ここに作品タイトル等を記入
更新日:2021/04/11 Sun 22:59:03
あらすじ
息抜きで書いた銀魂パロです
エピソード
龍賢「ご愁傷さまです」
式場の入り口で参列者に挨拶していた定食屋の女将に龍賢が声をかけた。
女将「あらあら、皆も来てくれたのね」
雪花「水臭い事言わないでよおばちゃん。恩人の葬式なんだから顔を出さない訳がないじゃない。」
女将「恩人だなんてそんな大袈裟な」
赤羽「いえ、おじちゃんには今まで美味しいお料理を沢山ご馳走になりましたから」
そう言って頭を下げる赤羽。
龍香「けどまさか、おじちゃんがこんな事になっちゃうなんて…。私、おじちゃんの作る『辛さマシマシ特製龍香丼』好きだったのに。」
雪花「アタシは『甘味たっぷり雪花定食』。あの味はたぶん二度と忘れられないわ」
黒鳥「あの親父さんの飯をもう食べられないと思うと…」
赤羽「本当に残念ですわね…」
普段はてんでバラバラな面々も知り合いの突然の訃報に皆、消沈していた。
女将「よしてよ。いつもの元気いっぱいな皆らしくないわ。あの人が湿っぽいの嫌いなの知ってるだろ?」
龍賢「けど女将さん、俺は…」
女将「大丈夫よ。いつも皆のことを見てたたあの人の事だから、きっとあっちで見守ってるわ。だから皆も今日は賑やかな事が好きだったあの人のために笑って送り出してあげて?それが何よりだから」
龍香「おばちゃん…」
龍賢「…それもそうですね。」
そして挨拶を済ませた一行は式場内へと入っていった。
式場内に入ると既に多くの人々が式に参列する為に集まっていた。
黒鳥「すごい沢山人が来てるな」
雪花「“新月”のメンバーも結構来てたから。まぁ、これもおやっさんの人徳って奴なんでしょ。」
龍香「おじちゃん…本当に皆から愛されてたんだね…」
龍香がしみじみとしていると、御霊前に見慣れた、と言うか出来れば見たくなかった一団がいるのが見えた。
アルレシャ「親父ィィィィ!!何で、何でこんなに早く死んじまったんだよォォォォ!!」
ルクバト「アルレシャ…、気持ちは分かるが今は落ち着け。御霊前だぞ」
カストル「でもまさか、こんな突然親父さんとお別れする事になるなんて…」
アンタレス「ああ、本当に残念ね…」
スピカ「これから寂しくなるわね…」
プロウフ「そうですね…」
その場にいたのは宿敵であるシードゥスの面々だった。
龍香「あーっ!!あ、貴方達!」
龍賢「どうやらアイツ等も常連だったらしいな…」
龍香達が声をあげるとシードゥスの面々の何人かが此方を振り返った。
カストル「あら“新月”ご一行様?」
アルレシャ「“新月”も来ていたか。まぁ親父さんの店は人気だからな。」
黒鳥「貴様らも来てたのか」
ルクバト「このお店はワタシ達も良く来てたからな」
トゥバン《俺がコイツらに紹介したからだけどな》
龍香「何自慢げに言ってるのよ?」
少し自慢げなトゥバンに対して龍香が目を細めながら塩対応で口を挟む。だが、一触即発の空気の中でプロウフと龍賢が他の殺気立つメンバーを抑えて一歩前へと出る。そして沈黙を破るようにプロウフが話し掛ける。
プロウフ「…それにしても惜しい人を亡くしましたね…」
龍賢「…ええ…。あんな温かい人にはもう二度と出会えないかもしれない」
とりとめのない会話。だが、この短い会話に込められている意味を全員が汲み取る。
要するに“今回はお互いに故人を偲んで一時休戦”ということである。宿敵同士の戦いも一時的にやめさせる。この定食屋の主人の人柄の良さ、人望がこの二組にどれ程深いかはもはや推して測るべしだ。
要するに“今回はお互いに故人を偲んで一時休戦”ということである。宿敵同士の戦いも一時的にやめさせる。この定食屋の主人の人柄の良さ、人望がこの二組にどれ程深いかはもはや推して測るべしだ。
龍賢「客一人一人に合ったメニューを出したり、何かめでたいことがあればサービスしてくれたり、儲けなんて殆ど無かっただろうに至れり尽くせりな人でした。」
