神経質な者、単細胞な者

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神経質な者、単細胞な者  ◆fG7rJLlLFE



暗い森の中を歩き続けること、それはカズマにはまったく苦にもならないこと
アルターの森を進むことに比べれば何も問題は無いこと。しかし、それはカズマだけの話だ。

「……すいません」

木のそばに腰を下ろし、座りこんでいるみなみが済まなそうに呟いた。

「別に……俺は俺が疲れたから止まってるだけだ」

「すいません……」

明らかに疲れていないカズマにそう言われたため、みなみはもう一度謝った。
ただ森を進むだけならば、みなみもすぐに座り込むような自体にはならかっただろう。
静寂が支配する真っ暗な森、いつ誰に襲われるかわからない不安、そして今だに頭から離れない親友の死
肉体的な疲労より精神的に疲れている。

カズマはそれを少し苛立ったように、だが責める様子もなく木にもたれ掛かっていた。彼にも友を失った時の気持ち、それがわかっているからだ。

「……もう大丈夫です」

「……そうかい、じゃあ俺も行くとするか」

だからこそカズマは手を差し延べない。自身が介入できることではないを知っているから
どんなに辛そうな顔でも本人が行くというならば、前に進むというのならば止めはしない。


みなみの少し前をカズマは歩く。そんなカズマの存在は、みなみにとってこの場所で唯一の支えだった。慰めるわけでも一緒に悲しんでくれるわけでもない。
だが、そばにいる。ただ黙ってそばにいてくれる。この殺し合いの舞台でそれはとても心強いもの。みなみが初めにあったのがカズマだったこと、それはとても幸運なことだったのかもしれない。


「あっ……」

「んっ?なんだ?」

突然声を上げたみなみの視線の先をカズマが追う。そこには、木々の間から僅かに見えた人工的な作りの建物あった。
カズマはその方向に進路を変え、木々の間を抜けて行く。そして木々の間を抜けると、そこにはいかにも不気味な洋館がそびえ立っていた。

「へっ、ちょうど良いあそこに入るか」

「えっ……でも……」

夜の森の中にある洋館
それだけで不気味さは充分であるというのに、こんな殺し合いという状況の中。みなみがもし一人で来たなら、とてもあそこに入ろうなどとは思わないだろう。

「かなり不気味……です」

「不気味なくらいがちょうどいい。何か出たらぶん殴ればいいだけだ」

「いや……あの……」

カズマは躊躇なく洋館の入り口に進んで行く。そしてその玄関を壊れるかもしれないというような勢いで、蹴り開けた。

「(さて何が出る……)」

アルター化させた右腕をすぐ動かせる体制にしながらカズマは洋館に入る。

「ま、待ってください」

みなみはそんなカズマに驚きつつも、取り残されないためにそれに続いて洋館に入って行った。
それは右京とLが地図を広げ、どういうルートで警察署に行くかを模索していた時だった。
ドンッっという大きな音が洋館内に響き渡り、何者かが中に入ってくる足跡が聞こえてきた。

「誰か入って来たようです。……この乱暴な開け方……先程の方でしょうか」

「ええ、おそらく。……近くにいる以上ここに来る可能性も充分にありましたから……来てほしくはありませんでしたが」

「……しかしLさん、足跡は二つのようですよ」

「……たしかにそのようです。ということは私たちと同じで、二人一緒に行動しているということでしょう。……どうしますか、右京さん?」

二人は小声で話ながら音を立てないように窓を開き、机の上にある所持品をデイパックへと詰め込む作業を行った。そしてLは仮面を右京は万が一のために銃を握る。

「姿を見ないことには断定は出来ませんが、二人……ということは殺し合いに乗っている可能性は低いでしょう。しかし……」

右京がその次を言う前にLが口を開いた。

「殺し合いに乗った者が乗っていない者を利用しているか、何らかの手段で操っているか、それとも別の要素か……それらの可能性は捨てきれません。ここは様子を見ましょう」

「わかりました」

銃は有る、しかしそれを使うのは本当にどうしようもなくなった場合のみ
それに自分達と同じように、打倒V.V.という目的で組んだ二人という可能性の方が高い。
上手くすれば仲間が増えるのだ。二人にして見れば下手なことはなるべく避けたかった。

