったかのような感覚が、学郎を突き動かす。
それは戦略的な攻めというより、獣の本能に突き動かされた動きに近しいと、グリオンの眼は捉えていた。
夜島学郎の中に巡る『巨大な黒い力』が、学郎本来の力と混ざり合ったかのような。
それは戦略的な攻めというより、獣の本能に突き動かされた動きに近しいと、グリオンの眼は捉えていた。
夜島学郎の中に巡る『巨大な黒い力』が、学郎本来の力と混ざり合ったかのような。
出力だけなら強大だ。
だが魔王グリオンは、人を苦しめ絶望に染め落とすことを飽きるほど続けた男である。
激昂した戦士の攻撃は、柱刀骸街(ゼノブレード)による鉄壁の防御を続けたさっきまでの学郎より、はるかに御しやすくさえあった。
だが魔王グリオンは、人を苦しめ絶望に染め落とすことを飽きるほど続けた男である。
激昂した戦士の攻撃は、柱刀骸街(ゼノブレード)による鉄壁の防御を続けたさっきまでの学郎より、はるかに御しやすくさえあった。
「そう叫ぶ必要もない。
君もすぐに彼女たちと共に私の部下に加えよう。」
君もすぐに彼女たちと共に私の部下に加えよう。」
黄金の仮面ライダー。仮面ライダーエルドが指を鳴らし。指揮をするかのように彼の背後の地面が黄金に染まる。
そしてそこから生えた12本の触手が、学郎の体を捕らえようと迫りくる。
学郎は怒りに任せ、刃に令力を乗せるとその全てを一刀に薙ぎ払った。
白目をむき獣のが爪を振るうような一撃は、普段の学郎を知る者にとっては意外に映るだろう。
或いは恐ろしく見えてもおかしくない。後にやみのせんしは、この時の学郎を恐ろしい存在だったと思い出す。
そしてそこから生えた12本の触手が、学郎の体を捕らえようと迫りくる。
学郎は怒りに任せ、刃に令力を乗せるとその全てを一刀に薙ぎ払った。
白目をむき獣のが爪を振るうような一撃は、普段の学郎を知る者にとっては意外に映るだろう。
或いは恐ろしく見えてもおかしくない。後にやみのせんしは、この時の学郎を恐ろしい存在だったと思い出す。
だがグリオンは違う。
漆の様な光沢を放つ漆黒の刃と、迸る令力を前にただ一言。
漆の様な光沢を放つ漆黒の刃と、迸る令力を前にただ一言。
「素晴らしい……。」
感動したように言い放つと、グリオンは準備が整ったかのように指をならす。
パチン。
パチン。
その音が響き、学郎の全身を内側から鑢で研がれたような衝撃が駆け巡る。
それが落雷によるものだと、遅れて走るムカつきと熱さが告げていた。
見上げると、学郎が両断した黄金の茨、その断面に蒼い稲妻が音を立てて走っていた。
それが落雷によるものだと、遅れて走るムカつきと熱さが告げていた。
見上げると、学郎が両断した黄金の茨、その断面に蒼い稲妻が音を立てて走っていた。
「降雷皇ハモンといったか。幻魔の力を宿す稲妻だ。
並の人間なら殺せる出力だが、君には致命傷にはならないか。
まあそもそも、並の人間がどれだけ生き延びているかも怪しいところだが。」
並の人間なら殺せる出力だが、君には致命傷にはならないか。
まあそもそも、並の人間がどれだけ生き延びているかも怪しいところだが。」
くつくつと笑いながら、黄金の茨で学郎の四肢を縛り上げる。
顔を突き合せた黄金のライダーを、嫌悪と敵意をもって学郎は強くにらみつけた。
顔を突き合せた黄金のライダーを、嫌悪と敵意をもって学郎は強くにらみつけた。
「お前は、人の命を何だと思っているんだ!?」
「私の素材だ。
この会場にある全ての力が、感情が、希望が!私の力を更なる高みへ押し上げる冥黒の礎だよ。
無論――君の中にある力もね。」
「私の素材だ。
この会場にある全ての力が、感情が、希望が!私の力を更なる高みへ押し上げる冥黒の礎だよ。
無論――君の中にある力もね。」
グリオンは学郎の心臓を霊衣の上から指でなぞる。金属がこすれ合うような感触とともに、生理的な嫌悪とでも言うべきシミのような感覚が学郎に広がっていく。
143:雄英事変:それ以外のことなんて消してしまおう ◆kLJfcedqlU:2026/02/23(月) 00:04:27 ID:q5ayYNAY0
「さっきの女の子……しおって子もそうだったのか?」
「アレは少し違うが――まあ言い得てそうだな。
私の素材であり、私が利用する対象だ。
いささか上質だから勿体なかったが……君と彼を捕らえる事が出来たのであれば、消費する価値もあった。」
「……使い捨ての道具だとでも思っているのか?
他人のことを、そんな簡単に壊せるのか!?」
「そうだが。それがどうかしたかね。」
「アレは少し違うが――まあ言い得てそうだな。
私の素材であり、私が利用する対象だ。
いささか上質だから勿体なかったが……君と彼を捕らえる事が出来たのであれば、消費する価値もあった。」
「……使い捨ての道具だとでも思っているのか?
