スパイダーマン(東映版)/ Spaida-man
放映: 1978年5月17日~1979年3月14日
放映系列: 東京12チャンネル(現テレビ東京)
放映時間: 毎週水曜19:30-20:00 (JST)
話数: 全41話
概要
東映と
マーベルの協業作第一弾。
日本語を意識した"Spaida-man""Spaidaman"という表記がされることがある。
マーベルの看板キャラクターである
スパイダーマンを、仮面ライダーに代表される東映特撮でつくったもの。
スパイダーマンをアレンジし、さらにヒーローアクションに巨大ロボという要素を加えて、「ヒーローが巨大ロボに乗って最終決戦をする」というフォーマットを確立した。
原作とはかなり異なったストーリーになり、「
マーベルが頭を抱えた」とか「二度と放送できない黒歴史番組」とか言われ、アメコミファンならず特撮ファンの間でも一種のネタになっていた。しかしDVD販売やテレビ放送が行われ、日本でも見ることができるようになった。
マーベルでは、主人公の
山城拓也を別次元(Earrth-51778)のスパイダーマンとして認知しており、Spider-Verse展開では、ついにコミックスに巨大ロボットの
レオパルドン共々登場、
レオパルドンは最終兵器の役割を果たした。
1970年後半は、米国で
マーベルのTV向け実写特撮映画が多くつくられており、日本とほぼ同時期に米国でも
スパイダーマンの実写番組("The Amazing Spider-man"→「ニコラス・ハモンド版」)が放送されている。このため
マーベル側も東映作品を日本限定と考えていた節がある。
企画
当時の状況
1970年代に入ると、
マーベルはコミックス事業がある程度安定したことを受けて、コミックス・キャラクターの多メディア化推進に力を入れ、
スタン・リーはニューヨークから映像の中心地である西海岸へ居を移し、実写映画/TVドラマの制作に注力した。
TVドラマの第一号として”The Amazing Spider-man”を制作、映画「サウンド・オブ・ミュージック」の子役で有名だったニコラス・ハモンドを主役にした(以下、「ニコラス・ハモンド版」と記載)が、
スタン・リーが「スパイダーマンは悪夢」と酷評するような出来だった。しかし、日本ではこれがヒットし、それを聞いた
スタン・リーは日本の総代表として活動していたジーン・ペルクに検討をさせた。
当時、
マーベルは日本市場開拓をいろいろ行っていた。特に総代表(
マーベル・オリエントのCEO)だったジーン・ペルクは、石ノ森章太郎を足がかりに、「フットワークが軽い人」(東映の吉川進 談)と言われるように飛び回っており、東映となんかやろうという関係までもっていった。東映も「うちは出版社じゃないからコミックスは無理だけど、なにかやりたい」と考えていたようである。
また、東映側は、当時の東映の特撮ヒーローもののTVドラマが、ほとんど石ノ森章太郎原案でつくられていることに危機感を抱いており、
マーベルのコミックス・ヒーローを使うことを考えていた。
企画
東映の平山亨と吉川進が別々に企画を進めて、上司の渡邊亮徳で(名前を「りょうとく」と読ませ、それにかけて)「両天秤にかけていいとこ取りをする」ような仕事をしていた。
当時、アニメーションのロボットものが流行っており、特撮が苦戦(例えば、1978年はウルトラマン、仮面ライダー、戦隊の各特撮シリーズが放映されていない)。このため上の方から「ロボットを出せ、あとは何とかする」と指示があった。
また放送年は、「
スターウォーズ」(現在の「エピソード4」)の日本進出の年であり、SF関連では宇宙ものが多かったことから、
スパイダーマン=宇宙人にした可能性もある。
平山の最初の企画案は「超人タケル&
スパイダーマン」という題で、アメコミの中から抜け出たような
スパイダーマンが、宇宙人を追って日本に上陸し、「高神(こうじん)タケル」(実は古代日本から現代にタイムスリップしたヤマトタケル)とバディを組んで戦うというものだった。
次の企画は、「
スパイダーマンのロボット大作戦」と題し、超人タケルをやめ、日本人の科学者である山城拓也が、ガリヤ星人の能力を偶然受け継いで
スパイダーマンになるとした。そしてガリヤ星人の変形ロボット「ガリヤSQ」を登場させた。敵は黒魔術を使う秘密結社「バラ十字団」。
一方で、吉川はすでにつくられていた主題歌(「駆けろ!
