26代目スレ 2008/11/16(日)
マーズ「じゃ、ひらくよー」
ラーナ「そーっと、そーっとですよ」
マーズ「うんしょっ!」
ラーナ「やん、急にぱっかりやったらびっくりします」
マーズ「きゃーっ! 怖い怖い怖いグロいグロいグロい!」
ラーナ「ほら、びっくりしたでしょう」
【L&E ガレージ】
マーズ「いったいどーゆーことなの、
この、エンジンに長い髪の毛わっさー絡まったポンコツクルマは」
ラーナ「よくわからないんですけど先週くらいからうちのガレージの前に放置されてて、
ナンバーも付いてないし邪魔だから解体しちゃおうと思って」
マーズ「あっぶねーなー、そーゆー手口のハンザイだったらどーすんのよ。
クルマに手ぇー付けたトタン、難癖つけてきたりすんだよー」
ラーナ「ボンネット開けたら、見てのとおり髪の毛がわっさーと」
マーズ「だからさー、どーしてそーゆーことでおれを呼ぶのよ。
キミはどーしてレーカンがあるわけでもねーのに、
こーゆーオカルトチックなものに首つっこもーとすんの」
ラーナ「じゃあ、なんですか、クラスで失くしものがあったときに
『わたしの白魔術で探してみる!』とかいって結跏趺坐を組み始めちゃう
ナカムラさんにでも相談すればよかったんですか」
マーズ「そいつぁー、ナカムラさんかわいそーだからやめたげよーよ」
ラーナ「じゃ、わたしはいったい、この先ナカムラさんをどう扱ったらいいんですか。
わたしの前世は光の獣を闇の魔天使が凶槍ズギャベチャブチャで切り裂いたときに産まれたユニコーン
だとかいわれたとき、どうリアクションすればいいんですか」
マーズ「あと2、3年したあとのドーソーカイとかで『していた』
ってヒトコトつぶやきゃーゴーチンできると思うよ、たぶん」
ラーナ「2、3年も待たなきゃいけないんですか。
だってナカムラさん授業中ちらっとノート見ると、
ちっちゃい字でびっしりと光がどうした闇がどうしたって書き殴ってて怖いんですよ」
マーズ「や、ナカムラさんのハナシはもーいーから。
このクルマも、ちゃっちゃとケーサツに届けちゃおーよ、
ハンザイのニオいがぷんぷんしてんだかんさー。
せっかく税金払ってんだから、コーボクに働いてもらおーよ」
ラーナ「放置自動車のエンジンに長い女の髪の毛がわっさー絡まってましたと、
女子中学生が警察署でいって、取り合ってもらえるものでしょうか」
マーズ「ジャキガン的なイタズラだと思われるだろーね。 ゴリョーシンは?」
ラーナ「今日、パパとママ帰ってこないの」
マーズ「ヘボいラブコメみてーにゆーヒツヨーはねーから」
ラーナ「お父さんもお母さんも来週まで出張行ってて帰ってきません」
マーズ「あー、その間ヘンなのに怒鳴り込まれてもメンドーだし、
ちゃちゃっとエンジンだけバラしちゃいなよ。
そんだけ髪の毛絡みついてりゃー、爪なり頭皮のハヘンなり出てくんでしょー」
ラーナ「頭皮の破片とか出てきたら、わたし泣いちゃうと思うんですけど」
マーズ「そーゆーおっかねーモンが出てくりゃー、ケーサツも重てーお尻上げてくれるってことさ」
ラーナ「じゃ、ちょっと離れててください」
ががががががっ!
