”The third man” in the game to try again

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”The third man” in the game to try again  ◆KKid85tGwY



舗装された陸上競技用のグラウンドを、万を超える人数は収容出来る観客席で囲まれた形の運動競技場。
しかしその巨大施設に今は競技する選手も、観客も、施設を管理する人間さえ存在しない。
居るのは只1人。
襟の立った黒い学生服を着込んだ、10代半ばと思しき人物。
香川県城岩町立城岩中学校バスケットボール部で、天才ガードとまで言われる
第三の男(ザ・サード・マン)の異名も持つ男、三村信史がグラウンドの中央に仰向けの状態のままで眼を覚ました。
広く開かれた夜天の景色は非現実的に感じるほど雄大で、遠慮無く吹き抜ける風も心地良い。
しばらくその心地良さに浸り動かない。
どうにも現実感が沸かず、頭が上手く働かないのだ。
それは風景の非現実感に助長されてはいるが、そもそもの原因は別に有る。

(……オーケイ叔父さん、分かってる。今はクールになるべき時だ)
今は亡き三村にバスケやコンピューターの扱いやあらゆる事を教えた尊敬する叔父に話しかけ、思考を取り戻し始める。
三村は現状の把握が覚束無い為、そこに到るまでの経緯を脳内で辿り始めた。
それはV.V.が殺し合いの開始を宣告される以前。
今とは別の殺し合いに参加していた時の事。
大東亜共和国戦闘実験第六十八番プログラム。
参加者が最後の1名になるまで終わらない殺し合い。
三村の所属する三年B組は、それに参加させられていた。
その中で三村は殺し合いに勝ち残るのではなく、それを管理運営する人間を打倒して
殺し合いそのものを壊し、脱出する事を目的に動く。
小学校時代からの親友である瀬戸豊の協力もあって、それは成功寸前まで漕ぎ着けていた。
しかし桐山和雄の急襲を受け、瀬戸豊は死亡し
そして三村自身も、桐山によるイングラムM10の銃撃を全身に受け――――死んだ筈だった。

(そうさ、俺はあの時確かに死んだ。あれでまだ生きていられたら、この世は死に損ないだらけになっちまう。
 ……………………ならここに居る俺は誰だ?)
これは人が死ぬ時に見ると言う、白昼夢か?
それともここは地獄だとでも言うのか?
(死んでからも『殺し合い』とは、神様の計らいだとしたら洒落がきつ過ぎやしませんかね…………待てよ)
回想を進める。
銃撃を受け意識が途切れた次の記憶は、例のV.V.に拠る殺し合いの説明だ。
そして次に気付いた時には、1人この競技場に居る。
傍らにはデイパックも置いてあった。
これはつまり――既に殺し合いが、始まっていると言う事。

それに気付いてからの、三村の動きは早かった。
胴体のばねを使って、素早く起き上がる。
そして起き上がり様にデイパックを掴み取り、観客席下の屋内廊下に駆け込む。
一先ず周囲からの射線が通らない屋内に逃げ込めた。
ここが夢か幻か冥土かはともかく、三村におとなしく殺されてやるつもりは無い。

廊下に座り込みデイパックの中の荷物を改めながら、思考を巡らせる。
殺し合いに乗るか否か以前に、自分の身に何が起こっているのか?
まずこれが夢想や仮想現実等の、とにかく実際に起こっている現象ではないと言う可能性が思い浮かぶ。
そして直ぐに思考の埒外へ追いやる。
可能性を否定するのではなく、その検討を放棄したのだ。
そんな可能性に関しては、究極的には確証を以って肯定も否定も出来ないし
そもそも現実であろうと無かろうと、自分の行動には何の変化も要さ無いからだ。
『どうしようもないことを気にするな。できることをやるんだ、信史』
それが叔父の教えでも有る。

