ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- Ⅲ

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ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- Ⅲ  ◆EboujAWlRA



『ごめんね、イデオ』

別に、謝って欲しかったわけなんかじゃない。

『あなた一人、寂しい思いをさせて……
 でもね、あなたやお父さんがイヤになったから、家を出たわけじゃないのよ。
 母さん、どうしても狭間の家にはいられなくなって……』

母さんの言葉の通り、まだ幼い僕は心が潰れそうなほどの寂しさを覚えていた。
母さんがそうだったように、僕も狭間の家が嫌いだった。
父が居ても、母の居ない狭間の家は嫌いだった。
母さんも妹のレイコも居ない今の狭間の家は、僕の心を殺していく家だった。

「もういいよ、母さん」

それでも、僕はなんでもないように装った。
僕はもう子供なんかじゃないから。
母さんが狭間の家で味わった心労だって理解している。
幼い妹と一緒に、これから心身ともに大人になっていく僕を養えないということも理解している。
だから、別に置いていったことを謝って欲しかったわけじゃない。

それでも母さんが僕のことを愛しているのなら、謝って欲しくなかったんだ。

ただ。

『ごめんね、イデオ』

これからはずっと一緒に居ると、そう言って欲しかっただけなんだ。


    ◆    ◆    ◆


ハザマイデオが目を開けると、一人の少女が横たわっていた。
ケルベロス、上級悪魔に襲われんとしている少女。

「メギド」

ハザマは咄嗟に魔法を口にした。
慣れない正義感、しかし、考えるよりも早く身体が反応した。
すでに大きな傷を負っていたケルベロスは反応することもなく即死。
これこそが神の力だ。
悪魔すらひれ伏す、絶対の力だ。
それでも、ハザマには出来ないことがあまりにも大きすぎた。

――――例えば、今死のうとしている少女を救うことすら出来ない。

ハザマが無力感に苛まれている中で、少女は手を伸ばした。
自身を求めているのかと思ったが、違った。
少女は切り取られた、いや、食い千切られた右腕に左腕で触れる。
右腕は光に包まれ、消えていく。
そして、一人の少女が現れた。

「……レナ」

ハザマは、無表情を崩した。
崩さざるを得なかった。
もう会うこともないと思っていた人物。
会うことが出来ないと思っていた人物。
夢ならば、あまりにも悪趣味すぎる。

――――約束を見失いそうになっているハザマの前にレナが現れて答えを与えてくれるとでも言うのか。

『頑張って』

しかし、レナが口にした言葉は答えなどではなかった。
ただ、頑張れ、と。
自分を後押しするための言葉を口にした。
レナは自身を信じていてくれている。
それが有難く、同時に何よりも重かった。

「頑張れ……か」

ハザマはポツリと言葉を漏らした。
そこに、威厳など欠片もない。
剥き出しのハザマイデオ、あまりにも未熟な子供がただ立っている。
レナが古手梨花の死と同時に消えていく。
白昼夢のような出来事だった。

「僕は、なにを頑張ればいいんだ……レナ」

光を捕まえるように手を伸ばす。
もはや一人称を『僕』に戻したことに、ハザマ自身が気づいていない。
しかし、光はハザマの手を擦り落ちていく。
ハザマのもとには何も残らない。

「教えてくれよ……」

ハザマは膝から崩れ落ちる。
北岡は自分を頼っているといってくれた。
上田は自分の背中から離れないでいてくれた。
レナは自分を頑張れと励ましてくれた。


――――それが、どうしようもなく重い。


ハザマの心では、耐えることが出来ない。
もしも、自分の選択が失敗だったら。
その時に死ぬのは、自分だけじゃない。

ゆっくりと両腕を地面へと落とし、何かに従属するように頭を下ろす。
涙を堪えるために目を押さえ、それでも震える声でハザマは呟いた。


「僕と、一緒に居てくれよ……レナ……蒼嶋……」


――――神の力を手に入れた少年は、どうしようもないほどに人間だった。


【二日目/早朝/???】
狭間偉出夫@真・女神転生if...】
[装備]:斬鉄剣@ルパン三世、ベレッタM92F(7/15)@バトルロワイアル(小説)
[所持品]:支給品一式×2、インスタントカメラ(数枚消費)@現実、真紅の下半身@ローゼンメイデン、USB型データカード@現実、ノートパソコン@現実、
     鉈@ひぐらしのなく頃に、琥珀湯×2
[状態]:人間形態、魔力消費(極大)
[思考・行動]
0:殺し合いから他の者達と一緒に脱出する。
1:レナ……蒼嶋……
[備考]
※参加時期はレイコ編ラストバトル中。
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを閲覧しました。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページのユーザ名はtakano、パスワードは123です。
またこれらを入手したことにより、以下の情報を手に入れました。
全参加者の詳細プロフィール
全参加者のこれまでの動向。
現時点での死者の一覧。
各参加者の世界観区分。
nのフィールドの詳細及び危険性。
「彼」が使用したギアスの一覧。
※目的の欄を閲覧することはできませんでした。




    ◆    ◆    ◆




どうして、こうなったのだろうか。



私は全てが欲しかったわけじゃない。



ただ、好きな人達と一緒に居たかっただけだったのに。



父と、姉妹と、貴方と。



ただ、一緒に居たかっただけなのに。



今の私は、ひとりぼっちだ。



月の怪物の背後にすら人が居るのに、私の背中には誰もいない。



私の前にだって、もう誰も居ない。



――――寄り添ってくれる姉妹も、もういない。



あんなに嫌だったアリス・ゲームの勝者に、私は近づいてしまった。



――――大きな背中を見せてくれる彼の姿は、もうない。



過ごした想い出は数えるほどしかないのに、後悔は数え切れないほどに浮かんでくる。




もっと早く、お礼を言いたかった。




いつまでも冷たく当たったことを、謝りたかった。



本当は――――――――



『守るよ。劉鳳さんの代わりとかじゃなくて……俺が守りたいから守るんだ』



――――本当は、私だって貴方を守りたかった。



なのに。



貴方の優しさも。



貴方との想い出も。



なによりも、貴方自身を。



全部、私が壊したんだ。



    ◆    ◆    ◆


「ウッ……アッ、アアアア……」

翠星石の瞳から涙から零れた。
鏡の奥には、蒼星石が居る。
髪の長い蒼星石が、そこに居る。
翠星石は鏡へと手を伸ばした。
しかし、鏡は翠星石を拒絶するように蒼星石と手を触れ合うだけで留める。