プロウフ「本当に感謝してもしきれません。なので、今日は今までの感謝を込めて、私達で出来る限り明るく見送って差し上げましょう。」
プロウフの言葉に全員が渋々ながらも静かに頷いた。それと化け物じみた外見のシードゥス達がいて騒ぎにならないのは事前にスピカが自分達が一般人に見えるよう幻術をかけているかららしい。
参列者達が一通り集まり、各々が席に座り終わるとお経を唱える坊主がやって来た。そして霊前に座ると彼のお経を合図に式が始まったのだが、
坊主「ナ~ンマ~イダ~、ナ~ンマ~イダ~、ナ~ンマ~イダ~、ナ~ンマ~イダ~、ナ~ンマ~……ナン~……ナ~ンマ~?ナ~ニマ~イダ~?、ゲ~ンマ~イダ~、サ~ンマ~イダ~、イ~ンベ~ダ~、ダ~スベ~イダ~」
その坊主がハート柄の袈裟という何ともふざけた服装であり、更に忘れたのか、途中から変なお経を唱え始めたのだ。
黒鳥「ず、随分変わったお経だな…」
雪花「お経以前にそもそもあのお坊さんの格好自体可笑しいよね?」
赤羽「ハート柄の袈裟とは……一体何処の宗派に頼めばあんなお坊さんがいるのかしら?」
龍香「大丈夫かな?罰が当たらなければ良いけど…」
坊主に対して不安を覚えた“新月”メンバーだったが、その時だった。
???「…」
雪花「!?」
不意に棺から一人の男性がムクリと起き上がったのである。そしてその男性は葬儀に集まった人達の方にゆっくりと顔を向けた。よく見るとその顔は遺影の顔、つまり定食者の店主と瓜二つだった。
雪花「り、りり、龍香、あ、あ、アレ…」
龍香「痛っ…雪花ちゃん?」
隣に座っていた龍香の肩をパンパンたたきながら前を指差す雪花。その表情は引きつっており、声も震えていた。
龍香「どうしたの?」
雪花「いや、あ、アレだってアレェェェェェ!!」
龍香「??何も無いよ雪花ちゃん」
雪花「いや、だからアレだよアレェェェェェ!!」
黒鳥「どうした雪花?」
様子が可笑しい雪花を心配したのか、黒鳥が声をかけてきた。
雪花「黒鳥!!あ、アレ、アレだよアレェェェェェ!!」
黒鳥「?おじさんの遺影がどうかしたか?」
雪花「!?」
雪花がいくら棺の方を指を差しても二人には見えていないようだった。
雪花(も、もしかして見えてるの私だけ!?)
雪花が内心愕然としていると、隣でアンタレスも同じように青ざめた表情で前を指差していた。
カストル「どうかしたアンタレス?」
スピカ「お葬式で騒ぐなんて失礼よ?」
アンタレス「いやだからアレだってアレェェェェェ!!」
ルクバト「うるさいな、遺影がどうかしたか?」
アルレシャ「全く、いい歳こいて葬式でテンション上がってんじゃねーよ。心配しなくても、お前が死んだら俺等でちゃんと葬式あげてやるから」
アンタレス「いや、アレだってアレェェェェェ!!」
雪花「アンタ、もしかして…見えてる?」
アンタレス「!?てことはアンタも?」
此方を向いたアンタレスが棺の方を指差すと雪花は頷いた。
アンタレス「な、なな何なのアレ?」
雪花「わ、私に聞かないで!?な、何か私達にしか見えてないみたいだけど、も、もしかして『お』とか『ゆ』で始まるそそ、そういうアレかな!?」
アンタレス「い、いやち違うでしょ。あ、アレはきっとそういうアレじゃなくて、ああいうアレだからきっと大丈夫でしょ!?」
雪花「い、いや大丈夫じゃないよね!?そういうアレだよね!?ていうかそ、そ…そもそもあれって定食屋のお…おお、おじちゃんだよね!?」
アンタレス「な、なな何言ってんのアンタ!?そ、そそそんな訳ないでしょ!?おやっさんはもう死んでんだし、第一これおやっさんの葬式よ!?そ、それにおやっさんはあんな半透明じゃなかったし、もっとはっきりハキハキした人だったでしょ!?」
雪花「だ、だよね!!もっとはっきりハキハキした人だったよね!!半透明じゃなかったよね!!」
