未知との遭遇

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未知との遭遇  ◆U1w5FvVRgk



 周りに木々が生い茂っている山林において、スーツを着た長身の男がストレッチをしていた。
 これから人を殺すために体を解しているのだろうか?
 あるいは殺し合いという異常事態に戸惑い、それでも落ち着こうと体を動かしているのか?
 答えはどちらでも無い。男――北岡秀一は体に起こった異常を確かめていたのだ。

 ■  ■  ■

 俺に殺し合いに対する焦りや戸惑いは無かった。
 むしろ平然としていたと言ってもいい。
 最後の一人になるまで戦い、優勝した者は望みを叶えてもらえる。
 これはライダーバトルとほぼ同じものだ。
 似たような事を経験しているから、少なくとも他の参加者よりは耐性ができていると思う。
 それよりも、今は体を自由に動かせる方がよっぽど重要だ。
 最後に屈伸運動をして、ストレッチは終了する。
 やっぱり問題なく動く。
 続いて夜空を見上げてみる。
 住んでいる都心では余り見えない、煌びやかな星々が確認できた。
 うん、問題なく見えるな。本当どうなってるんだ?
 内心に体調への疑問と戸惑いが湧く。
 自由に体を動かす。人間として当たり前のことだ。
 その当たり前が、俺には違っていた。

 最後に覚えている自分の体調は酷いものだ。
 患っていた病はとうとう全身を蝕み、目はまともに見えず、体は歩くのがやっとの状態。
 誰が見ても死は間近であり、その命は正しく風前の灯火だった。
 それが今は体が自由に動き、目が見えて、歩くどころか走ることさえできそうだ。
 死を待つだけだった筈が、気付いたら健康体同然になっていた。驚くなと言う方が無理だよね。

 体調が良好なのは、主催者が何らかの応急処置を施したのだろう。
 まさか完治したなどと思うほど、自分の病を楽観視してはいない。
 まあ、ここまで回復させただけでも驚嘆に値するけどな。
 一応感謝はしてやるけど、余計なことをしてくれたとも思う。
 本来は病が回復したならば、程度の差はあれ喜ぶべきだ。
 だが俺にとって病の回復は、別の問題を発生させる。

(回復したなんて神崎に知れたら、俺をライダーバトルに復帰させるだろうな)

 先日、俺はライダーバトルから脱落したと宣告された。
 しかも、告げられたのは入院している病院のベッドの上だ。
 病人に対する気遣いはまるで無いらしい。
 死ぬか勝ち残ることでしか抜けられない戦いを、生きたまま脱落という異常な扱い。
 大方の理由は察しが付く。
 放っておいても、病で勝手に死ぬと判断されたからだ。
 普通は呆然とするか憤るだろうが、戦うのが虚しくなっていた俺は、脱落をあっさりと受け入れられた。
 後はライダーを引退して、精々余命を楽しく過ごすつもりだった。
 それが今度は殺し合いに放り込まれた。しかも健康体同然で。
 脱落の原因である病が回復したなら、神崎が俺を放っておく理由は無い。
 この殺し合いを生き延びても、ライダーバトルという殺し合いに復帰させられる。
 果たして体調が良くなったのは喜ぶべきなのか、嘆くべきなのか悩んだところで、足元のデイパックに気付いた。
 今まで体のことに気を取られて確認を怠っていたようだ。
 こういう物の確認は真っ先にするべきだろうに。
 気を取り直し、デイパックを開く。
 カードデッキが無いんだから、何か代わりの武器が入ってればいいんだけど。

 スーツのポケットなんかを漁ったが、カードデッキは無かった。
 俺たちの武器はバラバラに配ったと言っていたから、多分他の参加者に支給されたんだろ。
 中を手探りしていると、最初に出てきたのは二つに折られた紙。
 開いて月明かりを頼りに見てみると、人の名前が羅列されていた。
 これは名簿か。
 上から順番に見ていく。 
 アイゼル・ワイマール、蒼嶋駿朔、浅倉威……浅倉だと。
 俺にとって因縁深い名前が記載されていた。
 続けて残りの名前も見ていくと、城戸と東條の名前もある。
 正直この二人はどうでもいい。
 東條は元々何を考えてるか分からない奴だ。
 城戸は殺し合いを止めようとでもしてるんだろ。
 問題は浅倉だ。
 この場所に来る前、俺は浅倉との決着を付けに向かう筈だった。
 警察から射殺命令が下された浅倉と。
 気が付いたらこんな場所に居たわけだが。
 死ぬ前に因縁の相手と決着を付ける。俺らしくない考えだよな。
 それでも、それがあいつを野放しにし続けた、俺の責任の取り方だ。