「ア……アア……」

喉から漏れる言葉は言葉でもない哀しみの音。
孤独が鳴らす、罪の音。
鏡の中に居る蒼星石は、翠星石自身。
双子であるがゆえに、常に翠星石を咎める存在。
蒼星石の身体は、血に濡れている。
翠星石が犯した罪に、蒼星石まで染まっている。

胸が痛む。
罪の痛みと、身を焼く太陽の痛み。
太陽に近づきすぎたイカロスが翼を焼かれたように。
翠星石もまたキングストーンの巨大な力の負荷に襲われていた。

それでも、翠星石は殺し合いに乗る。
罪にまみれた翠星石が罪を無くすには、奇跡に縋るしかない。
愛をもう一度見るには、奇跡に頼る他ないのだから。

「ア、アアアッ………!」

言葉も無く、翠星石はただ泣き続けた。

【二日目/朝/???】
【翠星石@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]真紅と蒼星石と水銀燈と雛苺のローザミスティカ@ローゼンメイデン、キングストーン(太陽の石)@仮面ライダーBLACK(実写)
   ローゼンメイデンの鞄@ローゼンメイデン、庭師の鋏@ローゼンメイデン、庭師の如雨露@ローゼンメイデン
[支給品]支給品一式(朝食分を消費)、真紅のステッキ@ローゼンメイデン、情報が記されたメモ、確認済支給品(0~1)
[状態]首輪解除済み、全身に火傷(回復中)、全身にダメージ、精神的ダメージ(極大)
[思考・行動]
0:殺し合いに優勝する。
1:銀色オバケ(シャドームーン)を殺す。
[備考]
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※スイドリームが居ない事を疑問に思っています。
※ローザミスティカを複数取り込んだことで、それぞれの姉妹の能力を会得しました。
※キングストーンを取り込んだことで、能力が上がっています。
 またキングストーンによる精神への悪影響が見られ、やがて暴走へ繋がる危険性があります。
※nのフィールドに入る能力を取り戻しました。



    ◆    ◆    ◆



どうしてこうなったんだろう。

私は普通に生きていたはずなのに。

お姉ちゃんは死んで。

こなちゃんも死んで。

ゆきちゃんも死んで。

みなみちゃんも死んで。

ゆたかちゃんも死んで。

ルルーシュ君も死んで。

五エ門さんも死んで。

アイゼルさんも死んで。

ジェレミアさんも死んで。

私は、生きている。

なんで、私だけ生きているんだろう。

私なんかが、生きてるんだろう。


チラッと横を見るだけで。


――――血に濡れた道を歩いている私なんかが。


    ◆    ◆    ◆


ジェレミアの死は、つかさの精神を蝕んでいた。
多くの人が死に、それなのに自分は生きている。
二人の人間を殺した自分が生きてしまっている。
どこか納得出来ない現実だった。
つかさが生きていること自体が問題なのではないかと、勘違いしてしまうような心持ちになっている。
そんなつかさの脳にV.V.の声が思い出される。

『もう一度会いたい人はいない?』

居ないわけがない。

『理想の世界が欲しくはない?』

欲しくないわけがない。

『短すぎる人生に未練はない?』

ないわけがない。

『本当に、それで後悔はないの?』

それでも、後悔することなんてつかさには許されない。

――――感謝、している。

こんな自分を赦してくれた人を。

――――私は……貴公らと出会えた事を、誇りに思う。

後悔することで、彼の騎士の誇りを穢してはいけない。

それでも、つかさの身体は限界だった。
精神が肉体に及ぼす効果は確かに存在する。
心が限界を迎えている以上、無理を推した身体を奮い立たせるものはもうない。
つかさは、ついにそこに座り込んだ。
一人だけだったから、という理由も強いだろう。

「つかさちゃん……」

そこに現れたのは北岡秀一だった。
北岡が求めたものは、つかさの姿。
心身ともに疲弊しきったつかさのことが心配だった。

「北岡さん……」
「ッ……」

その目を見て確信する、つかさは危うい状態であることを。
北岡がどう声をかけるべきか、その言葉を探っていると先につかさが話し始めた。

「お姉ちゃん……弁護士さんになりたかったんです」
「俺と一緒か」
「私は全然考えてないのに……そんな立派な夢なんてないのに……!
 お姉ちゃんの代わりもできないのに……!」
「……そんなこと言うなよ、つかさちゃん」

北岡が、ついに嘆きの声を出す。
それ以上は聞けなかった。
つかさが自分を否定する言葉を聞くことが出来なかった。
五エ門やつかさとの交流で、いわゆる『お人好し』に流されかけていた北岡には耐えられなかった。

「もっと自分のために生きなよ……生きてくれよ。
 そうじゃないと、俺がバカみたいじゃないか」

そして、北岡は懸命に言葉を探す。
沈黙をすればつかさは自己嫌悪の言葉を続けるだろう。
それまでに自身の気持ちを言葉にしなければいけない。

「俺も弁護士だけどさ、立派な目的があったわけじゃないんだよ。
 いや、つかさちゃんのお姉ちゃんもそうだってわけじゃないよ?
 だって、俺とつかさちゃんのお姉ちゃんは別の人なんだから。
 それと同じで、つかさちゃんも誰とも一緒じゃないんだよ」

弁護士のくせに人を慰める言葉も出てこない。
人を傷つける言葉なら簡単に出てくるというのに。
北岡は自嘲の笑みを浮かべながら、言葉を続けた。

「だからさ、自分を捨てることだけはやめてくれよ……
 五エ門と一緒に居たつかさちゃんまで居なくなったら、影響されちまった俺が馬鹿みたいだ」

つかさはその言葉に、少しだけ顔を上げた。
それでも顔は晴れない。
北岡は苦心しながら、頼み込むように言葉を続けた。

「……頼むよ、つかさちゃん」

残酷な言葉であることはわかっている。
これがつかさの心にまた重荷を載せることは、わかっているのだ。
それでも、つかさをつかさで居させるためには。

「俺を馬鹿にしないでくれ」

こんな言葉しか、出てくれなかった。

【二日目/朝/???】
柊つかさ@らき☆すた】
[装備]空飛ぶホウキ@ヴィオラートのアトリエ
[支給品]支給品一式×4(水のみ3つ、鉛筆一本と食糧の一部を消費)、確認済み支給品(0~1) 、レシピ『錬金術メモ』、陵桜学園の制服、かがみの下着、
    食材@現実(一部使用)、パルトネール@相棒(開封済み)、こなたのスク水@らき☆すた、メタルゲラスの角と爪、
    咲世子の煙球×1@コードギアス 反逆のルルーシュ、ジェレミアの確認済み支給品(0~1)、ジェレミアの仮面
[状態]精神的疲労(極大)、ダメージ(中)
[思考・行動]
0:殺し合いから脱出する。
1:錬金術でみんなに協力したい。
2:仲間と合流する。
[備考]
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※錬金術の基本を習得しました。他にも発想と素材次第で何か作れるかもしれません。
※アイゼルがレシピに何か書き足しました。内容は後続の書き手氏にお任せします。
※会場に連れ去られた際の記憶が戻りました。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを閲覧しました。