スパイダーマン」)などから発案した、1時間番組で刑事物に近いストーリーをつくっていた。
最終的な企画書は、「
スパイダーマンROB(ロボ)」と題し、ロボットの名前が「ガリヤSQ」、敵が「紅十字団」となっている以外は、実作品と同じ。
なお、最終的に、プロデューサーは平山でなく、吉川が担当した。吉川は本作を高年齢層としており、いたずらに子ども向きにしないなど、「心得」を書いている。
作品の概要
オートレーサーの
山城拓也が、練習中
テレパシーをうける。次の瞬間上空に巨大な宇宙戦艦マーベラーが飛来し、地上に落下。これを調査するため拓也の父、山城博士が調査団を率いて現場に向かう。
一方、四百年前にスパイダー星を滅ぼし、地球に飛来していたインベーダーの組織、“鉄十字団”もマーベラーの飛来をキャッチしていた。山城博士がマーベラーを発掘した場合に備えて、女幹部アマゾネスとマシーンベム(暴君竜)に博士暗殺を指示した。
拓也はオートレースに参加するため会場に向かったが、再び
テレパシーをうけ、マーベラーの調査現場に行き、鉄十字団と瀕死の父に出会う。拓也も鉄十字団に襲われ重傷を負い、毒グモの洞窟に落とされる。洞窟の中には瀕死のスパイダー星人ガリアがおり、拓也にスパイダーブレスレットをはめて、そこからエキスを注入、このエキスの力で拓也は九死に一生得るとともに、
スパイダーマンの力を得た。ガリアは故郷スパイダー星の仇を討つために地球にきたが、鉄十字団のわなで洞窟に閉じ込められたことを話し、復讐を拓也に託す。
スパイダーマンとなった拓也は、孤独のヒーローとして、鉄十字団と戦う。
スパイダー星人との出会いによりスーパーパワーを得るということに対しては、
グリーンランタンの
ハル・ジョーダンや
SHAZAM!のビリー・バットソンとの類似を指摘する意見もある。しかし、ライターは「二重の復讐」(ガリアと父親の復讐)というモチーフを考えており、アメコミとの違いもある。
フォーマット
基本的には、第二次特撮ブーム(いわゆる「変身ブーム」)期の東映特撮を踏襲しているが、若干の変更点がある。
1. フィニッシュ技がなく巨大ロボ戦闘により決着
スパイダーマンでは、巨大ロボットを導入したため、戦いの決着を巨大な敵とロボットで行うこととなった。通常、東映特撮ではフィニッシュ技(例えば「ライダーキック」)が用いられ、後のスーパー戦隊のフォーマットではフィニッシュ技で敵を倒してから巨大ロボ戦に移行する。しかし
スパイダーマンでは、フィニッシュ技がなく、ロボット戦に入るという特色がある。これはフィニッシュ技がないためなのか、不明である。
2. 登場時の口上
非巨大ロボ戦で見せ場がないためか、登場時に口上を述べ、振りをつけている。後になるとドラマの内容を反映した長い口上がつくようになる。
3. 薄いスーツと着用シーン
東映特撮の伝統からいえば、本作の
スパイダーマンのスーツは、「戦闘員のスーツ」である。さらに、いわゆる「変身」ではなく、あくまでもスーツを着る(ファスナーを見せて中に入っているということを見せる)という演出になっている。
これは
マーベルがよく主張する「仮面の下には人間がいる」ということに沿ったものか不明。
4. スタント
通常、アクションは複数人がスーツを着て行う。しかし本作は、
スパイダーマンの独特なポーズ-腰を股深く落として膝を立てる-を、実質、(14話を除き)古賀正弘しかできなかった(他の人がやると格好がつかなかったため)。このためほぼ全作を古賀が担当したので、通例名前の出ないアクション担当としては例外的に、テロップに「スパイダーアクション」として古賀の名前がでた。
スタントに関しては、ほぼ同時期に制作されたニコラスハモンド版を参考に、「これを越えるものを」したらしい。
なお
スタン・リーは複数人でアクションシーンをやっていると考えているようだった。
5.
レオパルドンと乗用マシン
作品の中核(特に玩具の展開)に位置する巨大ロボ・
レオパルドンだが、ソードビッカーという剣を投げることで決着を着けていた。このため
レオパルドンよりもソードビッカーの方が強いのでは、という声もある。
本作で
レオパルドンの玩具がヒットし、以降スーパー戦隊にロボットの使用が引き継がれる。
また
レオパルドンに乗り込むとき、
スパイダーマンがスーパーカーに乗るが、仮面ライダーからの伝統であるヒーローの乗用マシンという位置づけと考えられる。
また、日本のヒーローの伝統ということでは、
山城拓也もオートレーサーでありバイク乗りである。
スーパーカーに乗る
スパイダーマンはアメコミにも描かれている(おもちゃ用につくられる。大抵、途中でやめる)が、「
スパイダーマンは高校生の時からスリングで移動しているので、(アメリカでは必需品にもかかわらず)自動車を使う必要性を感じていない」という意見もある。
6. その他アイテム
本作が海外で上映されるとき、まず指摘されるのは「でかいブレスレット」である。実際かなり重く、演技の際にも問題になった。
スパイダーバースでも、ちゃんとこのデカイブレスレットを見せて台詞を言わせている。
なお、スーツはブレスレットにたたみ込まれているのが開くというもので、
フラッシュのコスチュームとの類似を指摘する意見もある。
最終更新:2021年03月28日 18:48