マーズ「うゃ? ミョーに時間かかってんじゃねーの?」
ラーナ「おかしいんです。この髪の毛、エンジンから生えてきてるみたいな」
マーズ「まーた、おっかねーことゆー。
オイルでへばり付いてるだけなんじゃねーのー?」
ラーナ「おかしいですね。えいっ、えいっ」
マーズ「取れねーなら取れねーでいーから」
ラーナ「きゃあっ!」
マーズ「ちょい、どーしたの!?」
ラーナ「髪の毛が、こっちに来たような」
マーズ「うえぇっ!?」
ラーナ「なんでしょう、頭が少し重いような」
ぺたぺたぺた
ラーナ「これは」
マーズ「怖えーよ怖えーよ、それ、どーなってんのよー!?」
ラーナ「憧れの黒髪ロングです」
マーズ「アコガレてんじゃねーよ!」
ラーナ「だってだって、わたし猫っ毛で伸ばすとヘンなことになるし、
ほんとはデスピニスさんみたいなサラサラの黒髪ロングになってみたかったんです」
マーズ「やー、たしかに黒くてなげーけど、サラサラじゃねーよ。
ゴワゴワに荒れてんじゃん。サダコだよサダコ、それじゃー」
ラーナ「待っててください。シャンプーしてリンスしてブローしてきます」
マーズ「いやいや、どーして!?」
マーズ「ほんとにヘアケアしてきちゃったよ、どんなメンタルしてんのキミは」
ラーナ「うふふ」
マーズ「うれしそーなカオしてんじゃねーよ!
このクルマ、どーすんの!?」
ラーナ「あ、もうどうでもいいです」
マーズ「どーでもよくなってんじゃねーよ! あきらかにおっかしーよ!
なにがどーなって髪の毛が伸びちゃうのよ、イミわかんねーよ!
こーゆーの、システムが頭痛起こすんだよ、おれァー!」
ラーナ「ああ、あれです、『龍の髭』です。
乱馬さんがお下げしてないと髪の毛ぐいぐい伸び続けちゃう原因を作った」
マーズ「ねーよ! そんな『乱馬1/2』グッズは実在してねーよ!」
ラーナ「じゃあ、タスクさんがいつもしてるバンダナをどう説明つけるんですか」
マーズ「あー、あのバンダナ、そーだったんだ」
ラーナ「『龍の髭』でダシを取ったスープを飲んだ人間は、
『龍の髭』で縛っていないと毛根が尽き果てるまで髪の毛が伸び続けるんです」
マーズ「そーかそーか、あのバンダナはハゲ防止もしくはハゲ隠しだったのかー」
ラーナ「あのひともあの声でけっこう歳いってますから」
マーズ「わーっ、わーっ、わーっ、やっぱダメだーっ!
だって『龍の髭』って、男にしか効かねーはずだものっ!」
ラーナ「落ち着いてください。じゃあ、昔あった『乱馬1/2』グッズで
女らんまさんの髪の毛が不自然に長かったり短かったりしてたのは、
どう説明をつけるつもりなんですか」
マーズ「あー、それもそーかー」
ラーナ「納得してくれたようでなによりです」
マーズ「じゃーさ、このクルマはいったいなんなんだろーね」
ラーナ「『味の素』の秘密兵器なんじゃないでしょうか」
マーズ「なーにそれ」
ラーナ「知らないんですか、『味の素』って髪の毛から作られてるんですよ」
マーズ「なにちょっと『えへん』ってカオしてんの。
ねーよ、それ、都市伝説だよ。
『味の素』っちゅーのは発酵させたイモとかサトーキビから抽出したグルタミン酸ナトリウムだよ」
ラーナ「じゃあ、床屋さんとか美容院とかで、
床に溜まってた髪の毛が気が付いたら消えてるのは、いったいどういうことなんですか」
マーズ「知らねーよ、なんか、お客サンに気付かれねーで掃除するコツでもあんじゃねーの。
ミミズバーガーなんかとおんなしで、
モトがなんだったのかよくわかんねー食べ物にゃーミョーな都市伝説が生まれちまうんだよ」
ラーナ「じゃ、エヒメやシズオカのひとはオレンジジュースでご飯炊いてるっていうのもウソですか」
マーズ「あー、そいつぁー、なんか、あるらしーよ。
あまりにもマズくてジモトのひとでもよく食わねーよーだけど」
ラーナ「えっと、えっと、じゃあ回転寿司でなかなか取ってもらえない光り物に霧吹きで」
マーズ「いーから、都市伝説はもーいーから。
その髪の毛カーのこたぁー」
ラーナ「あ、エンジンから髪の毛が消えて、もう純然たるただのポンコツです」