【北岡秀一@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]:レイの靴@ガン×ソード、ゾルダのデッキ@仮面ライダー龍騎(一時間変身不可)、ブラフマーストラ@真・女神転生if…
[所持品]:支給品一式×3(水×2とランタンを消費)、CONTRACTのカード@仮面ライダー龍騎、CONFINE VENTのカード@仮面ライダー龍騎
     FNブローニング・ハイパワー@現実(12/13) 、RPG-7(0/1)@ひぐらしのなく頃に、榴弾×1、デルフリンガーの残骸@ゼロの使い魔、
     五ェ門の確認済み支給品(0~1)(刀剣類では無い)、昇天石×1@真・女神転生if…、リフュールポット×1、デルフリンガーの残骸@ゼロの使い魔、
     贄殿遮那@灼眼のシャナ
[状態]ダメージ(中)
[思考・行動]
0:殺し合いから脱出する。
1:つかさに対する罪悪感。
2:仲間と合流する。
[備考]
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※一部の支給品に制限が掛けられていることに気付きました。
※病院にて情報交換をしました。
※レナ、狭間と情報交換をしました。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを閲覧しました。
※会場に連れ去られた際の記憶が戻りました。


     ◆    ◆    ◆


最初は純粋なものでした。
ただ、会いたいという気持ち。
もう二度と会えない人に、死んでしまった人に会うために、奇跡を求めただけでした。
きっと、その考えだけならばなんの罪でもなかったんでしょう。
人間が奇跡を祈るなんて日常の出来事なんですから。
僕もいつかは奇跡を祈ることを想い出に変えて、ただ生きていたでしょう。
だから、本当の罪は、本当の奇跡を見てしまったこと。
そして、奇跡に縋ってしまったこと。
そのために、ひどいことをしてしまったこと。
純粋な願いだろうと、それが現実に触れた途端、欲望に変わってしまう。
僕の願いは他人を踏み台にしてでも叶えるものじゃなかった。
僕は、他の世界で見たんです。
『別の僕』と笑いあう、『ノネットさん』の姿を。
そこに僕が居るのに、そこには僕が居ない。
ならどうする?
またギアスを利用して別の僕を殺す?
また、他人を踏み台にする?
僕は逃げ出すことしか出来ませんでした。
そして、僕は僕が集めた人たちが殺し合いをし出したことを知りました。
死んでしまうことが贖罪じゃないとはわかっています。
それでも、僕はもう生きられません。
ただ、これだけは何かに残したいんです。
僕はただ。



――――ノネットさんのことが好きだったんです。



    ◆    ◆    ◆


上田次郎は銃を握りしめ、こめかみから血を流している死体の傍で気絶していた。
上田が求めたものは安全な場所。
つまり、誰もが近寄らない場所である。
V.V.が特別に用意したギアス使いである銀髪の少年の部屋は隔離されている。
志々雄はもちろん、ゾンビ兵も立ち寄れない半ば牢屋じみた部屋だ。
突然、光が溢れだし、気づけば目の前には死体がひとつ。
上田の聡明な頭脳はこの現実に認識機能が溺れだし、気絶した。
しかし、上田は天才である。
何度も何度も気絶し続けているわけではない。
すぐさま、時間にして十分ほどで気絶から目を覚ました。
これは驚くべき速度だ。
通常の人間ならば恐らくそのままたっぷり六時間は気絶し続けるであろう。
少なくとも、上田次郎はそう主張するはずだ。

「君も奇跡にすがってしまった人間か」

奇跡の末路を前にして上田は言葉を漏らす。
思えば、こんな人物は大勢居た。
偽りの奇跡に目を眩ませて、真実を見失う人間。
山田とともに偽りの奇跡を暴露するたびに、このような人間の姿を見てきた。

――――こんなはずじゃない。

――――先生がイカサマなわけがない。

――――イカサマなら私たちは救われないのか。

馬鹿げている。
そもそもがイカサマなのだ、真実ではないのだ。
救いは真実の中にしかない。
イカサマで救われるのならば、それは救いなのではない。

「……君の無念はわからないが」

上田は銀髪の少年をベットに寝かせ、まぶたを閉じさせる。
そして傷跡を隠すように顔に布をかけ、手を合わせた。

「ゆっくりと眠るんだな……君は、よくやったさ。
 その結果がどうあれ、愛情は大事なものさ」


【ライ@コードギアス 反逆のルルーシュ LOST COLORS 死亡】


【二日目/朝/???】
【上田次郎@TRICK(実写)】
[装備]ニンテンドーDS型探知機
[支給品]支給品一式×4(水を一本紛失)、富竹のポラロイド@ひぐらしのなく頃に、デスノート(偽物)@DEATH NOTE、予備マガジン3本(45発)、
    上田次郎人形@TRICK、雛見沢症候群治療薬C120@ひぐらしのなく頃に、情報が記されたメモ、浅倉のデイパックから散乱した確認済み支給品(0~2)、
    ファサリナの三節棍@ガン×ソード、倭刀@るろうに剣心、レイ・ラングレンの銃@ガン×ソード
[状態]額部に軽い裂傷(処置済み)、全身打撲
[思考・行動]
0:誰かと合流する。
[備考]
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。



    ◆    ◆    ◆



これが俺の速さだ、俺の文化だ。



誰も止めるな、俺は俺の速さだけを走る。



誰といても、俺は俺なんだから。





    ◆    ◆    ◆


――――これはストレイト・クーガーが意識を失っていた時のこと。


「……どうやら、生きているようだな」

ストレイト・クーガーの視界に広がった世界は、異様な世界だった。
血管を思わせる脈が上下左右の壁に関係なく這り巡っている。
その中に、一つの存在があった。
それは人の形をしていなかった。
単純とも複雑とも取れる、抽象画のようなフォルム。
立体された絵画のような異形の存在が、そこに立っていた。

田村玲子だ」

異形の存在、田村玲子は短く答える。
文化人を自称するクーガーはその意味を察する。
田村玲子。
後藤という強敵を倒した際に居着いた恩人であり、同居人だ。
本来ならば後藤との戦闘でゴールを迎えていたはずのクーガー。
そのボロボロであるはずのクーガーが未だに最速で走り続けられている要因の一つである。

