「ほらほらー早くしなさいよー!」

城の外に広がる草原に立っているエトナは、窓から降りようとしているレシィを急かす。
彼女等は窓から逃げていったガフガリオンが持つ剣を手に入れる為に、後を追いかけることにしたのだ。

「ま…待ってください…よっと!」

軽い身のこなしで地面に降り、エトナの隣に発つ。周囲を見回しながらレシィの到着を確認したエトナは、
城から真っ直ぐ北の方角へ向けて指差した。

「さっあのじいさんから剣をふんだく…取り返すわよ!!」
「は…はいっ!」

ガフガリオン探索は、匂いを辿る事のできるレシィを先頭に進む事にした。メイトルパの亜人である彼には、
センサーを持つロレイラルの機械兵士や魔力を感じ取る事のできるサプレスの天使達のように、探索に適した能力がある。
しかし、歩けども歩けども目的の人物の姿は見えない。自分達の足はそんなに遅くない筈なのだが、どうやらあの老騎士の足は思いの外早いらしい。

「……匂いはそれほど薄くはなっていないのに、全然姿が見えませんね」
「はぁー…ったくあのじじいどんだけ足速いのよ。なんだかだれてきたなー」

エトナがいかにもだるそうに手に持った斧をぶらぶらさせながら、匂いを辿るレシィを見つめる。
(匂いで後を辿れるっていうからやってもらっちゃあいるけど、よくよく考えるとこれって結構キツイことやらせてるのかな?
じじいの加齢臭なんて嗅がせて犬のように使うとか…まああたしは別に心が痛むわけでもないし、プリニー共にやらせてることに比べたら
大したことないんだけどさぁ…つかこれってなんか主人と家来というか、警察犬と女刑事みたいな感じ?こういうのフロンちゃん好きかなー
…いや、フロンちゃんはもっと百合的なものの方がいいかな?例えば悪の女幹部に捕まった正義のヒロインがあんなことやこんなことされるのとか…)
エトナが色々と頭を回転させていると、彼女に対する恐怖心が和らいだのか、レシィが話を切り出してきた。

「…ところで、エトナさんってこの殺し合いに乗ってる…んですか?」
「んー?……んー」

レシィの質問に対して、気のなさそうな言葉を返しながらエトナが沈黙する。それほど長い時間ではなかったが、
レシィにすればとても長い時間に感じられた。…もし彼女が殺し合いに乗っていると言ったらどうしようかと。
自分と同じマグナの護衛獣である彼女を相手に戦わなくてはいけないのかと…。
そんな心配を他所にエトナが発した言葉は、彼の想像を脱していた。

「…まぁ、ぶっちゃけどうでもいいのよねー」
「え…?」

この殺し合いの舞台で出会った人物は、誰もが殺すか殺されるかの緊迫した状況に気を引き締めていたのに、
彼女の言葉と態度にはそんなものが微塵もなかった。まるで暇つぶしでやってるゲームに出てきた特に重要でもない選択肢
を選ぶかのようだった。

「あたしとしては死にたくないからゲームに乗るっていうのもありかなとは思うけど、あのおっさんの思い通りに動くのも癪だからさー…
 だから適当に流れに乗って、面白そうな方につくってことにしたわけ。」
「は…はぁ…。じゃっじゃあ面白ければ、殺し合いをしたりしないんですよね?」
「そーなるのかしらね。でもあたし自身殺されるとか嫌だから、どっか適当な奴から武器を貰って自衛でもできるようにしたいなと思ってさ。
 一応手に入れたはいいんだけど、どれもイマイチなのよねー。そこで、あのじじいの持ってった殿下の剣をゲットしようってわけよ。」

確かに、この殺し合いで生き残る為にはある程度の武器は必要だ。レシィのように格闘術に長けている人物なら武器なしでも多少はなんとかなるが、
参加者がどれも並の実力の持ち主ではないので、自身の強化の為に武器を求めるのは当然の考えだった。

「で…でも、僕はご主人様の剣はご主人様に返したいんです。ガフおじいさんにだって、ご主人様と会うまで貸すだけだったんですから。
 エトナさんにもあげるわけにはいきません。」
「はあ…あんたって本当に殿下にちゅーじつなのね。(ホントに悪魔かよコイツ…)でもあのじいさん返す気ないんじゃない?武器が手元にそれしかない以上、
 どんなことがあっても手に入れるでしょ?貸し借りの話だって適当に嘘いってんのよ。実際あんた置いてあたしから逃げたし。」
「うぅ……」
「まあ今はぐだぐだ言ってないで、とっととじいさんから剣取り返すのが先よ。ほら行くわよ!もう陽が沈みそうだしね!」

まだ色々と言いたかったレシィだったが、エトナに急かされたので再び匂いを辿る事にした。
しかし老騎士を見つからず、未だ誤解だらけの関係に気付く事はなかった。
時刻はまもなく午後6時。
第一回目の放送が始まると同時に、殺人級の悪臭にレシィが悲鳴を上げるのは、それから数分後の事であった…。


【C-3/平原/1日目・夕方】



【レシィ@サモンナイト2】
[状態]: 健康 、歩き続けによる疲労(小)、刺激臭で鼻が痛い
[装備]: サモナイト石[無](誓約済・何と誓約したものかなど詳細は不明)@SN2or3
[道具]: 支給品一式(1/2食消費) 碧の賢帝(シャルトス)@SN3 死者の指輪@TO 生肉少量
[思考]1:な…なんですかこの臭い!!
   2:ガフおじいさんを探す
   3:ガフおじいさんから剣を返してもらう
   4:殺し合いには参加せず、極力争いごとは避ける。



【エトナ@魔界戦記ディスガイア】
[状態]:健康 、歩き続けによる疲労(極小)
[装備]:手斧@暁の女神、クレシェンテ@タクティクスオウガ、エクスカリバー@紋章の謎
[道具]:支給品一式(1/2食消費)(道具・確認済み)
[思考]1:ん、どうかした?
   2:魔剣良鋼が欲しい。
   3:適当に弱そうな奴から装備を奪う。出来れば槍か斧が良いが贅沢は敵だ
   4:優勝でも主催者打倒でも人助けでも、面白そうなこと優先 (とりあえず暫くは主催打倒でいいかも…)
   5:ラハール中ボスが気になるが、特に会いたいとも思っていない
   6:レシィを家来にする。家来を増やすのもいいかもしれない。


078 屍術師の企て 投下順 080 第一回放送
077 Limitation 時系列順 081 それはまるで…
066 誤解パラダイス レシィ 093 臭いと芝居と色々と
066 誤解パラダイス エトナ 093 臭いと芝居と色々と
最終更新:2009年06月05日 10:02