小説 > アルファるふぁ > テウルギア・ギガ > スチームキング(プロット)

……遡ること数十年前。

 チャールズ・ボフジャッキー博士が、テオーリアの軍勢……オーガーたちに対抗するべく、「電子制御に頼らない駆動系を持つギガ」の仮設を提唱した。
 パンクス・スチーム。
 かつて産業革命の時代を牽引した蒸気機関で稼働するギガの理論。誇るべき圧倒的な出力は例え50mを超える超巨大な鋼鉄の塊すら易々と動かせるその動力は、世界中の誰からも避難された。
 動力が電子制御を捨てる――それはリミッターの不在も、そして超巨大な巨人のコントロールをそう容易ではないものにすることも意味している。それどころかまともな遠隔攻撃の武装すら備えられない。
 そんなゲテモノに乗ろうとする人間などそうそういないのだ。
 かくしてボフジャッキー博士の理論と、そして博士の作ったギガ=ギア・ゴーレムも、歴史の闇に埋もれることとなる……はずだった。

 発見されたオーガーのうち、一体。
 全長300mを超える超巨大オーガー『カオスジャイアント』が、その動力を備えていると発覚するまでは――。



○主人公

 ムサシ・ボフジャッキー
 ボフジャッキー博士の孫にあたる、イギリス系日本人の青年。
 並より抜きん出た機体制御の才能故にレメゲトンとの喧嘩をしょっちゅう起こし、ギガの操縦が上手くできないどころか、その権利すら剥奪されかかる。
 同じく人類を守る仲間たちからもいじめを受け始めるも、彼は持ち前の正義感故にやり返しはしない。
 ……ただ一つ、祖父から教わったことを守り続けるために。首からぶら下げたペンダント・ロケットに、今は亡き家族写真を収める。



第1話

 巨大基地に、かつて見たことのない敵の機体が鹵獲できたとして運び込まれる。
 後に『メガトン・ゴーレム』と名付けられる機体――一つの胴体から映える三つの頭、六本の腕、七本の足。だが各部に織り込まれたパンクス・スチームの源が馬鹿げた攻撃力を実現している機体。
 完全に停止したメガトンから解析を進めていくうちに、内部データに一つの設計図があったことを研究者の一人が発見する。
 ボフジャッキー博士の作り出した最初期のギガ『ギア・ゴーレム』の設計図だった。
 ……それがムサシに知らされると同時に、ムサシの住む街にとあるオーガーが迫っていると知る。
 だが同時期に、ムサシはレメゲトンとの喧嘩で機体を剥奪された直後だった。
「別に俺には関係のなくなった話だ……」
 町から去る準備を整えるムサシに、とある話が舞い込んでくる。
 カオスジャイアント――ただ歩くだけでも町一つを踏み潰す驚異そのものが、すぐ眼前まで。


第2話

 会議室に集められたテウルゴス一同……急造チーム。
 各地を転々とする中でエースとして名を馳せた男。四本腕を実現するために二人乗りのギガに双子。
 その他数名で作られたギガのチーム。だが研究者の計算では、『カオスジャイアント』の巨大すぎる装甲を貫くにはどうしても並大抵のギガでは対抗できない。
 唯一、ギガを持たないムサシが呼ばれた理由を尋ねる。
 研究者が表示したスライド……そこには、あの『ギア・ゴーレム』の趣を残した機体の写真が表示されている。
「あの設計図を参考に、私が独自の改装技術を施した。
 『メガトン』は機能を停止したが、あの装甲と動力の塊を一部流用して建造した。
 名付けて『アルティメット・ギア』――仕様上レメゲトンが搭載できない。
 だからこそ普通のテウルゴスにはまともな操縦なんてできない。
 ムサシ、君ならできるか?」
 写真の中に、亡き祖父の面影を見るムサシ……できるかできないかなど、もはや関係なかった。
「やる。やってやるさ」