「ほう……お前の目では、後藤はそう見えていたのか」
「はい?……っと、こいつは、また……」

後藤の姿を連想した瞬間、田村玲子と名乗った怪物が声を弾ませた。
そして、クーガーが田村玲子の視線を追うと、そこに後藤が立っていた。
ただし、クーガーとの激闘を繰り広げた際の獣じみた殺意や鋭さはない。
ただ、そこに立っているだけといった様子の後藤が居た。

「お前が後藤を考えれば、そこに後藤が現れる。そういうところだ、剥き出しの世界なんだよ。
 私たちに見えているものは同じだが、違うのだ。私には後藤はこう見えていた」

田村玲子がそういうと、突然奇異な存在が現れた。
それは形容しがたい形状をした、正真正銘の化け物。
後藤もまた怪物ではあったが、しかし、人型をしていた。
怪人と呼べる範囲であった。
しかし、田村玲子が見せた『後藤』はその範囲を大きくはみ出していた。
形容しがたい化け物が、今クーガーの目の前にいるのだ。

「私たちは点なのだな……実に面白い。
 点と点が触れ合っている……しかし、私たちの世界が触れ合うことはない」
「それ自体が奇跡、ってわけですか?」

茶化すように呟いたクーガーに、田村玲子という異形の怪物は大まじめに頷いた。
田村玲子にとって、目に映るものは全て真実なのだ。
世界という深淵を覗き込むための、重要な証拠なのだ。

「それに……お前の姿も異形と言えば異形だぞ」
「はい?」
「傷つきすぎている……私が補修しなければ走れないほどにな」

クーガーの身体はボロボロだ。
命の炎を原動力に走り続けているといっても過言ではないほどに。

「そこまで傷ついて、お前は何を求める。広い世界だが、急ぎすぎる理由もあるまい」

田村玲子にとって、それが疑問だった。
クーガーが命を縮めてまで速さを求める理由がわからない。

「文化的に生きましょうよ。喋れる以上は、考えられるうちは、獣のように生きたくはないですからね。
 その点、速さは良い。速ければ速いほどいろいろなことが出来る。
 速くなければ見れないものがあるなら、命もその通行料ってもんですよ」
「一理あるな」

田村玲子は頷いた。
何かをしなければ見れないものもある。
ついにはわからなかったが、自らが産んだ人間の子供に対して不思議な印象を持っていたことを思い出す。
あれも子供を産まなければ感じなかった印象だ。

「炎髪灼眼の少女を知っているか?」

そろそろクーガーが気絶から目覚める時間であることを田村玲子は感じ取る。
そこで田村玲子は、静かに考えていたことを口にすることにした。

「ああ、シャアさんですか」
「その少女の姿を思い描いてくれ」

シャナであるという訂正を行わずに、田村玲子もまたシャナを連想する。
そして、現れる二つの存在。
姿形の異なる全く別の二人。
しかし、それは紛れもなくシャナという存在だった。

「炎髪灼眼の少女を連想した姿が、私とお前では違うかもしれない。
 しかし、特徴をあげようと思えば、私とお前が口にする言葉は同じものになるんだ」

田村玲子の言う灼眼と、クーガーの指す灼眼は絶対的に違う。
しかし、それは田村玲子にとっての『灼眼』とクーガーにとっての『灼眼』が異なるだけのこと。
シャナの瞳は灼眼である、という認識は共通のものなのだ。

「私たちは違うものを見ているが、こうして触れ合うことが出来る。
 違う場所にいるのに、我々は共に居なければ生きていけないのだ」

田村玲子は声を弾ませた。
世界が見えた意味を、喜んでいる。

「私も失くしたものは多い……しかし、それでもお前の速さに惹かれている」
「これはこれは。熱烈なアプローチですねぇ」
「その速さの先に、人の意味がある……お前たちの能力に世界がある」

クーガーの軽口を受け流し、田村玲子は謎への興味を口にした。
そして、クーガーへと向き直る。

「だから、さっさと走ってこい。私はお前が走らねばその先が見えんのだ。
 早く、私にお前の文化というものを見せてくれ」

突き放すような声。
しかし、期待に満ちた声だった。
クーガーは笑みを深くする。

「遅くなれってならともかく、速くしろっていうのなら話は単純だ」

現状の問題はなんだ?
翠星石への対処。
V.V.の撃破。
シャドームーンとの決着。
全て、問題ない。
速さで取り落としたものは多い。
それでも、速さを捨てる理由にはならない。

――――速さの先に全てがある。

ストレイト・クーガーの、唯一で絶対の信念だ。



「一緒に探しましょうか、文化の真髄を」



【二日目/朝/???】
【ストレイト・クーガー@スクライド】
[装備]:なし
[所持品]:基本支給品一式、昇天石×1@真・女神転生if…、リフュールポット×1
[状態]:出血多量
[思考・行動]
0:速さを証明する。
[備考]
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※総合病院にて情報交換をしました。
※ギアスとコードについて情報を得ました。
※真司、C.C.らと情報交換をしました。
※田村玲子が同化して傷を塞ぎました。アルターについては応急的な処置なので寿命が延びる事はありません。
 それ以外の影響があるか否かは後続の書き手氏にお任せします。
※胸の傷が塞がりました。



     ◆    ◆    ◆



なぜ、人は闇を恐れるのか。

『思い出せ』

なぜ、一人の例外もなく闇を克服できないのか。

『思い出せ』

なぜ?

