新世界での生活が始まって、
3ヶ月が過ぎた。
アルバイトにも少しずつ慣れ、
戸惑うばかりだった新しい生活も、
段々と楽しくなってきた。
3ヶ月が過ぎた。
アルバイトにも少しずつ慣れ、
戸惑うばかりだった新しい生活も、
段々と楽しくなってきた。
Dr.マッドは生活が落ち着いた今でも
色々と世話を焼いてくれる。
仕事を斡旋してくれたのだから
これ以上の金銭面でのサポートは
申し訳ないと断ったのだけど、
家賃の面や食費が足りなくなった時などは
向こうから「君たちがお腹を空かせていると
こちらが辛いからね」と援助を
申し出てくれて、結局それに甘える
事になってしまっている。
色々と世話を焼いてくれる。
仕事を斡旋してくれたのだから
これ以上の金銭面でのサポートは
申し訳ないと断ったのだけど、
家賃の面や食費が足りなくなった時などは
向こうから「君たちがお腹を空かせていると
こちらが辛いからね」と援助を
申し出てくれて、結局それに甘える
事になってしまっている。
戸籍すらないわたし達が、
自分たちの力だけでやっていくのは
難しいと分かってはいるけれど……
このままずっと甘えてしまうのは、
良くないと思う。
散々お世話になっておいて
非道い話だとは思うけど、
まだDr.の事も完全には信用できない。
彼女の厚意の裏にある目的を、
測り切れていないというのが現状だからだ。
自分たちの力だけでやっていくのは
難しいと分かってはいるけれど……
このままずっと甘えてしまうのは、
良くないと思う。
散々お世話になっておいて
非道い話だとは思うけど、
まだDr.の事も完全には信用できない。
彼女の厚意の裏にある目的を、
測り切れていないというのが現状だからだ。
とにかく今は自分たちが
生きていくので精一杯で、
そこまで気を回している余裕はない。
生きていくので精一杯で、
そこまで気を回している余裕はない。
「ふぅ……」
「はもはもちゃん、おはようっ。
溜め息なんて珍しいね?」
「あ、きゅーばんちゃん。
うん、最近ちょっと忙しくて……つい、ね」
「大変だね……。というか、はもはもちゃん
ちゃんと寝れてる?
なんだか目にクマができてる気がするよ?」
「あっ…………」
「はもはもちゃん、おはようっ。
溜め息なんて珍しいね?」
「あ、きゅーばんちゃん。
うん、最近ちょっと忙しくて……つい、ね」
「大変だね……。というか、はもはもちゃん
ちゃんと寝れてる?
なんだか目にクマができてる気がするよ?」
「あっ…………」
『平気なわけないでしょう!
クマが出来てるわよ。
女の子がそんな無理をしないの。
大変な時こそ支え合わなきゃ
いけないんだから、
自分1人で無理をしようとしないで。
誰かを頼ったっていいのよ』
クマが出来てるわよ。
女の子がそんな無理をしないの。
大変な時こそ支え合わなきゃ
いけないんだから、
自分1人で無理をしようとしないで。
誰かを頼ったっていいのよ』
……そっか、わたし、
また無理しちゃってたんだ。
そうだよね。
少しくらい、誰かを頼ったって良いよね。
また無理しちゃってたんだ。
そうだよね。
少しくらい、誰かを頼ったって良いよね。
……神楽坂さん。
また、会いたいな……。
のじゃ猫ちゃんや神楽坂さんとの
別れの時に渡された犬笛をぎゅっと抱きしめる。
また、会いたいな……。
のじゃ猫ちゃんや神楽坂さんとの
別れの時に渡された犬笛をぎゅっと抱きしめる。
「……はもはもちゃん?どうかした?」
「うぅん、なんでもない。
ごめんね、心配かけて。今日のお仕事は、
早めに上がらせてもらおうかな」
「うん、それがいいよ!
人間、健康が一番!」
「うぅん、なんでもない。
ごめんね、心配かけて。今日のお仕事は、
早めに上がらせてもらおうかな」
「うん、それがいいよ!
人間、健康が一番!」
少し、根を詰め過ぎたのかも知れない。
気を緩める事も大切だ。
そう考え、顔を上げた、矢先。
気を緩める事も大切だ。
そう考え、顔を上げた、矢先。
ズンッ!!!!!
突如、突き上げるように
地面が大きく揺れた。
これは……『夢の世界』で味わった
世界が揺れるような、普通じゃない震動だ。
……何かが、起きている!!
