因果応報―終わりの始まり―(前編) ◆KKid85tGwY
【因果応報】いんが―おうほう
人は良い行いをすれば良い報いがあり、悪い行いをすれば悪い報いがあるということ。
元々は仏教語。行為の善悪に応じて、その報いがあること。
「因」は因縁の意で、原因のこと。「果」は果報の意で、原因によって生じた結果や報いのこと。
人は良い行いをすれば良い報いがあり、悪い行いをすれば悪い報いがあるということ。
元々は仏教語。行為の善悪に応じて、その報いがあること。
「因」は因縁の意で、原因のこと。「果」は果報の意で、原因によって生じた結果や報いのこと。
◇
覚悟が五人を戦いに誘う。
何の覚悟か?
命を賭して戦う覚悟か?
屍を踏み越えて前に進む覚悟か?
自らを正義と断じて悪を討つ覚悟か?
覚悟が五人を戦いに向かわせ、戦いはいずれ結末を迎える。
誰一人予想もしていなかった結末へ向けて――――
何の覚悟か?
命を賭して戦う覚悟か?
屍を踏み越えて前に進む覚悟か?
自らを正義と断じて悪を討つ覚悟か?
覚悟が五人を戦いに向かわせ、戦いはいずれ結末を迎える。
誰一人予想もしていなかった結末へ向けて――――
◇
猥雑なネオン。
薄汚れた路地。
打ち捨てられた廃ビル。
生活する人が無く機能が死んだ市街地は、世紀王の言葉を借りれば“退廃と虚飾に塗れた愚かな街”。
その街の空気を例えるならば、凍り付いていると言う形容が相応しかった。
寒さではない。
ただ対峙する五人の男女、
無双龍ドラグレッダーと契約を交わす仮面ライダー・城戸真司にとっても、
ダン・オブ・サーズデイを操縦するため改造を受けたオリジナル・ヴァンにとっても、
不老不死のコード所有者・C.C.にとっても、
ローザミスティカに拠って命と魂を持つ薔薇乙女・翠星石にとっても、
日本科学技術大学教授・上田次郎にとっても、
その場の空気は刺すような緊張感に満たされていた。
薄汚れた路地。
打ち捨てられた廃ビル。
生活する人が無く機能が死んだ市街地は、世紀王の言葉を借りれば“退廃と虚飾に塗れた愚かな街”。
その街の空気を例えるならば、凍り付いていると言う形容が相応しかった。
寒さではない。
ただ対峙する五人の男女、
無双龍ドラグレッダーと契約を交わす仮面ライダー・城戸真司にとっても、
ダン・オブ・サーズデイを操縦するため改造を受けたオリジナル・ヴァンにとっても、
不老不死のコード所有者・C.C.にとっても、
ローザミスティカに拠って命と魂を持つ薔薇乙女・翠星石にとっても、
日本科学技術大学教授・上田次郎にとっても、
その場の空気は刺すような緊張感に満たされていた。
五人が対峙する相手は只一人。
只一人にして世界と対し、蹂躙せんとする魔王。
ゴルゴムの世紀王・シャドームーン。
命を賭して戦う覚悟を決めても尚、気圧されそうなほどの威圧感を湛えている。
上田などあからさまに腰が引けている。
それでも逃げ出さないのだから、上田なりに意を決していたのだろう。
只一人にして世界と対し、蹂躙せんとする魔王。
ゴルゴムの世紀王・シャドームーン。
命を賭して戦う覚悟を決めても尚、気圧されそうなほどの威圧感を湛えている。
上田などあからさまに腰が引けている。
それでも逃げ出さないのだから、上田なりに意を決していたのだろう。
「っしゃー!!!」
気勢を上げてシャドームーンへ最初に掛かって行ったのは、真司が変身した仮面ライダー龍騎。
何の作為も無く、真っ向から掛かって行く。
しかし全く考えなしと言うわけではない。
龍騎が臆することなく立ち向かっていくことで、仲間の士気を上げるためだ。
人の域を超えた仮面ライダーの身体能力を十全に活かし、シャドームーンへ向けて構えを取ったまま間合いを詰める。
その淀み無さは龍騎の潜り抜けた歴戦を容易に想起させた。
何の作為も無く、真っ向から掛かって行く。
しかし全く考えなしと言うわけではない。
龍騎が臆することなく立ち向かっていくことで、仲間の士気を上げるためだ。
人の域を超えた仮面ライダーの身体能力を十全に活かし、シャドームーンへ向けて構えを取ったまま間合いを詰める。
その淀み無さは龍騎の潜り抜けた歴戦を容易に想起させた。
「チェェェェス!!!」
続けてヴァンも掛かって行く。
やはり何の作為も無く、真っ向から。
元々ヴァンは小賢しく知恵を働かせる人間ではない。
ゆえに戦うと決めれば、如何なる相手であれ臆することなく立ち向かって行く。
人のそれとは思えぬオリジナルの身体能力を十全に活かし、シャドームーンへ向けて構えを取ったまま間合いを詰める。
その淀み無さはヴァンの潜り抜けた血風を容易に想起させた。
やはり何の作為も無く、真っ向から。
元々ヴァンは小賢しく知恵を働かせる人間ではない。
ゆえに戦うと決めれば、如何なる相手であれ臆することなく立ち向かって行く。
人のそれとは思えぬオリジナルの身体能力を十全に活かし、シャドームーンへ向けて構えを取ったまま間合いを詰める。
その淀み無さはヴァンの潜り抜けた血風を容易に想起させた。
「す、翠星石を置いて行くんじゃねぇです!!!」
二人に遅れること翠星石も掛かって行く。
直前まで脚を震わしていたとは思えぬ勢いで、シャドームーンへ向けて飛び掛って行く。
これもやはり何の作為も無く、真っ向から。
直前まで脚を震わしていたとは思えぬ勢いで、シャドームーンへ向けて飛び掛って行く。
これもやはり何の作為も無く、真っ向から。
「ベストを尽くせーっ!!! はっはっはっはっは……」
三人の背中にエールを送るのは当然、我らが上田次郎。
数々の難事件を解決に導いてきた上田が、シャドームーンにも臆することなく声援を送る。
無論、三人の邪魔にならないようシャドームーンと充分に距離を取った場所から一歩も近寄ることは無くだ。
この適切な状況判断力と、仲間の意気を邪魔立てしない謙虚さこそが上田の真骨頂と言えるだろう。
数々の難事件を解決に導いてきた上田が、シャドームーンにも臆することなく声援を送る。
無論、三人の邪魔にならないようシャドームーンと充分に距離を取った場所から一歩も近寄ることは無くだ。
この適切な状況判断力と、仲間の意気を邪魔立てしない謙虚さこそが上田の真骨頂と言えるだろう。
「…………」
その上田に冷たい視線を送るのはC.C.だ。
上田をまるで路傍の塵のごとくに見下している。
上田をまるで路傍の塵のごとくに見下している。
「し、仕方が無いだろう! 確かに私は通信講座で空手をマスターしているし、ブルース・リーについての論文を書いたこともある。
しかしあの状況では数多くの修羅場を潜り抜けてきた私でも、援護もしようが無い!」
しかしあの状況では数多くの修羅場を潜り抜けてきた私でも、援護もしようが無い!」
龍騎のそれ単独でもAP(アタックポイント)に換算して200APに達する拳が、砲弾のごとく風を巻きシャドームーンに襲い掛かる。
同時にヴァンの操る伝説的な刀工・新井赤空が製作した殺人奇剣・薄刃乃太刀が、
それ自身で生を持つがごとくに蛇行しながら、シャドームーンに襲い掛かる。
白銀の手が赤い拳を受け止め、紅い刀身が薄刃乃太刀の蛇行を遮る。
シャドームーンは片手で龍騎の攻撃を、サタンサーベルでヴァンの攻撃を防いでいた。