『思い出せ』

忘れてしまったのか、人が闇を恐れる真の理由を。

『思い出せ』

五万年の時を経て、なお、Cの世界に刻まれた恐怖の根源を。

『思い出せ』

太古の時代。

『思い出せ』

人の天に太陽など、月など、光り輝くものなどありはしなかった。

『思い出せ』

天に輝くは黒き太陽、天に煌くは影の月。

『思い出せ』

太陽に照らさせるたび胸をなでおろせ、月を見るたびに思い出せ。

『思い出せ』

人は、闇に支配されていたことを。

『思い出せ』

奴等はゴルゴム。



――――暗黒の世界を支配する者。



     ◆    ◆    ◆


――――鷹野三四が持ちだした、『殺し合いを破綻させるもの』とはなんなのか。


まず、大事なことは殺し合いそのものを破壊する支給品であり、かつV.V.が誰にも渡すことを是としないもの。

カシャ、カシャ、カシャ

『強大な武器』ではない。
神殺しの炎神そのものであるヒノカグツチやゴルゴムの神剣であるサタンサーベルを支給品しているのだから。
この二つを支給した以上、単純な武器で目くじらを立てて慌てる必要はないのだ。

カシャ、カシャ、カシャ

『ギアスを解除できる機械』ではない。
それを否定するのならばジェレミア・ゴットバルトを参加者として迎えている事実そのものが矛盾となる。
つかさやスザクにギアスキャンセラーを発動させた瞬間にも動かなかったことから、ギアスを解除されることも許容範囲である。

カシャ、カシャ、カシャ

『死人を蘇らせる宝具』ではない。
殺し合いそのものは破綻する。
だが、蘇るだけでは殺し合いからの脱出には結びつかない。

カシャ、カシャ、カシャ

『世界を渡る乗り物』ではない。
翠星石の例から、ギアスによって世界移動への忌避を植え付けられているが、ギアスは解除できる。
移動する手段はローゼンメイデンが持ち得ている以上、そのこと自体を慌てる必要はない。

カシャ、カシャ、カシャ

その大きさ自体が武器となる『巨大ロボット』ではない。
V.V.は殺し合いの加速を求めてランスロットを会場に仕込んでいた以上はV.V.が嫌うものではない。
また、鷹野が追い詰められても使用しなかったことも理由の一つに挙げられる。

カシャ、カシャ、カシャ

ならば、なんだ?
ライダーデッキでも、サタンサーベルでも、贄殿遮那でも、ヒノカグツチでも、ランスロットでも、煉獄でもない。
それでいて殺し合いを破壊してしまう、どうしようもない支給品――いや、『モノ』とは。

カシャ、カシャ、カシャ

すなわち『爆弾』であり、『動力』である。
他者はもちろん使用者をも殺す、一人の例外もなく全員を殺してしまうどうしようもない『爆弾』だ。
誰にも介入できない隔絶された異世界という、重要人物を拉致しても介入されない世界を成り立たす『動力』だ。

カシャ、カシャ、カシャ



――――その爆弾/動力は、名を【創世王】と言う。



「惨めなものだな、創世王よ」

死刑執行人じみた緊張感を漂わせながら、シャドームーンは創世王へと歩み寄る。
『人型』を持たず、『心臓』そのものの形を持った創世王。
シャドームーンが望み、キングストーンが導いた存在は創世王だ。
始まりから終わりまで、シャドームーンは創世王が黒幕であると信じていた。
もっとも、その予想は外れていたが。
しかしそれでも、この場には居た。
キングストーンはCの世界を利用した思考エレベーターによって、確かにシャドームーンを創世王の前へと導いた。

『シャドームーン……』

創世王は力なくシャドームーンの声に応えた。
ダロム、バラオム、ビシュム。
三人の大怪人は仮面ライダーBLACKによって撃破され、その仮面ライダーBLACKを倒すためにシャドームーンへと力を分け与えた。
もはや仮面ライダーBLACKは世紀王にあらず、あまりにも巨大なゴルゴム帝国の壁となった。
その仮面ライダーBLACK撃破のために、創世王は力を使い果たしたのだ。

時を司る【神霊】ズルワーンにも、審判と断罪の権能を司る【天罰神】アラストールにも劣りはしない。
創世王はまさしく、創世の王を名乗るに値する力を持ち得ていた。
しかし、現在の創世王は力の残りカスしか存在しない。
世紀王の決闘としては長すぎるブラックサンとシャドームーンの戦い。
すでに『地球を破壊する程度』の力しか残されていなかった創世王。

「……少々、予想とは違ったな。無様な姿だ、創世王よ」
『今はその口ぶりも許そう……ラプラスの魔に、あの憎き白兎に良いように扱われたことも事実ではある』

創世王はシャドームーンの口ぶりを流す。
本来ならばシャドームーンへと雷鎚を落とし、その非礼を罰するはずだというのに。
それが出来ないことが創世王の力が大量に無くなっていることの証明に他ならなかった。

『……シャドームーンよ。V.V.を殺せ』
「無論、そのつもりだ」
『ただでは殺せぬ、奴は不死の擬似コードを所有している。
 しかし、私がこの空間へと力の供給を断った瞬間、あの白兎の自在法も解ける。
 すでにCの世界との『接続者』ではなくなったV.V.は白兎の自在法によって不死を得ているだけだ。
 私がこの場から離れた瞬間、奴は惰弱な餓鬼に戻るのだ』
「ならば来い、創世王よ。キングストーンは揃っていないが……それでも私は次期創世王だ。
 貴様を受け入れることは出来る」

V.V.は創世王の莫大な、しかし、全盛期から比べると余りにも微々たる力によって不死を得ている。
シャルル・ジ・ブリタニアによってコードを奪われたことで、V.V.はすでにCの世界にアクセスすることが出来ないのだ。
死の瞬間にラプラスの魔に救われたV.V.。
絶望の間際に、様々な世界を垣間見たV.V.。
かの者の不死も、創世王が自由を得れば消える。
さしものラプラスの魔もコードを与えることはしなかった。

代わりに、物理攻撃に関するものへの不死性を持った擬似的なコードを与えたのだ。

『良かろう、シャドームーンよ。我がゴルゴムに牙を向き続けたブラックサンもすでに死んだ。
 V.V.に制裁を与え、五万年の時を超えてゴルゴム帝国を再建するのだ。
 人間どもが忘れた、だが、Cの世界に確かに刻まれた恐怖を思いださせるのだ』
「……ブラックサン、か」
『そうだ、私が白兎のもとから離れなかった理由の一つ。
 奴らの唯一の功績は、あの仇敵を無様にも死なせたことよ』

カッカッカ、と低い声を震わせて笑う。
仮面ライダーBLACKの死亡。
だが、その瞬間。
シャドームーンの気迫が変わった。
創世王はそれに気づかない。
それほどまでに仮面ライダーBLACKの死を喜んでいるのだ。

「……来い、創世王よ」

シャドームーンは右腕を伸ばし、創世王へと触れた。
その瞬間、キングストーンから光が溢れだし、創世王が光の粒に分解される。
そして、シャドームーンへと纏わりつき始める。

『ク、ククっクくくッくクク……!』

創世王が不気味な笑い声を漏らす。
シャドームーンは沈黙。
光を強さを増し、シャドームーンの肉体を高めていく。
世紀の王から、創世の王への下準備を行なっていくのだ。
その中で、創世王の笑いだけが木霊する。