地面が大きく揺れた。
これは……『夢の世界』で味わった
世界が揺れるような、普通じゃない震動だ。
……何かが、起きている!!
「っ……!全員、部屋の隅に!
何かが起きるかも知れない!
次の衝撃に備えて!」
何かが起きるかも知れない!
次の衝撃に備えて!」
バババッと、全員が臨戦態勢になる。
きゅーばんちゃんは『静動』で周囲を確認している。
近くにいた古代ちゃんも、直感でピリピリと
何かを感じているようだ。
きゅーばんちゃんは『静動』で周囲を確認している。
近くにいた古代ちゃんも、直感でピリピリと
何かを感じているようだ。
「須佐乃ちゃん、何か感じる!?」
「うぅん、近くには何も。だけど……
この地響き、単なる地震じゃナイネ。
『何か』が起きてる可能性が高いアルヨ」
「うぅん、近くには何も。だけど……
この地響き、単なる地震じゃナイネ。
『何か』が起きてる可能性が高いアルヨ」
響 須佐乃ちゃん。
女児符号『霊波電探』で周囲のエネルギーや敵意、
物体をレーダーのように感知できる力を持っていて、
『夢の世界』では主に斥候を務めてくれていた女の子だ。
女児符号『霊波電探』で周囲のエネルギーや敵意、
物体をレーダーのように感知できる力を持っていて、
『夢の世界』では主に斥候を務めてくれていた女の子だ。
「やっと平和な世界に来れたと思ったのに!
また、何かが起こるって言うの……!?」
「落ち着いて!とにかく今は、現状把握に
努めよう。わたし達で対処できる事なら、
少しでもみんなの力にならなくちゃ……」
「……みんなっ!!外を見るアル!!
東の方角!!」
また、何かが起こるって言うの……!?」
「落ち着いて!とにかく今は、現状把握に
努めよう。わたし達で対処できる事なら、
少しでもみんなの力にならなくちゃ……」
「……みんなっ!!外を見るアル!!
東の方角!!」
須佐乃ちゃんの声で、
みんなが窓の外を見る。
そこには───。
みんなが窓の外を見る。
そこには───。
「…………な………………
なに……?あれ………………」
なに……?あれ………………」
大空市の中心部。
青空町の隣にある南青空町の方角に、
…………巨大な、日本風の城が建っていた。
青空町の隣にある南青空町の方角に、
…………巨大な、日本風の城が建っていた。
昨日まで、あんなものは無かったはず。
そもそも南青空町は遊園地や住宅街が
大半を占める街なので、そんなものを
作れるスペースはないはずだ。
…………一体、何が起きているの……!?
そもそも南青空町は遊園地や住宅街が
大半を占める街なので、そんなものを
作れるスペースはないはずだ。
…………一体、何が起きているの……!?
「お城と言えば、侍とか…………
忍者、だよね。これってまさか……!」
「っ……!!ま、まだ何が起きてるか分からない!
とにかく、様子を見に行こう!!」
「あっ、はもはもちゃん!!
外はどうなってるか分からないよ、
気をつけてっ!!」
「心配無双!!アタシが一緒に行くアル!!
みんなは後から来るヨロシ!!」
「それを言うなら心配無用〜…………!」
忍者、だよね。これってまさか……!」
「っ……!!ま、まだ何が起きてるか分からない!
とにかく、様子を見に行こう!!」
「あっ、はもはもちゃん!!
外はどうなってるか分からないよ、
気をつけてっ!!」
「心配無双!!アタシが一緒に行くアル!!
みんなは後から来るヨロシ!!」
「それを言うなら心配無用〜…………!」
わたしは思わず集合住宅を飛び出し、
全速力で走り出していた。
みんなの声が遠くなるのを聞きながら、
街を駆け抜ける。
全速力で走り出していた。
みんなの声が遠くなるのを聞きながら、
街を駆け抜ける。
……『未知夢』で見た、地獄のような光景。
かつて、『夢の世界』で嫌と言うほど
見てきた、沢山の人の、死。
あんなものはもう二度と見たくない。
かつて、『夢の世界』で嫌と言うほど
見てきた、沢山の人の、死。
あんなものはもう二度と見たくない。
絶対に、現実になんてしてたまるもんか!!