マーズ「キミの頭に乗り移っちまってんじゃねーのよ、髪の毛がさー。
あのさー、こーゆーオカルトめーたこたぁーいーたかねーけど、
キミ、取り憑かれてんじゃねーの?」
ラーナ「きっと悪い霊ではないので、ありがたく黒髪ロングをいただきます」
マーズ「いやいや、なんのコンキョがあってそんなハンダンしちまってんの」
ラーナ「いいですかロボくん、
幽霊にも、きっといい幽霊と悪い幽霊がいるんです。
この霊は、きっといい霊です。
こんな話があります。
深夜のドライブ中、トンネルを抜けた先に突然女の子が現れたんです。
ドライバーが慌てて急ブレーキをかけると、クルマが崖の手前で止まっていたんです。
そう、女の子の幽霊はドライバーを助けてくれたんです」
マーズ「それ、あとで『死ねばよかったのに』ってオチが付く話じゃねーの!」
ラーナ「もう、髪の毛伸びたわたし本人が
どうでもいいっていってるんだから、いいじゃないですか」
マーズ「よかねーし、おっかねーしイミわかんねーよ。
えーっと、ちっと待ってて。
車種はスカイライン、年式は9年くれー前の。
走行距離は8万キロ、わー、そーとーなポンコツだ」
ラーナ「なにをしてるんですか?」
マーズ「これ、どーせ中古車でしょー。
中古車情報から、あるてーど絞り込めんよ。
あーと、あったあった。保険会社のデータベースにあったよ。
ちょい前に事故起こしてら。居眠り運転の軽トラと正面衝突だってさ」
ラーナ「じゃ、その事故で亡くなった女性の怨念がこのクルマに?」
マーズ「うんにゃ、たしかにドライバーさんはオンナの人だったけど、べつに死んじゃいねーよ。
軽いむち打ちで全治一ヶ月だって」
ラーナ「じゃあこの髪の毛、ほんとうになんなんですか」
マーズ「んー、保険会社のほーに問い合わせてみっから、
取りあえず持ち主の女性のとこ行ってみよーよ」
ラーナ「どこですか?」
マーズ「コウトウ区だけど」
ラーナ「待っててください。オシャレしてきます」
マーズ「えっ、着いてくんの!?」
【コウトウ区 アパート前】
マーズ「べつにオシャレしてくるよーなトコじゃねーよ、コウトウ区は」
ラーナ「だってわたし、普通にしてると男の子に見られるんですもの。
ワンピースの上からカーデガンかけて胸には赤いリボンもつけて、
これならどこからどう見ても女の子です」
マーズ「横に四本足連れてちゃー、あんまイミねーんじゃねーの」ガチャンガチャン
ラーナ「女の子に見られたいだけで、モテたいわけじゃありません」
トントン
マーズ「こんちゃー、タナカさーん、タナカハナコさーん?
オタクのクルマがですねー」
おばちゃん「あら、タナカさんならずっと留守よ」
ラーナ「あなたは?」
おばちゃん「大家の者だけれど」
ラーナ「夕方に再放送されてる刑事ドラマみたいです」
マーズ「うん、ケージドラマみてーだね。
ねーおばちゃん、留守って、どんくれー前から?」
おばちゃん「2週間くらい前からかねえ」
マーズ「中から生ゴミがクサッたみてーなニオイはしてねー?」
おばちゃん「そういうのはないけど、
ねえ、あんたたち、借金取りじゃないだろうねえ」
ラーナ「いいえ、解体業者です」
マーズ「解体業者でもねーよ! キミんち、機械の修理もやるレスキュー屋でしょーが!」
ラーナ「どうせわたしが継いだら解体業者になります」
マーズ「そりゃそーだろーけどさー」
おばちゃん「借金で首まわらなくなって夜逃げしたんだかなんだか知らないけど、
ほんと、迷惑な店子だよ」
【海辺】
マーズ「なーんか、ミョーなことになってきたなー。
だいたいさー、あんな安アパートに住んでるよーなオンナのヒトが、どーして
自家用車なんてゼータク品持ってんのさ。
そりゃーあのクルマボロだから売るどころかスクラップ代取られて終わりだろーけど、
都内の駐車場なんざ、地方の家賃並にかかんのにさー」
ラーナ「借金もあったようですし」
ピッポッパ
マーズ「あー、もしもし、保険会社さん?
さっきレンラクしたもんだけどさー、ちーっと課長さんクラス出してくんねー?
