現在、
アルガスは絶対絶命の危機に陥っていた。
しかし、その本人はというとそんなこと露知らず敵を求めて辺りを捜索している。
森を抜けてからしばらく経つが、誰とも会わない。
飽きっぽい悪魔
エトナは暇だった。
(あー、なんかめんどくさくなってきたわ。殺しちゃおうかな)
前を歩く、多少エトナのことを警戒しながらも復讐?に余念がない男――アルガス。
こう、さくっと殺してしまえそうな位置関係である。
手斧をくるくると振り回しながら、エトナは欠伸をかみ殺した。
すると、じろり、とアルガスが振り向いた。
しかし、エトナは気にしない。
アルガスは再び敵を探し始め、エトナはそれについていくだけだ。
エトナは別に、人殺しが好きな訳ではない。
つまんないと思ったら殺さないし、快楽殺人鬼とは訳が違う。
ただ、特に他人の死に何も感じないだけだ。
悪魔の倫理観とは所詮そんなものである。
優勝を目指すのはあの主催者のいいなりみたいで嫌だ。
主催者を倒す?あのバールをぶっ飛ばした奴を?めんどくさそうだ。
誰かが殺るのを見るのは楽しそうなんだけど。
「ここに隠れたか……」
歩いているうちに、城の前に来てしまった。
アルガスは確信した。敵はここにいる、と。
森を抜けて、見通しのいい場所を通ったのに誰とも会わなかったのだ。
隠れる場所はここしかない。
「ふーん。なかなか立派な城じゃん」
魔王城に住んでいるエトナは、城には見慣れている。
少しの懐かしさが沸いてきたが、すぐにそれは消え去った。
「じゃあ、先に行け。俺は後ろを警戒している」
「……」
アルガスは武器を持っていない。
万が一にもエトナが不覚を取られることはないだろう。
エトナは堂々と城の扉を開けて、――叫んだ。
「誰かいるー?」
+ + + + + +
「ガ、ガフおじいさん……!」
エトナの声は、高らかに城内に響き渡っていた。
これからの方針を考えていた
ガフガリオンと
レシィは、お互いの顔をみる。
声は段々と大きさを増していく。近づいてきているらしい。
誰もいないのー?おーい!隠れてんならでてきなさーい!出てこないならぶっ殺すわよー!と可愛らしい声で物騒な言葉が紡がれる。
「ど、どうしましょう」
距離はまだ離れている。逃げるのにも、迎え撃つにも早く決めなければならない。
ガフガリオンは考えた。
声は一つ。足音も、よく聞けば一人分しかない。
年若い少女の声は、どう判断するか。
この殺し合いという状況を理解していない馬鹿か、それとも相当腕に自信があるのか。
生き延びるために判断を間違えてはならない。
「逃げるぞ、レシィ」
「は、はい!」
レシィは慌てて荷物を纏める。
ガフガリオンは慎重を選んだ。
前者なら、これ以上の足手まといを増やしたくない。
後者なら、自分が負けるとは思えないがレシィもいる。生き残るために怪我などを負うことは避けたかった。
ここは城の一階だ。
扉からでなく、窓から外に出ることは可能だ。
ガフガリオンは窓を開け、先頭を切って脱出する。
「レシィ、急げ!」
「今、行きま――ぁ」
窓の外で待っていたガフガリオンの視界から、レシィが消えた。
それと同時に、部屋と廊下を繋いでいた扉が開かれる。
「見いーつけた♪」
赤い、悪魔がそこに立っていた。
+ + + + + +
アルガスは城の外、扉の前で立っていた。
エトナに襲われて逃げてきた敵を閉じ込める為である。
誰かが居た痕跡が残っていた。まだ潜んでいる可能性は高い。
アルガスは武器がないので、この役目を選んだ。
押さえているので、すぐには開かないだろう。
ほとんどはエトナにやらせるとしても、アルガスは多少は戦うつもりだったのだが、素手では厳しい。
エトナに武器を貸してくれ、と頼んではみたがあっけなく断られてしまった。
まあ、あの悪魔は強い。