警戒する二人に対し、片方の足音はズカズカと片方の足音はソロソロといった感じに洋館を探索し出した。
その足音が二階への階段に差し掛かった辺りで二人は扉の隙間から外を覗き始めた。右京は銃を片手に、Lは仮面を被った状態で……
もしそれを後ろから見る者がいたとすれば、その人物はその光景を奇妙や不可思議などの言葉以外で表現することはできないだろう。

「あんまりビクビクするな、下には何もいなかっただろ?」

「はい、でも上には……いるかもしれません……」

そんな二人に聞こえてきたのは、少年と少女の声。

「(子供達ですか……なら……)」

その声は少なくとも騙したり、操ったりしている感じの会話でも声色でもない。右京はそう感じとった。

「右京さん」

そんな右京に、Lの小さいが迫力のある声がかけられた。

「油断しないでください」

「……しかし、僕は彼らが何か企んでいるまたは殺し合いを望んでいる、とは到底思えません」

姿はよく見えないが、相手は警戒している少年と怯えている少女の二人。そんな二人はこんな殺し合いの中、警察官にとっては当然保護するべき対象だ。

「あなたが持った印象は私にもわかります。しかしそれくらいの演技を、平気でこなす相手を私は知っています。ここは……まだ待ちましょう」

慎重すぎる。事情を知らない人間から見ればLの行為への感想はこうだろう。しかしそのくらいでなくてはならない。
慎重すぎるほどに警戒し、推理し、接したはずの相手にさえ殺されてしまったのだから
そのLの慎重さを右京も理解し、二人をもう少し観察することにした。



二人は頭が切れるからこその行動を取っている。しかしそれは果たして、本能で生きる少年……カズマは理解するだろうか。

「(誰かがこっちを見ていやがる……)」

二階に上がった辺りからカズマは妙な違和感を感じていた。以前にもあったような嫌な感覚
それがいけ好かない本土側のアルター使い、無常矜持に初めてあった時に感じた、観察するような他者からの視線
そうであることに気づいたのはつい先程だった。

「(めんどくせぇ、やるならやるで出てくりゃ早いのによぉ)」

カズマは真っ正面から来ない相手はとことん嫌いだ。作戦とか兵法とかそんなの関係ない、ただ殴ればいい自分の自慢の拳で――カズマはずっとそうしてきた。

「……どうかしたんですか?」

そんなカズマの苛立ちを察したのか察しなかったのか、みなみがそんな問い掛けをした。

「……」

それにカズマは答えない。今のカズマにはこそこそと人を品定めする観察者は敵。敵が目の前にいるならばどうするか?そんなことは決まっている。


「(情報?そんなことは今は関係ねぇ。ただ今やっていることがきにくわねぇ。どうするかはとりあえず殴ったあと決める。ああ、今はとりあえず……)」

「……?」

返事もせず少し固まっていたカズマが、突然近くの部屋に入って行く。それに付いて行こうとしたみなみにカズマは離れていろっと左手でジェスチャーした。
それがどういう意味であるか。それを理解したみなみは、こくりと頷き階段の中間辺りまで走り始めた。

「(へっ、とばっちりがいっても勘弁しろよ)」

それを見送ったカズマは右腕を壁に向かって構える。

「……衝撃のファーストブリット」

カズマがそう呟くと同時に、右腕の後ろにあった三つの羽の一つが、虹色の輝きとともに空中へと胡散した。






「右京……さん?」

Lと右京は同時に顔を見合わせた。少年と少女が分かれたのは足音でわかる。
少年は自分達の二つ隣の部屋へ、少女は階段辺りへ。
それだけなら問題はない。ただ嫌な予感がした。それも強烈な

人間が持つ……いや、生き物ならば必ず持っているであろう危機察知能力。自分のそれがフル稼動しているのを二人は感じとったのだ。

「伏せてください!」

いつも冷静な右京が叫んだ。もしここに亀山薫がいたならばそれだけで、心底驚いていただろう。

「うおぉぉぉぉらああぁぁぁぁぁ」

しかしLが驚くのはこの後だった。叫び声とともに隣の部屋から轟音が響いた。それは破壊の音、なにもかもぶち壊す暴力以外の何物でもない力。
そしてその力はすぐに二人がいる部屋までやってくる。右京は伏せた。
しかしLは右京より数瞬遅れてその動作に入った。それは本当に一瞬、しかしその一瞬が命取りとなることもある。
Lは伏せたというには不完全な状態で、その衝撃を受けてしまったのだ。
そんなLに衝撃によりぶち破られた壁が降り注ぐ。当然、それは右京にも乗しかかってくる。衝撃が止んだ今、その場に立っているのは破壊を行った張本人だけだった。