他人のことを、そんな簡単に壊せるのか!?」
「そうだが。それがどうかしたかね。」
その言葉に学郎は、藤乃代葉の実家のことを思い出していた。
代葉に戦い続けることを強いられ、飼い殺し同然の扱いで戦わせた彼らのことが、学郎ははっきり嫌いである。
では彼らが、グリオンに並ぶほどの悪なのかと問われれば、学郎も代葉も否を唱えるだろう。
代葉に戦い続けることを強いられ、飼い殺し同然の扱いで戦わせた彼らのことが、学郎ははっきり嫌いである。
では彼らが、グリオンに並ぶほどの悪なのかと問われれば、学郎も代葉も否を唱えるだろう。
「もういい。分かった。」
グリオンの邪悪さには、理由が無い。
正義とか、大義とか、覚悟とか、代償とか。そんな理由も理屈も無く、ただこの男は邪悪である。
多分、小鳥遊ホシノの後輩たちを手下にしたことにも理由はない。
ただそこにあったから配下を生み出し、そっちの方が面白いからわざわざアビドスの名を穢すような行動を配下に取らせた。
正義とか、大義とか、覚悟とか、代償とか。そんな理由も理屈も無く、ただこの男は邪悪である。
多分、小鳥遊ホシノの後輩たちを手下にしたことにも理由はない。
ただそこにあったから配下を生み出し、そっちの方が面白いからわざわざアビドスの名を穢すような行動を配下に取らせた。
「お前はここで殺す。」
細胞の全てから敵意を向けるような、悍ましくさえある声。
その全力を絞り、右腕の拘束を外した学郎は、支給品の1つを取り出し起動する。
それは仲間たちとわけあったアイテムの中、とりわけ危険な力を秘めたものであった。
その全力を絞り、右腕の拘束を外した学郎は、支給品の1つを取り出し起動する。
それは仲間たちとわけあったアイテムの中、とりわけ危険な力を秘めたものであった。
『オーズ!!』
外れたタガを示すように淀んだ声が響き、アナザーオーズウォッチが学郎の体に吸い込まれる。
「ああああああああああああああああああああああああ!!!!」
後にその姿は、ある者の手でこのように命名されることになる。
――鵺(キマイラ)と。
◇
爆炎が消える中、やみのせんしの体は漆黒のライダーへと変わっていた。
仮面ライダーデザストの姿は、やみのせんしほどの手練れにとっては慣れない武器を扱うようなものではあるが。
唯一防御力という点では、普段の彼より確実に秀でていた。何せ仮面をつけているのだ。
仮面ライダーデザストの姿は、やみのせんしほどの手練れにとっては慣れない武器を扱うようなものではあるが。
唯一防御力という点では、普段の彼より確実に秀でていた。何せ仮面をつけているのだ。
「とっさだったな……」
自分でもギリギリ変身できたと言った風体で、息を整えグリオンへと意識を向ける。
爆発と変身の余波で、神戸しおから随分距離を放された。
しおの死体を粉微塵にするのは容易いが、その数十秒で夜島学郎がグリオンに殺される可能性がある。
優先すべきはグリオンだろうとやみのせんしは優先度を切り替え――映した視線の先で、それを目にした。
爆発と変身の余波で、神戸しおから随分距離を放された。
しおの死体を粉微塵にするのは容易いが、その数十秒で夜島学郎がグリオンに殺される可能性がある。
優先すべきはグリオンだろうとやみのせんしは優先度を切り替え――映した視線の先で、それを目にした。
「アイツは……!」
猛禽のような牙、四足獣のような爪、飛蝗のような足。
動物を混ぜ込んで歪めたような怪物は、色を除けばデクと共に打ち倒したNPCと瓜二つだ。
NPCであるのなら似た存在がいくついても不思議ではない、色が違う似た魔物だってよくある話だ。
そんな経験もあり、やみのせんしの中で警戒の比重はアナザーオーズにこそ強くなる。
動物を混ぜ込んで歪めたような怪物は、色を除けばデクと共に打ち倒したNPCと瓜二つだ。
NPCであるのなら似た存在がいくついても不思議ではない、色が違う似た魔物だってよくある話だ。
そんな経験もあり、やみのせんしの中で警戒の比重はアナザーオーズにこそ強くなる。
というのは、彼が魔物とばかり戦って居た頃の話だ。
今のやみのせんしは、戦場を俯瞰して捉える技術を会得している。
だから気づいた、アナザーオーズの鍵爪のような攻撃が、夜島学郎の使う刃と全く同じものであることを。
今のやみのせんしは、戦場を俯瞰して捉える技術を会得している。
だから気づいた、アナザーオーズの鍵爪のような攻撃が、夜島学郎の使う刃と全く同じものであることを。
「その変化は想定外だった。
歪んだ仮面ライダーの力が、さらに歪むとは。
それは君の力か?はたまた君の中にいる闇の力によるものか?」
「どちらでも関係ないだろ。お前には。」
歪んだ仮面ライダーの力が、さらに歪むとは。
それは君の力か?はたまた君の中にいる闇の力によるものか?」
「どちらでも関係ないだろ。お前には。」
茶飲み話をするかのように軽口に、アナザーオーズが爪を振り下ろす。
三本の爪を中心に、柱刀骸街(ゼノブレード)によく似た3つの刃が振り下ろされ。グリオンはそれを左手に構えた刀で受け止める。
鍔の無い刀――心刀・無垢と呼ばれるその武器もまた、刀身が趣味の悪い黄金に染まり切っていた。
三本の爪を中心に、柱刀骸街(ゼノブレード)によく似た3つの刃が振り下ろされ。グリオンはそれを左手に構えた刀で受け止める。
鍔の無い刀――心刀・無垢と呼ばれるその武器もまた、刀身が趣味の悪い黄金に染まり切っていた。
やみのせんしがその刀を視認できるほど近づく頃には、自分の浮かんだ勘違いを彼は既に振り払っていた。
(あの怪物は学郎か!