ヴァルストークファミリーの備品ってゆやーわかるからさー」
ラーナ「どうしたんですか?」
マーズ「えーっと、あとは、金融業界のデータベースを~と」
ラーナ「さっきからなにやってるんですか?」
マーズ「保険金詐欺だね、これ」
ラーナ「わかるんですか、そういうこと」
マーズ「保険金が下りるにゃーさー、当事者以外に目撃者がヒツヨーとなんのね。
で、仲間同士で被害者と加害者と目撃者を分担して交通事故でっちあげる手口があんのよ」
ラーナ「でも、ほんとに怪我してまで」
マーズ「当たり屋ってーのがあるでしょ。似たよーなもんだよ。
で、今回の場合、被害者役がスカイラインの持ち主だったタナカハナコさん、
加害者役の軽トラが、シナガワ区にある『スズキ建設』ってゆーちっこい会社の所有、
目撃者がナカノ区在住のフリーターヤマダイチローさん。
タナカさんに対して60万の保険金が支払われた次の日に、
ヤマダさんが消費者金融に対して20万の返済をしてる。
でもって、スズキ建設のほーが、やっぱり20万の手形を決済してる。
さらに先週、20万の手形を決済してるねー。
ちょいちょい、総額が保険金とおんなしになってんじゃねーの。
こんなグーゼン、起こるもんじゃねーよ」
ラーナ「でも、ロボ君がちょっと調べただけでわかるような保険金詐欺なんて、
ちゃんとした保険会社が引っかかるものなんでしょうか」
マーズ「おれだって、金融屋のデータ見なけりゃーわかんなかったよ。
このひとたち、現住所も出身地も年齢も職業もバラバラなんだもん。
保険金が出てねー時点じゃー、なかなかちっと見抜けられるもんじゃねーよ」
ラーナ「そんなバラバラのひとたちが、いったいどうやって手を組んだんでしょう」
マーズ「出会い系でも使ったんじゃねーの。
ほら、集団自殺サイトってーのがあんでしょ?
あれの保険器詐欺バージョンみてーのあったっておかしかねーよ」
ラーナ「それでは、むち打ちまでして保険金をせしめたタナカさんが失踪してるのは」
マーズ「ヤマダかスズキのどっちかが悪さしたんだろーね、
こっちからちけーなぁー、シナガワ区かー」
ラーナ「本当なんでしょうか。
20万とか、新卒サラリーマンの初任給並の額じゃないですか。それくらいのために」
マーズ「ひゃひゃひゃ、居酒屋で店員やってるガイジンあたりにコロシの依頼してみなよ。
2万円からやってくれんよ」
【スズキ建設】
スズキ「なんや、仕事中に」
マーズ「やー、ね、保険金詐欺のコトでね」
スズキ「なにをいいよるか、わからんわ」
マーズ「オタクさんさ、一ヶ月ぐれー前に追突事故起こしてるでしょー」
スズキ「ああ、うちの従業員が居眠り運転かましたんじゃ。
この不景気に、ありゃあ大損害じゃった」
マーズ「そーでもねーでしょ。
オタクさん、こないだ40万も手形出してんじゃねーの」
スズキ「そりゃあ、ワシが金策に走り回ってようやく出したんじゃ」
マーズ「そー。じゃータナカさんが行方不明になっちまってるなぁー、どーゆーことよ」
ガアァァァァンッ!