「こそこそ隠れて俺達を見てたのは、てめぇらか!」

「……」

軽く意識を失っていた右京が覚醒したのは、そんな怒気を含んだ声をぶつけられた瞬間だった。

「俺になんの用だ?喧嘩って言うんなら買ってやるぜ?」

右京はその声の主、右腕をなにかに覆われた少年―――カズマに左手で胸倉を捕まれ、持ち上げられている。

「落ち着いてください。私は貴方に危害を加える気はありません」

右京は出来る限り相手を刺激しないような声ではっきりと、戦う意志が無いことを伝える。

「じゃあなんでこそこそと隠れてやがったんだ?んであそこに落ちてる物はなんだ?」

カズマが示した先に落ちていたのは銃。右京はさっきの騒動の時に落としてしまったのだ。

「こそこそしていたのは、貴方達が危険でないかを確かめるためです。……それはあくまで護身用の銃です。使うつもりはありませんでした」

「へっ、どうだか。本当はそれで撃つタイミングを探してたんじゃねぇのか?」

「私は警察官です。そんなことは絶対にしていませんし、しません。信じては……もらえないでしょうか?」

右京の目はまっすぐカズマの目を見て喋っていた。目は口ほどに物を言う。
本能だけで生きてきたカズマにも、いやだからこそ右京の言っていることが真実であることが窺い知れた。

「わかった、オーケー。信じてやるよ。だがな、もし気が変わってあんたが俺とやるってんなら俺は容赦しねぇ。絶対にだ」

そんな右京に戦う気を完全に無くし、どこかいらついた様子でカズマは掴んでいた胸倉を放した。

「ありがとうございます」

右京は服に付いた埃や木の破片を払う、そして思う。先程の破壊、それを行ったのは目の前の少年だという事実。
吹き飛んだ壁はまるでバズーカーで打たれたような損害状況だった。