……NPCじゃない。仮面ライダーみたいな支給品による変身だったのか?だとしたら……)
……NPCじゃない。仮面ライダーみたいな支給品による変身だったのか?だとしたら……)
自分とデクが倒した男も、参加者の成れの果てだったのだろうかと。今更になって疑念が浮かぶ。
その事実はデクを大いに苦しめたが、やみのせんしの心に罪を刻ませるようなものではない。
その事実はデクを大いに苦しめたが、やみのせんしの心に罪を刻ませるようなものではない。
(まあ、今は味方だ。
味方……でいいんだよな?)
味方……でいいんだよな?)
確信を持てない理由は、アナザーオーズの姿になったからではない。
発する気迫、牙を研いだ猛獣が如き殺意。
外見以上に中身がまるごと別の何かに入れ替わってしまったかのように、アナザーオーズと夜島学郎の発する雰囲気は一致しない。
発する気迫、牙を研いだ猛獣が如き殺意。
外見以上に中身がまるごと別の何かに入れ替わってしまったかのように、アナザーオーズと夜島学郎の発する雰囲気は一致しない。
だがそれでもと、やみのせんしは手を翳す。
「バイキルト。」
そもそも殺し合いに乗っている自分と、殺し合いに否定的なガクロウは味方ではないのだ。
グリオンの敵であるのなら、それだけで十分だ。
グリオンの敵であるのなら、それだけで十分だ。
「これは……」
4度目の刃のぶつかり合いで、学郎は自身の攻撃力が増大していることに気づいた。
力が湧き上がる――というよりは、力が適切に体を流れている感覚。
流れに沿って鍵爪を振るうと、先ほどまでとは違う削り取る様な音が確かに響いた。
力が湧き上がる――というよりは、力が適切に体を流れている感覚。
流れに沿って鍵爪を振るうと、先ほどまでとは違う削り取る様な音が確かに響いた。
仮面ライダーエルド。
幻魔の力をもって錬成された賢者の石の再現品に、学郎の爪は確かに傷を立てていた。
幻魔の力をもって錬成された賢者の石の再現品に、学郎の爪は確かに傷を立てていた。
「……ほう。」
それは即ち、黄金の完全性の喪失。
もしここに居たのが『グリオン』であれば、さぞかし憤慨していたことだろう。
だが、ここにいるのは黄金に非ざる魔王であれば。
そこに抱くは憤慨ではなく、己の知らぬ力に対する好奇心と警戒に他ならない。
もしここに居たのが『グリオン』であれば、さぞかし憤慨していたことだろう。
だが、ここにいるのは黄金に非ざる魔王であれば。
そこに抱くは憤慨ではなく、己の知らぬ力に対する好奇心と警戒に他ならない。
「やみのせんし……君の力か。
呪文や魔法とは随分メルヘンな力を使うと思ったが、いざ見てみると中々興味深い。」
「俺にとっては当たり前のものだったがな。
想像以上に少数派(マイナー)でビビッてるよ。珍しいのか?魔法って。」
「さあね。私も君とうてなくらいしかサンプルが無いから、門外漢なことは答えられない。
だがそれでも分かることはあるぞ。」
呪文や魔法とは随分メルヘンな力を使うと思ったが、いざ見てみると中々興味深い。」
「俺にとっては当たり前のものだったがな。
想像以上に少数派(マイナー)でビビッてるよ。珍しいのか?魔法って。」
「さあね。私も君とうてなくらいしかサンプルが無いから、門外漢なことは答えられない。
だがそれでも分かることはあるぞ。」
黄金の仮面の奥でグリオンはニヤついた笑みを浮かべる。
こちらを分かり切ったとでも言いたげに、もしくはこちらの底を探る様に楽し気に。
こちらを分かり切ったとでも言いたげに、もしくはこちらの底を探る様に楽し気に。
「魔法を扱うには相応のリソースが必要だ。
便宜上『魔力』とでもいうべきものだが……君は後どれだけ魔法が使える?」
便宜上『魔力』とでもいうべきものだが……君は後どれだけ魔法が使える?」
そう言い放つとグリオンは、大剣を変化させた茨を全て2人に差し向ける。
12本に数を増やした茨の刃は、その全てにバチバチと蒼い稲妻を迸らせアナザーオーズと仮面ライダーデザストへと鎌首をもたげる。
僅かにでも掠れば爆発と感電を起こす、質量を持った稲妻を飛び交って躱し、やみのせんしは叫んだ。
12本に数を増やした茨の刃は、その全てにバチバチと蒼い稲妻を迸らせアナザーオーズと仮面ライダーデザストへと鎌首をもたげる。
僅かにでも掠れば爆発と感電を起こす、質量を持った稲妻を飛び交って躱し、やみのせんしは叫んだ。
「お前。ガクロウでいいんだよな?」
「えっ……はい!」
「えっ……はい!」
学郎には質問の意味が分からなかったが、やみのせんしにとって大事な確認だった。
自分たちを襲った怪物がイカれてたのが、変身した奴のせいなのか変身する人間のせいなのか。アナザーライダーを知らないやみのせんしには確かめる必要があったのだ。
少なくとも、夜島学郎が変身するアナザーオーズは問題ない。味方だ。
その意志を示すように頷くと、回避をしながらやみのせんしは自身の体を学郎に近づけ。グリオンには聞こえないように耳打ちする。
自分たちを襲った怪物がイカれてたのが、変身した奴のせいなのか変身する人間のせいなのか。アナザーライダーを知らないやみのせんしには確かめる必要があったのだ。
少なくとも、夜島学郎が変身するアナザーオーズは問題ない。味方だ。
その意志を示すように頷くと、回避をしながらやみのせんしは自身の体を学郎に近づけ。グリオンには聞こえないように耳打ちする。