第3話

 出撃。町の外で一斉に並んだギガたちの攻撃。だが巨大な装甲に弾かれて、傷一つつけられない。
 接近戦を挑もうとするモノも居た。だが単純な蹴り上げに機体ごと粉々に砕け散った。
 まるで足元のゴキブリを踏み潰すような一挙手一投足。だがどこまでも固すぎる・デカすぎる敵にまともに対抗できない。
 このままでは町に侵入を許してしまう。
 そんな中で、ムサシの駆るアルティメット・ギアだけがその侵攻を阻んだ……といっても、前へ進む足を止める程度だが。
 60mの機体が、300mの巨大な機械の侵攻を止める……それを可能にする圧倒的なパンクス・スチームの膂力に驚く研究者、町長、司令官たち。
 それよりもテウルゴスたちが驚いているのは、レメゲトンなしという超絶ハンデを背負いながらギガを操縦しきるムサシの操縦技術だ。
 だが、初めて振り下ろされるカオスジャイアントの腕……横薙ぎに振り払われたパンチに、宙を待って地面に叩きつけられたアルティメット・ギア。装甲も砕け散り、カメラアイから光が失われる。
 絶望に明け暮れる皆。慌てて通信を飛ばす皆……しかしムサシからの返答はない。沈黙のみ。
 やがて町を見下ろし、進路を戻る『カオスジャイアント』……。
 慌てて逃げ惑う住民たち。退避命令を下す司令官と町長。
 巨人の一歩が、町を粉々に砕き始めた。


第4話

 コクピットの中……ボロボロになって煙を吐く計器に囲まれるムサシ。
「動け! 頼む! 町の皆が……俺がやらないと……」
 だが沈黙したままのコクピット。アルティメット・ギア。
「爺ちゃん……俺は……ッ!」
 その瞬間、ペンダント・ロケットが不可思議な光を発した。
 ひび割れたコクピットの一角、計器でもなんでもない、単なる穴が、同じ光を発する。
 謎の穴。だが妙に形の合う場所。
 首からペンダントをちぎり取り……はめ込む。
 その瞬間に、光がコクピットを……アルティメット・ギアの全身を包み込んだ。


第5話

 破壊される町中……カオスジャイアントが、まばゆい光に振り返る。
 ……全身の各部より吹き出すスチームの出力で飛翔するアルティメット・ギア。
 ひび割れた装甲が飛散し、内側から姿を表した、最もシンプルで、そして原始的な形。
 ギア・ゴーレム。
 全身のリミッターを解除されて二倍の出力を発揮したギガ。
 カオスジャイアントの巨大な腕で繰り出されるパンチ――上空250m前後でうねる大気。
 さらりとかわし、その腕に乗り上げ、疾駆するギア・ゴーレム。
 巨大な頭部と、眼を合わせる。
「爺ちゃん! 帰ってきたぜ!」
 ギア・ゴーレムのパンクス・スチームが腕部に集中し、放たれる一撃が、カオスジャイアントの頭部を吹き飛ばす。
 力を失ってその場に倒れるカオス・ジャイアント。
 そしてその渦中で、ついにリミッター解除の果てに、バラバラになるギア・ゴーレム。
 宙に投げ出されたムサシの体を、仲間が助ける。
 ペンダント・ロケットはコクピットに差し込まれたまま、どこかへ消えてしまった。
 だが、ムサシは誇らしげに親指を立てる。




……というわけで在田流「テウルギア・ギガ」でした。

メカの名前がなんか決闘者臭い? さて何のことでしょう?
スチームパンクな設定は元々好きなんで、じゃあモチーフも……あ、安直?

そして「テウルギア」という枠の中でありながらパシリムみたいなロボットができると……。
ほうほう。ではマジンガーで、みたいな、安直です。
ですがこんな枠があるのも一興ですな。おかげでテウルギアでやることのなかったパターンのあらすじを作れましたし。


しかし肝心なのは「なぜこれがプロットだけなのか?」ですが……。
全長60m前後という巨大構造物が誇るディテールはパシリムでやったわけですけど、
個人的に「それ映像媒体だからできて、小説媒体じゃ無理じゃねぇ?」という発想でした。
作者のスタンスがこれである以上、小説という形にしようにも途中で投げ出すのが見えてしまったので、ならあらすじだけでも、ということでプロットのみです。

なまじっかアニメのあらすじとして読めるもの、として意識したつもりです。
最終更新:2018年05月17日 11:21