「カ、カズマさん何が!?」

その場所から心配そうな顔をした少女――みなみがやってきた。

「ああ、このおっさんは大丈夫だ」

「そ、そうなんですか……」

みなみが思っていた疑問とは少し違った解答ではあったが、頼りになりそうな人間と合流できたことに少し安心した様子だった。

「お二人が殺し合いに乗っていないようで安心しました。私は警視庁特命係の杉下右京です。あなた方は?」

「あっ、岩崎みなみ……です」

「……名前なんてどうでもいいけどよぉ。あいつ大丈夫なのか?」
カズマが指差した方向にはLが倒れていた。自分でやっておいて大丈夫なのかっと言うのは酷い話である。

「……僕としたことが!Lさん、大丈夫ですか!?」

「…………大丈夫です、右京さん」

右京がLに駆け寄ろうとしたところでLがゆっくりと起き上がり始めた。

「この仮面が無ければ即死でした。……まあそれは言い過ぎですが……頭がかなり痛いです」

「……そうですか。無事でなによりです。彼らは……」

「いえ、いいです。実は少し前から起きていましたから…………しかし驚きました。その右腕はどうなっているんですか、カズマさん?」

Lは先程のカズマの破壊行為をまるで咎める様子もなく、興味深そうにカズマの右腕を見つめた。

「そんなことてめぇには関係ねぇだろ。偉そうに顔隠しやがってよぉ」

「(……やはりチンピラのような性格をしている。考えるより前に手かでるタイプか。あまり突かからなくて正解だった……。しかしあの右腕の力……)」

「私も興味があります。Lさんの言っていた超能力の類なんでしょうか?」

「……ええっ……と私も聞きたいです」

全員から興味津々といった感じで目を向けられたカズマは、バツが悪そうに頭を掻いた。

「…………って言われてもなぁ。俺だってよくわかっちゃいねぇんだよ。こいつのことはなぁ」

実際の所、カズマはアルター能力について詳しく知っているわけではないのだ。使えているから使っている。カズマがアルターを使う理由などただそれだけだ。

「ということはそれは支給品の中の何かなのですか?」

「……あっ!」

よくわからないっというカズマの解答に、右京がそう言うと突然みなみが声を上げた。

「どうしたんですか、みなみさん?」

「……まさかあなた達……ここまで支給品も見ずにやって来たんですか?」

Lにそう言われみなみが恥ずかしそうにこくりと頷いた。カズマも、そういえばそんなものあったなぁ。などと言いつつ背負っていたデイバックを手に取った。

「ここまで単純な人間にあそこまで思考を巡らせていたと思うと、馬鹿馬鹿しくて恥ずかしくなります……」

Lは誰にも聞こえないように仮面の奥でそう呟いていた。




四人は壊れた部屋を移動し、一階の部屋へと移った。

「つまりそれはロストグラウンドと呼ばれる地域で生まれた人間にのみ現れる特異体質っということですか?」

「あぁ、確かそんな感じた。じゃあこのおはぎは貰うぜ」

そこでカズマについて聞くL。あまり使いたくない手段だったが、おはぎと情報の交換という提案をした。

「あとは特にねぇなぁ。おっ、うめぇなこれ」

「(貴重な甘いものをこんなことに使うとは……。しかしアルター……進化か……)」
Lにとって甘いものは思考するに当たってなくてはならないものだ。わざわざ右京に頼み、譲ってもらった物。
つまりカズマの右腕はそれを使ってでも、得たい情報。しかしあまりにも自分の特異体質について知らないカズマに、Lは少々がっかりしていた。

「んじゃ。こっちからも質問するぜ、あの糞餓……」

「すいませんが、V.V.については何も知りません」

「……んだよ。また外れか……」

カズマもまた自分の期待していた情報が無いことにがっかりしていた。


「なるほど、陵桜学園の学生さんですか。私は聞いたことが無い学校です。しかし……服装から察するに最初に犠牲となった……」

「……ゆたか」

「いえ、すいません。あなたに対してこの質問は失礼すぎました」

「ゆたかは……ゆたかは私の数少ない友人でした……」

右京はそうですか。っと小さく呟いた。悲しみながらそう言ってくれたみなみの姿にV.V.への怒りが、再び沸々と沸いてくる。

「話を変えましょう。デイパックの中身を確認します」

それを押さえるように右京は、机の上にあったカズマのデイパックへと手を伸ばした。そしてそれをみなみの方へ寄せる。
カズマは面倒だから勝手に調べろっと、みなみ達にデイパック渡していた。もちろん出てきた物を渡す気はカズマにはない。

「あなたとカズマ君のものですから、あなたが確認した方がいいでしょう」

「……わかりました」

みなみはまずカズマのデイパックの中身を探る。地図や食料など基本的な物以外で出てきた物は二つ。一つは暗視ゴーグル。一つはとても大きな杖。

「これは暗視ゴーグルのようですね。しかしこれは……?」

「……魔法使い……」

「……なるほど……魔法の杖ですか」

カズマの力、アルターを見た後ならばそれがあったとしてもおかしくはない。右京がそう思えてくる品だった。

「暗視ゴーグルは使えそうですが、こちらは持ち主がいるんでしょうか?……それは後で考えましょう。今度はみなみさんの方の支給品を見て見ましょう」

「はい」

カズマの支給品をデイパックにしまい、続いてみなみが自分のデイパックを開ける。

「あれ?」

みなみの手に固いものが当たる。それは今までの物と違い、かなり力を入れなければ動かなかった。そして……

「えっ……」

「こ、これは驚きました」

「驚きましたじゃねぇ、さっさとこいつ退けろ!」

「……まったくこのデイパックもかなり奇妙な品です」

みなみの引き抜いたのは車。それは部屋一杯に体積を広げ、全員を隅へと追いやった。
車を入れても人が動けるだけの隙間がある部屋であったことと、ここが一階であったことが幸いし、四人はなんとか無事だった。

「だぁーめんどくせぇ!」
いきなりの狭い空間にイラついたカズマが、そう叫びながら部屋の壁を右腕で吹き飛した。壁に張り付く体制で逃げていたL、そして壁殴ったカズマが外に投げ出される。