「さっきグリオンが言ってたことだが……今後の攻撃や回復だとを考えると、お前にバイキルト……攻撃強化魔法を使うチャンスはもうない。
加えて言えば、おそらくグリオンの消耗は俺たちよりずっと軽いはずだ。」
「どうしてそう思うんです?」
「アイツが黄金ばっかり動かしてるからだ。
錬金術なんて呼ばれてはいるが、あいつの力はなにも黄金ばかりに作用するもんじゃない。
たぶんだが、あの黄金の仮面ライダーの力があれば、黄金を操るのが楽になるんだろうな。」
加えて言えば、おそらくグリオンの消耗は俺たちよりずっと軽いはずだ。」
「どうしてそう思うんです?」
「アイツが黄金ばっかり動かしてるからだ。
錬金術なんて呼ばれてはいるが、あいつの力はなにも黄金ばかりに作用するもんじゃない。
たぶんだが、あの黄金の仮面ライダーの力があれば、黄金を操るのが楽になるんだろうな。」
冥黒王ギギストに与えられた知識を参照すると、そうとしか考えられない。
その事実だけでも学郎にとっては最悪だったが、真に彼を愕然とさせたのは続く言葉であった。
その事実だけでも学郎にとっては最悪だったが、真に彼を愕然とさせたのは続く言葉であった。
「何より不味いのは、万が一上や領域のバトルが片付いたとき、グリオンがいたらそこで死んだ奴がグリオンの手下になるかもしれねえってことだ。」
何よりシェフィや薫がグリオンの配下となって、アビドスの生徒のように破壊活動を行うようなことがあれば。
小鳥遊ホシノがそうであったように、きっと学郎は許せなくなる。
グリオンを。
そしてグリオンを倒し損ねた――ありえるかもしれない自分を。
小鳥遊ホシノがそうであったように、きっと学郎は許せなくなる。
グリオンを。
そしてグリオンを倒し損ねた――ありえるかもしれない自分を。
「俺が隙を作る。
だがらお前は、次の一撃に全部賭けろ。」
「俺が陽動に回った方がいいんじゃ……」
「今のグリオンには殺気がねえが、気を抜いているわけじゃない。
攻撃を当てるだけならともかく、会心の一撃を叩き込むにはそれなりにデカい隙を晒させる必要がある。
俺ならそれができる。まあそれをするから、バイキルトをかけなおすMPが無くなるんだが……問題ねえだろ?」
だがらお前は、次の一撃に全部賭けろ。」
「俺が陽動に回った方がいいんじゃ……」
「今のグリオンには殺気がねえが、気を抜いているわけじゃない。
攻撃を当てるだけならともかく、会心の一撃を叩き込むにはそれなりにデカい隙を晒させる必要がある。
俺ならそれができる。まあそれをするから、バイキルトをかけなおすMPが無くなるんだが……問題ねえだろ?」
怒気の籠った言葉には、有無を言わさぬ圧があった。
威圧しているわけではなく。『誰かに頼る』ということがこの男は根本的に不得手なのかもしれない。
ちょっとしたシンパシーが学郎の中に芽生え、僅かに和らいだ雰囲気が理解できず。ちょっとだけ顔をしかめた。
威圧しているわけではなく。『誰かに頼る』ということがこの男は根本的に不得手なのかもしれない。
ちょっとしたシンパシーが学郎の中に芽生え、僅かに和らいだ雰囲気が理解できず。ちょっとだけ顔をしかめた。
「令呪の判断は任せるが、しくじったらテメエごとグリオンを殺す。」
悪態というよりは、学郎に釘を刺すようにやみのせんしはそう言って、刀を構える。
仮面ライダーデザストになったとはいえ、聖剣を使うわけではない。
彼が握ったのは、トランクスから入れ替えた王殺しの魔剣。
仮面ライダーデザストになったとはいえ、聖剣を使うわけではない。
彼が握ったのは、トランクスから入れ替えた王殺しの魔剣。
封が解かれたように極光を放つ刀身に赤い稲妻が迸る。王への反逆を示す、邪剣の一振り。
「我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)」
それが魔王への反抗の狼煙となった。
グリオンを丸々飲み込みそうなほど、巨大な赤雷が大地を抉る。
生身であれば再起不能は避けられない轟雷を前に魔王グリオンは、ただ冷静に手にした剣を壁に変形させて防ぐ。
心刀・無垢。
正しき心を伝えると言われる刃が変形し。黄金の壁となって衝撃を地面に逃がしていく。
だが正面から宝具の一撃を受けたことで、無垢の刀身もただでは済まない。
黄金の壁にはヒビが入り、ところどころが欠けていた。
だがその程度の消耗、錬金術師たるグリオンには誤差も同然だった。
グリオンを丸々飲み込みそうなほど、巨大な赤雷が大地を抉る。
生身であれば再起不能は避けられない轟雷を前に魔王グリオンは、ただ冷静に手にした剣を壁に変形させて防ぐ。
心刀・無垢。
正しき心を伝えると言われる刃が変形し。黄金の壁となって衝撃を地面に逃がしていく。
だが正面から宝具の一撃を受けたことで、無垢の刀身もただでは済まない。
黄金の壁にはヒビが入り、ところどころが欠けていた。
だがその程度の消耗、錬金術師たるグリオンには誤差も同然だった。
「令呪を使ったならまだしも。魔力を温存してる君の一撃は私には届かないよ。」
「だろうな。だから、もう一発だ。」
「だろうな。だから、もう一発だ。」
黄金の壁を挟んで、やみのせんしが言い放つ。
同時にグリオンの左腕――茨に形を変えた大剣を通じて、漆の稲妻が肌を伝う。
その中にはほんのわずか、冥黒の力が紛れ込んでいた。