任せておけば、何人かは殺してくれるだろう。
アルガスは笑みを浮かべながら、エトナの帰りを待っていた。
【E-2/城前/1日目・午後】
【アルガス@FFT】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品×2 (1/2食消費)
[思考]1:エトナを待つ。
2:隙を見て逃亡。殺せるようなら殺してアイテムを奪う
3:
リュナンとレシィとあの男(
ヴァイス)に復讐
4:
ラムザと
ディリータを殺す
+ + + + + +
(後者だったか……)
ガフガリオンは一人、北に向かって走っていた。
レシィのことは残念だが、あれは自業自得としかいいようがない。
よりにもよってあの場面で、どうして躓くのだろうか。
一応助けようとしても、城の外と中。大きな壁に阻まれてしまえば難しい。
壁を登り、窓から助けに入ってもよかったが大きな隙が出来てしまう。
そこまでしてやる義理はガフガリオンにはなかった。
レシィをうっとおしいと感じ始めていたところだったのだ。
丁度よい機会だったのかもしれない。
武器も手に入った。
赤い髪をした少女だった。
見た目とは裏腹に、得体のしれないものを感じた。
手に武器を持ち、場にそぐわない余裕な笑みを浮かべていた少女。
勝てないとは思わなかったが、今は戦うときではない。
わざわざ不利な状態で、勝負することはないのだ。
(ご主人様の剣か……)
城が見えなくなっていく。
あの部屋はきっと死体がひとつ転がっているのだろう。
(
マグナ、か)
もし会うことがあるのならレシィのことを伝えてやるか。
【D-2/草原/1日目・午後】
【ガフ・ガフガリオン@FFT】
[状態]:健康
[装備]:(血塗れの)マダレムジエン@FFT、ゲルゲの吹き矢@TO、絶対勇者剣@SN2 天使の鎧@TO
[道具]:支給品一式×2(1/2食消費) 生肉少量 アルコール度の高い酒のボトル一本
[思考]:1:(どんな事をしてでも)生き延びる
2:とりあえず走る。
3:マグナに会ったらレシィのことを伝えてやってもいい。
4:
アグリアスには会いたくない。
+ + + + + +
「あれー?あのじいさん逃げちゃったよ、どうする?」
「あ、ああああ、あ」
僕は頭がパニックでした。逃げようと思ったら、転んじゃって女の人に捕まってしまいました。
床にぶつけた頭が痛いです。
でも、それどころじゃありません。ガフおじいさんは逃げてしまったそうです。
ショックでした。でも、僕のせいです。
僕が転ばなければ、今頃はガフおじいさんと逃げれていたのに。
だけど、僕はあきらめません。ご主人様と会うためにも、ここで死ぬわけにはいきません。
僕は魔眼を使おうとしたら、女の人が首を傾げました。
「ん?何?ってあんた、魔物?」
女の人は、僕を見ると不思議そうな顔をしました。
気がついたら、あんなに怖かったとげとげしい空気は消えています。
僕は眼を使うのをやめました。今は大丈夫だと思ったからです。
僕はやっと、女の人を見ることが出来ました。
赤い髪に、寒そうな服、そして――悪魔みたいな尻尾が女の人に合わせて動いています。あ、羽もついていました。
「あ、悪魔?」
女の人は、ご主人様がたまに召喚する悪魔に似ています。
女の人は笑っています。
「そうよー。殿下達以外にも悪魔が紛れてるなんてね。しかも格下だし。
プリニーがいなくて困ってた所だったのよ」
「ぼ、僕は悪魔じゃありません!メイトルパのメトラル族の護衛獣です!」
「メトラル族?魔獣族の仲間?まーそんなことはどうでもいい」
女の人は、楽しそうに笑っています。でも、僕は楽しくありません。
いやな予感がします。
「今日からあんた、あたしの家来ね」
+ + + + + +
「家来!?だめです。僕にはご主人様がいます!」
