
左から二番目が370mm無反動砲(画像出典:KCTV)
- 概要
北朝鮮がこれまでに計画・開発してきた様々な兵器の中では最も奇妙と言えるのがこの無反動砲である。米国在住で従北主義者として知られるハン・ホソク氏が、2012年にオープンした朝鮮人民軍武装装備館を訪問した際に確認したと本人が主張しているという。氏が自主新報に掲載したレポート曰く、1984年式の三連装の無反動砲で口径は370mm、5軸10輪の車体に搭載され乗員は5名。既に実戦配備済みだという。正式名称は「3신370mm자행비반충포」(3身370mm自行非反衝砲)らしい。
上の画像が370mm無反動砲を映したほぼ唯一のカットだが、巨大な砲身が3本突き出た異様な出で立ちである。車体はT-62から発展した天馬号戦車の車体を流用し、車体側面には操作要員が立つための足場が張り出している。
歴史を見ると巨大な無反動砲を開発する試みはドイツやソ連で行われた。例えば、ソ連のレオニード・クルチェフスキーは大小いくつかの口径の無反動砲の研究に携わり、駆逐艦エンゲルスに305mm無反動砲を搭載してテストが行われたが最終的にはお蔵入りとなった。また1955年から計画が始動したソ連のS-103無反動砲は、戦略核砲弾を発射可能な無反動砲として420mmと280mmの2種類が開発されたが、前者は101発目の試射で爆発し完全に壊れてしまった。
北朝鮮がソ連の一連の巨大無反動砲にヒントを得たかどうかは不明だが、仮に実用化しても巨大な砲弾装填の困難さと装填にかかる時間、射程距離、命中精度など課題が山積みだっただろう。開発目的については、時期からしてまだ開発が軌道に乗り始めて間もない弾道ミサイルの代わりに長距離攻撃が可能な兵器を目論んだか、頑強な敵目標の粉砕を狙ったなどが考えられるが不明なままである。結局は試作か、モックアップ止まりだったのかもしれない。なお、前述のレポートによれば、実物が武装装備館に展示されているようだ。
- スペック
全長 | 不明 |
全幅 | 不明 |
車体重量 | 不明 |
エンジン | ディーゼルエンジン |
馬力 | 不明 |
武装 | 370mm無反動砲×3 |
射程距離 | 不明 |
乗員 | 5名 |
開発年 | 1984年 |
配備期間 | 不明 |
生産数 | 1両 |
朝鮮民主主義人民共和国の陸海空軍(著 ステイン・ミッツァー/ヨースト・オリマンズ 和訳版監修 宮永忠将 翻訳 村西野安 平田光夫) 大日本絵画 ISBN978-4-499-23327-9 C0076