そして稲妻ということは……その力は仮面ライダーエルドの黄金の体を貫いて、中身にまでそのダメージを届かせるということを意味していた。
同時にグリオンの左腕――茨に形を変えた大剣を通じて、漆の稲妻が肌を伝う。
その中にはほんのわずか、冥黒の力が紛れ込んでいた。
そして稲妻ということは……その力は仮面ライダーエルドの黄金の体を貫いて、中身にまでそのダメージを届かせるということを意味していた。
「知らなかったよ錬金術師。金は雷を通す――つまり、ギラを雷状にしちまえばお前を狙う必要もねえってことだ!」
やみのせんしは、雷の呪文を使えない。存在を知らないと言ったほうが正しい。
だが『レミーラ』や『ギラ』を初め光や熱の魔法は使えたし、ドルモーアの会得で魔法に別の力を混ぜ合わせ、操作することを覚えた。
その後グリオンの雷や我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)を見て、確信する。
だが『レミーラ』や『ギラ』を初め光や熱の魔法は使えたし、ドルモーアの会得で魔法に別の力を混ぜ合わせ、操作することを覚えた。
その後グリオンの雷や我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)を見て、確信する。
――これ、俺にもできるな。
そんな直感により、その呪文は再現された。
聖なる稲妻を経由しない、漆黒の稲妻。
さる世界線では「エビルデイン」や「ダークデイン」と称される力に、やみのせんしは残るMPを豪快に注ぎ込む。
聖なる稲妻を経由しない、漆黒の稲妻。
さる世界線では「エビルデイン」や「ダークデイン」と称される力に、やみのせんしは残るMPを豪快に注ぎ込む。
「――成程。君の狙いが読めたよ。」
半面グリオンは、エビルデインの力にその体を焼きながら、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
宝具の赤雷。冥黒の魔雷。どちらも黄金を扱う今のグリオン――仮面ライダーエルドには天敵だ。
だがそれがどうしたというのか。
宝具の赤雷。冥黒の魔雷。どちらも黄金を扱う今のグリオン――仮面ライダーエルドには天敵だ。
だがそれがどうしたというのか。
(稲妻の攻撃で仮面ライダーエルドを変身解除させ、その隙を学郎がつく。
大方こんなところだろうが――甘いな。)
大方こんなところだろうが――甘いな。)
そもそも仮面ライダーとは、ただの鎧ではないのだ。
仮面ライダーエルドとて見た目は黄金の鎧でいかにも電気を通しそうだが、 その細部には賢者の石による錬成陣の再構成で超常的な力を生み出す、特異な機能を備えている。
通電するかどうかなど、グリオンの匙加減でいかようにも切り替わるし、今だって別に稲妻に特別弱いわけではない。
魔王グリオンがダメージを受けているのは、それだけやみのせんしの技量や魔力が高いからだ。
仮にそこらの雑魚が宝具を使っても、グリオンに傷1つ付けることはできないだろう。
仮面ライダーエルドとて見た目は黄金の鎧でいかにも電気を通しそうだが、 その細部には賢者の石による錬成陣の再構成で超常的な力を生み出す、特異な機能を備えている。
通電するかどうかなど、グリオンの匙加減でいかようにも切り替わるし、今だって別に稲妻に特別弱いわけではない。
魔王グリオンがダメージを受けているのは、それだけやみのせんしの技量や魔力が高いからだ。
仮にそこらの雑魚が宝具を使っても、グリオンに傷1つ付けることはできないだろう。
やみのせんしの敗因は、仮面ライダーを知らなかったことだ。
なまじ強いからこそ、仮面ライダーの力を扱いにくい武装としてしか認識していなかった。
グリオンはせせら笑い、やみのせんしからすっかり関心を無くしていた。
なまじ強いからこそ、仮面ライダーの力を扱いにくい武装としてしか認識していなかった。
グリオンはせせら笑い、やみのせんしからすっかり関心を無くしていた。
唯一警戒すべきは、夜島学郎のみ。
そして彼らがこうもはっきりと決戦の意を示したということは。
そして彼らがこうもはっきりと決戦の意を示したということは。
「捨てがまりの策がこの程度なら――我々の勝利だ。」
◇
「とか思ってんだろうな、魔王ってやつは。」
エビルデインを迸らせながら、やみのせんしは息を整える。
宝具と呪文の2重の稲妻は、それだけで並大抵の参加者は殺しうる威力を誇っていたが、魔王グリオン相手には牽制しかならないだろうことは分かっていた。
それは黄金の装甲を纏うグリオン本人の同じこと。
やみのせんしが待っていたのは、雷撃に根を上げての変身解除ではない。
宝具と呪文の2重の稲妻は、それだけで並大抵の参加者は殺しうる威力を誇っていたが、魔王グリオン相手には牽制しかならないだろうことは分かっていた。
それは黄金の装甲を纏うグリオン本人の同じこと。
やみのせんしが待っていたのは、雷撃に根を上げての変身解除ではない。
雷撃を受けたグリオンがその攻撃を無駄だと断ずる。
そのほんの少しの油断こそ……彼の真の狙いだった。
そのほんの少しの油断こそ……彼の真の狙いだった。
グリオンが隙を晒したと、ほんのわずかな気のゆるみからやみのせんしは理解する。
その瞬間、男は構えた。
王殺しの邪剣は使えない。彼が抜いたのはステインが使用した、ありえざる漆黒の聖剣。
そこに冥黒の力を宿し、一気に降りぬく。その視線には12の茨を含めた、彼の『敵』全てが捉えられていた。