そう納得しかけた雪花だったが、
雪花「…いや、ちょっと待って。そもそも半透明の時点で可笑しくない?おじちゃんである以前に半透明って何なの!?」
アンタレス「ままぁ、私らシードゥスがいる世界なんだから、半透明人間が一人ぐらいいても可笑しくないでしょ」
雪花「い、いや、流石にその理屈は無理があるわよ!?」
アンタレス「じゃ、じゃあもうおやっさんで良いでしょ。よく考えたらここぞって時に急に存在感が薄くなって半透明になってた事もあったし」
雪花「た、確かに。急に存在感が薄くなる時も半透明になった事もあったような…」
再び納得しかけた雪花だったが、
雪花「いやいやいや、だったら尚更可笑しくない?何でおじちゃんのお葬式に亡くなったおじちゃんが半透明でいるの?」
アンタレス「そ、そりゃあれよ。ゆ、幽霊だからじゃない?」
雪花「そ、そっか。そうだよね~アハハ~」
アンタレス「当たり前だろ~アハハ~」
認めたくない事実を笑って誤魔化そうとした二人だったが、
雪花 アンタレス「「~~~~~~っ!!」」
次の瞬間には声にならない叫び声を上げながら、脱兎の如く式場の後ろの襖に向かって駆け出していた。
龍香「雪花ちゃん、どうしたの!?」
アルレシャ「お、おい。アンタレス急にどうしたんだ!?」
アンタレス「ちょ、ちょっとトイレ!!」
雪花「わ、私も!!」
驚く他の面々の事も気にせず、ただこの場から逃げ出したい一心で襖に突っ込む二人。しかし恐怖で気が動転しているのと正座で足が痺れているせいで、そのままもつれ合ってしまっていた。
アンタレス「くっ、くそっ!!正座で足が痺れて上手く立てねェ!!ていうかアンタ、私の足にしがみつくな!!」
雪花「うるせぇぇぇぇ!テメェだけ逃げようたってそうは行くかァァァ!!」
龍香「雪花ちゃん…」
スピカ「全く何やってるのかしらあの二人は?」
プロウフ「こらこら二人とも。今は式中ですよ?」
慌てふためく二人の様子にシードゥスの面々も困惑したり呆れている。見かねたプロウフが注意するが、恐怖にかられた二人の耳には入らなかった。
すると、店主の霊が二人の方をじろりと見た。
すると、店主の霊が二人の方をじろりと見た。
雪花「ちょっ!!此方見てる!!おじちゃん此方ガン見してるぅ!!」
アンタレス「ば、バカっ!!目を合わせるな!!無視だ!!他人の振りをしろ!!」
店主の視線から逃れようとする二人。するとそんな二人の態度が気に入らなかったのか、店主の幽霊はゆっくりと立ち上がるとそのまま二人の方へと歩いてきた。
雪花「ちょ!!おじちゃん今度はこっちに歩いて来てるゥ!?どんどん近付いてきてるゥゥゥ!!」
アンタレス「お、落ち着きなさい!!ここはそうだ!!死んだふり!!死んだふりをするの!!」
雪花「いや死んでる人相手に死んだふりして意味あんの!?あっちはもう本職だけど!?」
そんなやり取りをしている間にも店主の霊はどんどん二人に近付いてくる。
???「ちょっとタカシ!!アンタ何やってるの!?」
突然聞こえてきたその声に店主の歩みが止まった。店主が声のした方を見るとヤンキー風な若者が葬儀を退屈に思ったのか、式中に耳にイヤホンを付け、ゲームを始めていた。その隣では若者の母親と思われる女性が彼を注意している。
若者「え~だって、お経が長ぇんだも~ん」
母親「早く外しなさい!!失礼でしょ!!」
若者「やだよ。ていうか、大体こんなつまんねぇ葬式に出てやってるだけでもありがたく思えって話だよ」
母親に咎められてもゲームを止めるどころか、葬式に対する文句まで垂れ始めた若者をじっと見つめる店主の幽霊。すると次の瞬間、
店主「…」
若者「ひでぶっ!!」
若者の横っ面を殴り飛ばしてしまったのである。殴られた若者は吹っ飛び、そのまま壁に激突すると気絶してしまった。