……………………
………………………………
…………………………………………
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!!」
3ヶ月ぶりに『女児力』を全開で走ったために、予想以上に体力を消耗してしまった。
「は……はもはもちゃん、待つアル〜……
速すぎるネ…………ぜぇ、ぜぇ……」
「あっ……須佐乃ちゃん、ごめんっ!
急いでお城に行かなきゃって、つい……」
「はぁ、はぁ……どうアル……?
何か、分かったアルか……?」
速すぎるネ…………ぜぇ、ぜぇ……」
「あっ……須佐乃ちゃん、ごめんっ!
急いでお城に行かなきゃって、つい……」
「はぁ、はぁ……どうアル……?
何か、分かったアルか……?」
視線を、城の方に移す。
まだ真下までは来れていないけれど、
予想以上に大きい。
石垣の高さだけで、
10mはあるのではないだろうか。
まだ真下までは来れていないけれど、
予想以上に大きい。
石垣の高さだけで、
10mはあるのではないだろうか。
外から見ただけでは、
中の様子は窺い知れない。
記憶ではこの辺りは、
本来住宅街があった場所だ。
中の様子は窺い知れない。
記憶ではこの辺りは、
本来住宅街があった場所だ。
しかし建物が押しつぶされたような様子はなく、
まるで綺麗に城と入れ替わってしまったような、
そんな風に見える。
ここに住んでいた人達は、どうなってしまったのだろう……?
まるで綺麗に城と入れ替わってしまったような、
そんな風に見える。
ここに住んでいた人達は、どうなってしまったのだろう……?
城の周辺は、今のところとても静かだ。
何か危険な事が起きる気配はない。
だけど……住宅街に突如城が出現するという
とんでもない事が既に起きているのだから、
次に何が起きてもおかしくはない。
とにかく今は最大限警戒しないと───。
何か危険な事が起きる気配はない。
だけど……住宅街に突如城が出現するという
とんでもない事が既に起きているのだから、
次に何が起きてもおかしくはない。
とにかく今は最大限警戒しないと───。
「…………これ、って…………」
「ん、どうしたの、須佐乃ちゃん?」
「あの、城の中…………とんでもない数の
人の反応がするアル!数千人はいるアルよ」
「すっ、数千人……!?そんな、いくら大きいからって
あんな城の中に数千人も入れるわけが……!!」
「ん、どうしたの、須佐乃ちゃん?」
「あの、城の中…………とんでもない数の
人の反応がするアル!数千人はいるアルよ」
「すっ、数千人……!?そんな、いくら大きいからって
あんな城の中に数千人も入れるわけが……!!」
どういう事だろう。
あの中は、こちらが思っている以上に広いのだろうか?
いや、そもそも…………。
あの中にいる「人」は、
一体何者なんだろう?
この世界と、敵対する存在なのだろうか。
それとも…………。
あの中は、こちらが思っている以上に広いのだろうか?
いや、そもそも…………。
あの中にいる「人」は、
一体何者なんだろう?
この世界と、敵対する存在なのだろうか。
それとも…………。
「はもはもちゃん!!後ろアル!!!」
「ッ!!!」
須佐乃ちゃんの言葉を聞くが早いか、
背後に気配を感じ咄嗟にしゃがむ。
「ッ!!!」
須佐乃ちゃんの言葉を聞くが早いか、
背後に気配を感じ咄嗟にしゃがむ。
コンマ数秒前までわたしの首筋があった場所を、刃が掠める。
「ッ……くッ!!」
「ッ……くッ!!」
即座に振り向き、敵の姿を視界に捉える。
…………やはり。
『未知夢』は、的中してしまった。
…………やはり。
『未知夢』は、的中してしまった。
黒い装束に身を包んだ、怪しげな風貌。
握りしめた苦無。鋭い眼光。
───間違いなく、夢で見た忍者だ。
握りしめた苦無。鋭い眼光。
───間違いなく、夢で見た忍者だ。
「はぁっ!!」
しゃがんだ状態のまま、足払いをかける。
バシッ!!と相手の足にクリーンヒットし、
忍者はぐらりとバランスを崩す。
しゃがんだ状態のまま、足払いをかける。
バシッ!!と相手の足にクリーンヒットし、
忍者はぐらりとバランスを崩す。
「はもはもちゃんから……離れるアル!!」
すかさず須佐乃ちゃんが華麗な蹴りを
忍者の顔面めがけて繰り出す。
しかし忍者は器用に態勢を変え、それを避ける。
凄まじい身体能力だ。
それに、こちらの動きを精密に観察している……!