 当面の目的は決まった。
 ここに浅倉が居るなら決着を付けよう。
 その為にまずはカードデッキを探す。
 それまではカードデッキの代わりになる武器が必要だ。
 再度デイパックを漁りだすと、何か硬い物に当たる。
 それを掴み、引き抜いていく。
 出てきたのは長剣だ。
 明らかにデイパックより長い。
 どうやって入っているのか疑問だが、とにかく武器は手に入った。
 できれば銃が良かったんだけどな。それでも無いよりはマシか。
 長剣は磨かれてはいるが、見た目は骨董品だと分かるぐらい古ぼけている。
 長さに反して、重さは力に自信が無い俺が両手で持てる程度。
 これなら振ることぐらいはできそうだ。
 長身でカッコいい俺が持てば見栄えも良いだろうが、接近戦は得意じゃないからやりたくないな。
 裏を見ると、鞘に紙が貼ってある。

『魔剣デルフリンガー 能力は剣から教えてもらってください』

 馬鹿にしてるのか。
 剣が喋るわけでもないのに、何が教えてもらってくださいだ。
 紙を破り捨て、鞘から剣を引き抜いていく。
 現れたのは――錆びた刃だった。
 おいおい、何が魔剣だよ。ただの鈍らじゃないか。
 少しとはいえぬか喜びまでさせて。
 これは使えないな。
 他に使える物が入ってることに期待しよう。
 こんな物を支給した主催者に怒りを感じながら、剣を鞘に戻そうとする。
 その途中で、長剣の金具がカチカチと鳴り出した。

「おい、兄ちゃん。後方に誰か居るぜ」

 思わず動きを止めてしまう。
 まず、今の声が何であるのかという疑問が浮かぶ。
 いや、実際は分かっていた。
 確かに見てしまったのだから。
 剣の金具が鳴り、声が発せられるところを。
 それでも自身の常識が、見た光景を否定しようとしていた。
 だってありえないだろ。剣が喋るなんて。
 病が頭にまで感染したのかと本気で考えてしまう。
 どちらにしろ確かめないわけにもいかず、できれば幻覚であってほしいと思いながら、長剣に話しかけてみた。

「今喋ったのは……お前か?」
「おう、このデルフリンガー様だ。ところで兄ちゃん誰だ? ここはどこだ? あと相棒を知らねえか?」

 残念ながら幻覚では無かった。
 その上デルフリンガーと名乗る長剣は、軽快に質問まで投げかけてくる。
 でも、俺は質問に答えることが出来ない。
 人は自分が理解できないものを見てしまえば、動けなくなってしまうものだと聞いたことがある。
 まさか自分で体験するとは思わなかったが。
 少なくとも、俺の知識に喋る剣など存在しない。
 これもミラーモンスターの一種かと思ったが、ここが現実世界であることが否定している。
 何よりもデルフリンガーの言葉には聞き逃せない部分があった。
『後方に誰か居る』らしい。
 背後を振り返る。見た限りでは、暗闇が広がっているだけだ。
 戸惑いながらも、再びデルフリンガーに小声で話しかける。

「デルフリンガー、だっけ? 本当に誰か居るのか?」
「ああ、ちょっとだけ見えたんだ。それよりも質問に答えてくれねえかな」

 そんな暇は無いんだよ。
 デルフリンガーの要求を無視し、身近な木の陰に身を隠す。
 相手が殺し合いに乗っていれば無防備に身を晒すのは危険だ。
 変身していればともかく、生身では暗闇に潜んでいる人物は探し難い。
 どれほど前からかは分からないが、こちらを発見して接触を図らないのは警戒しているか、
 襲撃するタイミングを見計らっているかのどちらかだろう。
 乗っていないという可能性もあるが、警戒するに越したことはない。

(持っている武器は多分銃じゃない。持っているなら見付け次第撃ってくるはずだ。
 仮に持っていても使わないのは腕に自信が無いか、使えない状態なのか)
「おーい、兄ちゃん。俺っちの声は聞こえてるよな? こっちは名乗ったんだから兄ちゃんも誰か教えてくれよ」

 自分が遠距離攻撃を主体としている経験から武器を予想したが、相変わらずデルフリンガーが煩かった。
 今は答えてる場合ではなかったが、隠れている奴がどこに居るのかも教えてもらいたい。
 さすがに質問を無視し続けて、こちらばかり質問をしていれば剣とはいえ不機嫌になるだろう。
 視線をデルフリンガーに移し、小声で質問に答えることにする。

「よく聞けよ。俺の名前は北岡秀一。此処は殺し合いの会場で、お前の相棒については何も知らない。
 それとお前が見たのは、多分俺の命を狙ってる奴だ。説明終わり」
「殺し合い? おでれーた、一体どうなってんだよ」
「もう少し静かにしてくれないか。あと、お前が見た奴はどこらへんに居るんだ」
「とりあえず今はやばい状況なんだな。んーと……大体、さっき兄ちゃんが居た場所から後方に四十メイルぐらいだな。
 見えたのは一瞬だから顔は分からねえぞ」