母親「タカシ!?どうしたのタカシ!?もー、すいません。何か息子が急に具合が悪くなっちゃったみたいで、ちょっと失礼しますね~」
気絶した若者を抱えて母親がその場を退出すると、店主の幽霊は何処からか取り出したサングラスをかけ、同じく何処からか取り出した葉巻煙草を咥え火をつけた。更に今まで痩せていた店主の体はまるで何処かの暗殺拳の伝承者の如く筋肉質になり、服の袖が広がった腕周りの筋肉に耐え切れず弾け飛んだ。そして二人の方を向くとボキボキと指をならしたのである。
雪花 アンタレス「「…」」
店主の変貌を目の当たりにした二人は即座に自席に戻り、正座していた。
龍香「雪花ちゃん?おトイレは良いの?」
雪花「だ、大丈夫。気のせいだったみたいなんで」
黒鳥「でも顔色が凄く悪いぞ…」
赤羽「それに震えてるし、無理しちゃダメよ?」
雪花「いやホントに大丈夫だから!!」
アルレシャ「お前も大丈夫かよ?」
アンタレス「だ、大丈夫。何か引っ込んだから」
カストル「いや引っ込んだって…」
スピカ「その割りには冷や汗びっしょりよ」
ルクバト「やっぱ行ってきた方が良いんじゃないのか?」
アンタレス「いやホント大丈夫だから」
心配する他の面々を誤魔化しながらも恐怖でガタガタ震える二人。
アンタレス「み、見張りに来たんだ。おやっさん、自分の葬式がちゃんと行われるかどうか見張る為にあの世から舞い戻ってきたんだ。マズいわ。この葬式でもし下手なことしたら、私達も無事で済むかどうか分かったもんじゃない」
雪花「マ、マジか…」
居眠りしながらお経を唱える坊主の頭に根性焼きをする店主の幽霊の姿に顔を青くする雪花。根性焼きをされる坊主の口からは何やら呻き声が漏れていた。
雪花(じょ、冗談じゃないわよ!?私はただ静かに定食屋のおじちゃんとお別れしに来ただけなのに、何でこんなデッドオアアライブな展開に巻き込まれなくちゃいけないの!?)
アンタレス(私だってあの気の良い定食屋のおやっさんに別れを言いに来たの!!あんな世紀末覇王みたいな定食屋に別れを言いに来た覚えはねぇよ!!)
最早生前の面影の無い店主の霊の姿に内心冷や汗ダラダラの二人。
雪花「ど、どどうすれば良いと思う!?」
アンタレス「い、一旦落ち着きなさい。要は式が滞りなく終われば良いんだ。今日一日失礼の無いよう大人しくしてれば、きっとおやっさんも満足して成仏してくれる筈だ」
雪花「そ、そっか!!そうだね!?そうしよう!!」
今日は大人しくしよう、二人がそう心に決めた時だった。“新月”とシードゥスの面々の前に座っていた三白眼の少女、かもロリピラニアが急に此方を振り返ると話しかけてきた。
かもロリピラニア「おい、次はお前達の番かも」
雪花 アンタレス「「えっ?何が?」」
ピラニア「何がって焼香かも、焼香。俺等も遺族の方ももう終わったから、次はお前らの番かも」
かもロリピラニアの口から出た「焼香」の二文字に雪花とアンタレスの顔がみるみる青くなっていく。
アンタレス「お、おい。何か知らない間に焼香の順番回ってきたみたいよ?ど、どうすんだ?今から私らあの北●の拳みたいなおやっさんの目の前に行って香を焚かないといけないの!?」
雪花「む、無理!!絶対無理!!この距離でも怖いのにあんな間近で焼香なんて、恐怖で下から別の香が薫ってくるわ!!」
決まった手順のある「焼香」。それをもし間違えようものなら、今の店主にどんな目に合わされるかは目に見えていた。
そのことに怪物と怪物退治のが揃ってビビりあげる。端から見れば可笑しな話だが当の本人達にとっては死活問題である。
そのことに怪物と怪物退治のが揃ってビビりあげる。端から見れば可笑しな話だが当の本人達にとっては死活問題である。
雪花「ていうか、そもそも焼香ってどうするんだっけ?何か前に出て粉をパラパラするのは覚えてるけど……あァァァァどうしよう!!私ど忘れしちゃったァァァァ!!」