しかし龍騎も前回の交戦時のように、容易く力負けする事は無い。
シャドームーンの力を上手く受け止めていた。
更にそこから瞬時に蹴りを放ち、反対方向から薄刃乃太刀の切っ先が再度襲い掛かる。
龍騎とヴァンはまるで事前に打ち合わせでもしていたかのように、巧みな連携でシャドームーンを挟み撃ちにする。
シャドームーンの恐るべきは、その連携を基本スペックの高さを並外れた戦闘センスで駆使して捌き切っている所だ。
同時にヴァンの操る伝説的な刀工・新井赤空が製作した殺人奇剣・薄刃乃太刀が、
それ自身で生を持つがごとくに蛇行しながら、シャドームーンに襲い掛かる。
白銀の手が赤い拳を受け止め、紅い刀身が薄刃乃太刀の蛇行を遮る。
シャドームーンは片手で龍騎の攻撃を、サタンサーベルでヴァンの攻撃を防いでいた。
しかし龍騎も前回の交戦時のように、容易く力負けする事は無い。
シャドームーンの力を上手く受け止めていた。
更にそこから瞬時に蹴りを放ち、反対方向から薄刃乃太刀の切っ先が再度襲い掛かる。
龍騎とヴァンはまるで事前に打ち合わせでもしていたかのように、巧みな連携でシャドームーンを挟み撃ちにする。
シャドームーンの恐るべきは、その連携を基本スペックの高さを並外れた戦闘センスで駆使して捌き切っている所だ。
人の反射神経を超えた速度で行われる龍騎たちとシャドームーンによる攻防。
かつてはアマゾンの巨大鯰・デビルファンクやボルネオの人食い鰐・ブラックポルサスと戦った経験がある上田でも、
あれに乱入するのは無謀と言う他ない。龍騎やヴァンの脚を引っ張るのが落ちだろう。
さりとてあれだけ敵味方が接近して高速戦闘を行われては、援護射撃することもできない。
かつてはアマゾンの巨大鯰・デビルファンクやボルネオの人食い鰐・ブラックポルサスと戦った経験がある上田でも、
あれに乱入するのは無謀と言う他ない。龍騎やヴァンの脚を引っ張るのが落ちだろう。
さりとてあれだけ敵味方が接近して高速戦闘を行われては、援護射撃することもできない。
「全く、あれだけ意気込んで来ておいて何もできないのか」
「……では君が援護したらどうだ!?」
「少しは考えて物を言え。あんな所に援護できる訳ないだろう」
「……では君が援護したらどうだ!?」
「少しは考えて物を言え。あんな所に援護できる訳ないだろう」
それなりに腕に覚えのあるC.C.だが、事情は上田と同様である。
C.C.の能力で戦闘速度に介入するのは至難。
先刻のシャドームーンとの戦いの際にはブリッツスタッフの火球でサタンサーベルを弾いたりしてヴァンを援護できたが、
あれは直接戦闘している場面から外れた場所ゆえに可能だったのだ。
同じような機会は易々と期待できないだろう。
C.C.の能力で戦闘速度に介入するのは至難。
先刻のシャドームーンとの戦いの際にはブリッツスタッフの火球でサタンサーベルを弾いたりしてヴァンを援護できたが、
あれは直接戦闘している場面から外れた場所ゆえに可能だったのだ。
同じような機会は易々と期待できないだろう。
「自分ができないことを人に求めるんじゃない!! どういう教育を受けているんだ!」
こうして五者五様の戦端が開かれた。
暴虐の限りを尽くした魔王を倒すために。
誰一人予想もしていなかった結末へ向けて――――
暴虐の限りを尽くした魔王を倒すために。
誰一人予想もしていなかった結末へ向けて――――
◇
シャドームーンの頭部で大きく輝く翠色の双眸・マイティアイが五者の姿を映す。
接近戦を仕掛けてくる龍騎。
人知を超えた威力の拳は、的確にシャドームーンの頭部を狙って来る。
中距離から曲線軌道を描く刃で援護をするヴァン。
龍騎の拳と全く同じタイミングで、シャドームーンの頭部を反対方向から狙う。
更にその後ろから飛来する翠星石。
遠方では道化た会話をしている上田とC.C.。
その全てをマイティアイが捕捉。
マイティアイが得た映像情報は改造された脳に送られ、瞬時に処理されて対処法が算出される。
そして導き出された対処法は、改造を受けた五体が即座に実行された。
左手で龍騎の拳を掴み、右手のサタンサーベルでヴァンの刃を止める。
そこから淀むことなく流れるように変化していく龍騎とヴァンの連携。
秒間を、一撃一撃が人の身ならば必殺と言える威力の拳で、蹴りで攻め立てる龍騎。
しなる刃を己の手足のごとく振るい援護するヴァン。
しかしゴルゴムの科学技術の粋を集めて造り上げられたシャドームーンの性能は、それらに一部の隙も見せず対応する。
片手間にヴァンの刃を受けながら、執拗に打ち込んで来る龍騎の拳を軽々と払い落とす。
そして返す刀に左肘から伸びるエルボートリガーで龍騎を斬りつけた。
エルボートリガーは龍騎の装甲を切り裂き、更に超振動を叩き込む。
岩石を粉微塵にする超振動により、龍騎は胸の装甲から火花を散らしながら吹き飛んだ。
たたらを踏む龍騎に追撃をするべく歩を進めるシャドームーン。
ヴァンが刃をうならせて牽制するが、やはり片手間で捌くシャドームーンの足止めにもならない。
巧みにシャドームーンの死角を突こうとするヴァンの攻撃だが、マイティアイの広視界に尽く捕捉していた。
その広視界が赤い薔薇の花弁で埋め尽くされる。
接近戦を仕掛けてくる龍騎。
人知を超えた威力の拳は、的確にシャドームーンの頭部を狙って来る。
中距離から曲線軌道を描く刃で援護をするヴァン。
龍騎の拳と全く同じタイミングで、シャドームーンの頭部を反対方向から狙う。
更にその後ろから飛来する翠星石。
遠方では道化た会話をしている上田とC.C.。
その全てをマイティアイが捕捉。
マイティアイが得た映像情報は改造された脳に送られ、瞬時に処理されて対処法が算出される。
そして導き出された対処法は、改造を受けた五体が即座に実行された。
左手で龍騎の拳を掴み、右手のサタンサーベルでヴァンの刃を止める。
そこから淀むことなく流れるように変化していく龍騎とヴァンの連携。
秒間を、一撃一撃が人の身ならば必殺と言える威力の拳で、蹴りで攻め立てる龍騎。
しなる刃を己の手足のごとく振るい援護するヴァン。
しかしゴルゴムの科学技術の粋を集めて造り上げられたシャドームーンの性能は、それらに一部の隙も見せず対応する。
片手間にヴァンの刃を受けながら、執拗に打ち込んで来る龍騎の拳を軽々と払い落とす。
そして返す刀に左肘から伸びるエルボートリガーで龍騎を斬りつけた。
エルボートリガーは龍騎の装甲を切り裂き、更に超振動を叩き込む。
岩石を粉微塵にする超振動により、龍騎は胸の装甲から火花を散らしながら吹き飛んだ。
たたらを踏む龍騎に追撃をするべく歩を進めるシャドームーン。
ヴァンが刃をうならせて牽制するが、やはり片手間で捌くシャドームーンの足止めにもならない。
巧みにシャドームーンの死角を突こうとするヴァンの攻撃だが、マイティアイの広視界に尽く捕捉していた。
その広視界が赤い薔薇の花弁で埋め尽くされる。
「しっかりするです真司!!」
体勢の崩れた龍騎を後ろから支えたのは翠星石。
翠星石が真紅のローザミスティカによって得た能力、薔薇の花弁を飛ばしていた。
体勢を立て直す龍騎の横を通り抜け、翠星石はシャドームーンへ向かって行く。
翠星石が真紅のローザミスティカによって得た能力、薔薇の花弁を飛ばしていた。
