プロローグ
結局、戦争は消えなかった。
地球という惑星の隅々が開拓され、気軽に旅行シャトルを打ち上げ、宇宙を探索する時代になっても。
人類は、争うという根源を解決できずにいた。
けれど、変化はあった。
くだらない利権争いに躍起になる彼らにも変化はあった。
人型汎用兵器、『テウルギア』。
それに随伴する機械化統合自律戦闘師団。
中立に位置し、テウルギアの戦場を管理する謎の超高精度人工知能、通称『仮想人類』。
それはとある小国で生まれあらゆる敵対者を蹂躙しつくした。
そして、今までの戦争を全て塗り替えてしまった。
発達しすぎた対空技術。それによって一周した戦争の在り方にそれはあまりに、あまりに強力すぎた。
人工筋肉によって生まれた常識外れの膂力、爽快な動きと機動性、人格を模したOSによって実現された人が如き挙動を示す、巨影。
その後ろを守るように付き従う鋼鉄の骸達。
それら無数の最先端技術と伝統工芸的技術を惜しみなく投入された人類の歪な叡智の結晶は突如として第五次世界大戦中に現れ連合軍、及び戦争参加国全ての軍を瞬く間に蹂躙した。
歴史の教科書にすら載っている、恐るべき事件だ。
こいつの登場によって戦争は瞬く間に変化し…今では、軍上層部が行う一種のエクストリームスポーツとして続いている。
代理戦争。そう、簡単に言えばゲームだ。
テウルギアという巨人をキングとして、それに随伴する骸を駒と置き換えた疑似ボードゲーム。
戦場を定め、駒を定め、目標を討ち取り勝鬨を上げた方が勝ちの旧世代的戦争。
その一部始終を記録して全世界に配信するありそうでなかった斬新なスポーツ。
これを退化と嘆くべきか、より理性的に争うようになったと喜ぶべきか。
まぁ、今その事はどうだっていい。
名実ともにテウルギアは戦争の代名詞となった。なってしまった。
では。
それ以外のモノは?
最終更新:2017年11月01日 19:12