 メイルって何だ? メートルと解釈していいのか?
 約四十メートルと仮定して、対策を考える。
 瞬時に考え付く選択肢は三つ。

 一:イケメンの北岡秀一は華麗に襲撃者を撃退する。
 二:頼りになる吾郎ちゃんが助けに来るまで待つ。
 三:土下座。現実は非情だ。でもこれが大人の処世術。

 いつもなら、迷わず二か三を選ぶ場面だ。
 出来れば二を希望したいけど、根本的な問題として吾郎ちゃんは殺し合いに参加していない。
 来るとしたら城戸だが、来たとしても役に立ちそうにない。
 三も成功確立は低いと即座に切り捨てる。
 土下座で見逃してもらえるほど甘くもない。

「兄ちゃん。ちょっと言いたい事があんだけど」

 デルフリンガーが何か言ってくるが、相手をする暇は無いので無視。
 残る一も、自分の身体能力ではとても無理だ。
 そもそも華麗に撃退する自分が想像できない。
 あんまり泥臭いこともやりたくないしね。

「おーい、兄ちゃーん」

 まだデルフリンガーが話しかけてくるが無視。
 なら得意の口先で交渉に持ち込むか?
 駄目だ、これも相手が話を聞かない奴だったら意味が無い。

「……聞いてないなら勝手に言わせてもらうけどよ」

 後はデイパックの中にある、残りの支給品に賭けるという手もある。
 武器でなくても、この場を切り抜けられるなら何でもよかった。
 というかそれしかないだろ。
 傍らにある筈のデイパックに手を伸ばそうとして、

「あれ、置いてきてよかったのか?」

 デイパックが傍に無いことに気付く。 
 同時にデルフリンガーの声と、隠れてる奴が居るだろう辺りから、物音を聞く。
 慌てて木の陰から僅かに身を出し、先程まで居た場所に目を向ける。
 見えるのは放置された自分のデイパックと、途中の木に隠れながら慎重にデイパックに迫る人影。
 暗闇の中、木々の間から漏れる月明かりを反射する金髪が見えた。
 こちらを見ていない。俺の居場所には気付いていないようだ。
 喋りだした剣、潜む参加者とその対策。
 それらに気を取られ、デイパックを置き忘れてしまったらしい。
 今デイパックを奪われれば、状況が絶対絶命になる。
 この時点で、俺が取るべき選択は決まった。
 逃げの一手だ。
 デルフリンガーを鞘に納め、音を立てないよう慎重に逃走を開始した。
 何と言われようと、軽々しく命を捨てるほど捨て鉢にはなれないんだよ。
 今から走ればデイパックを回収できるかもしれない。
 だがそこまでだ。
 回収した後は男との戦闘が待っている。
 カードデッキがあるならともかく、生身では戦っても勝算は低い。
 それならデイパックを犠牲にしても、その間に逃げる方が良いと判断した。

(まったく、こういうドジは城戸の方が似合うだろうに)

 そういえば、あいつと始めて会ったときもヤクザから一緒に逃げたな。
 いやいや、くだらないことを思い出してる場合じゃない。
 今は山を降りることに集中しよう。
 でも、逃げ切るまで俺の体力が持つのかも心配だな。
 頼むから追ってこないでくれよ。

 ■  ■  ■

(あの男、何を考えている……)

 デイパックに近づきながら、男を発見してからの行動を思い返す。
 最初に発見したのがあの男だ。
 月明かりはあったが、それでも暗い為によくは見えなかった。
 辛うじて見える姿から男だと判断できた。
 直ぐにでも襲撃を仕掛けたかったが、武装の心許なさが躊躇させてしまう。
 銃は没収されて、靴も普通の物に取り替えられていた。
 代わりに支給された武器は鉈。
 接近戦が出来ない訳ではなかったが、不慣れな武器で戦うのはそれだけで不利だ。
 対する相手の武器はまだ分からなかった。
 もしも銃を持っていれば、不用意な行動は危険だ。
 故に男の武器を確かめる必要があった。
 結局男が取り出した武器は剣だ。鉈では不利だな。
 いや、武器が劣っていようと、使い手が素人ならば問題無い。
 だが、男の佇まいは素人かどうかの判断が付きかねた。
 余りにも冷静すぎる。
 普通は素人が殺し合いなどに参加させられれば、少なからず動揺を見せる筈だ。
 遠めに見た男からは、その様子がまったく見えなかった。
 逆に自分のような、荒事に慣れている人間にも見えない。
 もう少し監視する必要が出てきた。
 そして、奴は俺に気付いた。

 監視を続けていると、奴は突然こちらに振り向いた。
 瞬時に身を引いたが、既に気付かれていたのだろう。
 再び身を乗り出した時にはもう姿は無く、デイパックだけが置かれていた。
 明らかに俺の存在を確信している挙動だ。
 何故気付かれたのかは分からない。
 監視をする以上、俺も最新の注意は払っていた。
 奴がこちらを振り向いたのは、先程の一度切り。
 しかも俺は一瞬で姿を隠したうえに、この暗さだ。
 余程夜目が利くのか。
 もしくは気配で俺の存在を察知したならば、奴は相当の手練れだ。
 残されたデイパックは罠だろう。
 迂闊にデイパックを取りに飛び出した俺を仕留めるつもりなのか?
 だとしたら侮りすぎだ。そんな罠に掛かるわけがない。
 それでも、このままにしてはおけない。
 最初からこれほど手間取っていては、優勝などとても無理だ。
 どちらにしろ、鉈では近づかないとどうしようもない。
 意を決して途中の木の陰に隠れながら、デイパックまで迫っていく。