体勢を立て直す龍騎の横を通り抜け、翠星石はシャドームーンへ向かって行く。
「まったく! やーっぱり真っ赤っか人間は、翠星石が居なきゃなんにも出来やしねーんですから!」
「……って、待てよ翠星石!!」
「……って、待てよ翠星石!!」
翠星石は間合いを詰めながら、右手から無数の薔薇の花弁、
そして水銀燈のローザミスティカで得た力により左手から無数の黒羽を撃ち出す。
どちらも射界が拡散する発射武器。
至近距離ならば回避は至難。それが翠星石の判断。
そして水銀燈のローザミスティカで得た力により左手から無数の黒羽を撃ち出す。
どちらも射界が拡散する発射武器。
至近距離ならば回避は至難。それが翠星石の判断。
「威力、だけではなく技の性能全体が向上している……」
誤算はシャドームーンにそもそも回避する必要がなかったと言うこと。
シャドームーンを覆う装甲・シルバーガードは花弁も羽も全て防ぎ切る。
自身の物を含めて実にローザミスティカ四個分の出力でも、シルバーガードを抜くことは出来なかった。
しかし翠星石には次の手が見えている。
シャドームーンにはシルバーガードで守られていない箇所が存在することを以前の戦闘から学んでいた。
翠星石はそこに狙いを付ける。
発射。するよりもシャドームーンの動きは早かった。
翠星石に打ち出されるシャドームーンの右拳。
その右拳に薄刃乃太刀が巻き付き、翠星石が咄嗟に形成した不可視の障壁が阻む。
が、止まらない。
薄刃乃太刀をヴァンごと引っ張り、障壁を破壊しても尚、
シャドームーンの拳の勢いは殺し切れず、翠星石に打ち込まれた。
吹き飛ぶ翠星石を今度は龍騎が受け止める。
シャドームーンを覆う装甲・シルバーガードは花弁も羽も全て防ぎ切る。
自身の物を含めて実にローザミスティカ四個分の出力でも、シルバーガードを抜くことは出来なかった。
しかし翠星石には次の手が見えている。
シャドームーンにはシルバーガードで守られていない箇所が存在することを以前の戦闘から学んでいた。
翠星石はそこに狙いを付ける。
発射。するよりもシャドームーンの動きは早かった。
翠星石に打ち出されるシャドームーンの右拳。
その右拳に薄刃乃太刀が巻き付き、翠星石が咄嗟に形成した不可視の障壁が阻む。
が、止まらない。
薄刃乃太刀をヴァンごと引っ張り、障壁を破壊しても尚、
シャドームーンの拳の勢いは殺し切れず、翠星石に打ち込まれた。
吹き飛ぶ翠星石を今度は龍騎が受け止める。
「翠星石が接近戦をするのは無茶だって!!」
「うぅ~……こ、こんなの屁でもねぇですぅ……」
「うぅ~……こ、こんなの屁でもねぇですぅ……」
翠星石は幾つもの強力な武器を使いこなすことができるが、
龍騎と比較すれば、明らかに近接しての戦闘は不得手である。
しかし翠星石は苦悶しながらも再度シャドームーンに向かって行こうとする。
慌てて留めようとする龍騎の背後から、C.C.の檄が飛ぶ。
龍騎と比較すれば、明らかに近接しての戦闘は不得手である。
しかし翠星石は苦悶しながらも再度シャドームーンに向かって行こうとする。
慌てて留めようとする龍騎の背後から、C.C.の檄が飛ぶ。
「戦力を分散したり出し惜しみしている場合か!」
「すいません……」
「……だな」
「すいません……」
「……だな」
素直に謝るヴァンと納得した龍騎は、各々切り札(カード)を切る決意をする。
その隙を、当然マイティアイは見逃しはしない。
シャドームーンの伸ばした指先へ、シャドーチャージャーからの光が収束。
収束した光は指先からシャドービームとして龍騎たちに放たれる。
龍騎は翠星石を突き飛ばしてシャドービームの射界から外す。
その反動で自分も地面を転がって、シャドービームを回避。
更に体勢を立て直した時には、その手にバックル部分のデッキから抜き取ったアドベントカードがあった。
回避とカードの抜き取りを同時に行う。
ライダーバトルの歴戦を潜り抜けてきた龍騎だからこその芸当。
龍騎は炎を周囲に纏いながら、左腕にある龍召機甲ドラグバイザーツバイに装填(ベントイン)する。
進化を司るカードを。
その隙を、当然マイティアイは見逃しはしない。
シャドームーンの伸ばした指先へ、シャドーチャージャーからの光が収束。
収束した光は指先からシャドービームとして龍騎たちに放たれる。
龍騎は翠星石を突き飛ばしてシャドービームの射界から外す。
その反動で自分も地面を転がって、シャドービームを回避。
更に体勢を立て直した時には、その手にバックル部分のデッキから抜き取ったアドベントカードがあった。
回避とカードの抜き取りを同時に行う。
ライダーバトルの歴戦を潜り抜けてきた龍騎だからこその芸当。
龍騎は炎を周囲に纏いながら、左腕にある龍召機甲ドラグバイザーツバイに装填(ベントイン)する。
進化を司るカードを。
『SURVIVE』
電子音声が鳴り、炎が晴れる。
そこにはより強大な装甲を纏った龍騎――仮面ライダー龍騎サバイブが顕現していた。
そこにはより強大な装甲を纏った龍騎――仮面ライダー龍騎サバイブが顕現していた。
「変身!」
今度はヴァンの声が響く。
その場の者が龍騎の変身に気を取られている内に、ヴァンは薄刃乃太刀にカードデッキを映していた。
腰の部分にVバックルが現出。そこにカードデッキを装填する。
テンガロンハットのリングを鳴らし薄刃乃太刀でVの字を描くヴァンに幾つもの虚像が重なる。
虚像はヴァンの肉体を覆う装甲として顕現した。
仮面ライダーナイトとして。
その場の者が龍騎の変身に気を取られている内に、ヴァンは薄刃乃太刀にカードデッキを映していた。
腰の部分にVバックルが現出。そこにカードデッキを装填する。
テンガロンハットのリングを鳴らし薄刃乃太刀でVの字を描くヴァンに幾つもの虚像が重なる。
虚像はヴァンの肉体を覆う装甲として顕現した。
仮面ライダーナイトとして。
幾多のミラーモンスターの命を吸った仮面ライダー二体、龍騎とナイトが並び立つ。
それを前にして、シャドームーンはあくまで傲岸に笑う。
それを前にして、シャドームーンはあくまで傲岸に笑う。
「フッ、ようやく戦いらしくなりそうだ」
龍騎とナイト、そして翠星石が再び同時攻撃に出る。
龍騎の攻撃。ドラグバイザーツバイによるビーム射撃。速射性に優れたそれを連続でシャドームーンに叩き込む。
ナイトの攻撃。翼召剣ダークバイザーによる斬撃。変身して更に高まったヴァンの身体能力によるそれは、人の視認できる速度を軽く凌駕していた。
翠星石の攻撃。庭師の如雨露によって急成長させた植物での打撃。高密度の繊維で形成された植物が砲弾のごとき速さでシャドームーンに迫る。
異能の戦士たちによる三点同時攻撃。
シャドームーンの対応もまた同時の物となる。
右手のサタンサーベルでダークバイザーを止め、
左手から電撃状のシャドービームで植物を焼き払い、
ドラグバイザーツバイのビームはシルバーガードに任せ、防ぎ切る。
龍騎の攻撃。ドラグバイザーツバイによるビーム射撃。速射性に優れたそれを連続でシャドームーンに叩き込む。
ナイトの攻撃。翼召剣ダークバイザーによる斬撃。変身して更に高まったヴァンの身体能力によるそれは、人の視認できる速度を軽く凌駕していた。