では現実だとして、何故死んだ筈の自分がこうして生きて動いているのか?
何故全身に9mパラベラム弾を受けたというのに、傷1つ残ってはいないのか?
医学的な手術で蘇生? 記憶や人格や身体的な特徴を完璧にコピーした? それとも全く別の手段で蘇ったのか?
どれも――少なくとも三村が知る限り――大東亜共和国、いや世界の何処にも存在しない技術である。
ならば考え得るのは、人間を蘇生するという三村の常識を遥かに逸脱した超常的な手段を
V.V.――あるいは彼は傀儡かも知れないがそのバックに居る存在――が持っていて、それで三村を蘇らせた。
状況から推しても、蘇生は主催者の手によるものと考えるべきだ。

三村の背筋に冷たい官職が走る。
もしそうなら主催者は魔法か、それに比肩し得る科学力を持っている事になる。
全く得体の知れない、超常的な存在。
そんな奴に、爆弾入りの首輪を嵌められ自分の命は握られているのだ。
この首輪にもどんな技術が、あるいは三村の知る様な科学技術以外の方法で造られているかも知れない。
三村はかつて他にどうしょうもない状況にまで追い詰められていたとは言え、大東亜共和国への反抗を決意した。
それは所詮相手も同じ人間であり、自分の知る技術水準を持っていると知っていたから出来た決意だ。
例え強大な政府が相手でも、しかし――どんなに少なくとも――勝算は皆無ではない。
しかし今度の場合は話が違う。
そもそも反抗そのものが可能かどうかも分からない。


(……………………そう言えば最初に集められた会場で、V.V.を知っている奴が居たな。ルルーシュとか言った……)
ルルーシュと名乗っていた黒髪に痩身の少年、そして彼をルルーシュと呼び掛けた緑色の髪の女。
あの場での態度や言動から見て、その2人はV.V.の情報を持っているのは間違い無い。
(あの2人も首輪をしていた。つまりこのクソゲームの参加者って訳だ。
 なら、上手くすれば接触して情報を聞き出す事も出来るな)
主催者が全くの未知ならば、対抗する手段は無いかもしれない。
しかし主催者が如何なる存在で、如何なる技術を持ち、如何程の戦力を有しているか
それらの情報さえ有れば、対抗手段を得る可能性も出て来る。
何れにせよ主催者に関する概要を把握するまで、最終的な行動目的の決定は保留である。
三村自身は爆弾入りの首輪で縛られるのも、人に言われるがままに殺し合いを演じるのも素直に受け入れられる様な人間ではない。
だからこそ前回のプログラムにも反抗したのだ。
だからと言って闇雲に勝算の無い戦いを始める程、無謀にもなれなかった。
何れにしろ判断材料が、余りにも少な過ぎるのが現状だ。
(……まあしばらくは慎重に、かつ迅速に行ってみますか)
少しずつでも冷静に着実に思考を、準備を進めていく。
困難な物事を成し遂げるには、三村はそれが1番の近道であると知っている。
ともすれば人からは、飄々としてつかみ所が無いと思われる三村だが
彼の真骨頂はその計画性と、堅実さにこそ有った。