 約三十メートル、二十メートル、十メートル、まだ相手の反応は無い。

(どういうことだ? まさか)

 一気にデイパックまで近づく。
 やはり何も起こらない。そして周囲に人の気配も無い。
 やられた。怒りが湧き上がってくる。
 あの男は最初からデイパックを捨て、逃げるつもりだったのだ。
 そして、見事に自分は罠に嵌められた。
 こんな陳腐な策に引っかかるなど、普段なら考えられない。
 臆したというのか。
 銃もヴォルケインも無いことが、俺を臆させたのか?
 もはやカギ爪の男を殺せずに死ぬこと以外に、恐れるものなど無い俺が。
 奴を思い出すだけで、自分の顔が憎悪に歪むのが分かる。
 こんなところで手間取ってはいられない。
 早急に銃を手に入れ、他の参加者を殺す。
 効率を考えるのならば、女子供を殺して奪うのがいいだろう。

(カギ爪の男を殺し、復讐を成し遂げる為には人の心など捨てよう。そして、俺の前に立ちはだかるなら誰であれ排除する。
 例え女子供であろうとも迷わず殺す。その為に外道と罵られようと、人でなしと呼ばれようが構わない!……俺は何を興奮しているんだ?)

 どうやら、罠に嵌められた怒りは想像以上だったようだ。
 一先ずは落ち着こう。
 そういえばブイツーとかいう子供は、優勝した者の望みを叶えるとも言っていたな。
 死者の蘇生すらできると。
 くだらない。どうせ参加者を惑わすための戯言だ。
 だが死者蘇生は無理だとしても願いが叶うなら。
 カギ爪の男を連れて来させるか。

 これだけの人間を攫ってきたんだ。
 もう一人ぐらい探し出し、攫うぐらいは容易い筈だ。
 そう思えば、少しはやる気が出てくる。
 先程の男は追う必要は無い。
 仮に奴を追って、他の参加者に遭遇してもやっかいだ。
 逃げる男と、鉈を持ち追いかける男。
 もしも正義感を持つ者が見れば、どちらに加勢するかは明らかだ。
 ただでさえ使い慣れない武器で、二人以上は相手にしたくない。
 考えてみれば、今回のことも決して無益ではない。
 もう一つデイパックを入手できたのだから。
 男のデイパックを開く。
 銃があれば良かったが、そう都合良くはいかないようだ。
 食料などの基本品以外は、ガラクタが一つ入っているだけだった。
 四角形のケースには緑色に、牛を模したと思われる金のレリーフがあしらわれている。
 何故か説明書は無い。
 使い道は無さそうだが、このような場では何が役に立つか分からない。
 一応は持っていこう。
 後は行き先だが、参加者が集まるとすれば地図に乗っている施設だろう。
 しかし現在位置が分からない。
 周囲には木々しか見えない。
 地図はあるが、場所が分からなければ意味が無い。
 とりあえずは山頂まで登るか、山を降りるか。
 まずはどちらにすべき決めよう。


【一日目深夜/C−5 北部 山中】
レイ・ラングレン@ガン×ソード】
[装備]鉈@バトルロワイアル
[所持品]支給品一式×2、ゾルダのカードデッキ@仮面ライダー龍騎、不明支給品0〜2(確認済み)
[状態]健康
[思考・行動]
0:山を登るか降りるか決める。
1:優勝を目指す。
2:銃が手に入るまで無理はしない。
3:願いを叶える権利が本当なら、カギ爪の男を連れて来させる。

[備考]
参戦時期は5話終了時。
※デルフリンガーが喋ることに気付いていません。

 ■  ■  ■

 俺は山道をできる限り早足で下り続けていた。
 辺りは暗く、道らしい道も無かったが迷わずに進む。
 先程の男に追いつかれたら、ほぼ間違いなく自分は死ぬ。
 立ち止まるわけにはいかない。
 それでも進み続けると、いい加減息が切れてくる。
 元々体力はあまり無いが、慣れない山道が余計に消耗させていた。
 背中に携えたデルフリンガーも、今では余計な荷物にしかならない。
 だからといって、捨てるわけにもいかないのが難儀だった。
 不本意だけど、これが唯一身を守る武器だから。

(でも、そろそろ限界なんだよね)

 月明かりが照らすのはどこまでも木、木、木、そして道路。

(こんな代わり映えしない景色じゃ精神的にもきつ……道路?)