アンタレス「落ち着きなさい!!慌てずゆっくり思い出すの!!焼香台の前で三回粉をあれしてあれしてあれよ!!」
雪花「いやアンタこそ落ち着きなさいよ!!後半あれしか言ってないじゃないねぇか!?そんなんで本当に大丈夫なの!?」
アンタレス「心配しなくても焼香台の前に行けば体が覚えてるから私は出来るんだよ!!スパイなめんな!!」
雪花「じゃあ先に行って私にお手本見せてみなさいよ!!」
二人が小声でそんなやり取りをしていると、
黒鳥「じゃあ俺が手本を見せるから、貴方は俺がやった通りに真似してくださいね」
カストル「はーい。」
雪花 アンタレス「「!!」」
斜め右前に座っていた黒鳥が立ち上がった。
雪花「く、黒鳥!早まっちゃダメよ!!」
黒鳥「は?」
アンタレス「小娘の言う通りよ!!一体何をするつもり!?」
黒鳥「何ってカストルさんが焼香のやり方が分からないって言うからお手本を見せようと思ったんですけど」
雪花「で、出来るの!?信じて良いの黒鳥!?絶対間違えちゃダメだからね!?必ず生きて戻ってきなさいよ!!」
黒鳥「俺の事からかってるのか?心配しなくても大丈夫だから。ほら、見ててください。」
そう言うと黒鳥は焼香台へと歩いていく。
雪花「大丈夫かな…」
龍香「ねぇ雪花ちゃん?やっぱり今日の雪花ちゃんは何か可笑しいわ」
ルクバト「あとアンタレスもさっきから変だし」
アンタレス「仕方ねぇんだよ。俺達は今生きるか死ぬかの状況に置かれてるんだからな」
アルレシャ「何訳の分からない事言ってんだお前?」
アンタレスの発言に怪訝な表情のアルレシャがツッコミを入れる。その間に黒鳥は焼香台の前に立っていた。
黒鳥「良いですか?最初に焼香台の前で遺族とお坊さんに一礼」
遺族に、続いてお坊さんにぺこりとお辞儀をする黒鳥。遺族や坊主も彼女にお辞儀を返した。
黒鳥「次に遺影の前で合掌」
遺影に向かって両手を合わせ、深々とお辞儀する。
黒鳥「そして左手に数珠を持って右手で抹香をつまみ、額におしいだき香炉に落とす。これを三回繰り返す」
説明通りに右手で抹香をつまみ、額に押し抱いて香炉に落とす手順を三回繰り返した。
黒鳥「最後にもう一度遺影に合掌」
再び遺影に向かって両手を合わせる黒鳥。
黒鳥「そして遺族に一礼して…」
焼香台から少し離れ、座ったまま遺族に一礼をする。
黒鳥「これで終わり。分かりました?」
カストル「おー、よく分かったわあんがと」
カストルが感心した様子で頷く。
雪花「流石ね黒鳥!!やっぱり黒鳥ならやってくれるって信じてたわ!!帰ったら今日は皆で祝勝パーティーね!!」
黒鳥「いや、俺ただ焼香しただけなんだけど…」
アンタレス「まだまだひよっこだけど少しだけ、認めてやってもいいわ。大したもんね。」
黒鳥「いやだから焼香だけで何でこんなにほめられてんだ?もしかして馬鹿にしてる?」
焼香をやたらと褒めてくる二人に困惑する黒鳥。
雪花「見てみなさい!!おじちゃんの表情が何だか少し柔らかくなったわ!!」
アンタレス「よし!!このままいけば無事に切り抜けられそうね!」
しかし当の二人はそんな事はそっちのけで、少し表情が和らいだ店主の霊を見て安堵していた。
カストル「じゃあ次はボクの番だね」
雪花「あんた、大丈夫よね!?黒鳥のやった通りにするのよ!!」
カストル「しっかり頭に叩き込んだから大丈夫大丈夫」
そう言うと意気揚々と焼香台に向かうカストル。そして焼香台の前に来ると、
カストル「えっと先ずは…『意外と坊主に一撃』!!」
坊主「南無!?」
雪花「いや最初から全然違うんだけど!?」
坊主の頭に思いっきりチョップを喰らわせるカストル。喰らった坊主の鼻からは鼻血が勢いよく噴出した。
カストル「イェーイ!!さぁ、みんな一緒に?」
坊主「い、イェーイ…」
雪花「『イェーイで合唱』じゃないから!!あとお坊さんも一緒に乗らなくて良いから!!」