『ク、ッククカカカ!!』

笑いの正体は、シャドームーンの肉体を強奪する笑い。
創世王の正体とは、創世王に他ならない。

『貰ったぞ、シャドームーン、いや、秋月信彦!
 不十分な肉体だが、死よりはマシよ! その意識を闇に沈めるがいい!』

世紀王が創世王になるのではなく、創世王が世紀王の肉体になるのだ。
当然のことだ。
人間が、ゴルゴムの王になれるわけがない。
所詮、人間など単なる生贄に過ぎない。



「――――創世王よ」



しかし、シャドームーンは悠然とした声を発する。

『……なんだ? なぜ、貴様がまだ生きている?』
「私はな、構わなかったんだ」

シャドームーンの声に呼応するように、シャドーチャージャーから発せられる光が強さを増す。
創世王の疑問を塗り潰すように、いや、『創世王の意思を塗り潰す』ように。
創世王ではない、シャドームーン自身の力が増していく。

『これは……キングストーン!? 私を、拒絶しているのか……!?』

全てが予想外。
所詮は器に過ぎない世紀王の意思を、塗り潰すことが出来ない。

「私は、それでも良いと思った」

シャドームーンは言葉を漏らす。
今までの威厳が、少し曇った声だった。
三神官も、この殺し合いでシャドームーンの恐怖に触れた人間も、シャドームーンの声だと認められないような声だった。

「ブラックサンに勝利し、私が創世王としての器であることを確かに証明できたのならば――――
 いや、シャドームーンがブラックサンよりも上であることをこの私自身が確信を持って頷けるようになれば。
 私は、その後のことなどどうでも良かった。
 貴様に意思を乗っ取られようとも、構わなかった」
『ぐぬ……!?』

創世王が呻き声を上げた。
本来ならばシャドームーンの意思は塗り潰され、創世王は新たな肉体を手に入れる。
そもそも、世紀王は創世王のための器なのだ。
ゴルゴムという暗黒帝国が人間などという家畜を王に据えるわけがないのだから。

「だが、もはや叶わぬ夢……貴様の愚かな考えが壊した泡沫の夢……」
『貴様……まさか……!?』
「貴様は殺す。世紀王の戦いを……私とブラックサンを愚弄した貴様だけは殺す」
『馬鹿な! キングストーンが、ゴルゴムの輝石が人間を選ぶわけが!』

キングストーンは創世王を無視するように翠緑の光を発し続ける。
新たなる創世王の誕生を祝福するように。

「キングストーンが私を選んだのではない。私がキングストーンを選び、貴様という意思を排除させているのだ」


――――真の主を称えるように!


「死ね、創世王。貴様に与える慈悲は、新たなる創世王の血肉となることだけだ」
『フ……フフ……フハハハ!』

創世王は、先ほどとは違った色を持った笑いを上げた。
それは敗者の笑いに他ならなかった。

『それもまた良し……新たなる強さの象徴よ!
 良いか、シャドームーンよ! 私が、ゴルゴムが敷いたレールも! これで最後だ!』

これこそが創世の王とまで呼ばれた者が始めて味わった、敗北の快感だった。
敗者だけが味わえる、従属の真の意味を理解した瞬間の快感だ。

『貴様が創る、貴様のゴルゴム帝国を!』

その帝国は地獄の別名だ。
かつて築き上げた自身の地獄を上回る、真の地獄。
その姿を、創世王は幻視した。

『地獄の底から眺めているぞ、シャドームーン!』

創世王の声が消え、キングストーンが放つ翠緑の光も消えていく。
シャドームーンは心身から溢れ出る力を感じ取っていた。
生まれ変わる力、唯一無二の力。
もはや、シャドームーンは並び立つものなき存在となってしまった。
シャドームーンは力から逃げるように天を仰いだ。
絶対の王となったのだ。

「……光太郎」

しかし、無人の広間に響いた声は聴衆を震わせる王の声ではなかった。
どこか暖かな温もりのある、寂しげな人の声だった。
この声こそがシャドームーンではなく、秋月信彦が発した声なのだ。
だが、それは秋月信彦の意思が蘇ったことを意味するわけではない。
むしろ、その逆だ。

ここではない未来には、シャドームーンが手に入れていたかもしれない心が存在する。
秘密結社ゴルゴムという組織は潰えた未来の世界の話だ。
シャドームーンがブラックサンとの、仮面ライダーとの戦いだけを求めた未来ならば。
ゴルゴムの世紀王であるシャドームーンではなく、南光太郎の強敵であるシャドームーンであったら。
あるいは、取り戻していたかもしれない人の心があった。
闇に鎖されていた、心の奥底にしぶとくこびりついていた秋月信彦としての心。
ゴルゴムの世紀王シャドームーンという存在に何ら影響を与えない微々たるものにすぎない。
そんなちっぽけな心でも、いつかの未来に咲いていたはずの人の心だ。


――――その心の芽が、吐き出した言葉とともに太陽の消えた空間へと溶けていく。


『シャドームーン』と『南光太郎』の因縁が消えてしまった瞬間、『秋月信彦』もまた死んでしまったのだ。


【創世王@仮面ライダーBLACK 消滅】
【秋月信彦@仮面ライダーBLACK 消滅】


【二日目/朝/???】
【シャドームーン@仮面ライダーBLACK(実写)】
[装備]:サタンサーベル@仮面ライダーBLACK、バトルホッパー@仮面ライダーBLACK
[支給品]:支給品一式、不明支給品0~2(確認済み)
[状態]:健康
[思考・行動]
0:V.V.を殺す。
1:V.V.を殺した後、他の参加者を皆殺しにする。
2:狭間との契約は守る。
3:翠星石を殺してキングストーン(太陽の石)を回収する。
【備考】
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※創世王を取り込みました、どれほどの変化があったかは後続の方に任せます。
※本編50話途中からの参戦です。
※会場の端には空間の歪みがあると考えています。
※空間に干渉する能力が増大しました。
※nのフィールドの入り口を開ける能力を得ました。

※狭間偉出夫とシャドームーンは契約を交わしました。内容は以下の通りです。
シャドームーンは主催者を倒すまで他の参加者を殺害しない。(但し正当防衛の場合は例外とする)
狭間はシャドームーンの首輪を解除する。
狭間はシャドームーンが首輪を解除するまで護衛する。
シャドームーンは首輪を解除できれば他の参加者と協力して主催者と戦う。(シャドームーンは会場脱出や主催者の拠点へ侵攻する際は他の参加者と足並みを揃える)
主催者(の黒幕)の殺害はシャドームーンに一任する。
主催者を倒した後はシャドームーンと他に生き残った全ての参加者で決着を付ける。
主催者を倒すまでにシャドームーンが誰かに殺害された場合、狭間は必ずその報復を行う。