 立ち止まり、前方を見てみる。
 視線の先では木々が途切れ、舗装された道路が見えた。
 確認するとゆっくりと山道を下り、路上まで歩いていく。
 山林に比べて、月明かりを遮る物の無い道路は明るい。
 背後を振り返るが、誰も追ってくる様子は無い。
 それを確認すると、漸く一息付けた。
 邪魔なデルフリンガーを道路に置き、崩れ落ちるように座り込む。
 呼吸を整える為に深く息を吸い込み、吐き出す。
 汗を吸って、肌に張り付くシャツが気持ち悪い。
 顔に当たる夜風が気持ちいいが、喉が渇いた。
 今は喉を潤す水すら無い。
 ここまでの自分の行動は、どこまでも無様だ。
 致命的となってもおかしくないミスを繰り返した結果、残されたのは喋る長剣が一本。しかも錆びている。

 鈍器代わりには使えるかもしれないが、これで殺し合いを生き抜くなどとても無理だろう。
 話し相手ぐらいは勤まるが、今抜けば騒ぎ立てるのは目に見えている。
 相手をするのは面倒だ。
 それにいつまでも休んでるわけにもいかない。
 疲れの余り座ってしまったが、こんな遮蔽物のない道路で座り込むなど危険だ。
 せめて反対側の山林に移動しよう。
 立ち上がり、もう一度だけ降りてきた山林を見る。
 相変わらず静かだ。誰も追って来る様子はない。
 さて、これからどこに――

「お主、大丈夫か」

 背後から男の声が聞こえた。
 今日は運が悪いな。
 逃げ切れたと思ったら、また別の奴が現れた。
 いや、声を掛けてきたのなら敵意は無いのかも。
 そんな希望を持たないと、振り向くのすら億劫になる。
 それでも振り向いて、我が目を疑った。
 そこに立っていたのは……侍だ。
 ねずみ色の着物に袴、腹には晒しを巻いている。
 履物は草履、俺には劣るが顔は二枚目だ。
 背負っているデイパックが、ある意味シュールかもしれない。
 正に絵に描いたかのような侍だが、何か足りないような違和感もある。
 さすがにこれは予想外だ。
 いつもなら変な格好をした奴で片付けている。
 今は喋る剣があるなら、侍が居てもおかしくはないような気がしてきた。

「警戒しなくてもいい。拙者は殺し合いなんぞに乗っておらん」

 黙っているのを警戒していると思ったらしい。
 路上まで歩きながら、侍はこちらに背負っていたデイパックを放った。
 おいおい、無防備すぎないか。
 俺が銃でも隠し持ってたらどうするのよ。
 それでも対処できる自信でもあるのか、あるいは城戸のようなお人好しの馬鹿か。
 分からない、目の前の存在は得体が知れない。
 まるで浅倉と対峙してるようだ。
 とにかく話しかけてみるか。

「お前、何なんだよ」
「申し遅れた。拙者、石川五ェ門と申す」

 石川五ェ門。確か名簿には浅倉の下に名前があったな。
 偽名の可能性もあるが、態々偽名に使う名前じゃない。
 ほぼ間違いなく本名だろう。
 そもそも聞いたのは名前ではないのだが、名乗られたからには名乗り返すべきだよね。

「弁護士の北岡秀一だ」
「北岡殿か。それでどうしたのだ? 余程の事がなければ、そのような形にはなるまい」

 確かに俺の格好は酷いものだ。
 顔は汗だく、スーツはよれよれ、靴は泥だらけ。
 何かあったと言ってるようなものだ。
 どうしよう。こいつに話すべきかな。
 一応は友好的だけど、何を考えてるか分からない。
 まずは質問でもしてみるか。

「聞きたいことがある。お前は殺し合いに乗っていないらしいけど、どうして俺に乗っているかは聞かないんだ?」
「では改めて聞こう。北岡殿は乗っているのか?」

 そういうことは最初に聞くべきだろ。
 しかし殺し合いに乗るのか、乗らないのか。
 俺も即答はできない。
 思えばそれすら決めていなかった。
 今日の俺はどこまでも抜けているらしい。
 さて、どうするかな。
 主催者が俺を治療したのは、積極的に参加者を殺すと判断したからだろう。
 俺の性格や、ライダーバトルでの戦いを知っていれば十分に納得できる。
 城戸を刑務所送りにしようとしたり、他のライダーが戦ってるところに砲撃したりと色々やったからな。
 治療してくれたのは感謝してやってもいい。
 でも、俺は――

「俺は、戦わないよ。優勝すれば願いを叶えるとも言っていたが、叶える保障も興味も無いしな」

 それに戦いが虚しくなったからライダーを引退したのに、もう一度戦うなんて冗談じゃないからね。
 できれば浅倉との戦いが最後にしたいな。
 俺の答えに満足したのか、五ェ門は大きく頷く。

