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ある色男の受難 -おまけ-
written by 樽

~注意。この文章には、メタ発言、実在ゲームや他作者さんの作品への言及、ほか、せかいのほうそくをみだすような内容が存在します。どこかネジがゆるいパラレルだという前提で御覧ください。~
~あと、このさくひんにとうじょうするおんなのこはみんな18さいみまんです。~


~言ってみたかっただけです。~







『……あたしの出番が無かった。』
 テウルギア『ルドラ』のサブモニターで、ふくれっ面の少女が不機嫌そうに、そう口にした。
「……はい?」
『せっかくの!!マイルさん主役回で!!あたしだけ!!出番が!!無かった!!』
 そう言ってゴネるのは、今回見せ場が全く無かった、エクの人格の一つであるフェム。地中ソナーシステム『サラスヴァティー』を用いた音響測定・解析担当の元気属性、好きなゲームは音ゲー全般。
「そうは言ったって、今回の事件でソナー使うところ全く無かったし……。」
 思いっきり身を隠す気の無い敵の迎撃(陽動だったのだから当然だ)に、その追撃、果ては三対一での大立ち回り。大人しくしゃがんで見えない敵を探すようなミッションでは無かったため、そもそも今回は搭載すらしていなかったのだ。
『でも!!主役回!!』
「フェムは一体何の電波を受信してるのかな……?」
 何故だか分からないが、彼女の言い分を聞いていると正気がどんどん削れていくような気がする。これ以上いけない。
「まあ、その埋め合わせに今日一日はフェムに付き合ってあげるって事なんだけど、……何で僕はルドラに乗せられているのかな?」
 彼女のことだからいつものようにCDショップ巡りとかライブハウスとかに連れ出されると思っていたのだが。今回は何か別のことを企んでいるらしい。
『ふっふっふ、今日はちょっと面白い遊びの情報を仕入れてきたのだよ!』
 自信満々でふんすと鼻をならすフェム。エクでは絶対見られない表情だよなあ、とちょっと感慨深い。
 しかし、テウルギアを使った、面白い遊び……?考えれば考えるほど嫌な予感しかしない……。
「……で、気になるその内容は?」
 なんだか凄く訊いて欲しそうだったので、単刀直入に訊いてみた。これ以上機嫌損ねても怖いし。
『聞けば、CD陣営コラ・アルセナルのテウルゴスがレメゲトンの指示に従って舞い踊るように降り注ぐ砲弾を回避し続けたという……。』
「……それを、僕に、やれと……?」
 なるほど、それはこの子が好きそうだ……!出荷よ~~~、という電波が降ってきた気がしたが、これ以上正気を失いたくないので華麗にスルーした。
『まあちょっとルールに手は加えたけど、趣旨は一緒!失敗しても爆発四散とかしないから安全だよ!』
 クリアできるかな~?と、小悪魔のような表情で挑発してくるフェム。
「ふ、あまり僕を舐めるなよ?ゲーセンデートは紳士の嗜みだ……!」
 こちらも挑発的な笑みで返す。まあ、ヴェーダに就職する前はそういうのが好きな子に誘われて結構やりこんだものだ。その子には最終的に刺されたけど。ウッ何だ、全身から汗が……。
『な、なんか青い顔してるけど、手加減はしてあげないからね!それじゃあスタッフさん、よろしく!』
 フェムの宣言と共に、軽快なBGMが流れ出す。そして目の前に立ち上がるのは、一枚の板。何故か人のシルエット状に切り抜かれた穴が空いている。
 その状況に困惑していると、なんとその板がゆっくりとこちらに迫ってくるではないか!
 慌てて回避のステップを踏もうと操縦桿を倒すが、ルドラの足はピクリとも動かない。
「!?」
 まさか機体トラブルか、とサブモニターに目をやると、フェムがいい笑顔で謎のポーズを取っていた。
 それは、いわゆるボディビル的なポーズ。その時は知る由もなかったが、ダブルバイセップスと呼ばれるポージングである。
『(にっこり)』
「……!!」
 何かに気付き、メインモニターに迫りくる板に目をやる。そこに空いた穴は、フェムのとっているポーズと同様の形をしており――
「ま、待ってフェム!!マッ◯ル行進曲は音ゲーじゃないから!!」
『わははははははは!!誰が音ゲーと言ったッ!!』
 ヘイ、ユー!見ているだけでいいのかい?涙は明日の筋肉になる。
 そうしてフェムが満足するまで、テウルギア『ルドラ』は筋肉をアピールするポーズを取らされ続けるのであった。
最終更新:2017年09月26日 22:05