ラーナ「ロボくん!」
スズキ「サトぉーっ!」
サトー「どいてくだせえ、社長!」
ラーナ「あなたち、やっぱり」
サトー「おんどれぇっ!」
バチッ
【プレハブ小屋】
スズキ「すまんのお、サトー。おどれにこんなことを」
サトー「気にしないでつかぁさい。
前の時とおなじですけえ、上手くやってみせますけんのぉ。
もしバレても、ワシが全部ひっかぶっていきますけえ」
スズキ「サトー、おどれは」
サトー「グレて学校も辞めちまってた俺を拾ってくれた恩、忘れていませんけえ」
ラーナ「なに、いい話みたいな空気出してるんですか」
サトー「なんじゃ、目が覚めたんか、おなご」
ラーナ「ロボくんをどうしましたか」
サトー「あそこじゃ」
カーン カーン カーン
サトー「
ボーリング孔の下、もう、粉々じゃあ。
もうちぃっとすりゃあ、ビルが重しになってくれよる。
絶対に見つからん、死体が見つかりよらんなら、殺人事件にもならん」
ラーナ「タナカさんも、そうやったんですか」
サトー「バカなおなごじゃ。
急な決済が必要じゃけえ、あとで必ず返すっていうとぉに断りよるから」
ラーナ「安いものですね」
サトー「恨むなたぁいわんけんのぉ。
こっちも、生きるか死ぬかの瀬戸際なんじゃ」
ラーナ「そうですね」
サトー「おぉと、物騒なチェーンソーは取り上げさせてもらったけえのお。
エエ子にしとったら、痛ぉないようにしたる」
ラーナ「優しいじゃないですか」
パサッ
サトー「なんじゃあっ!? このガキ、ロープを」
ラーナ「スカート穿いててよかったです。
女子中学生のパンツの中まで改めるのは抵抗がありましたか、おじさんたち」
サトー「どこになに隠しとったんじゃワレぇっ!」
ラーナ「パンツにマイナスドライバーはさんでました」
サトー「がんぼったれかっ!」サッ
ラーナ「スタンガンなんかバラし飽きてるんですよ、わたし」
パァンッ!
サトー「こいつ、ドライバー一本で?」
ラーナ「チェーンソー取り上げたのは失敗でしたね。
痛いですよ、マイナスドライバーでやられるのは」
ガシッ
サトー「こいつっ、離せっ! 離さんかぁっ!」
ラーナ「動けないですか、動けないでしょう。
わたし、見かけより力持ちなんです。
いつもチェーンソーふりまわしてますから」
サトー「なんなんじゃ、なんなんじゃ、おんどれぇっ!」
ラーナ「うるさいですよ」
ガスッ
ラーナ「わたしね、とても怒ってます。
中学生らしく、キレてるっていいましょうか。
グロいのって苦手なんですけど、そんなのもう、どうでもいいくらいに」
サトー「なんなんじゃ、こんおなごぁ!」
ガスッ! ゴスッ!
ラーナ「壊したな、ロボくんを壊したなっ!
おなじ目に遭わせてやる!
小指から順番にバラしてやる!
ドライバー突き立てて筋肉繊維ほじくりまわしてかきまわしてやるっ!」
スズキ「よさんかっ! サトーは、サトーは許したらんかいっ!
サトーはワシのためにぃっ!」
ラーナ「誰がどちらか一方っていいましたか」
サトー「社長! 逃げてくだせぇっ!」
ラーナ「誰が逃がすものですか。
いまのうちにアキレス腱をちぎっておきましょうか、おじいさん」
サトー「社長ーっ!」
???「やめなよ」
ズルッ・・・・・・ ズルッ・・・・・・
サトー「ヒッ!」
スズキ「なんじゃ、なんじゃおんどれぇ~っ!」
マーズ「テケテケさんってやつなんじゃーねーのぉー?」バチバチッ!
サトー「ぽ、ポマードポマードポマード!」
マーズ「はー?」
スズキ「サトー、そりゃあ口裂け女じゃサトーっ!」
ラーナ「ロボくん、ロボくんっ!」
マーズ「なーに、あんくれーでおれが壊れると思ってたの。
じょーだんじゃねー、こちとら億年単位で動くよーにできてんだ」
ラーナ「でも、下半身が」
マーズ「コーかフコーか、脚をなくしちまうなぁーキミで慣れてっかんねー」
サトー「ぼいぼいか、おんし」
マーズ「よー、あんたらさー、おれらをコロしたってムダだよ。
おれたちがココに来たなぁーアイサツみてーなもんで、
もー保険会社に話しちゃってるもん。
じき、ちゃんとした調査員が動きだすよ。
カラクリさえわかってりゃー、あんな雑な保険金詐欺、発覚すんなぁー時間の問題だよぉー」
スズキ「そんな」
サトー「ワレぇ、シゴウしたるかっ、ワレぇっ!」
マーズ「ねー、さっきから思ってたんだけど、それどこのコトバなの」
サトー「おどれらに、おどれらにこんなことする権利がありよるんかっ!」
マーズ「ボーリングの下敷きにされたオンナのひとも、おんなしこと考えてるだろーよ」
サトー「社長はな、社長はなぁっ、頑張っとったんじゃあ!