「そうか。もし乗っているようならば、ここで北岡殿を打ち倒さねばならなかった」
「倒すって、素手でできるのか」

 俺は疑わしげに五ェ門を見る。
 五ェ門は一瞬だけムッとした表情になるが、続いて不敵な笑みを浮かべる。

「できる。例えばこのようにな」

 五ェ門が一歩進んだと思ったら、俺の首筋に目掛けて手刀を放っていた。
 所謂寸止めだろう。手刀は俺の首筋に宛がわれていた。
 遅れて血の気が引いていく。
 当たっていたら首の骨が折れていたかもしれない。

「こう見えて示刀流空手免許皆伝なのでな。素手でもなんとかする自信はある」
「驚かすにも限度があるだろ。肝が冷えたよ」
「いやあ、すまん。調子に乗りすぎた」

 五ェ門は素直に頭を下げる。
 だが、目線が僅かに横を向いているのを俺は見逃さなかった。
 視線の先にはデルフリンガーが置かれている。
 何で剣なんかを物欲しそうに見てるんだ?
 ああ、そうか。最初に感じた違和感。
 こいつに足りない物は刀だ。
 侍が刀を持っていないなんて様にならないからな。
 デルフリンガーは剣だが、刀も剣も似たような物なんだろう。
 だけどあれは錆びた剣なんだよね。
 俺としては代わりの武器となら交換したい。
 でも、錆びた剣では交換すら成立しないな。
 もし黙って交換したとしても、直ぐにバレてしまう。
 折角出会えた友好的な参加者だ。
 実力もある。できるだけ争いは避けたい。
 ならどうする。
 考えろ。要らない剣を材料に代わりの武器を手に入れ、五ェ門と仲違いしない方法を。

 ■  ■  ■

 五ェ門は一刻も早く刀、もしくは剣が欲しかった。
 できれば斬鉄剣を使いたいが、見つかるまでずっと素手という訳にはいかない。
 北岡に言ったように素手でも戦う自信はあるが、銃が相手では不利だ。
 流石の五ェ門でも素手で銃弾は捌けないのだから。

「五ェ門。提案があるんだけど」

 話しかけられ、五ェ門は目線を北岡に移す。
 先程出合ったばかりの青年の風体を見て、五ェ門は北岡が何者かに襲われたと思っていた。
 逆に襲いかかり、返り討ちに遭っただけかもしれない。
 故に事情を聞き、場合によっては助けるために北岡に話しかけたのだ。
 もちろん、乗っているなら容赦なく叩きのめすつもりで。

「何だ」
「あれなんだけどね」

 道路に置かれている長剣を指し示す。
 途端に五ェ門の目が鋭くなる。
 それを北岡は見逃さない。

「欲しいの? あれ」
「い、いや、そのようなことは無い」

 どもり、咳払いまでしている。
 分かりやすい五ェ門の反応に、北岡は苦笑する。
 弁護士として様々な人間を見てきた北岡だが、こうもあからさまな者は居なかった。
 これでは欲しいですと言っているようなものだ。

「なんなら条件次第で渡してもいいんだけど」
「誠か!」
「ああ。俺には必要ないしね」

 願ってもない申し出だ。
 五ェ門の声に喜びが混ざる。
 対する北岡は薄ら笑いを浮かべ、言葉を紡いでいく。

「でも、条件を全て呑んでくれないと交換できない。それでもいいか」
「構わん。言ってくれ」

 五ェ門の了承を得て、北岡は条件を述べていく。

「条件は二つ。一つ目はこの剣を、そっちの支給品一つと交換してくれ」

 一つ目は比較的真っ当な要求だ。
 不必要な支給品同士を交換するのは理に叶っている。
 剣や刀で無いなら、五ェ門にはデイパックに入っている支給品は必要無い。
 五ェ門は頷き、承諾する。

「二つ目は?」
「俺としてはこっちが本題だ。お前に俺と契約してほしい」

 五ェ門が怪訝な表情となる。
 いきなり契約してほしいなどと言われれば当然だ。
 それを予想通りと言いたげに、北岡は言葉を続けていく。

「はっきりと言わせてもらえれば、俺はまだお前を信用していない」

 侮辱とも取れる発言を聞いても、五ェ門は僅かに顔を顰めるだけで済ませた。
 北岡の言い分はもっともだからだ。
 このような場で、初対面の人間を簡単に信用できないのは当たり前だ。
 自分の言葉に冷静な反応をする五ェ門に、北岡は感心した様子を見せる。

「意外だ。怒らないんだな」
「初対面の相手を易々とは信用できまい。それで契約とはどういう意味だ」
「言葉通りさ。お前には俺の護衛になってほしい。その代わりに俺は交渉人として、お前の役に立つ。これが契約内容だ」
「……お主、弁護士ではなかったか?」

 五ェ門の疑問に、北岡は頷いて肯定する。
 言うまでもなく北岡は弁護士だ。
 交渉人の経験など皆無である。
 だからこそ五ェ門には理解できない。

「ならば交渉人として役に立つとはどういうことだ。そっちの方は素人であろう」
「確かにね。でも弁護であれ交渉であれ、俺は弁舌での勝負なら負けないよ」

 自信満々に宣言された。
 自分が負けるとは、微塵も思っていないのが見て取れる。
 思い上がった態度だが、どこか説得力があった。
 だが今度は五ェ門も簡単に承諾しない。
 北岡の真意が見抜けないからだ。