翠星石の攻撃。庭師の如雨露によって急成長させた植物での打撃。高密度の繊維で形成された植物が砲弾のごとき速さでシャドームーンに迫る。
異能の戦士たちによる三点同時攻撃。
シャドームーンの対応もまた同時の物となる。
右手のサタンサーベルでダークバイザーを止め、
左手から電撃状のシャドービームで植物を焼き払い、
ドラグバイザーツバイのビームはシルバーガードに任せ、防ぎ切る。
『AD VENT』
ビームを放ちながら、龍騎はドラグバイザーツバイにアドベントカードをベントインしていた。
シャドームーンの背後の民家に有る窓ガラスから金属装甲の怪物が姿を現す。
赤く伸びた胴体。鋭く伸びた爪と牙。獰猛さと威厳を兼ね備えた巨体は、正に伝説の神獣である龍の姿。
無双龍・ドラグレッダーがサバイブ(進化)したミラーモンスター、烈火龍・ドラグランザー。
時間差のついた四点目への攻撃を行うドラグランザー。
ドラグランザーはセルシウス度に換算して7000°Cに達する超高熱火炎弾を口内から発射。
三点同時攻撃を防いでいたシャドームーンは、背後から直撃を受ける。
シャドームーンを中心に起こる埒外な高密度の爆発、そして炎上。
爆炎に煽られて大地に叩き付けられるシャドームーン。
ナイトは爆炎に包まれるシャドームーンから慌てて飛び退いた。
シャドームーンの背後の民家に有る窓ガラスから金属装甲の怪物が姿を現す。
赤く伸びた胴体。鋭く伸びた爪と牙。獰猛さと威厳を兼ね備えた巨体は、正に伝説の神獣である龍の姿。
無双龍・ドラグレッダーがサバイブ(進化)したミラーモンスター、烈火龍・ドラグランザー。
時間差のついた四点目への攻撃を行うドラグランザー。
ドラグランザーはセルシウス度に換算して7000°Cに達する超高熱火炎弾を口内から発射。
三点同時攻撃を防いでいたシャドームーンは、背後から直撃を受ける。
シャドームーンを中心に起こる埒外な高密度の爆発、そして炎上。
爆炎に煽られて大地に叩き付けられるシャドームーン。
ナイトは爆炎に包まれるシャドームーンから慌てて飛び退いた。
「おいっ!! 俺も焼け死ぬとこだろ!」
「わりいわりい。でも時間は稼げてるだろ?」
「と、とんでもねー熱さですぅ……」
「わりいわりい。でも時間は稼げてるだろ?」
「と、とんでもねー熱さですぅ……」
龍騎と翠星石もシャドームーンを包む炎熱を眺める。
地上に太陽が顕現したかのごとき炎熱の中でも、シャドームーンは起き上がろうとしている。
やはり並ならぬ耐熱性能を持っているようだ。
しかしせっかくのチャンスも、この炎熱から距離を取らなければならない状況では追撃もままならない。
爆炎を吐き出した烈火龍自身を除けば。
ドラグランザーは大顎を開けて、炎の中のシャドームーンに食らいついた。
人一人を喰らい尽くせるほどのドラグランザーの大顎がシャドームーンを噛み――砕けない。
両手でドラグランザーの顎を押し開けたシャドームーン。
更にシャドームーンは電撃状のシャドービームを両手から発射する。
ドラグランザーの口内で響く雷鳴。
口の中で放たれたシャドービームに耐えられず、ドラグランザーはシャドームーンを放してのた打ち回る。
地上に太陽が顕現したかのごとき炎熱の中でも、シャドームーンは起き上がろうとしている。
やはり並ならぬ耐熱性能を持っているようだ。
しかしせっかくのチャンスも、この炎熱から距離を取らなければならない状況では追撃もままならない。
爆炎を吐き出した烈火龍自身を除けば。
ドラグランザーは大顎を開けて、炎の中のシャドームーンに食らいついた。
人一人を喰らい尽くせるほどのドラグランザーの大顎がシャドームーンを噛み――砕けない。
両手でドラグランザーの顎を押し開けたシャドームーン。
更にシャドームーンは電撃状のシャドービームを両手から発射する。
ドラグランザーの口内で響く雷鳴。
口の中で放たれたシャドービームに耐えられず、ドラグランザーはシャドームーンを放してのた打ち回る。
『SURVIVE』
難なく着地するシャドームーンの耳に、電子音声が届いた。
シャドームーンは自分がドラグランザーに手間取っている内に、敵に態勢を整える時間を与えていたと悟る。
もう一枚存在した、進化を司る切り札(カード)を切る時間を。
ナイトを突風が包む。
突風が晴れた時には、ナイトはより強大な蒼い装甲に身を包み、
仮面ライダーナイトサバイブへと進化していた。
シャドームーンは自分がドラグランザーに手間取っている内に、敵に態勢を整える時間を与えていたと悟る。
もう一枚存在した、進化を司る切り札(カード)を切る時間を。
ナイトを突風が包む。
突風が晴れた時には、ナイトはより強大な蒼い装甲に身を包み、
仮面ライダーナイトサバイブへと進化していた。
「よっしゃー!! こうなったら、もう負ける気はしないぜ!」
並び立つ二体のサバイブ。
龍騎はかつて何度も共闘した、秋山蓮の変身するナイトのことを思い出す。
龍騎とナイトのコンビの強さは誰よりも良く知っていた。
龍騎はかつて何度も共闘した、秋山蓮の変身するナイトのことを思い出す。
龍騎とナイトのコンビの強さは誰よりも良く知っていた。
「次はこのカードで行くぜ!」
「あん? 俺も同じカードを使えばいいんだな?」
「あん? 俺も同じカードを使えばいいんだな?」
アドベントカードを見せてくる龍騎に、ナイトも素直に従う。
何しろナイトが慣れない変身時もサバイブのカードを使った際も、龍騎がシャドームーンを相手に隙を作ってくれたのだ。
ライダーバトルにおいて龍騎に一日の長があることは明白だった。
何しろナイトが慣れない変身時もサバイブのカードを使った際も、龍騎がシャドームーンを相手に隙を作ってくれたのだ。
ライダーバトルにおいて龍騎に一日の長があることは明白だった。
翠星石がその二人の様子を複雑な面持ちで後ろから眺めていた。
『『SWORD VENT』』
龍騎とナイトの電子音声が完全に重なる。
龍騎がドラグブレードを、ナイトがダークブレードを抜くのも同時。
厚さ60cmの鉄板を一刀の下に切断するドラグブレードと、それをAPに換算して1000上回る威力のダークブレード。
二人のサバイブの剣がシャドームーンに斬りかかる。
デッキにより変身する仮面ライダーの中でもトップクラスの性能を誇る二人の剣撃は、瞬きほどの隙も許さない速さ。
それが上段、中段、下段、袈裟切り、逆袈裟、横薙ぎと剣筋が不断に変化していく。
受けるシャドームーンの剣はサタンサーベル一本。
いかにシャドームーンと言えど後手に回り、追い詰められ、やがてサタンサーベルでは受けきれなくなる。
上段からのドラグブレードの一撃をサタンサーベルが既の所で受け止める。
がら空きとなったシャドームーンの胴体部分。
刹那に生まれた隙を見逃さず、ナイトのダークブレードが狙い打つ。
龍騎がドラグブレードを、ナイトがダークブレードを抜くのも同時。
厚さ60cmの鉄板を一刀の下に切断するドラグブレードと、それをAPに換算して1000上回る威力のダークブレード。
二人のサバイブの剣がシャドームーンに斬りかかる。
デッキにより変身する仮面ライダーの中でもトップクラスの性能を誇る二人の剣撃は、瞬きほどの隙も許さない速さ。
それが上段、中段、下段、袈裟切り、逆袈裟、横薙ぎと剣筋が不断に変化していく。