だけど、こっちだって命がけのサバイバルを
くぐり抜けて来たんだ。
こんなところで負けるわけには行かない!!
すかさず須佐乃ちゃんが華麗な蹴りを
忍者の顔面めがけて繰り出す。
しかし忍者は器用に態勢を変え、それを避ける。
凄まじい身体能力だ。
それに、こちらの動きを精密に観察している……!
だけど、こっちだって命がけのサバイバルを
くぐり抜けて来たんだ。
こんなところで負けるわけには行かない!!
「やあああぁっ!!」
ドッ!!!
加減した『女児力』を込めた肘打ちを、
忍者のお腹に食らわせる。
「ッ……!!」
これは流石に効いたのか、
忍者の動きがわずかに鈍る。
だが。
ドッ!!!
加減した『女児力』を込めた肘打ちを、
忍者のお腹に食らわせる。
「ッ……!!」
これは流石に効いたのか、
忍者の動きがわずかに鈍る。
だが。
ビッ!!
手にした苦無で、こちらを斬りつけてきた!
「うっ……!!」
手を、斬られた……!
傷はそこまで深くはない。だけど、
傷口からは血がどくどくと流れ出している。
『女児力』は岩を砕いたり空高く飛び上がったりと、
純粋な身体能力を強化するものだ。
もちろん拳や足に力を込めれば多少防御力も上がるけれど、
刃物に対抗できるほどの硬さは獲得できない。
いくら2人でも、刃物相手に素手では
部が悪すぎる。ここは退くしかない!
手にした苦無で、こちらを斬りつけてきた!
「うっ……!!」
手を、斬られた……!
傷はそこまで深くはない。だけど、
傷口からは血がどくどくと流れ出している。
『女児力』は岩を砕いたり空高く飛び上がったりと、
純粋な身体能力を強化するものだ。
もちろん拳や足に力を込めれば多少防御力も上がるけれど、
刃物に対抗できるほどの硬さは獲得できない。
いくら2人でも、刃物相手に素手では
部が悪すぎる。ここは退くしかない!
「はもはもちゃん!ちっ、血が……!」
「大丈夫。それより須佐乃ちゃん、
ここは退こう!なんとか、隙を作って……」
「隙って言っても……ウワァ!難しいアルヨ!
避けるのが、精一杯で……!!」
須佐乃ちゃんも忍者の苦無に防戦一方だ。
なんとかしてこの場を切り抜けないと……!
「大丈夫。それより須佐乃ちゃん、
ここは退こう!なんとか、隙を作って……」
「隙って言っても……ウワァ!難しいアルヨ!
避けるのが、精一杯で……!!」
須佐乃ちゃんも忍者の苦無に防戦一方だ。
なんとかしてこの場を切り抜けないと……!
ちゃり。
「…………!」
ポケットの中にあった犬笛が、
いつの間にか地面に落ちていたようだ。
……今こそ、これを使う時だ!!
「すぅぅ〜〜〜っ…………
ピィィィィィ───────!!!!」
「…………!」
ポケットの中にあった犬笛が、
いつの間にか地面に落ちていたようだ。
……今こそ、これを使う時だ!!
「すぅぅ〜〜〜っ…………
ピィィィィィ───────!!!!」
思いっきり息を吹き込み、笛を鳴らす。
辺りに笛の音が響き渡り、忍者も一瞬、
こちらに気を取られる。
辺りに笛の音が響き渡り、忍者も一瞬、
こちらに気を取られる。
その隙を、見逃さない者がいた。
わたしや、須佐乃ちゃんではない。
わたしや、須佐乃ちゃんではない。
一陣の風のように現れた青い影が、
一瞬にして忍者の身体を吹き飛ばした。
忍者は近くの木の幹に叩きつけられ、
ダメージを受けながらも影の正体を見極めようとする。
影は、ひゅるるっと渦を巻くように着地し、
わたし達と忍者の間に立ちはだかった。
一瞬にして忍者の身体を吹き飛ばした。
忍者は近くの木の幹に叩きつけられ、
ダメージを受けながらも影の正体を見極めようとする。
影は、ひゅるるっと渦を巻くように着地し、
わたし達と忍者の間に立ちはだかった。
その、正体は───。
「助けを求める笛の音、確かに聞き届け
参上したでござる。
其方がはもはも殿であるな?」
青い忍者装束に身を包んだ、
犬耳?の女の子。
その姿や立ち振る舞いは、まるで…………。
「のじゃ、猫……ちゃん……?」
「……アレの知り合いとなると、
間違いないようでござるな。はもはも殿。
早速で申し訳ござらんが、此奴が敵という事でよろしいか?」
キッ、と鋭い視線を忍者に向ける。
「は、はい!そうです、何だか分からないうちに
襲われています!」
「あいわかった。しばらく待たれよ、すぐに片付けるゆえ」
「助けを求める笛の音、確かに聞き届け
参上したでござる。
其方がはもはも殿であるな?」
青い忍者装束に身を包んだ、
犬耳?の女の子。
その姿や立ち振る舞いは、まるで…………。
「のじゃ、猫……ちゃん……?」
「……アレの知り合いとなると、
間違いないようでござるな。はもはも殿。
早速で申し訳ござらんが、此奴が敵という事でよろしいか?」
キッ、と鋭い視線を忍者に向ける。
「は、はい!そうです、何だか分からないうちに
襲われています!」
「あいわかった。しばらく待たれよ、すぐに片付けるゆえ」
「あっ、こ、殺しとかは無しで
お願いします……!」
「なっ……!?明らかに向こうは殺す気で其方を
狙っているというのに、其方は殺す気はないと申すか!?