「遺影」と「イェーイ」、「合掌」と「合唱」を間違えたのか、カストルは何処からか持ってきたマイクで「イェーイ」とノリノリで叫ぶと坊主も消え入りそうな声でそれに反応する。
カストル「次は…『額を押し抱いて香炉に落とす、これを三回繰り返す』だったっけ?」
アンタレス「お坊さァァァァん!?」
すると今度は何を勘違いしたのか、カストルは坊主の頭を掴むと香炉に三回落とし込んだ。
カストル「イェーイ!!」
坊主「い、イェーイ…」
雪花「お坊さァァァァァァァァん!!」
そして最後にまたマイクで「イェーイ」を合唱すると意気揚々と戻って来た。
カストル「大体こんな感じだったっしょ。」
アンタレス「カストル!!一体アイツの何を見てたの!?」
カストル「?ちゃんとしっかり叩き込んだよ?」
雪花「いやしっかり叩き込むって、お坊さんの頭に直接叩き込んでどうするの!?誰もそんな事言ってないよ!?」
カストル「アレー?そーでしたっけ?実は正座で足が痺れてよく見てなかったんだよね。」
雪花「ちゃんと見ろよ!!あとお坊さん今にも昇天しそうだよ!?」
とんでもない失敗をしながら首を傾げるカストルにツッコミを炸裂させる雪花。
アンタレス「マズい!!おやっさんの機嫌が一気に悪くなっちまった!!」
カストルのとんでもない焼香のせいで、店主の霊からどす黒いオーラが漂い始めていた。
雪花「ど、どどうしましょう!?」
アンタレス「とにかく式を建て直すぞ!!手順の最初の『遺族と坊さんに一礼』の次に『坊さんの蘇生』を加えて、そして焼香よ!!」
赤羽「では、次は私が」
今度は赤羽が立ち上がった。
雪花「赤羽!?大丈夫なのよね!?信じて良いんだよね!?頼むから変な事しないでよ!?」
赤羽「心配無用よ。要はさっき貴方達が言った手順通りにやれば良いのでしょう?任せておきなさい。」
赤羽はそう言うと焼香台の方へと向かった。そして遺族の隣に立つと、
赤羽「えっと先ずは、『遺族を一礼で坊主』」
アンタレス「いや最初から間違えてんだけどォォォ!?」
遺族の頭からかつらを取ってしまった。
赤羽「あれ?違ったかしら?」
アンタレス「お前、私の話ちゃんと聞いてたか!?何勝手に手順変えてるんだよ!?全く何も前に進めてないだろ!?もうこの際焼香は良いから、坊さんだけ蘇生させて戻ってこい!!」
すると赤羽は何を思ったのか、持っていた遺族のかつらを気絶している坊主の頭に乗せた。
アンタレス「いや何を蘇生させてんだお前は!?誰が坊さんの毛根を蘇生させてこいって言ったよ!?さっきとまるっきり何も変わってないだろ!!坊さんの頭にかつら乗っただけだろ!?」
赤羽「でもお坊さんの顔を見て。何か安らかな表情してるわ」
アンタレス「良い事あって良かったねお坊さん、じゃないだろ!!」
雪花「あんたそう言うキャラだっけ!?何か嫌なことでもあった!?」
赤羽アンタレスのツッコミが炸裂する中、店主の様子を見ていた雪花が真っ青になっていた。
雪花「あァァァァどうしよう、おじちゃんもうカンカンよ!!伝説のスーパーサイ●人みたいになってる!!」
ますます機嫌が悪くなった店主の霊の髪の毛は逆立ち、体からは金色のオーラが勢いよく噴出していた。
アンタレス「と、とにかく今は式を早く進めるためにも坊さんの救出を最優先だ!!最初に『坊さんの蘇生』、次に『遺族と坊さんに一礼』に手順を変更してから焼香だ!!」
雪花「ちょっと待って?何か倒れてる人増えてない?」
アンタレスが新たなフローチャートを提案した所で雪花が前を指差した。するとそこにはもう一人禿げたおっさんが白目を向いて倒れている。
アンタレス「って、さっき赤羽にかつら取られた遺族じゃないか!?何でかつら取られただけで気絶してるんだよ!?そんなにショックだったのか!?」
雪花「ていうか皆さっきから何で無視してるの!?もしかして気付かないフリしてあげてるの!?それが優しさなの!?」
