※曲の趣味に捏造があります。
「カラレスさん、今日このあとカラオケに行きませんか?」
カラレスミラージュよりも一回りも二回りも小柄なチームメイト、フラワリングタイムから声をかけられた彼女は、言葉の意味を図り損ねて硬直する。
図り損ねる要素はないはずなのだがそこは悲しかなカラレスミラージュである。
図り損ねる要素はないはずなのだがそこは悲しかなカラレスミラージュである。
(からおけ? からあげ? から……あ、カラオケ!? ん? んん!? あそっか、カラオケって複数人で行くものか!!)
需要の増加に伴ってサービスの幅も広がってきたひとりカラオケではあるが、如何せんメインコンテンツは複数人でのカラオケである。
しかしながら、あまりにも残念なことに、カラレスミラージュは複数人でカラオケへ行った経験がなかったため、誰かからカラオケに誘われるという発想がすぐに出てこなかったのだ。
以前ルームメイトのエノラとカラオケへ行ったときはカラレスミラージュから誘っていた。自分からグイグイグイグイ押している時は強気だが、誘われた経験がないがゆえの悲しみである。
複数人でワイワイ、そんな陽キャリア充イベントへの誘いを受け、精神が逃げ腰になるカラレスミラージュ。しかしそれと同時に友人とのお出かけは憧れでもある。
とにかく明るいカラレスを演じ始めてから、裏があることは暗黙の了解となりつつも交友関係を拡げてきたカラレスミラージュだが、交流はあくまで学園内に限る。プライベートで遊びに出かけたことなど、それこそ片手で数えられる程度しかない。
しかも今回はどうやら多人数。今までのタイマンお出かけとは違う。未知の領域である。カラレスミラージュは若干どもりながらもその誘いに了承を返し、放課後への僅かな不安と期待を募らせていた。
しかしながら、あまりにも残念なことに、カラレスミラージュは複数人でカラオケへ行った経験がなかったため、誰かからカラオケに誘われるという発想がすぐに出てこなかったのだ。
以前ルームメイトのエノラとカラオケへ行ったときはカラレスミラージュから誘っていた。自分からグイグイグイグイ押している時は強気だが、誘われた経験がないがゆえの悲しみである。
複数人でワイワイ、そんな陽キャリア充イベントへの誘いを受け、精神が逃げ腰になるカラレスミラージュ。しかしそれと同時に友人とのお出かけは憧れでもある。
とにかく明るいカラレスを演じ始めてから、裏があることは暗黙の了解となりつつも交友関係を拡げてきたカラレスミラージュだが、交流はあくまで学園内に限る。プライベートで遊びに出かけたことなど、それこそ片手で数えられる程度しかない。
しかも今回はどうやら多人数。今までのタイマンお出かけとは違う。未知の領域である。カラレスミラージュは若干どもりながらもその誘いに了承を返し、放課後への僅かな不安と期待を募らせていた。
そして放課後。密室のカラオケルームに集まったのはカラレスミラージュ含め5人。主催者であるフラワリングタイムとカラレスミラージュ。
続いてメジロプログレス。順当と言えば順当な人選だろう。同じチームの同じ中等部であり、生まれたときから人間に育てられた柴犬並に懐きやすい彼女は誘えばまず断らない。
さらに言えば、このカラオケ店はサトノグループの系列であり、同じメジロマックイーンファンのよしみで仲の良いサトノダイヤモンドから、メジロプログレスは優待券を貰っているため安上がりになる。勿論、そんなクソみたいな打算をフラワリングタイムは考えていない。
さらに言えば、このカラオケ店はサトノグループの系列であり、同じメジロマックイーンファンのよしみで仲の良いサトノダイヤモンドから、メジロプログレスは優待券を貰っているため安上がりになる。勿論、そんなクソみたいな打算をフラワリングタイムは考えていない。
4人目はライジョウドウ。若干意外であるが珍獣であることを除けば妥当な選出と言えるだろう。なんせフラワリングタイムのルームメイトである。なんなら真っ先に誘われたのではないだろうか。
ドリンクバーのミックスジュースもといミックスされたジュースを飲みながらデンモクを弄っているライジョウドウ。正直カラオケで歌声を響かせるより山を駆けながら雄叫びを響かせる方が想像に容易い。
そして5人目にスリーピースピネル。
ドリンクバーのミックスジュースもといミックスされたジュースを飲みながらデンモクを弄っているライジョウドウ。正直カラオケで歌声を響かせるより山を駆けながら雄叫びを響かせる方が想像に容易い。
そして5人目にスリーピースピネル。
(スッピーさん!!!?)
