小説 > 風零龍緋 > 坂道と酒その2

はじめのうちは気分がよかった。周りは自分を英雄視し酒の飲み友達も増えていった。オラクルボードがどういう基準で自分を1位にしたのかは分からないが、もうそんな事はどうでもよかった。一人でない時間が多くなりいろんな人間とも知り合った。若い人間に自分の技を伝授するときなんかとても気分がよかった。教えていったやつはいいテウルゴスになっていった。数人は死んだが。
しかしそんな事は長くは続かないなんて事も分かっていた。分かっているからこそ楽しめた。だがあまりにも幸せなときは早く過ぎるのだと今更ながら実感することになった。

いつものようにタブレット端末を起動し仕事を探す。独立傭兵専用のページにアクセスしめぼしい仕事を探す。ふと、画面右上に目を向けると自分に是非やって欲しい依頼をおくる機能の通知欄が光っていた。この機能は一定金額積まないと個人に依頼をできないもので金額は個人で設定できるものだった。ソウはランク1になって以来通知が激しく来るので金額をかなり高額に引き上げ、通知避けをしたばかりだった。内容を確認すべくアイコンをタップする。すぐに文字列が表示された。

{物資輸送について
挨拶文省略。あなたに是非頼みたいものがあります。我々は企業間の郵便物を運ぶ組織です。今回我々はEAA、アレクトリス間に重要な文書を運ぶことになりました。できればあなたにその護衛をしていただきたいのです。EAA、アレクトリスどちらかのテウルゴスにこの依頼を行うと両グループの関係が乱れてしまいます。かといってCD側のテウルゴスに依頼するわけにもいきません。したがって三大企業のどこにも属さない傭兵であるあなたに依頼を頼みたいのです。聞けばあなたはアレクトリス版オラクルボードのランク1だとか。CD、EAAでもかなりの人気を誇っているあなたならばこの案件の依頼をさせていただくにふさわしいと我々は判断しました。是非いい返事を期待しています。期限は……}

「なかなかの事書いているじゃねぇか。 どうする?」
『ソウにお任せしますよ。 怪しいですがたまには受けてみては?』

普段ならこういった返事を返さないセガにソウは目を丸くする。たまにはこういうことを言うのかと不思議そうな顔をしているのを見ていたセガは不安そうに首をかしげる。しばらくセガを見つめていたソウは正気に戻り依頼内容を確認する。今までの経験上こういった依頼は受けないが金を積んででも依頼してくるということは相当本気なのだろう。珍しくセガものり気なので依頼承諾ボタンを押す。数秒画面にロード中を示す円が浮かび承諾しましたの文字が表示された。
ソウは近くの壁にもたれ掛かり左ポケットからタバコを取り出す。火をつけたタバコはゆらゆらと独特の臭いのする煙を排出し天に上って消える。その煙を眺めながら肺にたまった煙を天に吐き出すのだった。
最終更新:2017年08月24日 19:25