その瞬間、男は構えた。
王殺しの邪剣は使えない。彼が抜いたのはステインが使用した、ありえざる漆黒の聖剣。
そこに冥黒の力を宿し、一気に降りぬく。その視線には12の茨を含めた、彼の『敵』全てが捉えられていた。
「さみだれけん!!」
宙を飛び交い降りしきる斬撃。
それはまさしく、学郎の見せた柱刀骸街(ゼノブレード)そのものだ。
敵を見て、学ぶことを覚えた今のやみのせんしの成長は留まるところを知らない。
それはまさしく、学郎の見せた柱刀骸街(ゼノブレード)そのものだ。
敵を見て、学ぶことを覚えた今のやみのせんしの成長は留まるところを知らない。
12の茨が斬撃で弾き飛ばされ、グリオンへの射線ががら空きになる。
その合間を、漆黒の斬撃がいくつも飛び交った。
その合間を、漆黒の斬撃がいくつも飛び交った。
「油断大敵だぜ!魔王さんよ!!」
「なっ……!!」
「なっ……!!」
打つ手がないと思われたところで、飛び交う斬撃の雨。
流石のグリオンもこれには対応が一瞬遅れ、その上グリオンは気づいてしまった。
流石のグリオンもこれには対応が一瞬遅れ、その上グリオンは気づいてしまった。
その斬撃の威力そのものは学郎の柱刀骸街(ゼノブレード)とほど近いが――明らかにこちらの急所に狙いすまされている。
首。心臓。レジスター。ドライバー。
特に学郎が無意識に避けていた、首とレジスターへの直撃は、グリオンにしてもまずい。
首。心臓。レジスター。ドライバー。
特に学郎が無意識に避けていた、首とレジスターへの直撃は、グリオンにしてもまずい。
「だが……まだだ!!」
茨に変化させた刀身が弾かれた以上、防衛隊炎刃型大剣は使えない。
必死に体をよじらせながら、致命的な斬撃は心刀・無垢で弾きとばす。
そのたびにギインと不快な音が響き、黄金に染まった刃が欠けていく。
錬金術師たるグリオンならその刃を修復することは難しくない。だがグリオンにそんな選択ははなから存在しなかった。
必死に体をよじらせながら、致命的な斬撃は心刀・無垢で弾きとばす。
そのたびにギインと不快な音が響き、黄金に染まった刃が欠けていく。
錬金術師たるグリオンならその刃を修復することは難しくない。だがグリオンにそんな選択ははなから存在しなかった。
(ここでこの武器を使い潰してでも、この2人の力を手に入れる方が都合がいい!!)
グリオンは錬金術師だ。それも倫理観をドブに捨てた人でなしの錬金術師だ。
人も物質も、大抵のものは素材として扱えるし、いくらでも替えが効く。
グリオンにとって無垢は、替えが効くドロップ品だ。半面やみのせんしと夜島学郎の才能は、彼をもってしても貴重だった。
人も物質も、大抵のものは素材として扱えるし、いくらでも替えが効く。
グリオンにとって無垢は、替えが効くドロップ品だ。半面やみのせんしと夜島学郎の才能は、彼をもってしても貴重だった。
そのためグリオンに、ここで撤退するという選択はない。
夜島学郎のバイキルトが切れるまで時間を稼ぐという択もない。
さみだれけんを弾き、そらし、躱す。そんな防戦を繰り返していたら……必然、体勢の崩れる瞬間というはでてくるのだ。
夜島学郎のバイキルトが切れるまで時間を稼ぐという択もない。
さみだれけんを弾き、そらし、躱す。そんな防戦を繰り返していたら……必然、体勢の崩れる瞬間というはでてくるのだ。
夜島学郎は、その一瞬を見逃さない。
その瞬間、グリオンの世界から『影』が消えた。
茨の影、斬撃の影、ライダーの影、崩れ砕けた瓦礫の影。
その全てが、夜島学郎の右手の盡器に集約されていた。
茨の影、斬撃の影、ライダーの影、崩れ砕けた瓦礫の影。
その全てが、夜島学郎の右手の盡器に集約されていた。
「それが君の全力か!!!」
「言ったはずだグリオン!終わらせるって!!」
「言ったはずだグリオン!終わらせるって!!」
紅い光が学郎の全身を巡る。令呪を2画、ためらうことなく使い潰す。
鍵爪に変形していた3つの刃が1つに束ねられ、巨大で頑強な1つの刃へと再構築されていく。
流石のグリオンもその刃を前に、ぞわりと鳥肌が立つのを感じる。
体制が崩れているので、回避も防御も不可能だ。
とっさにグリオンは心刀・無垢で防ごうとするも、もはや手遅れであった。
鍵爪に変形していた3つの刃が1つに束ねられ、巨大で頑強な1つの刃へと再構築されていく。
流石のグリオンもその刃を前に、ぞわりと鳥肌が立つのを感じる。
体制が崩れているので、回避も防御も不可能だ。
とっさにグリオンは心刀・無垢で防ごうとするも、もはや手遅れであった。
巨大な刃が、小さな刃ごと、黄金のライダーの体を砕いた。
黄金の装甲が弾け、変身の解けた錬金術師は体を袈裟切りにされながら、地面に倒れこむ。
錬金術の効果が消えたのか、防衛隊炎刃型大剣は元の形を取り戻し。音を立てて地面に転がり落ちる。
その体には、肩から腹にかけてバックリと裂かれた傷が出来ていた。
錬金術の効果が消えたのか、防衛隊炎刃型大剣は元の形を取り戻し。音を立てて地面に転がり落ちる。
その体には、肩から腹にかけてバックリと裂かれた傷が出来ていた。
全ての力を振り絞った学郎は、令呪の効果があるにもかかわらずアナザーオーズの変身をもはや維持できなくなっていた。
肩で息をしながら、魔王グリオンの骸に近づく。
肩で息をしながら、魔王グリオンの骸に近づく。
自分の刃が魔王グリオンに届いたという実感は、はっきりいってない。