「……本当にあなたは単純な男ですね」

「うるせぇ!てめぇはさっさとその変な仮面脱ぎやがれ。イラつくんだよ、それ」

「いやです。私はあなたが怖い」

「その態度、ちっとも怖がってねぇだろうが!……っておいこいつは……」

カズマがLに突っ掛かろうとした時、車の全体をLが照らした。そしてその車を見てカズマが固まる。

「あまり見たことのない車ですね。っというより私は見たことがない」

「君……島……」

それは小さな呟きだった。Lが聞き間違いかと思うほどに静かで小さな呟きだった。
……その車はカズマの唯一にして最高の友、君島邦彦の最後に乗っていた物。カズマがホーリーから奪い返し、死んだ君島を乗せたはずの車だった。

「……でこいつをどうするんだ?こっから出すか?」

「できますか?ならお願いします。右京さん達も窮屈でしょうから」

カズマは今までのことが嘘のように、とても丁寧に車をその右腕で外に出した。

「その車、何か思い入れでもあるんですか?」
「いや、別に……」

頭をかきながら何かが抜け落ちたようにカズマが答えた。Lも、これ以上追求できる雰囲気では無いことを悟り他の話題へと移行する。

「車はかなりの収穫ですね。運転するのは私か、Lさんですが」

「右京さんにお任せします。私も運転は出来ますが、あまり乗ったことが無いので。いいですか、みなみさん?」
「あっ、はい。構いません」

そのやり取りの中、カズマは何も言わなかった。ただ車を、車の運転席を静かに見つめていた。



「みなみさんの知り合いは、泉こなたさん、柊つかささん、柊かがみさん、高良みゆきさん、この四名ですね?」

「はい」

再び部屋を移動した四人は、続いて自分達の知り合いについて話し始めた。

「四人共ただの学生ですか。会ったらすぐ保護すべきでしょう」
「……わかりました」

Lは少し渋ったように右京に返事を返した。

「それではカズマ君、次はあなたの……」
「カズマさん……劉鳳、この人はあなたの知り合いですか?」

右京が質問しようとした時、Lがゲーム機を操作しながらカズマにこう問い掛けた。

「なに!?劉鳳の野郎が来てんのか!?」
「職業があなたと同じアルター使いの人間を上げただけです。他にもいるかも知れませんが……」

そうLに言われ、カズマは右京が差し出していた名簿を引ったくる。素直に答えそうにないカズマにLが取った行動だったのだが、効果はかなり高かったようだ。

「クーガー……………。橘あすか、ええっと確か、んなやつがいたような……。……かなみ!かなみだと!?かなみまでこんなところに呼ばれてんのか!?」

カズマはかなみの名前を見つけた途端、立ち上がり部屋の出口へと歩き始めた。

「カズマ君、どうしたんですか?」

「どうしたじゃねぇ、かなみのやつがいるんだよ、この殺し合いの中に!だからかなみを捜しに行くんだ!」

「待ってください。まだ外は真っ暗です。朝を待ち、私達と一緒に捜した方が見つかる確率は……」

「知ったことかそんなこと!俺は約束したんだ。かなみが危なくなったらどこに行ようが助けに駆け付けるってなぁ!!今がその時だろぉ?だから俺は行く!行かなきゃなんねぇんだよ!」

「あ、あの……」

もの凄い剣幕で右京にそう言い放ったカズマ。そのまま部屋を出ようとするカズマに、みなみが近付き腕を掴んだ。

「これ……」

「あぁっ!?なんだよ!?」

いらつきの最高潮といったカズマに、みなみが差し出したのはカズマのデイパック。忘れています。っと続きそうになった言葉をカズマに邪魔され、手が震えていながらもデイパックを差し出していた。

「……すまねぇ、悪かった」

みなみもカズマに居てほしい。しかしもしカズマの捜したい人が、一人で震えていたとすれば?
自分もカズマに出会わなかった場合どうなっていたかわからない。そう考えたみなみにカズマを止める事など出来なかった。

「いえ……」

そんなみなみの姿に罪悪感が沸いたのか、傍目から見てもカズマの燃えるような勢いが鎮火していくのがわかった。

「……カズマさん。どうしても行くというのならこれを持って行ってください」

「なんだこりゃ?」

Lがカズマに差し出したのはちぎったメモ用紙。そこには人の名前が幾つか書いてあった。

「みなみさんと右京さんの知り合いを、それぞれ分かりやすいように書いておきました。夜神月のことも書いてあります。外はまだ暗い。折角、暗視ゴーグルがあるんです。使える物は使った方がいいですよ」