    ◆    ◆    ◆



忘れることなど出来ない。


エレナの/巴の/光太郎の、救えなかったものの存在を。


忘れることなど出来ない。


カギ爪の/抜刀斎の/ゴルゴムの、全てを奪った非情の仇を。


忘れることなど出来ない。


――――なにも変えられなかった、俺達の無力を。


    ◆    ◆    ◆


「君が来たんだ」

V.V.は目の前に現れた存在に笑みを深める。
そして、自身の手札を思い出す。
重要な切り札は擬似コードとでも呼ぶべきもの。
それも、今はない。
奪われたコードはなく、与えられた擬似コードもなく。
ただのV.V.として敵と戦う必要があった。

「やあ、夜明けのヴァン

そう、敵――――ヴァンと戦わなければいけないのだ。

「今は無職のヴァンだ」

ヴァンはコツコツと地面を叩きながらV.V.へと歩み寄る。
ヴァンにとっても、V.V.にとっても理想の相手だった。
ヴァンにとって目の前の敵は殺せば馬鹿な宴は終わり、C.C.との関係性にもケリがつく相手だ。
V.V.にとってヴァンはC.C.と最も繋がりの深い相手であり、過去に囚われて復讐に走り続ける男だ。

それ以上の意味は無い。
キングストーンが奇跡を起こしても、ヴァンには関係がない。
ただ目の前に敵が居る。
目の前の敵を殺す。
ヴァンの世界はいつだって単純であり、それゆえに苦しみが付き纏っていた。
単純さを殺す複雑さに翻弄され続けたのが、ヴァンの人生だからだ。

「テメエのせいで仕事に失敗しちまってな」

それだけを言うと、ヴァンは蛮刀を構える。
ヴァンは初め、夜明けのヴァンだった。
そこでC.C.との護衛という仕事を得ることで自身が無職であることを確認し、無職のヴァンに転身。
その後、C.C.から契約を破棄されることで再び無職に戻り、そのC.C.と再契約を結ぶことなくC.C.は死亡した。
つまり、現在は無職のヴァンだ。
V.V.を殺し、C.C.との関係性を終わらせない限り、ヴァンが夜明けにありつくことはない。

「だからお前を殺すぜ」

無茶苦茶な理論だが、ヴァンはそれ以上に話すことはないと、お前を殺すと切っ先で訴えていた。
V.V.もまたこれ以上の会話は出来ないと判断すると、一つのカードデッキを構えた。

「変身」

紋章もない、単なるカードデッキ。
V.V.に、裸の王様に残された最後の鎧。
恐怖はない。
少年の時代は常に死と隣り合わせだった。
違うのは、隣には弟がもう居ないということだけだ。

「今なら、僕を殺せるよ。
 もうラプラスは居ないし、自在式に力を供給する創世王も離れてしまったからね。
 だから……これで、やっと君たちの本音を聞ける」

V.V.は仮面ライダーガイのブランク体へと変身する。
あまりにも弱い、ヴァンがナイトへと変身できれば圧倒されてしまうであろう状態。
しかし、V.V.は西洋剣を手に取ってヴァンへと向き合う。

「ねえ、ヴァン。君は死者の蘇生に興味はないかい?
 未来よりも過去が欲しいとは思わないかい?」
「死んだ奴は、生き返らねえ」

ヴァンは弾けるようにV.V.へと斬りかかる。
V.V.はそれを受け止める。
強化されたはずの肉体は、ヴァンの剣撃を受け止めた。
鍔迫り合いのように顔と顔が近づき、V.V.の耳元にヴァンの怒声が響いた。

「死んで残るのは血だ、肉だ!
 死んだ奴が笑うわけがねえ! 肉は……笑っちゃくれねえんだよ!」

ヴァンが剣を振るう。
V.V.は顔を歪めながら、しかし、唇を歪ませて武器を構えた。

「それは君の杓子定規で計った理念だろう? 世界は死の奥にも理を持っているんだよ」
「うるせえ!」
「やり直せばいいじゃないか、全部。
 今度はもっと上手く、エレナとの生活ももっと充実したものになるよ。
 君次第では、全てが上手くいくんだ」
「黙れよ……! その口を開くんじゃねえ!」

ヴァンは構わずに蛮刀を振るい続ける。
ブランク体とは言え、ライダーへと変身したはずのV.V.を凌駕するパワーを持って振るい続ける。

「エレナは死んだ! 巴も死んだ! 光太郎は人間じゃなくなった!
 手を伸ばしても届いちゃくれねえ! どれだけ思い出しても……戻りゃしねえ!」

ヴァンと撃ちあうごとに、V.V.は後退していく。
元々が戦闘に秀でていたわけではない。
皇族である以上、訓練を経験したことがないわけではない。
それでも改造人間であり生粋の戦闘者であるヴァンとは天と地ほどに腕前が離れている。

「俺の後悔を偽物だなんて言わせねえ……! 俺の、エレナへの愛を!」

それ以上に、ヴァンの気迫を凌駕するものが。

「テメエ如きが、否定すんじゃねえ!」

空っぽのV.V.には何一つなかった。

「わからないなぁ……!」

しかし、それでもV.V.は必死に言葉を繰り出す。
そこになにか答えがあると信じて。
自分の間違いを見つけることが出来るものがあると。
ヴァンの選択を見ることで、自分を見つけたかったのだ。

「だからって、なんで生き返りを否定するのさ。
 元に戻ってやり直せばいいじゃないか」
「そいつは俺じゃねえ……!」

V.V.は西洋剣をがむしゃらに振るう。
ヴァンの技量には太刀打ち出来ずとも、時間を稼ぐことは出来る。

「こんな『俺』を愛してくれたエレナだ、そんな俺を俺が裏切るわけねえだろうが……!」

ヴァンの感情を徒に煽った結果か。
今まで以上の一撃がV.V.へと叩き込まれる。
西洋剣がポキリと根本から折れ、V.V.は武器を失う。
仮面越しに、テンガロンハットの奥のヴァンの瞳を見つめた。
炎が宿っている。
生きている証である、存在の炎を垣間見た。


「俺が! エレナを裏切るわきゃねえだろうがあああああああああああ!!」


裏切り。
その言葉に、V.V.の動きが止まった。
そして、死を目前にしてニューロンが加速する。
世界はスローモーションになり、思考は光を超える。
過る出来事は過去、最初に行った約束。
嘘のない世界、それだけを求めたこと。
兄弟が、兄弟のことだけを考えていた純粋な約束。