だが手ごたえはあった、肩で息をしながら学郎はグリオンの死体に近づき。
だが手ごたえはあった、肩で息をしながら学郎はグリオンの死体に近づき。
その死体を前に、思わず足を止めた。
肩から腹まで深々と裂けた男の体からは……血が一滴も出てきていないのだ。
肩から腹まで深々と裂けた男の体からは……血が一滴も出てきていないのだ。
「これって……。」
何か不味い。嫌な予感が学郎の背中を押していた。
ここに居たのが秀吉ややみのせんしなら、ためらうことなくレジスターを破壊したか、グリオンの頸を切っていただろう。
だが学郎はその優しさ……『常識』さ故に、その一歩を超えることが出来ず。
ここに居たのが秀吉ややみのせんしなら、ためらうことなくレジスターを破壊したか、グリオンの頸を切っていただろう。
だが学郎はその優しさ……『常識』さ故に、その一歩を超えることが出来ず。
『スレスレシューティング!!』
その反応の遅れが、彼の命を潰えさせた。
突如飛び込んだ光弾が学郎の心臓を吹き飛ばし、空っぽの胸からぶしゃりと血が吹きでる。
突如飛び込んだ光弾が学郎の心臓を吹き飛ばし、空っぽの胸からぶしゃりと血が吹きでる。
突然の事態に、やみのせんしも学郎もその方向に振り向き。今度こそ事態の異常性に彼らの肌は粟立った。
「なっ……んで。」
安堵とも困惑とも取れる上ずった声と共に、学郎は崩れ落ち二度と立ち上がることはなかった。
その言葉を繋ぐように、やみのせんしは声を震わせる。
その言葉を繋ぐように、やみのせんしは声を震わせる。
「テメエは死んだはずだろうが!!」
「うん、死んだよ。」
「うん、死んだよ。」
その視界の先で神戸しおは、さも当然のことのようにこてんと首を傾げていた。
◆
神戸しおには、やみのせんしやキラ・ヤマトのような『冥黒の力を受け入れるための器』が存在しなかった。
そのため神戸しおがグリオンの元で、ルルーシュを殺せる力を手に入れる方法は2つに1つ。
『外付けの冥黒の力』を肌身離さず装備するか。
一度死に冥黒生徒会として、復活するかのどちらかだ。
そのため神戸しおがグリオンの元で、ルルーシュを殺せる力を手に入れる方法は2つに1つ。
『外付けの冥黒の力』を肌身離さず装備するか。
一度死に冥黒生徒会として、復活するかのどちらかだ。
しおが選んだ方法は前者の方法にて体を慣らしつつ、死ねば後者の役回りを果たすというもの。
一先ず前者を成し得るための外付けのデバイスとして選ばれたのは、ドラドライドウォッチに変質したジオウⅡライドウォッチである。
今のしおが動いているのは、外付けの冥黒の力たるドラドライドウォッチによる機能であり。さながらそれは買ったばかりのスマホが半分くらい充電されている初期電源で動いているようなものである。
一先ず前者を成し得るための外付けのデバイスとして選ばれたのは、ドラドライドウォッチに変質したジオウⅡライドウォッチである。
今のしおが動いているのは、外付けの冥黒の力たるドラドライドウォッチによる機能であり。さながらそれは買ったばかりのスマホが半分くらい充電されている初期電源で動いているようなものである。
「……こいつか。」
冥黒の力を得ているやみのせんしは、逡巡の末その絡繰りを大方理解していた。
よくよく見るとジカンギレ―ドに装填されたドラドライドウォッチから、しゅうしゅうと立ち上る靄がしおの体に入り込んでいる。
人形を動かすための操り糸という表現が、最もしっくりくるだろう。
よくよく見るとジカンギレ―ドに装填されたドラドライドウォッチから、しゅうしゅうと立ち上る靄がしおの体に入り込んでいる。
人形を動かすための操り糸という表現が、最もしっくりくるだろう。
その人を人とも思わぬ冒涜的な姿に、やみのせんしは血が沸騰しそうなほどの怒りを抱きつつ。迷うことなくしおに背を向けた。
彼の仮面ライダーデザストの姿は解けていない。学郎を殺した銃撃程度ならどうとでもなる。
それよりも優先すべきは、グリオンの存在だった。
彼の仮面ライダーデザストの姿は解けていない。学郎を殺した銃撃程度ならどうとでもなる。
それよりも優先すべきは、グリオンの存在だった。
神戸しおの胸には深々と穴が空いている。致命傷度合いでは夜島学郎と大差ないが、動いている。
これはつまり、肉体を破壊した程度では彼らを殺せない可能性が高いということだ。
これはつまり、肉体を破壊した程度では彼らを殺せない可能性が高いということだ。
黒嵐剣漆黒を引き抜き、グリオンのレジスターに狙いを定める。
そのまま振り下ろそうとしたとき、奇妙なことが起きた。
そのまま振り下ろそうとしたとき、奇妙なことが起きた。
……やみのせんしの体が、巻き戻したかのように元の場所に逆走を始めたのだ。
神戸しおの仕業だろうと断じたやみのせんしを前に、しおは悪びれもせずウォッチを翳す。
いつしか彼女の手から銃――ジカンギレ―ドは消えていた。
残るはジオウⅡの面影を残すライドウォッチと、ドラドライドウォッチに変化した冥黒の力。
その片割れが、顔に文字の書かれた仮面の姿ではなく、その仮面を引っぺがしたような生々しい怪物の絵柄に変わっていた。
いつしか彼女の手から銃――ジカンギレ―ドは消えていた。
残るはジオウⅡの面影を残すライドウォッチと、ドラドライドウォッチに変化した冥黒の力。
その片割れが、顔に文字の書かれた仮面の姿ではなく、その仮面を引っぺがしたような生々しい怪物の絵柄に変わっていた。