「……あぁわかった」

Lとしてもカズマに残ってほしい。しかしLはカズマの性格を考え、引き止めるのは不可能っと判断した。

「それからあなたの知り合いですが……」

「……全員、殺し合いに乗るような連中じゃねぇよ。んで全員強い。まぁ俺にはおよばねぇがな」
メモ用紙をポケットに入れ、デイパックから暗視ゴーグルを出しながらカズマが部屋の出口に進んで行く。

「あとこれを」

「まだあんのか!?」

怒鳴りながら振り返ったカズマに投げられたのは、おはぎだった。

「あぁ、プレゼントではありませんよ。今は現金が無いのでそれで我慢してください」

「こんなところで依頼ってわけか?まあいい内容は?」

「かなみさんを見つけ出したらでいいです。警察署に来てください。そこで合流できればしてください」

「できれば……か。オーケー、わかった」

そう言いながら今度こそカズマは、部屋から出て行った。

「カズマさん……」

その背中を見ながらみなみが、寂しそうな顔で呟いた。




「じゃあな。君島……まぁなんだ……あいつらのこと頼んだぜ」

外に出たカズマは、もう一度車の近くまでやって来た。今は無き友にそう告げると暗視ゴーグルを付け、右腕を地に撃ち空へと高く飛び上がった。


【一日目黎明/Cー4廃洋館付近】
【カズマ@スクライド(アニメ)】
[装備]シェルブリット第一形態、暗視ゴーグル
[支給品]支給品一式、タバサの杖@ゼロの使い魔、おはぎ@ひぐらしのなく頃に、Lのメモ
[状態]健康
[思考・行動]
1:何が何でもかなみを見つけ出す
2:他は後だ後


[備考]
カズマはCー4から全速力で移動中です。
無職のカズマ、劉鳳の職業はアルター使いになっています。
カズマが食べたおはぎ、カズマが貰ったおはぎ、Lの手に残ったおはぎのアルファベットはわかっていません。
カズマは衝撃のファーストブリッドを撃った状態です。
Lのメモには右京、みなみの知り合いの名前と簡単な特徴が書いてあります。夜神月については他より具体的に書いています。


「行ってしまいましたねぇ」

「えぇ、しかしかなみという女性は……まだ八歳ですよ」

Lがまたゲーム機を操作しながら右京に呟いた。

「八歳ならなおさら早く助けに行かなくてはなりませんよ」

「いえ、なんというか……」

Lはそういいながらみなみをチラッと見た後、再びゲーム機に視線を落とした。

「?」

「(単細胞な上にロリコンとは……)」

Lは殺人犯とはまた違う意味でカズマが危険では、ないかと思い始めていた。

【一日目黎明/C−4 廃洋館】
【L@デスノート(漫画)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、ニンテンドーDS型詳細名簿、アズュール@灼眼のシャナ、ゼロの仮面@コードギアス、おはぎ×3@ひぐらしのなく頃に
[状態]健康、頭部に軽い衝撃
[思考・行動]
1:協力者を集めてこの殺し合いをとめ、V.V.を逮捕する。
2:早朝になるまで廃洋館で待機
3:早朝になったら右京、みなみと共に廃洋館を出て、警察署に向かう

※カズマがロリコンだと思っています

【一日目黎明/C−4 廃洋館】
【杉下右京@相棒(実写)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、S&W M10(6/6)、S&W M10の弾薬(24/24)@バトル・ロワイアル
[状態]健康
[思考・行動]
1:協力者を集めてこの殺し合いをとめ、V.V.を逮捕する。
2:早朝になるまで廃洋館で待機
3:早朝になったらL、みなみと共に廃洋館を出て、警察署に向かう
4:カズマの知り合いに出会った場合、保護を頼みたい

※おはぎはLに譲りました。

【一日目黎明/C−4 廃洋館】
【岩崎みなみ@らき☆すた(漫画)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、君島の車@スクライド
[状態]健康、ゆたかを失ったことに深い悲しみ
[思考・行動]
1:L、右京と行動を共にする
2:ゆたかの仇を取りたい
3:他の知り合いが心配
4:カズマともう一度会いたい
5:V.V.の言葉も頭の片隅に留めておく


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017:コードアルター 反逆のカズマ カズマ 062:接触
岩崎みなみ 073:みなみ × 南
036:もりのようかん
杉下右京



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