カラレスミラージュの驚きポイントである。歌っているところが想像できない。いや、中央トレセン学園に通っている以上、ライブのトレーニングで歌っているところは見たことがあるのだが、どうしてもカラオケとイメージが繋がらない。
とはいえ、カラレスミラージュにとっては妬ましいことに、無口で無愛想ながらなぜか交友関係は広いスリーピースピネルである。ライジョウドウとは同じスプリンターであるし、フラワリングタイムとはチームカオスちっちゃいものクラブの繋がりがあるため誘われるのは不自然ではない。カラレスミラージュはそう判断した。
判断したのだが、ここで問題がひとつ。
とはいえ、カラレスミラージュにとっては妬ましいことに、無口で無愛想ながらなぜか交友関係は広いスリーピースピネルである。ライジョウドウとは同じスプリンターであるし、フラワリングタイムとはチームカオスちっちゃいものクラブの繋がりがあるため誘われるのは不自然ではない。カラレスミラージュはそう判断した。
判断したのだが、ここで問題がひとつ。
(みんなたち、なに歌うん……!!?)
誰ひとりとして持ち歌を予想できないことであった。
カラレスミラージュは浮きたくない。しかしてカラレスミラージュのボキャブラリーはおおよそイナナキロイド歌唱系のインディーズ楽曲が多い。非オタの集まりでイナロ曲を歌ったときの浮きっぷりはもう夏合宿で海上を疾走していたカンパナーレボバーのごとしである。
擬態用に最近のJCJKが好みそう(偏見基準)な楽曲も覚えてはいるカラレスミラージュだが、もしこの4人のうち少なくともふたりイナロのノリが通じるならそっちを歌いたい。気持ちよくなりたい。
だからまずは様子見。ウーロン茶で喉を潤しながら歌う順番は最後でいいと言おうとしたとき、ライジョウドウが早速曲を予約したようだった。
ご丁寧にシークレット予約モードになっており、画面に楽曲名が表示されていない。正直一番持ち歌の想像ができないため、カラレスミラージュの内心に緊張が走る。
カラレスミラージュは浮きたくない。しかしてカラレスミラージュのボキャブラリーはおおよそイナナキロイド歌唱系のインディーズ楽曲が多い。非オタの集まりでイナロ曲を歌ったときの浮きっぷりはもう夏合宿で海上を疾走していたカンパナーレボバーのごとしである。
擬態用に最近のJCJKが好みそう(偏見基準)な楽曲も覚えてはいるカラレスミラージュだが、もしこの4人のうち少なくともふたりイナロのノリが通じるならそっちを歌いたい。気持ちよくなりたい。
だからまずは様子見。ウーロン茶で喉を潤しながら歌う順番は最後でいいと言おうとしたとき、ライジョウドウが早速曲を予約したようだった。
ご丁寧にシークレット予約モードになっており、画面に楽曲名が表示されていない。正直一番持ち歌の想像ができないため、カラレスミラージュの内心に緊張が走る。
そうしてスピーカーから流れ出したのは、ひどくシンプルなピアノ単音のメロディライン。よく響く低音ながらフックもなにもないわずか2小節のイントロが終わり、ライジョウドウが歌い出した。
「きーみーがーあーよーはー」
(国歌ッ!!?)