「お主と契約して、拙者に何の得がある」
「その前に確認しておく。五ェ門、お前は弱い奴を見つけたらどうする?
 例えば最初に首を吹き飛ばされた女の子のような、子供を見つけたら」
「当然保護する」

 即答で断言された。
 あのような蛮行は断じて許さず、何も出来なかった自分に怒りすら感じるのが五ェ門という男だ。
 対して北岡は淡々と応じる。
 五ェ門の答えは予想通りという様子だ。

「だろうね。でも、お前が言ったように初対面の相手を信用するか? 怯えてたりしたら尚更に」
「む」

 思わず五ェ門は押し黙る。
 確かにこの場には殺し合いという状況に戸惑い、怯える者も数多く居るだろう。
 お世辞にも饒舌とは言えない五ェ門では、そのような者に上手く対処できるかは怪しい。

「ひょっとしたら騙そうとする奴も居るかもよ。
 特にか弱い女性とかね」
「ぐっ」

 またもや五ェ門は押し黙る。
 五ェ門が女性に騙されたことは、それこそ数え切れないほどにあった。
 仲間に呆れられ、何度経験しても騙されてしまうのだから、もはやお家芸とも言えた。

「だからさ。そういう類の相手を俺が引き受けようと言ってんの。怯える相手を説き伏せて、騙そうとする奴は見抜く。
 その代わり、お前は俺を護衛する。どうかな」

 五ェ門は考える。
 これは簡単に決めていいことではない。
 確かに自分は口下手で、女性には滅法弱い。
 北岡を護衛するのも、剣が手に入る代わりなら安いものだ。
 だが、契約など簡単にしていいものなのかという迷いがあった。
 そんな五ェ門に、北岡は情に訴える言葉を掛ける。

「俺だって、こんなこと言いたくないんだ。でも俺は臆病だから、お前を信じる為にはこう言うしかないんだ」

 北岡を知っている者が見れば、呆れてしまうようなセリフだ。
 それでも俯き口元に手を当て、微かな嗚咽を混ぜながら弱音を吐く様子は真に迫っていた。
 以前に浅倉を騙す為に、土下座して情けなく命声までした演技力を遺憾無く発揮している。
 そんな北岡を見て、五ェ門は申し訳無さそうな顔になる。
 これでは迷っている自分が悪いのではないかと考えてしまう。
 北岡は捻くれているだけで、心根は善人ではないかとも考える。
 情に弱いのも、女性と並ぶ五ェ門の弱点だった。

「お主が捻くれているのは分かった。その条件を呑もう」
「言い方が気に入らないけど、ありがとう」

 五ェ門の承諾を確認して、北岡は手を差し出す。
 契約成立を確かめる握手だ。
 五ェ門も北岡の手を力強く握る。
 こうして侍と弁護士は、護衛と交渉人としての契約を結んだ。

「念の為に聞くけど、後で契約を反故になんてしないよな。いきなり殴りかかったりとか」
「そんなことはしない」
「本当に? 約束できるか」
「くどい。武士に二言は無い」

 その答えで北岡も笑顔を浮かべると、手を離してデイパックを手にする。

「それじゃあ交換する支給品を選ばせてもらうよ」
「構わん。だが、あまり良い物は入っておらんぞ」

 五ェ門に構わず、北岡はデイパックを開いて中を探る。
 支給品を確かめていき、付属の説明書を読んでいく。
 数分が経ち、北岡に選ばれたのは白い靴だ。
 説明書には『レイの靴』と書かれていた。
 一見するとただの靴だが、両踵部に銃が仕込まれた隠し武器らしい。
 泥だらけの靴を脱ぎ、北岡は白い靴に履き替えていく。
 それを確かめると、五ェ門も路上に置かれたデルフリンガーを手に取る。
 そして鞘から引き抜き、

「北岡殿……これはどういうことだ?」

 錆びついた刃を確認した瞬間に、北岡を睨みつけた。
 声は冷たく、目は細まり、瞳には怒りと疑念が宿っている。
 そんな顔を見ても、靴を履き替えた北岡はしたり顔を崩さない。

「だから言ったろ。騙そうとする奴も居るかもって」
「貴様、謀ったな!」

 全く反省が見えない北岡の態度に、五ェ門の怒りが爆発しようとしていた。
 元々が短期な性分なので、怒るとかなり怖い。
 だが、今すぐ襲ってきそうな五ェ門に北岡は冷静に対処する。