この景気で会社苦しいのに、ひとりもリストラせんと、
一生懸命走り回って、一生懸命頭下げて、毎日毎日金策しとったんじゃあ!」
マーズ「あー、そー。そーゆー経営者、おれぁー好きだよ。
だからザンネンだよ。
あんたらは、保険金詐欺なんかする前に、おれンとこに来るべきだったんだ。
したら、ゴキゲンなアキナイができたのによ」
サトー「ガキが、一人前いうじゃねえわっ!」
マーズ「でもさー、詐欺はいけねーよ詐欺は。
おれのおやじがゆってたよ。
アキナイと子作りは法律守ってやったほーがワリがいーし気持ちもいーってよ。
おいおい、おやじは子作りなんざしたことあんのかよーって笑うとこなんだけどさー、
ひゃひゃひゃひゃっ!」バチバチッ
ラーナ「ロボくん、あんま喋らないでください、頭から火花散ってます」
スズキ「サトーが、サトーがなにしよるかは知っとった。
でも、ワシも、親父から継いだこの会社、ワシの代で潰しとぉなかったけえ」
マーズ「ちぇっ、オヤからもらうもんが、そんなにダイジかよ。
おれぁー、おやじのノレンなんか欲しかねーよ。
そーゆーなぁー、ちゃんと実の子こしらえてソーゾクさせりゃーいーんだ」
スズキ「うぅっ、済まんのぉ、済まんのぉ、サトー」
サトー「社長、やめてつかぁさい」
マーズ「書類、書きなよ」
スズキ「は?」
マーズ「委任状だよ。どーせこの会社はおしまいじゃねーの。
おれが倒産処理しといてやるっつってんの。
きれーに片付けといてやっから、アンシンしてオツトメしてきな」
スズキ「倒産、か」
マーズ「ホトケゴコロ出したなんて思うんじゃねーよ。
おれぁーロボット三原則に縛られてんだ。
第1条『ロボットは人間に危害を加えてはならない。
また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない』
こんな、いまどきどこにでもある倒産話でクビツリでも出りゃー、
おれぁーアシモフ先生に叱られっからね」
スズキ「すまねえ、すまねえっ・・・・・・!」
マーズ「いらねーや、ハンザイシャのお礼なんざー」
マーズ「でも、わっかんねーなー。
あんたら、どーしてカンジンの物証をこのコんちの前に放置なんかしたのさ」
サトー「物証?」
マーズ「タナカさんのクルマだよ」
サトー「そがいなことがあるかい。
あのクルマは、トーキョー湾に沈めたはずじゃあ」
マーズ「はぇ?」
ラーナ「それは、どういう」
サアァァァァァァァァー
ラーナ「あれ、いつの間にかサラサラ黒髪ロングがなくなっています」
マーズ「そーなの」
ラーナ「そーなのってロボくん、まさか」
マーズ「あー、眼球ユニットが破裂しちまってね、見えてねーの。
事務所に戻りゃーレーゾーコん中にスペアが入ってっと思うけど」
ラーナ「ダメじゃないですか、そういうことは早くいわないと。よいしょ」
マーズ「ちょ、ちょ、なにすんの」
ラーナ「運ぶんですよ」
マーズ「よしなよっ、おれぁ重いよ!」
ラーナ「上半身だけなら、それほどでもありません。
わたし、見かけより力持ちなんですよ」
マーズ「あのねー、わかってんの?
おれ、見えてねーんだよ、どこさわるかわかんねーよ!」
ラーナ「べつにいいですよ。どうせ男の子みたいな身体つきだし」
マーズ「聞き分けのねーことゆわねーでよ」
ラーナ「なんですかロボくん、まさか
OG町まで這ってくつもりだったんですか」
マーズ「おー、やったろーじゃねーの。
ひとりで大気圏突入してガンジス川まで行くロボだよ、おれぁー」
ラーナ「わたしのほうがだいぶお姉さんですよ、たまには子供らしくなさい」
マーズ「キミだって、クールなフリしてだいぶコドモっぽいよ!」
ラーナ「むか」
マーズ「なにしてんの」
ラーナ「当ててるんです」
マーズ「当たってねーよ! うっすくスライスした食パンみてーだよ!」
ラーナ「むかむか」
最終更新:2009年10月17日 14:42