なんの開幕式だというのか。しかしながらカラレスミラージュが知らないだけで、カラオケの開幕に君が代を歌う人種は少なからず存在している。
わずか数十秒の歌唱時間を終えライジョウドウがマイクを置く。先陣を切ったと言うか早まったと言うか、とにかくライジョウドウの歌唱によって始まりを告げたカラオケタイム。
満足気に座って再び曲検索に戻るライジョウドウとウマホを弄っているスリーピースピネルをよそに、フラワリングタイムとメジロプログレスが次誰が歌うかを話し合っている。
わずか数十秒の歌唱時間を終えライジョウドウがマイクを置く。先陣を切ったと言うか早まったと言うか、とにかくライジョウドウの歌唱によって始まりを告げたカラオケタイム。
満足気に座って再び曲検索に戻るライジョウドウとウマホを弄っているスリーピースピネルをよそに、フラワリングタイムとメジロプログレスが次誰が歌うかを話し合っている。
「カラレスさん、次歌いまして?」
「あ、ううん、私最後でいいよ〜」
「では、不肖メジロプログレス、歌わせていただきますわ!!」
ウマホに集中するスリーピースピネルを見ながら「何しに来たんこの人……」と思いつつも、カラレスミラージュが当初の予定を伝えると、張り切った様子のメジロプログレスが曲を予約した。
シークレット予約になっていないため、すぐに画面に曲名が表示される。
シークレット予約になっていないため、すぐに画面に曲名が表示される。
『メジロ讃歌』
(開幕2連続で斉唱系!!?)
選曲自体は納得ではあった。しかし君が代の直後である。複数人での歌唱を想定している曲の独唱が連続である。次どんな曲を選んでも温度差がすげぇことになるのが容易に想像できる。
高らかにメジロ讃歌を歌い上げたメジロプログレスに続き、フラワリングタイムが予約を入力する。選曲は『ふたりはプリファイ!!』。ニチアサの大人気アニメ『爆走猛姫☆プリンセスファイター』の主題歌であった。
案の定の温度差ではあるが選曲自体は納得のものだ。中等部女子の間で、プリファイは高い人気を誇っているのである。ちなみにカラレスミラージュは見たことがない。
流行の楽曲を主題歌に使うアニメが多くなり、そのアニメ専用の楽曲という本当の意味でのアニメソングが少なくなってきた昨今には珍しい、プリファイを全面に押し出した歌詞を歌い始めるフラワリングタイム。
高らかにメジロ讃歌を歌い上げたメジロプログレスに続き、フラワリングタイムが予約を入力する。選曲は『ふたりはプリファイ!!』。ニチアサの大人気アニメ『爆走猛姫☆プリンセスファイター』の主題歌であった。
案の定の温度差ではあるが選曲自体は納得のものだ。中等部女子の間で、プリファイは高い人気を誇っているのである。ちなみにカラレスミラージュは見たことがない。
流行の楽曲を主題歌に使うアニメが多くなり、そのアニメ専用の楽曲という本当の意味でのアニメソングが少なくなってきた昨今には珍しい、プリファイを全面に押し出した歌詞を歌い始めるフラワリングタイム。
「プッリンッセスッ、ファーイーターアッ、ふったりっはー」
『プリファイー!!』
(!!? え、なにそれ!?)