受けるシャドームーンの剣はサタンサーベル一本。
いかにシャドームーンと言えど後手に回り、追い詰められ、やがてサタンサーベルでは受けきれなくなる。
上段からのドラグブレードの一撃をサタンサーベルが既の所で受け止める。
がら空きとなったシャドームーンの胴体部分。
刹那に生まれた隙を見逃さず、ナイトのダークブレードが狙い打つ。
金属と金属がぶつかり合い火花を散らす甲高い音が鳴り響く。
ダークブレードを受けたのは左のエルボートリガー。
エルボートリガーの超振動を受けて、ダークブレードが弾き飛ばされた。
しかしナイトは尋常ならざる反応速度で剣筋をそこから更に変化させる。
狙い打ったのはエルボートリガーと左肘の接合部分。
シルバーガードに守られておらず、おそらく超振動もしていないだろうと推測された部分である。
ナイトの推測は当たる。
ダークブレードの威力がナイトの類稀な剣の技量で打ち込まれ、エルボートリガーは根元から折れ飛んだ。
ナイトは更にシャドームーンの胴体を狙って、ダークブレードを振るう。
荒くれ者の理想郷(パラダイス)エンドレス・イリュージョンの血風で鍛え抜かれた、ヴァンの技量のみが可能にする不断の連続攻撃。
それすらシャドームーンはサタンサーベルで受け止めた。
しかしナイトの攻撃をサタンサーベルで受けたと言うことは、龍騎に対して無防備になったと言うこと。
龍騎は反対方向からシャドームーンの胴体を目掛けてドラグブレードを振るった。
シャドームーンと言えど、絶対に反応し切れない間合い。
龍騎とナイトがそう確信した。
その瞬間。正にドラグブレードがシャドームーンを切り裂く寸前。
シャドームーンの腰に在るシャドーチャージャーがキングストーンの光を放った。
シャドーチャージャーから直接前方へ電撃状のシャドービームを発射。
幾つもに枝分かれして空気を切り裂き射界を広げて行くシャドービームは、龍騎とナイトにも直撃。
膨大なエネルギーに拠る、破壊の奔流。
それはまともに受けた龍騎とナイトを、玩具のごとくに10メートル以上も後方へ吹き飛ばした。
エルボートリガーの超振動を受けて、ダークブレードが弾き飛ばされた。
しかしナイトは尋常ならざる反応速度で剣筋をそこから更に変化させる。
狙い打ったのはエルボートリガーと左肘の接合部分。
シルバーガードに守られておらず、おそらく超振動もしていないだろうと推測された部分である。
ナイトの推測は当たる。
ダークブレードの威力がナイトの類稀な剣の技量で打ち込まれ、エルボートリガーは根元から折れ飛んだ。
ナイトは更にシャドームーンの胴体を狙って、ダークブレードを振るう。
荒くれ者の理想郷(パラダイス)エンドレス・イリュージョンの血風で鍛え抜かれた、ヴァンの技量のみが可能にする不断の連続攻撃。
それすらシャドームーンはサタンサーベルで受け止めた。
しかしナイトの攻撃をサタンサーベルで受けたと言うことは、龍騎に対して無防備になったと言うこと。
龍騎は反対方向からシャドームーンの胴体を目掛けてドラグブレードを振るった。
シャドームーンと言えど、絶対に反応し切れない間合い。
龍騎とナイトがそう確信した。
その瞬間。正にドラグブレードがシャドームーンを切り裂く寸前。
シャドームーンの腰に在るシャドーチャージャーがキングストーンの光を放った。
シャドーチャージャーから直接前方へ電撃状のシャドービームを発射。
幾つもに枝分かれして空気を切り裂き射界を広げて行くシャドービームは、龍騎とナイトにも直撃。
膨大なエネルギーに拠る、破壊の奔流。
それはまともに受けた龍騎とナイトを、玩具のごとくに10メートル以上も後方へ吹き飛ばした。
「真司!! ヴァン!」
後ろで見ているしかなかった翠星石が悲鳴のような声が飛ばす。
それに答えるように龍騎とナイトも立ち上がるが、身体が見るからに身体が重そうだ。
強い。
判っていたはずのことを、龍騎もナイトもここに来て改めて実感していた。
シャドームーンの付け入る隙の見当たらない強さを。
それに答えるように龍騎とナイトも立ち上がるが、身体が見るからに身体が重そうだ。
強い。
判っていたはずのことを、龍騎もナイトもここに来て改めて実感していた。
シャドームーンの付け入る隙の見当たらない強さを。
カシャ カシャ カシャ カシャ
足音を鳴らしシャドームーンが悠然と、しかし確実に近付いてくる。
強者も、弱者も、男も、女も逆らう全てを討ち果たすために。
避けることは許されない。
この強大な怪物を倒さないことには、進むべき未来は無いのだ。
強者も、弱者も、男も、女も逆らう全てを討ち果たすために。
避けることは許されない。
この強大な怪物を倒さないことには、進むべき未来は無いのだ。
◇
この世の物とは思えぬ灼熱の炎が舞い、大気を焼く雷が鳴る。
仮面ライダーとシャドームーンの戦いは、遠巻きに眺める上田にもその脅威が伝わってくるほど激しい物だった。
近付くこともできない。どころではなく、距離を隔てても危機感を覚えるほどだ。
実際、上田は何度か気絶しかけた。
仮面ライダーとシャドームーンの戦いは、遠巻きに眺める上田にもその脅威が伝わってくるほど激しい物だった。
近付くこともできない。どころではなく、距離を隔てても危機感を覚えるほどだ。
実際、上田は何度か気絶しかけた。
「……あの様子では、銃で援護しようもないな」
仮面ライダーとシャドームーンの高速接近戦闘を眺めて、上田は手元でベレッタを弄びながら一人ごちていた。
人間が相手ならば必殺の武器となる拳銃も、シャドームーン相手では威嚇にもならない。
上田はいよいよ何をしに来たのか判らない状態だった。
人間が相手ならば必殺の武器となる拳銃も、シャドームーン相手では威嚇にもならない。
上田はいよいよ何をしに来たのか判らない状態だった。
「建物の崩落に巻き込まれても無事だった奴だ。銃が効かないことなど判りきっていただろう」
C.C.が呆れたように口を挟む。
戦いが始まる前は大きな口をきいていたが、C.C.もやはり上田と事情は同じ。
四階建ての建物の崩落を無傷でやり過ごしてような相手に、C.C.では威嚇の手段も持っていない。
それどころか覚悟を決めたC.C.ですら、シャドームーンには気圧されそうになっているほどだった。
――――覚悟を決めた?
C.C.は漠とした違和感を覚える。
自分の心中に。
戦いが始まる前は大きな口をきいていたが、C.C.もやはり上田と事情は同じ。
四階建ての建物の崩落を無傷でやり過ごしてような相手に、C.C.では威嚇の手段も持っていない。
それどころか覚悟を決めたC.C.ですら、シャドームーンには気圧されそうになっているほどだった。
――――覚悟を決めた?
C.C.は漠とした違和感を覚える。
自分の心中に。
『私は行くぞ。やられっぱなしでいるのは性に合わん。この男を見て決心がついたよ。こんな……』
C.C.は上田を見て決心がついたと言ったことを思い出す。
決心がついた?
何の? シャドームーンと戦う決心だ。
しかし、何故大袈裟に決心など必要だった?
C.C.は死なないはずなのに。
例え死んだとしても、それはC.C.にとって――――
決心がついた?
何の? シャドームーンと戦う決心だ。
しかし、何故大袈裟に決心など必要だった?