荷物を粗方確認し終え、最後になった名簿に眼を通す。
名簿に有る知り合いの名前は稲田瑞穂織田敏憲、桐山和雄、千草貴子の4人。
全て三村のクラスメイトである。
主催者はどれだけ途方も無い存在なんだと、改めて戦慄する。
全員が最後の1人以外は抜ける事の出来ない、プログラムに参加していた筈だ。
その参加者が4人も、言わば引き抜かれている。
三村がここに居る時点で分かっていた事だが、改めて今回の主催者が
強大な大東亜共和国を出し抜くほどの、『力』の持ち主だと痛感した。
この内、千草貴子は前のプログラムで死亡者として名前が放送されていたが
死人である筈の自分が生きているのだ。彼女も生きて参加している考えるべきだろう。
――――そして桐山和雄。
かつて瀬戸豊と三村を殺した男。
思い出しただけで心中に黒い物がよぎるが、直ぐにクールになれと自分を戒める。
(……ま、クールを信条とする俺としては、敵討ちだなんて非生産的な行為をするつもりは無いけど
 とても桐山を信用して、仲良くやろうなんて気にはなれないね…………)
今回のプログラムにも乗るかまでは定かでないが、警戒してもし過ぎるという事は無い人物だ。
(そうは言っても他のクラスメイトも、手放しに信用出来そうな奴ってのは居ないな……
 稲田瑞穂は電波入ってると言うか何と言うか……正直、余り話が合いそうに無い。
 織田敏憲はおとなしい奴だが、どうも裏が有りそうな感じだ。余り親しくないから、確かな事は言えないが。
 千草貴子は個人的に好みなんで、これを機会に仲良くなるってのも悪い話じゃ無いが
 ……しかし俺、うちのクラスの女の子にはウケがよくないらしいからな…………)
結局クラスメイトは、ほとんど当てに出来ないと判断した。
せめて瀬戸豊か、七原秋也か、杉村弘樹が居ればと思う。
(そう言えばシューヤや杉村は、今どうしてるんだ? まだプログラムをやってるのか?
 …………って、人の心配してる場合じゃないな。どうかしてるぜ)
そして他にもう1つ、気になる名前が有る。
(『ルルーシュ・ランペルージ』か。最初の会場で名乗った名前は、確か『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア』だったが無関係って事は無さそうだな。
 恐らくは同一人物。……ま、実際の所は会って確かめてみないと分からないが、今の所V.V.に繋がる数少ない手掛かり。会ってみる価値は有るかな)
最初の会場に居た『ルルーシュ』か緑色の髪の女に接触し、V.V.の情報を聞き出す。
当座の物だが、行動指針は定まった。

荷物を纏めて出発する。
とりあえずは三村から積極的に、他の参加者に接触していき情報を集めていく事になる。
それで首尾良く脱出の糸口を掴めたら良い。
しかし、と三村は考える。
ここからは些か悲観的に過ぎる発想かも知れない、だがとても無視出来ない考え。
もしこの殺し合いが、絶対に脱出不可能だと結論が出たら?
もし首輪が、絶対に外れない物だと結論が出たら?
もし全く勝算の無い主催者ならば、生き残る為には否が応でも殺し合いに乗るしかなくなる。

『何か願いも叶えてあげるよ』

不意にV.V.の声が、三村の中で再生された。
自分なら何を願う? と、今度は三村自身の声。
主催者は三村を生き返らせた。つまり死者の蘇生も叶えられる。
ならばあの今の三村信史を育て上げたと言っても良い、敬愛する叔父さんを生き返らせる事が可能なのではないか?
あるいは目前で無念の死を遂げた親友の、瀬戸豊を生き返らせる事も可能なのではないか?
(豊、お前は俺のミスの所為で死んじまったんだったな……………………)
瀬戸豊を死なせてしまった。
幾ら悔やんでも悔やみきれない、この先三村がどれ程生き長らえようと忘れられ無いに違いない。
その悔いを無くす力すら、主催者は持っている。

馬鹿な考えだと、首を振る。
そもそも主催者の情報を得なくては、最終的な身の振り方は決められない。
それに主催者が未知の能力を持っているのならば、参加者にも未知の能力を持つ者が居ておかしく無い。
そんな連中から身を守りつつ、主催者の眼を盗んで情報集め。
恐らく前回のプログラム脱出計画以上の綱渡りになるだろう。
とてもそんな先の事に、思い巡らしている余裕は無いのだ。
生き残る。
唯それだけの事がプログラムにおいてどれ程難しいかを、三村は正に身を持って知っている。
そして今回のプログラムにおいて、恐らくそれは――――前回以上の至難となるであろう。

第三の男(ザ・サード・マン)と呼ばれた男が、再び殺戮ゲームに挑む。


【一日目深夜/I-8 競技場】
【三村信史@バトルロワイアル(小説)】
[装備]: 無し
[所持品]:支給品一式、確認済み支給品1~3個、
[状態]:健康
[思考・行動]
1.『ルルーシュ』か緑色の髪の女に接触し、V.V.の情報を聞き出す。
2.今回のプログラムに関する情報を集め、最終的に殺し合いに乗るか乗らないかを決める。


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GAME START 三村信史 058:カッキーン☆ 悪魔の怪人軍団!



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