「落ち着けよ。さっき殴りかかったりしないと言ったよな。武士に二言は無いんだろ」
「ぐ、ぬぬぬ」

 悔しそうに五ェ門は唸り声を上げる。
 北岡との契約など破棄したいが、破棄すれば武士として交わした約定を破ることになる。
 それは五ェ門の誇りが許さなかった。

「そう怒るな。協力したいのは本当だし、物を確認しなかったお前にも問題はあるぞ」
「納得できるか!」

 怒りが治まらない様子の五ェ門を見て、北岡は溜め息を吐く。
 こうなることは予想できていた。
 いくら考えても錆びた剣を材料に武器を手に入れて、尚且つ五ェ門と仲違いしない方法は重い浮かばなかったのだ。
 だからこうなった時の対策も考えてある。
 怒っている者が居るなら、感情の矛先を別の物に向けさせればいいのだ。

「言い忘れてたけど……その剣は喋るぞ」
「おでれーた! この兄ちゃん、そこのでかい兄ちゃんや相棒とは比べもんになんねえぐらいの達人じゃねえか!」
「なっ!?」

 五ェ門の目が見開かれる。
 北岡と同様、ルパン一味として世界中を見てきた五ェ門でも、喋る剣は見たことが無いのだ。
 人は自分が理解できないものを見てしまえば、動けなくなってしまう。
 そのおかげで、北岡は五ェ門の怒りを一時的に逃れられた。
 あくまで一時的だが。



【一日目深夜/C−5 道路】

【石川五ェ門@ルパン三世(アニメ)】
[装備]デルフリンガー(錆び)@ゼロの使い魔
[支給品]支給品一式、不明支給品0〜2(確認済み、剣・刀では無い)
[状態]健康、北岡に僅かな怒り、デルフリンガーに戸惑い
[思考・行動]
0:何だこれは!?
1:早急に斬鉄剣、もしくは代わりの刀か剣を探す。
2:ルパン、次元、銭形を探す。
3:不本意だが戦闘は自分、交渉は北岡に任せる。


[備考]
※デルフリンガーは原作一巻終了時から参戦。


【北岡秀一@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]レイの靴@ガンソード
[所持品]無し
[状態]健康? 、疲労(小)
[思考・行動]
0:そいつは頼んだ。
1:ゾルダのカードデッキを探す。
2:1を達成後は浅倉を探して決着を付ける。
3:戦闘は五ェ門、交渉は自分が担当する。
4:浅倉、東條、金髪の男(レイ)を警戒。
5:城戸は一応探す。


[備考]
※参戦時期は死亡直前。
※北岡の病がどうなっているかは不明です。
※カードデッキが最初から支給されていることに気付いていません。


 三者三様の幸運と不運があった。

 レイ・ラングレンはまだ訪れた幸運に気付かない。
 自らが望む以上の銃が、既に手元にあることに。
 彼が手にしたのはゾルダのカードデッキ。
 遠距離攻撃に優れた仮面ライダーに変身できる道具だ。
 不運は、カードデッキに説明書が付属していないことか。
 何故支給品に付き物の説明書が無いのか?
 説明書とは、使用法の分からない者の為にある物だ。
 ならばカードデッキの本来の持ち主である、四人のライダーには説明書など不要と判断されたのだ。
 そして、慎重になり過ぎて北岡を逃がしてしまったのも不運と言えた。

 石川五ェ門の幸運は、認めたくないだろうが同行者を得れたことだ。
 もしも最初に出合ったのが女性であり、殺し合いに乗っていたなら、彼はあっさりと騙され死んでいた可能性があった。
 不運は、最初に出会ったのが北岡秀一だったことだろう。
 彼が始めに居た場所はC−5の南部。
 もし北上せずに西に向かえば、カズマ岩崎みなみと真っ当な人間に出会えたのに。

 北岡秀一の幸運は、レイから逃れ、五ェ門と出会えたことだ。
 五ェ門と同じく、北岡も一人ではあっさりと死んでいた可能性が高かった。
 カードデッキが無ければ、北岡はただの弁護士なのだから。
 そして不運というより過ちは、人を信じ切れなかったことだ。
 五ェ門ならば、契約などという回りくどい方法を取らずに、素直に協力を申し出れば受け入れてくれただろう。
 北岡も城戸真司のような真正のお人好しが居るのは知っている。
 だが打算的に生きてきた北岡には、殺し合いの場でもそのような者が居るとは信じ切れなかった。
 それが最大の不運かもしれない。

 これらの幸運あるいは不運が、三者にどのような影響をもたらすかはまだ誰にも分からない。

【支給品紹介】

【デルフリンガー】
 150cmほどの長剣。
 主な能力に魔法の吸収、触れた者の力量を測るなどがある。
 本来は錆びを自由に落とせるのだが、一巻終了時にはまだ思い出していない。

【レイの靴】
 レイ・ラングレンが履いている靴。
 右踵部に小型の銃、左踵部にはヴォルケインを呼び出す為の弾丸が仕込まれている。
 このロワでは使用してもヴォルケインは呼び出せない。


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GAME START 北岡秀一 049:I'll be Back
石川五ェ門
レイ・ラングレン 043:Be Cool!



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