C.C.は死なないはずなのに。
例え死んだとしても、それはC.C.にとって――――
「……Lはそう考えてはいなかったみたいだがな…………」
上田の言葉でC.C.は現実に引き戻される。
今は些細な懸念に惑っている場合ではない。
当面の問題から、意識を離すべきではないだろう。
今は些細な懸念に惑っている場合ではない。
当面の問題から、意識を離すべきではないだろう。
「……Lがどうした?」
Lの名前が出た途端、C.C.の態度が変わる。
同行していた期間は短いが、Lの頭脳の優秀さはC.C.も認めるところだった。
そのLの言葉とあってはC.C.とて無視はできない。
例え、それが上田の口を借りた物であっても。
同行していた期間は短いが、Lの頭脳の優秀さはC.C.も認めるところだった。
そのLの言葉とあってはC.C.とて無視はできない。
例え、それが上田の口を借りた物であっても。
「いや、Lとシャドームーンが建物の崩落に巻き込まれた時の話をしたことがあってな……あれは私が古代ローマの浴場設計技師だった頃……」
「おい!」
「……あれはLと水銀燈とで車に乗って移動していた時の話だ……」
「おい!」
「……あれはLと水銀燈とで車に乗って移動していた時の話だ……」
そして上田にとって、Lはより思い入れのある人物だった。
優秀な知性と強靭な意志で殺し合いに立ち向かっていたLの存在は、上田にとってどれほど心強い存在だったか。
いつもの浮ついた様子は鳴りを潜め、上田はLとの会話を語り始めた。
優秀な知性と強靭な意志で殺し合いに立ち向かっていたLの存在は、上田にとってどれほど心強い存在だったか。
いつもの浮ついた様子は鳴りを潜め、上田はLとの会話を語り始めた。
◇
「……しかしあの、シャドームーンは展望台の崩落に巻き込まれて傷一つ無かったと言うんだろ…………」
そう切り出したのは上田がLと水銀燈を乗せて車を走らせていた時だった。
上田は注意深く車を運転しながら、心なしか沈んだ声で語り掛ける。
水銀燈は鞄の中で眠っているため、上田が語り掛ける相手は必然的にLしかいない。
上田は注意深く車を運転しながら、心なしか沈んだ声で語り掛ける。
水銀燈は鞄の中で眠っているため、上田が語り掛ける相手は必然的にLしかいない。
「そんな相手をどうやって倒すんだ? 我々の持っている武器では、どう頑張っても通用しないだろう?」
「そのように判断するには根拠が不充分でしょうね」
「そのように判断するには根拠が不充分でしょうね」
Lは助手席で思案気にしていたが、上田の疑問に即座に反応する。
「私はシャドームーンを直接知らないので、詳細名簿と光太郎君や上田さんや水銀燈さんの話でしか判断のしようがありません。
それだけでもシャドームーンが尋常ではない能力を持っていることは判ります」
それだけでもシャドームーンが尋常ではない能力を持っていることは判ります」
シャドームーンと接触したことが無くても、Lならば間接的に得た情報だけでその危険性は理解しているはずだ。
しかし上田には、どこかLのシャドームーンに対する認識が軽いような印象を受けた。
しかし上田には、どこかLのシャドームーンに対する認識が軽いような印象を受けた。
「それだからこそ展望台の崩落に巻き込まれて無傷だった理由は、シャドームーンの耐久力以外で説明が付くんです」
「え? ……あ、ああ! なるほどあれのことか。あれに気付くとは、Lさんも流石は探偵を名乗るだけのことはある。
私ほどではないが、中々優秀な頭脳を持っているじゃないか」
「え? ……あ、ああ! なるほどあれのことか。あれに気付くとは、Lさんも流石は探偵を名乗るだけのことはある。
私ほどではないが、中々優秀な頭脳を持っているじゃないか」
乾いた笑いを浮かべる上田は、当然のごとくLの言っていることの意味が判っていない。
いっそ清々しいくらいさっぱり判っていない。
Lもそれを悟っているようで、説明を続ける。
いっそ清々しいくらいさっぱり判っていない。
Lもそれを悟っているようで、説明を続ける。
「建物の崩落と言うのはその質量全てが敷地内を均等に落下する、と言うことではありません。
建造物が無作為に破壊されている状態なので、瓦礫にも大小や形状の不均等が生じていたでしょう。
それらが不規則に崩れて落ちているわけですから、空間が発生する蓋然性も無視できません。
勿論、微細な破片まで落ちない。と言うことは考えられませんが」
建造物が無作為に破壊されている状態なので、瓦礫にも大小や形状の不均等が生じていたでしょう。
それらが不規則に崩れて落ちているわけですから、空間が発生する蓋然性も無視できません。
勿論、微細な破片まで落ちない。と言うことは考えられませんが」
上田がLと話していて驚かされるのは、常に淀み無く論理的な話しぶりができることとその博識である。
Lに聞けばどんな疑問にも明確な回答を得られるのではないか。
そんな幼稚な観念さえ浮かんでくるほどだ。
Lに聞けばどんな疑問にも明確な回答を得られるのではないか。
そんな幼稚な観念さえ浮かんでくるほどだ。
「事実、建物の崩落事故で生存者が出るケースもそれほど珍しくありません。普通の人間の、です」
「……待て。では君はシャドームーンが運良く瓦礫の落ちてこない空間に居合わせたから、偶然無傷で済んだと言いたいのか?」
「いいえ、運良くそんな空間に居合わせたのでは無いでしょう。しかしシャドームーンは建物内で拘束されていたわけではありません。ある程度は動くことができます」
「…………だが、自分で移動して瓦礫の落ちてこない空間に逃げ込んだと言うのは無理があるんじゃないか?
そもそもそんな空間が都合よく発生するとは限らないんだ……」
「……待て。では君はシャドームーンが運良く瓦礫の落ちてこない空間に居合わせたから、偶然無傷で済んだと言いたいのか?」
「いいえ、運良くそんな空間に居合わせたのでは無いでしょう。しかしシャドームーンは建物内で拘束されていたわけではありません。ある程度は動くことができます」
「…………だが、自分で移動して瓦礫の落ちてこない空間に逃げ込んだと言うのは無理があるんじゃないか?
そもそもそんな空間が都合よく発生するとは限らないんだ……」
上田は展望台がどんな建物であったかは知らない。
しかし水銀燈の話からも、鉄筋を基礎にコンクリートで構造を形成していった建造物であると見当は付く。
それが自重を支えきれなくなって内側に崩壊したのだから、鉄筋やコンクリート片の大きさにも差が出てくる。
しかも建物は鉄筋やコンクリート以外の、様々な形状の物体も存在しているはずだ。
それらが不規則に崩れ落ちていけば、瓦礫の重なり方によっては人間が入れる空間が形成されても不思議は無い。
しかしどんな瓦礫の重なり方を下としても、比較的細かい破片が全く落下しない空間と言うのは考え辛い。
そもそもシャドームーンが居た場所に、偶然そのような空間が形成され公算は極めて小さい。
まして崩壊する建物内で、どこに空間が形成されるかを見極めてそこに移動するなど、
あまりにも荒唐無稽な想定に思えた。
しかし水銀燈の話からも、鉄筋を基礎にコンクリートで構造を形成していった建造物であると見当は付く。
それが自重を支えきれなくなって内側に崩壊したのだから、鉄筋やコンクリート片の大きさにも差が出てくる。
しかも建物は鉄筋やコンクリート以外の、様々な形状の物体も存在しているはずだ。
それらが不規則に崩れ落ちていけば、瓦礫の重なり方によっては人間が入れる空間が形成されても不思議は無い。
しかしどんな瓦礫の重なり方を下としても、比較的細かい破片が全く落下しない空間と言うのは考え辛い。
そもそもシャドームーンが居た場所に、偶然そのような空間が形成され公算は極めて小さい。
まして崩壊する建物内で、どこに空間が形成されるかを見極めてそこに移動するなど、
あまりにも荒唐無稽な想定に思えた。
「確かに無理がある想定です。私にそんな真似は不可能です。上田さんでも無理だと思います。
しかしシャドームーンにとってはどうでしょう?」
しかしシャドームーンにとってはどうでしょう?」
そこで上田は、自分が普通の人間の感覚で事態を想定していたことに気が付く。
シャドームーンは人間のそれを遥かに凌駕する能力を幾つも併せ持つ持つであろう、字義通りの超人なのだ。
シャドームーンは人間のそれを遥かに凌駕する能力を幾つも併せ持つ持つであろう、字義通りの超人なのだ。
「光太郎君や上田さんや水銀燈さんの話から推測するに、シャドームーンはその五感も人間のそれとは隔絶した性能を持っています。
建物が崩れ始めてから落下する瓦礫に反応することも可能だと考えられます。