「ご主人様?んー殿下のこと?」
あたしは城の中で同族を発見した。
アルガスって奴よりは素直そうで扱いやすそうだ。
ちゃんと武器も持っているみたいだし。
人間を家来にするよりは、頑丈そうだ。
しかも、悪魔だっていうのに殿下に忠誠を誓っているらしい。
魔界の悪魔なんて、ほとんどは魔王なんかに従わずに好き勝手やっているのに。
エトナはいまどき珍しいタイプの魔物だ、と関心しつつ言葉を発する。
プリニーが常に側にいることが当たり前だったエトナは、そろそろ下僕が恋しくなったのだ。
「大丈夫大丈夫。あたしはまあ、癪だけど殿下の家来だから。つまり、殿下の家来はあたしの家来って事」
「え?ご主人様の?」
第三者が聞いたら、話がかみ合ってないことに気がついただろう。
だが、エトナは自分の都合の良いように解釈するタイプでレシィは未だ混乱から完全に抜け出しては居ない。
レシィは家来、という言い方を不思議に思ったもののマグナにはたくさんの契約した召喚獣がいる。
鬼、竜、獣人、悪魔、天使、機人。
目の前の女の人もその一人ではないかと思った。
レシィがおとなしくなったのを見て、エトナは忘れていた目的のひとつを思い出した。
「そうだ、なんか武器もってない?槍とかさ。贅沢はいわないけど」
「武器ですか?」
いつの間にか二人は座り込んで話していた。人ではないという共通点があったからかもしれない。
まずレシィが取り出したのは、碧の賢帝(シャルトス)
抜けないということを話すと、エトナは興味を失くしたようだった。
「あとはご主人様の剣なんですが――あ」
「なによ」
「ガ、ガフおじいさんに貸したまま……です」
思い出して顔を真っ青にするのはレシィ。
ご主人様の剣がーと今にも泣きそうだ。
男からせっかく取り返したのに、またはぐれてしまった!
エトナは興味なさそうに聞いていたが――あれ、とレシィの言葉を思い返す。
(殿下の剣って――魔剣良鋼!?)
「……あのじいさん、だから!」
人間が、仲間だったらしいレシィをあんなに早く見捨てたのには違和感があったのだ。
魔剣良鋼は、魔界でも他の追随を許さないほどの最高峰の剣だ。
その攻撃力は、地を割り戦艦を切り裂き他次元の魔王をぶっ殺し……などなど。
あの人間は、魔剣良鋼を手に入れることを優先したのだ。
「じいさんを追うわよ、えーと」
「レシィです!」
「オッケー。あたしはエトナ。エトナ様でいいわよ」
「え!え、えーとエトナさん?」
「……ま、いっか」
悪魔と護衛獣は、窓枠を乗り越えて外に出た。
人の姿はどこにも見当たらない。
「どっちに逃げたのかしらね、あのくそじじい」
【E-2/城の裏側/1日目・午後】
【レシィ@サモンナイト2】
[状態]: 健康
[装備]: サモナイト石[無](誓約済・何と誓約したものかなど詳細は不明)@SN2or3
[道具]: 支給品一式(1/2食消費) 碧の賢帝(シャルトス)@SN3 死者の指輪@TO 生肉少量
[思考]1:ガフおじいさんを探す。
2:マグナ達と合流する。
3:マグナにガフおじいさんに貸している剣を渡す。
4:殺し合いには参加せず、極力争いごとは避ける。
【エトナ@魔界戦記ディスガイア】
[状態]:健康
[装備]:手斧@暁の女神、クレシェンテ@タクティクスオウガ、エクスカリバー@紋章の謎
[道具]:支給品一式(1/2食消費)(道具・確認済み)
[思考]1: 魔剣良鋼が欲しい。
2:適当に弱そうな奴から装備を奪う。出来れば槍か斧が良いが贅沢は敵だ
3:優勝でも主催者打倒でも人助けでも、面白そうなこと優先
4:
ラハールや
中ボスが気になるが、特に会いたいとも思っていない
5:レシィを家来にする。家来を増やすのもいいかもしれない。
最終更新:2009年04月17日 23:23