更に倒れている遺族を全く気にする素振りも見せない他の参列者達に雪花のツッコミが炸裂する。
プロウフ「仕方がありません。ここは私が行きましょう。焼香の手順を最初に『坊さんと遺族の蘇生』、次に『遺族と坊さんに一礼及び謝罪』に変更します。」
すると今までの惨状を見かねたのか、プロウフが立ち上がった。
アンタレス「プロウフ!!」
プロウフ「このままでは親父さんの葬儀が滅茶苦茶になってしまいます。ここは長である私が責任を取って式を立て直して来ましょう。」
アンタレス「頼んだぞ、シードゥスのリーダープロウフ!!もうあんただけが頼りなの!!」
雪花「癪だけど頑張れ!!」
プロウフ「はい、任せておいて下さい。」
堂々と前に向かっていくプロウフ。そして倒れていた先程の遺族の傍に立つと、
プロウフ「先ずはお坊さんの蘇生…貴方は此処でお経を読んでください」
遺族「?」
雪花「いや、その人遺族ゥ!!」
禿げていたせいか遺族と坊主を間違えてしまったプロウフ。
プロウフ「次に遺族の蘇生と謝罪…ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
アンタレス「それ遺族の遺族!!」
そして今度は何をどう間違えたのか、遺族のかつらをさっきの遺族が座っていた座布団の上にそっと置き、謝罪した。
プロウフ「そして木魚でしたね」
雪花「もうお坊さんは許してあげてェ!!」
プロウフが坊主の頭を遺族の前に置くと、遺族は納得したように坊主の頭を木魚代わりにポクポク叩き始めた。
雪花「おい!!何やってんのアンタのボス!?状況良くなるどころかむしろ悪化してるじゃねぇか!!」
アンタレス「ていうか、なんであの遺族の人は言われるがままお坊さんの代わりをしてるの!?」
プロウフ「どうやらショックで一時的に記憶喪失しているらしいですね」
アンタレス「いや、かつらと一緒に頭の中まで喪失してどうすんだよ!?どんだけメンタルにダメージ受けてんだ!?」
雪花とアンタレスのダブルツッコミがプロウフと遺族に炸裂しまくる。
雪花「あァァァァァ!!おじちゃんもう完全に切れてる!!何かもう元気玉放ってきそうな勢いなんだけどォォォォォォ!!」
両手を掲げ、そこに何やらとんでもない巨大なエネルギーを溜め始めた店主の様子に絶叫する雪花。
アンタレス「も、もう終わりだわ…。もうとてもじゃないが私達の手には負えねぇ!!こうなったらもう退却あるのみよ!!」
雪花「ちょ、待て!!私を置いて行くな!!」
カストル「二人とも、まだ式の途中だよ」
赤羽「あんた達何勝手に抜け出そうとし…」
アンタレス「!?」
雪花「赤羽!?」
式を抜け出そうとする二人を呼び止めようとした赤羽の声が途切れたのを不審に思った二人が振り返ると、そこには白目を向いて倒れている彼女の姿があった。
雪花「赤羽!?どうしたの!?」
黒鳥「…」
雪花「黒鳥まで!?」
アンタレス「お、おい、お前等どうしたんだよ!?」
赤羽に続いて龍香も同じように倒れてしまった。
更にシードゥスの方でもカストルが同じように白目を向いて倒れている。
更にシードゥスの方でもカストルが同じように白目を向いて倒れている。
アルレシャ「おい二人とも、どうし…」
スピカ「カストル!?アルレシャもどうしたの!?」
そして倒れたカストルの様子を見ようとしたアルレシャもまた、その場で白目を向いて倒れてしまったのだ。
雪花「シードゥス達まで!?」
アンタレス「い、一体何が起こって……!?」
突然の出来事に動揺する二人だったが、店主の方に視線を移した途端、彼の掌の上に釘付けになった。というのもそこにはフヨフヨと4つの魂が漂っていたのである。
雪花 アンタレス(*1)
それが倒れた4人の物だと気づいた二人は心の中で盛大に絶叫した。
続く?
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