合いの手である。アイドルソングやアニメソングに多いそれがプリファイの楽曲にも存在している。生憎カラレスミラージュはそのことを知らなかったのだ。
見事にプリファイのノリに乗り遅れたカラレスミラージュ。メジロプログレスはともかく、ライジョウドウやスリーピースピネルがプリファイを見ているのも意外だ。
放送では流れない2番の歌詞まで合いの手含めきっちり歌いきり、フラワリングタイムがマイクを置く。順番から言えば次はスリーピースピネルの番だが、スリーピースピネルがデンモクを触った様子は見られない。
歌わないのかというカラレスミラージュの考えとは裏腹に、すぐに音楽が流れ出した。スリーピースピネルがマイクを取るのを見ながら「いつの間に」という表情を見せるカラレスミラージュ。
テーブルに置かれたスリーピースピネルのウマホには、デンモクとほとんど同じ画面が映っていた。
見事にプリファイのノリに乗り遅れたカラレスミラージュ。メジロプログレスはともかく、ライジョウドウやスリーピースピネルがプリファイを見ているのも意外だ。
放送では流れない2番の歌詞まで合いの手含めきっちり歌いきり、フラワリングタイムがマイクを置く。順番から言えば次はスリーピースピネルの番だが、スリーピースピネルがデンモクを触った様子は見られない。
歌わないのかというカラレスミラージュの考えとは裏腹に、すぐに音楽が流れ出した。スリーピースピネルがマイクを取るのを見ながら「いつの間に」という表情を見せるカラレスミラージュ。
テーブルに置かれたスリーピースピネルのウマホには、デンモクとほとんど同じ画面が映っていた。
(デンモクアプリ!!? え、常連!!?)
デンモクとウマホをリンクさせられるアプリ。それは、スリーピースピネルが結構な頻度でカラオケに来ていることを想像させるものだった。
そしてカラレスミラージュにも耳馴染みのあるメロディが流れる。
そしてカラレスミラージュにも耳馴染みのあるメロディが流れる。
「ENJOY!! 音楽は鳴り続ける! IT'S JOIN!! 届けたい胸の鼓動!」
(ココロオドル!!?)
スリーピースピネルのイメージからはかけ離れたヒップホップという選曲に面食らうカラレスミラージュ。これで棒読みならネタにもなるが、スリーピースピネルはしっかり本気で歌っていた。
とはいえ聞き慣れた曲。今度はライジョウドウとともに被せを入れることができたカラレスミラージュは、スリーピースピネルの歌を聞きながら次の自分の曲をどうするか考えていた。なんせ冒頭2曲分がなんの参考にもならなかった。
結局選んだのは『感電』。世間一般にも広く知られている人気楽曲だが、作曲者が元々イナロ界隈の出身であるため肌にあった曲だった。
とはいえ聞き慣れた曲。今度はライジョウドウとともに被せを入れることができたカラレスミラージュは、スリーピースピネルの歌を聞きながら次の自分の曲をどうするか考えていた。なんせ冒頭2曲分がなんの参考にもならなかった。
結局選んだのは『感電』。世間一般にも広く知られている人気楽曲だが、作曲者が元々イナロ界隈の出身であるため肌にあった曲だった。
「スッピーちゃん、次アレ歌わん?」
「りょ」
カラレスミラージュは、歌い終わったあとに聞こえてきたライジョウドウとスリーピースピネルの会話に耳を疑う。アレで通じる程度にはふたりでカラオケに来ているのかこのふたりは。
そして流れてきた曲は『恋のメガラバ』。
そして流れてきた曲は『恋のメガラバ』。
(マキシマムザホルモンー!!?)
デスボあり、シャウトありのこってりした選曲。ふたりともデスボもシャウトもこなしている。フラワリングタイムとメジロプログレスもよくわからないなりにノッてはいる。
これをデュエットする仲ってどんな仲なんだろう。そんなことを考えていたカラレスミラージュだったが、次に流れてきたメジロプログレスの『メジロ讃歌』(2回目)ですべてどうでもよくなり、ヤケクソ気味にイナロ曲の予約を入れるのであった。
これをデュエットする仲ってどんな仲なんだろう。そんなことを考えていたカラレスミラージュだったが、次に流れてきたメジロプログレスの『メジロ讃歌』(2回目)ですべてどうでもよくなり、ヤケクソ気味にイナロ曲の予約を入れるのであった。
著:スリーピースピネルの人