……命のやり取りをしているというのに、なんという……」
「例え命を狙われていても、相手を殺していい理由には
なりません。……少なくともわたしは、そう思っています」
お願いします……!」
「なっ……!?明らかに向こうは殺す気で其方を
狙っているというのに、其方は殺す気はないと申すか!?
……命のやり取りをしているというのに、なんという……」
「例え命を狙われていても、相手を殺していい理由には
なりません。……少なくともわたしは、そう思っています」
わたしの言葉を聞いていたのかいないのか、
なんとか態勢を立て直そうとしていた忍者は
戸惑っているような様子を見せた。
「とにかく、この場は奴を退ける必要があるでござる。
努力はしまするが、手違いで殺めてしまった時は
どうか堪忍なされよ」
犬耳の女の子が忍者に向き直るのとほぼ同時に、
忍者は懐から何か玉のような物を取り出して───。
なんとか態勢を立て直そうとしていた忍者は
戸惑っているような様子を見せた。
「とにかく、この場は奴を退ける必要があるでござる。
努力はしまするが、手違いで殺めてしまった時は
どうか堪忍なされよ」
犬耳の女の子が忍者に向き直るのとほぼ同時に、
忍者は懐から何か玉のような物を取り出して───。
ボゥン!!!
地面に叩きつけるとそこから煙幕が発生し、
辺りはもうもうと煙に包まれる。
「ぬっ……不覚!煙玉か!!」
「けほっけほっ!!な、何も見えないよ!」
「はもはもちゃん落ち着くアル!アタシは
この視界の中でもきっちり感知できるアル。
アタシ達の周りには忍者の反応はもうないアルヨ」
「……どうやら逃げたようでござるな。はもはも殿。
ひとまず、其方の安全を確保するという任務は完了でござる。
また何か困った事があればその笛で……」
「ま、待って下さい!!あの、危ないところを助けてくれて、
ありがとうございます。ところであなたは、一体……」
辺りはもうもうと煙に包まれる。
「ぬっ……不覚!煙玉か!!」
「けほっけほっ!!な、何も見えないよ!」
「はもはもちゃん落ち着くアル!アタシは
この視界の中でもきっちり感知できるアル。
アタシ達の周りには忍者の反応はもうないアルヨ」
「……どうやら逃げたようでござるな。はもはも殿。
ひとまず、其方の安全を確保するという任務は完了でござる。
また何か困った事があればその笛で……」
「ま、待って下さい!!あの、危ないところを助けてくれて、
ありがとうございます。ところであなたは、一体……」
「名乗るほどの者ではござらんが……
拙者の名前は『ござるロリ鼬』。
其方らがよく知る、『のじゃロリ猫』とは
因縁浅からぬ関係でござるが、今は故あってアレとは休戦中。
其方らが困った時に手を貸すようアレに頼まれていた故、
常に其方らの近くに身を潜めていたのでござる」
拙者の名前は『ござるロリ鼬』。
其方らがよく知る、『のじゃロリ猫』とは
因縁浅からぬ関係でござるが、今は故あってアレとは休戦中。
其方らが困った時に手を貸すようアレに頼まれていた故、
常に其方らの近くに身を潜めていたのでござる」