「ぐりおんさんは殺させない。
さとちゃんのために、あの人とのやくそくはまもってもらわないと。」
『ジオウⅡ』
さとちゃんのために、あの人とのやくそくはまもってもらわないと。」
『ジオウⅡ』
おどろおどろしい音が、しおから響く。同時にドラドライドウォッチは、役目を終えたかのように溶けてしおの体に入り込んだ。
そのまましおの体は、ジオウⅡをそのまま怪人に変えたような気味の悪い姿へと変化していく。
そのまましおの体は、ジオウⅡをそのまま怪人に変えたような気味の悪い姿へと変化していく。
アナザージオウⅡ。それが神戸しおの変身した怪物の名前だ。
アナザージオウⅡが両刃の刃を構え、仮面ライダーデザストも鏡写しのように黒嵐剣漆黒の切っ先を向ける。
未だ戦場冷めやらぬと張りつめる空気だが、それも長くは続かなかった。
アナザージオウⅡが両刃の刃を構え、仮面ライダーデザストも鏡写しのように黒嵐剣漆黒の切っ先を向ける。
未だ戦場冷めやらぬと張りつめる空気だが、それも長くは続かなかった。
「しお。もう十分だ。
撤退しよう。」
撤退しよう。」
背後から響く言葉は、紛れもなくグリオンのものだった。
やはり死んでいなかった。こいつはレジスターを壊すか、何かしらの条件を満たさねば死なない。
最悪の予想が確信に変わりながらやみのせんしが振り向き……今度こそ彼は言葉を失った。
やはり死んでいなかった。こいつはレジスターを壊すか、何かしらの条件を満たさねば死なない。
最悪の予想が確信に変わりながらやみのせんしが振り向き……今度こそ彼は言葉を失った。
グリオンの体からどす黒い靄が3つに分かれて噴き出ていて、まるでグリオンの体を操るように、強引にその骸を動かしていた。
それは、神戸しおがドラドライドウォッチに操られていた時と同じだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まるでグリオン自身が、もっと別の存在に操られているかのような――
それは、神戸しおがドラドライドウォッチに操られていた時と同じだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まるでグリオン自身が、もっと別の存在に操られているかのような――
「その通りだ。我はグリオンではない。」
やみのせんしの驚愕を理解し居たと言わんばかりに、グリオンの中で『何か』の声が響く。
まるで3人の人間が重なる様な声、そのうち1つにやみのせんしは聞き覚えがあった。
まるで3人の人間が重なる様な声、そのうち1つにやみのせんしは聞き覚えがあった。
「……ギギストか?」
「そうであるともいえ、そうではないともいえる。
最も、この会場にいるギギストならば薄々感づいているかもしれないが……せっかくだ、名乗ろうか。」
「そうであるともいえ、そうではないともいえる。
最も、この会場にいるギギストならば薄々感づいているかもしれないが……せっかくだ、名乗ろうか。」
冥黒の靄がギチギチと音を立てて、グリオンの死体にお辞儀のような動きを強いる。
その奥から響く声が、嘲笑するように重なり響いた。
その奥から響く声が、嘲笑するように重なり響いた。
「私は冥黒王。三位一体の錬金術師、その始祖にして終着点。」
くつくつと笑い、冥黒王は学郎の死体を肩に担いだ。
いつの間にかアナザージオウⅡの姿が彼の隣に立ち、その手には神秘的な杖が握られている。
いつの間にかアナザージオウⅡの姿が彼の隣に立ち、その手には神秘的な杖が握られている。
「では 知性の王に認められしやみのせんし。縁があればまた会おう。
もっともその時の我が『グリオン』であるかは定かではないが……」
「させるか!!」
もっともその時の我が『グリオン』であるかは定かではないが……」
「させるか!!」
とっさにしっぷうづきを放つが、その直前でしおと冥黒王は光に包まれ。次の瞬間そこには誰もいなかった。
だが手ごたえはあった。
黒嵐剣漆黒に目を向けると、切っ先が濡れたようにべとついている。
だが手ごたえはあった。
黒嵐剣漆黒に目を向けると、切っ先が濡れたようにべとついている。
「……手ごたえはあった。届いているといいんだがな。」
そう呟いてやみのせんしが足元を見ると、一枚のカードが瓦礫の上に落ちていた。
学郎の支給品だったクラスカード。
バーサーカーのカードだけが、ここに夜島学郎がいた証明であるように、乾いた風に吹かれていた。
学郎の支給品だったクラスカード。
バーサーカーのカードだけが、ここに夜島学郎がいた証明であるように、乾いた風に吹かれていた。
【夜島学郎@鵺の陰陽師 死亡】
| 163:やっぱりオレが最強で仮面ライダー/私たちのバトロワの運営って醜くないか? | 投下順 | 164:雄英事変:ただ見ている真実さえ 切っ先が指した方へ |
| 155:運 営 失 格 | 時系列順 | |
| 160:雄英事変:駆け抜けるんだ 戸惑い蹴散らして | 豊臣秀吉 | |
| トランクス | ||
| 宇蟲王ギラ | ||
| やみのせんし | ||
| 益子薫 | ||
| 夜島学郎 | ||
| シェフィ | ||
| 魔王グリオン | ||
| 神戸しお | ||
| 死告邪眼のザラサリキエル | ||
| 141:メンデル再び | キラ・ヤマト准将 | |
| 道外流牙 |