そしてシャドームーンなら、落下してくる瓦礫もある程度は破壊することが可能です」
建物が崩れ始めてから落下する瓦礫に反応することも可能だと考えられます。
そしてシャドームーンなら、落下してくる瓦礫もある程度は破壊することが可能です」
Lは知らないが、正にLの想定を可能にする視覚器官をシャドームーンは有していた。
マイティアイならば崩壊する建物内でも、落下してくるあらゆる瓦礫を把握するほどの認識が可能だ。
そして上手く巨大な瓦礫が折り重なって発生した空間に入り、更に落下してくる細かい破片をシャドービームなどで破壊すれば、
シルバーガードの耐久力を有するシャドームーンならば、無傷での生存も理論上は可能である。
マイティアイならば崩壊する建物内でも、落下してくるあらゆる瓦礫を把握するほどの認識が可能だ。
そして上手く巨大な瓦礫が折り重なって発生した空間に入り、更に落下してくる細かい破片をシャドービームなどで破壊すれば、
シルバーガードの耐久力を有するシャドームーンならば、無傷での生存も理論上は可能である。
「……まあこれは水銀燈さんの話から構築した仮説の一つに過ぎませんけどね。単純に偶然無傷でやり過ごせた可能性も存在します。
何れにせよシャドームーンが我々の取れる如何なる手段も通用しないほど埒外の耐久力を持っていると考える根拠にはなりません」
何れにせよシャドームーンが我々の取れる如何なる手段も通用しないほど埒外の耐久力を持っていると考える根拠にはなりません」
上田は、Lに何故シャドームーンに対する認識が軽いような印象を受けたのかが理解できた。
上田や水銀燈は直接シャドームーンの脅威に晒されたため、その恐怖に圧倒されて冷静に戦力を分析する余裕など持てなかった。
しかしLにとってはシャドームーンも冷静な考察の対象に過ぎず、殺し合いを打破するための障害でしかない。
だから上田や水銀燈とLの間には温度差があったのだ。
上田や水銀燈は直接シャドームーンの脅威に晒されたため、その恐怖に圧倒されて冷静に戦力を分析する余裕など持てなかった。
しかしLにとってはシャドームーンも冷静な考察の対象に過ぎず、殺し合いを打破するための障害でしかない。
だから上田や水銀燈とLの間には温度差があったのだ。
「それに……仮に私の仮説通りシャドームーンが五感と運動能力を駆使して、建物の崩落を切り抜けたとしたら、
その方がより厄介だと思えますね」
その方がより厄介だと思えますね」
何よりLは決してシャドームーンを過小評価などしていない。
あるいは自分や水銀燈よりその脅威を正確に把握している。
上田にはそう思えた。
あるいは自分や水銀燈よりその脅威を正確に把握している。
上田にはそう思えた。
「もしそうだとすれば、シャドームーンには極めて高度な五感と身体能力、それに何より判断力と行動力を持っていることになる。
それらはどんな能力より脅威的、と言えるでしょう」
それらはどんな能力より脅威的、と言えるでしょう」
◇
先ほどとは一転して、今度はシャドービームのダメージが抜けない龍騎とナイトが防戦に追い込まれた。
シャドームーンは左手に持ち替えたサタンサーベルで龍騎のドラグブレードと何合も打ち合う。
銀の世紀王が振るう紅い刀身と赤いライダーが振るう銀の刀身によって幾重にも散る火花。
更に右手のエルボートリガーでナイトへ斬りかかった。
ナイトはダークブレードで迎撃を試みる。再び接合部分へと。
ダークブレードが逆にエルボートリガーを斬る。直前、エルボートリガーが停止。
ダークブレードを空振るナイト。
そのナイトを跳ね上げるような衝撃と痛みが襲う。
シャドームーンが脚を蹴上げて、踵から伸びるレッグトリガーで切り上げていたのだ。
銀の世紀王が振るう紅い刀身と赤いライダーが振るう銀の刀身によって幾重にも散る火花。
更に右手のエルボートリガーでナイトへ斬りかかった。
ナイトはダークブレードで迎撃を試みる。再び接合部分へと。
ダークブレードが逆にエルボートリガーを斬る。直前、エルボートリガーが停止。
ダークブレードを空振るナイト。
そのナイトを跳ね上げるような衝撃と痛みが襲う。
シャドームーンが脚を蹴上げて、踵から伸びるレッグトリガーで切り上げていたのだ。
「ヴァン!! ……うぉっ!」
ドラグブレードでサタンサーベルと鍔迫り合いをしながら、ナイトに焦慮の声を掛ける龍騎。
その龍騎の腹にシャドームーンの右拳が刺さる。
不意を打たれ、たたらを踏む龍騎。
その龍騎の腹にシャドームーンの右拳が刺さる。
不意を打たれ、たたらを踏む龍騎。
「薔薇の尾!」
追撃しようとするシャドームーンの足が、翠星石の叫びと共に止まる。
翠星石から伸びる薔薇の花弁が一繋がりとなって、シャドームーンに巻きついた。
龍騎とナイトがシャドームーンから離れたため、ようやく援護が可能となった。
しかしシャドームーンの指先から発射されたシャドービームに容易く切断される薔薇の尾。
それでも龍騎とナイトが体勢を立て直す時間は稼ぐことはできた。
翠星石から伸びる薔薇の花弁が一繋がりとなって、シャドームーンに巻きついた。
龍騎とナイトがシャドームーンから離れたため、ようやく援護が可能となった。
しかしシャドームーンの指先から発射されたシャドービームに容易く切断される薔薇の尾。
それでも龍騎とナイトが体勢を立て直す時間は稼ぐことはできた。
龍騎もナイトも翠星石も、ここに来て明確に認識していた。
サバイブ二人にも有利を取れる、シャドームーンの強さの由来。
それは単純な性能の高さだけでは説明が付かない。
自身の高性能を活かし切る、判断力や応用力。
即ち類稀な戦闘のセンスに由来する物だと。
サバイブ二人にも有利を取れる、シャドームーンの強さの由来。
それは単純な性能の高さだけでは説明が付かない。
自身の高性能を活かし切る、判断力や応用力。
即ち類稀な戦闘のセンスに由来する物だと。
かつてシャドームーンが剣聖ビルゲニアと戦った際。
シャドームーンは改造が完了したばかりで、全く戦闘経験が無かった。
しかしシャドームーンは剣の戦いでビルゲニアを殺し、世紀王としての強さを見せ付けた。
またシャドームーンが仮面ライダーブラックと戦った際。
仮面ライダーブラックは同じ世紀王でありながら、訓練と実戦の中で能力を向上させており、
幾多のゴルゴムの怪人を倒した実績を持つ、正に歴戦の強者。
基礎的なスペックはシャドームーンが上回っていたが、それでも仮面ライダーブラックとの差を埋めきれる物ではなかったはずだ。
実際、戦いは仮面ライダーブラックの有利に進んでいた。
しかし創世王がシャドームーンを秋月信彦の姿に戻した瞬間、仮面ライダーブラックに隙が生まれた。
その一瞬の隙を突いてシャドームーンが勝利したのだ。圧倒的な戦闘経験の差を覆してである。
これらの例から推測できるようにシャドームーンには秋月信彦が先天的に持っていた物か、脳改造によって後天的に与えられた物か定かでは無いが、
戦闘に関することならば類稀な才覚を有している。
シャドームーンは改造が完了したばかりで、全く戦闘経験が無かった。
しかしシャドームーンは剣の戦いでビルゲニアを殺し、世紀王としての強さを見せ付けた。
またシャドームーンが仮面ライダーブラックと戦った際。
仮面ライダーブラックは同じ世紀王でありながら、訓練と実戦の中で能力を向上させており、
幾多のゴルゴムの怪人を倒した実績を持つ、正に歴戦の強者。
基礎的なスペックはシャドームーンが上回っていたが、それでも仮面ライダーブラックとの差を埋めきれる物ではなかったはずだ。
実際、戦いは仮面ライダーブラックの有利に進んでいた。
しかし創世王がシャドームーンを秋月信彦の姿に戻した瞬間、仮面ライダーブラックに隙が生まれた。
その一瞬の隙を突いてシャドームーンが勝利したのだ。圧倒的な戦闘経験の差を覆してである。
これらの例から推測できるようにシャドームーンには秋月信彦が先天的に持っていた物か、脳改造によって後天的に与えられた物か定かでは無いが、
戦闘に関することならば類稀な才覚を有している。
おそらく下手な小細工や小手先の技術ではシャドームーンを倒しきることはできない。
シャドームーンを倒すには、全霊を尽くす他無いだろう。
シャドームーンを倒すには、全霊を尽くす他無いだろう。
今度は如雨露で成長させた植物を伸ばす翠星石。
植物はまたもシャドービームで焼き尽くされる。
植物細胞が燃焼して黒煙を撒き散らす。
その向こうから、既に聞き慣れた電子音声が鳴り響いた。
植物はまたもシャドービームで焼き尽くされる。
植物細胞が燃焼して黒煙を撒き散らす。
その向こうから、既に聞き慣れた電子音声が鳴り響いた。