「……そうか」

V.V.は刃に切り裂かれる感触を覚えながら、言葉を漏らした。
仮面の奥で、頬が濡れた気がした。
初めはそうだった。
そうだ。
誰が悪いわけでもない。
V.V.自身が、一番大事な人を裏切った。
裏切ってはいけない人を裏切って、夢を捨てたんだ。

「そうだね、ヴァン」

ラグナレクの接続だとか、マリアンヌへの嫉妬だとか。
そんなわけのわからないものに気を取られる必要なんてなかった。
ヴァンは『奇跡』なんて信じられないものよりも、『エレナとの愛』を信じた。


――――V.V.も、シャルルと自身の兄弟の絆を信じればよかっただけだった。


「君は素敵な馬鹿だ」

仮面ライダーガイのブランク体は鎧の上から袈裟懸けに切り裂かれ。
長すぎた少年期は、死とともに終わりを迎えた。

「……糞が」

ヴァンは悪態を突きながら、その場へと倒れこむ。
幾度もの激闘によってヴァンの身体は疲弊しきっている。
もはや、前へと進むことも出来ないほどだ。
しかし、それでもヴァンは前へと進む意思があった。

「……■■■■」

名前を漏らす。
恐らく、その名前もいつかは忘れてしまうだろう。
当然だ。
共に残したものなどなにもなく、夢の様な出来事で出会っただけの女なのだから。
忘れるのは明日か、一年後か、十年後か。

それでも義理は果たした。
決着はつけた。
いつか消えてしまうものでも、これ以上の責務はもうヴァンにはない。
ヴァンが過去に囚われ続けることはなく、いつか忘れてしまうまではC.C.とのことは想い出として補完され続ける。
夜明けのヴァンから無職のヴァンへと変わってしまっていても。
仕事は、全うした。
C.C.との出来事は、ちゃんと想い出に出来た。

「後は……アイツだな」

脳裏によぎるのは三人の顔。
雪代縁とはケリをつけた。
C.C.の背負った責任は代わりに果たした。
後は、記憶にこびりついた銀色の月との関係だけだ。

「さっさと終わらせるぜ、畜生」

それで、この夢は終わり。
また別の夢に戻るだけだ。


傷だらけの夢が、風に吹かれて転がっている。


欲望の嵐が小さな幸せを吹き飛ばす。


惑星・エンドレスイリュージョンはそんな星。


所詮、宇宙の吹きだまり。



――――所詮、吹き溜まりの命。



【V.V.@コードギアス 反逆のルルーシュR2 死亡】

【二日目/朝/???】
【ヴァン@ガン×ソード】
[装備]:ヴァンの蛮刀@ガン×ソード
[所持品]:支給品一式、ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎、昇天石×1@真・女神転生if…、
     エアドロップ×1@ヴィオラートのアトリエ、調味料一式@ガン×ソード
[状態]:右目欠損、全身打撲、疲労(極大)
[思考・行動]
0:カギ爪の男に復讐を果たすためさっさと脱出する。生き残る。
1:シャドームーンを殺す。
[備考]
※バトルロワイアル第二会場へと飛ばされました。
※首輪が解除されました。
※まだ竜宮レナの名前を覚えていません。
※C.C.の名前を覚えました。
※薄刃乃太刀@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-(先端部欠損)はF-10沿岸部に放置されています。



    ◆    ◆    ◆



「やっと前座が終わったか」

全てを把握し、志々雄は笑みを深めた。
全員の首輪は無くなった。
全員が同じ地に立った。
邪魔をする無能な主催者も居なくなった。
邪魔をする怯懦の欲望鬼も居なくなった。
邪魔をする虚偽にまみれた少女人形も居なくなった。
邪魔をする杜撰な行き当たりばったりの亡霊も居なくなった。

ここにいるのは、純粋な願いを叶える権利を持ったものだけだ。

それでいい。
全ては対等でなくてはならない。
『力』以外で優位に立つ人物が居ることは許されない。
この弱肉強食の理だけに支配される世界でなければダメなのだ。

「誰が仕組んだ地獄だか知らねえが嗤わせるぜ……奇跡の報酬付きの地獄なんざ、天国じゃねえか」

志々雄はククと喉を鳴らし、敵を思い浮かべていく。

「テメエも」

巨大な力を持った創世王を取り込んだシャドームーン。

「テメエも」

愛に振り回され、孤独から離れたからこその苦しみに襲われる魔人皇ハザマイデオ。

「テメエも」

新たなる『向こう側の世界』を見ようとしているストレイト・クーガー。

「だからこそ」

お膳立ては整った。
後は殺すだけだ。
双眸の奥に潜む輝きは、原始の炎。
原始より生命が抱き続けた、闘いの炎。

志々雄真実』という存在が、確かにそこに居た。

「全員」

全ては、そう。


「俺のために死ね」


振り出しに戻る。


【二日目/朝/???】
【志々雄真実@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-(漫画)】
[装備]:サバイバルナイフ@現実、ヒノカグツチ@真・女神転生if...、サバイブ(烈火)@仮面ライダー龍騎
[所持品]:支給品一式×4、リュウガのデッキ@仮面ライダー龍騎、確認済み支給品0~4(武器ではない)、林檎×7@DEATH NOTE、鉄の棒@寄生獣
     マハブフストーン×4@真・女神転生if…、本を数冊(種類はお任せ)、工具@現実(現地調達)、首輪の残骸(銭形のもの)、首輪解除に関するメモ
     逆刃刀・真打@るろうに剣心、玉×5@TRICK、紐とゴム@現実(現地調達)、夜神月が書いたメモ、
     鷹野のデイパック(魔力の香@真・女神転生if...、体力の香@真・女神転生if...、その他不明支給品))
[状態]:各部に軽度の裂傷、首輪解除済み
[思考・行動]
1:殺し合いに優勝する。
2:気が向いたらガリア王国のジョゼフを持て成す。
3:翠星石の中のキングストーンが欲しい。
[備考]
※クーガー、C.C.、真司らと情報交換をしました。
※ギアスとコードについて情報を得ました。






     ◆    ◆    ◆






――――これは墓無き者たちの宴。






――――忘れ去られる者たちの最後の煌めき。







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170:ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- Ⅰ 志々雄真実 173:叶えたい願い-柊つかさ
170:ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- Ⅱ ヴァン
ストレイト・クーガー
シャドームーン
翠星石
柊つかさ
北岡秀一
狭間偉出夫 171:Re:turn
上田次郎 172:C'MON STRANGE POWER
V.V. GAME OVER



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