『STRANGE VENT』
『TRICK VENT』
『TRICK VENT』
煙の向こうからナイトが姿を現す。
その後ろからナイトが飛び出して来る。
更に背後の煙から出て来たのはナイト。
ナイトが次々と煙から姿を現す。その人数は三人や四人では無い。
しかしシャドームーンは一度そのトリックを経験していた。
文字通りトリックを司るアドベントカードの効果。
自身の分身を複数体作り出す能力・シャドーイリュージョン。
その後ろからナイトが飛び出して来る。
更に背後の煙から出て来たのはナイト。
ナイトが次々と煙から姿を現す。その人数は三人や四人では無い。
しかしシャドームーンは一度そのトリックを経験していた。
文字通りトリックを司るアドベントカードの効果。
自身の分身を複数体作り出す能力・シャドーイリュージョン。
『COPY VENT』
散開したナイトに囲まれた形となるシャドームーン。
シャドームーンはその場を動かない。動く必要が無い。
何故なら周囲を囲まれたその位置こそシャドームーンにとっては、全体を一度に攻撃できる好位置だからだ。
両手とそしてシャドーチャージャーからシャドービームを電撃状、それも可能な限り多方向へ拡散するように放つ。
当然、威力も拡散される。しかし今はそれで構わない。
拡散するシャドービームが次々と虚像を透過して行く。
その中で一人のナイトが被弾。
威力が拡散しているため、ナイトにさしたるダメージは無い。
しかし被弾したのは間違いない。即ちそれが実体。
今度は本命、直線状に威力を収束させたシャドービームをナイトに放った。
ナイトは横っ飛びに回避。予測をしていたであろう反応の早さ。
即座にサタンサーベルで切りかかる。
そのシャドームーンの背中に衝撃が走った。
完全に不意を衝かれ、体勢の崩れるシャドームーン。
シャドームーンが振り向けば、そこには虚像であるはずのナイトが斬りかかって来ていた。
シャドームーンはその場を動かない。動く必要が無い。
何故なら周囲を囲まれたその位置こそシャドームーンにとっては、全体を一度に攻撃できる好位置だからだ。
両手とそしてシャドーチャージャーからシャドービームを電撃状、それも可能な限り多方向へ拡散するように放つ。
当然、威力も拡散される。しかし今はそれで構わない。
拡散するシャドービームが次々と虚像を透過して行く。
その中で一人のナイトが被弾。
威力が拡散しているため、ナイトにさしたるダメージは無い。
しかし被弾したのは間違いない。即ちそれが実体。
今度は本命、直線状に威力を収束させたシャドービームをナイトに放った。
ナイトは横っ飛びに回避。予測をしていたであろう反応の早さ。
即座にサタンサーベルで切りかかる。
そのシャドームーンの背中に衝撃が走った。
完全に不意を衝かれ、体勢の崩れるシャドームーン。
シャドームーンが振り向けば、そこには虚像であるはずのナイトが斬りかかって来ていた。
それはナイトの姿をした龍騎であった。
龍騎が使用したアドベントカードはストレンジベント。
それはランダムで全てのライダーが持つアドベントカードのいずれか一つに変化する効果がある。
そして変化したカードはベルデが所有していたコピーベント。
その効果は他のライダーを姿はおろか能力までも模倣することができる。
龍騎が使用したアドベントカードはストレンジベント。
それはランダムで全てのライダーが持つアドベントカードのいずれか一つに変化する効果がある。
そして変化したカードはベルデが所有していたコピーベント。
その効果は他のライダーを姿はおろか能力までも模倣することができる。
速度に優れたナイトの長所を活かし、更にダークブレードでシャドームーンの背後から何合も切り込んで行く龍騎。
シルバーガードを抜くことはできないが、それによって4000APの威力が衝撃としてシャドームーンに叩き込まれる。
シャドームーンは振り向きざまにレッグトリガーを蹴上げる。
ダークブレードとぶつかり鍔迫り合いになるレッグトリガー。
再び背後からダークブレードの衝撃を受けるシャドームーン。
本物のナイトも高速の斬撃でシャドームーンを襲う。
高速斬撃で攻め立てる二人のナイト。
しかもシャドーチャージャーからのビームを警戒してか、二人ともが執拗に側面へ回り込んで行く。
シャドームーンはサタンサーベルとエルボートリガーで応戦するが、
腕を身体の外側に伸ばしながらとなるため、防戦一方になる。
シルバーガードを抜くことはできないが、それによって4000APの威力が衝撃としてシャドームーンに叩き込まれる。
シャドームーンは振り向きざまにレッグトリガーを蹴上げる。
ダークブレードとぶつかり鍔迫り合いになるレッグトリガー。
再び背後からダークブレードの衝撃を受けるシャドームーン。
本物のナイトも高速の斬撃でシャドームーンを襲う。
高速斬撃で攻め立てる二人のナイト。
しかもシャドーチャージャーからのビームを警戒してか、二人ともが執拗に側面へ回り込んで行く。
シャドームーンはサタンサーベルとエルボートリガーで応戦するが、
腕を身体の外側に伸ばしながらとなるため、防戦一方になる。
側面に回りこんだナイトが、更に背後へと斬りかかるが、
斬撃はシャドームーンの頭上を通り抜けた。
屈み込んでいたシャドームーンは、その反動で一気に跳躍。
高度40メートルまで達することが可能な瞬発力は、一瞬で二人のナイトを遥か上空から見下ろす高さまで到達した。
シャドーチャージャーの内部から光りが漏れている。
斬撃はシャドームーンの頭上を通り抜けた。
屈み込んでいたシャドームーンは、その反動で一気に跳躍。
高度40メートルまで達することが可能な瞬発力は、一瞬で二人のナイトを遥か上空から見下ろす高さまで到達した。
シャドーチャージャーの内部から光りが漏れている。
「ビームが来るぞ!!」
上田の叫び声が上がる。
F-5のエリアにあった公園でシャドームーンの襲撃を受けた上田は、それを目撃していた。
ゼール種のミラーモンスターの群れを一挙に殲滅したシャドームーンの戦術。
今のシャドームーンの態勢は、あの時と全く同じだった。
F-5のエリアにあった公園でシャドームーンの襲撃を受けた上田は、それを目撃していた。
ゼール種のミラーモンスターの群れを一挙に殲滅したシャドームーンの戦術。
今のシャドームーンの態勢は、あの時と全く同じだった。
シャドームーンのシャドーチャージャーと両手から同時にシャドービームが放たれた。
電撃状に拡散するそれは、二人のナイトの上空全てを覆い尽くすエネルギーの濁流にして暴流。
二人のナイトみならず周囲の空間一帯をその破壊的なエネルギーが包み込むべく、上空から襲い掛かる。
しかしシャドービームの光は、影によって塗り潰される。
巨大な植物の影。
翠星石が育てた植物が、二人のナイトの上に覆い被さるように伸びていた。
電撃状に拡散するそれは、二人のナイトの上空全てを覆い尽くすエネルギーの濁流にして暴流。
二人のナイトみならず周囲の空間一帯をその破壊的なエネルギーが包み込むべく、上空から襲い掛かる。
しかしシャドービームの光は、影によって塗り潰される。
巨大な植物の影。
翠星石が育てた植物が、二人のナイトの上に覆い被さるように伸びていた。
植物にシャドービームが被弾。
膨大なエネルギーが爆発に変換される。
高密度の繊維でできた植物が微塵となって散開。
それでもなお余剰となったエネルギーが、爆風として二人のナイトに頭上から叩き付けられる。
粉塵や散乱する植物の破片に目を、爆発の残響に耳を奪われた二人のナイトは、
着地したシャドームーンがシャドービームで狙っていることに気付いていない。
コピーベントの効果が切れた龍騎に収束されたシャドービームが発射された。
伸びた植物が龍騎の身体を弾き飛ばす。
シャドービームは龍騎を掠め、植物すら貫通して消え去って行った。
翠星石はシャドームーンと龍騎の間に立つ。
膨大なエネルギーが爆発に変換される。
高密度の繊維でできた植物が微塵となって散開。
それでもなお余剰となったエネルギーが、爆風として二人のナイトに頭上から叩き付けられる。
粉塵や散乱する植物の破片に目を、爆発の残響に耳を奪われた二人のナイトは、
着地したシャドームーンがシャドービームで狙っていることに気付いていない。
コピーベントの効果が切れた龍騎に収束されたシャドービームが発射された。
伸びた植物が龍騎の身体を弾き飛ばす。
シャドービームは龍騎を掠め、植物すら貫通して消え去って行った。
翠星石はシャドームーンと龍騎の間に立つ。
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