真なる殲滅の魔人、此処に再起動す。
ニナ√、
真贋二振りの同族殺しが信念をぶつけあいながら進む血戦。
己の肉体を自壊させながら、自らが目指した男の命を喰らうべく、アイザックは賜力の出力を暴走させる。
戦士としての技巧を武器に、精神力頼みの猛攻に立ち向かうトシローだったが、破滅を恐れぬ贋作の一撃一撃に均衡は破られ……
――ついに、剛の血刃がトシローの心臓に突き刺さるのだった。
失われる血液と、加速する銀の呪いの浸食。
敬愛の情に満ちた、友の声と表情に終焉を受け入れかけるも………
仕えるべき銀の髪の少女の姿を視たトシローは、躰を削りながら距離を放し、死を拒絶する。
しかし、誰がどう見ても彼の行動はただの悪足掻き。もはや後は壊れゆくだけ………
それを理解しながらも、トシローの胸には、ただ捧げた忠誠のみが燃えていた。
「───ニ……ナ……」
彼女に仕えたいのだ。そのために生き、死にたいのだ。
ならばこのようなところで、永久の眠りについてはならない。
失ったかつての愛に謝るには、早過ぎると気づいたから。
貫かせろ、我が忠義を! 捧げさせてくれ、この心臓を!
頼む、この暗闇から俺を今一度引きずり出してくれ。
それを叶えてくれるのならば、悪魔に己を売り渡してもいい……!
だから―――
「───かつての友を、この手で切り捨てさせてくれ」
見事なり。美しいぞ、純然たる忠義の深さ。友の死滅を願う狂気の渇望、悪魔はしかと聞き入れた。
楽しませてもらった……見物料だ。さあ、受け取るがいい。
“それ”は、死神の囁きだったのか。
瞬間、トシローは力を取り戻し、迫る刃の一撃を弾き飛ばす。
倒れ込んだ彼の周囲に広がっていたのは、妖しく輝くマジェンタの灰。
それが放つ光を浴びる事で彼の胸の傷は急速に塞がり始め、さらに、呪いを抱えていた心臓が不気味に蠢き始める。
「癒しているのか、トシローを。勝てと言っているのか、そっちに……」
そして一輪の鮮血の華と共に、排出されたものは小さな鉄の塊。
全力の発露を許さなかった呪詛にして、不死の筈の命を蝕んできた悪意の銀。
それは、枷からの解放。
それは、古傷の踏破。
それは、伝説の再臨。
刮目せよ―――
「───ォォオオオオオッ!!!」
ここに再び、三本指は降臨する!
放たれるは、大気を鳴動させる闘気の波濤。
渾身に力が駆け巡っていく。今までのように、一拍遅れて動く煩わしさがない。
柄を握る指先、両脚部、腕部、胴体、五臓六腑……皮膚下の血管さえ唸りを上げていると実感できた。
剣士の復活と共に、マジェンタの灰は布の様な影を一瞬形取り……そのまま消え去っていく。
「そうか……ならば俺も、己が役目を果たすとしよう」
“心”を取り戻し、“技”を磨き続け、そしてついに“体”をも縛りから解放されたのだ。
敵う存在など居はしない。力の解放に付き纏う妄想を、確かな事実であると認識するから……
────重圧に満ちた呼気が、口端から漏れる。
「待たせたな、アイザック。喜ぶがいい、おまえの望みは叶ったのだ」
「その目に焼き付けろ。咽び泣け。これが鴉、
これが凶兆、これが処刑人───これが、これが三本指」
「俺は……帰って来たぞ」
- そりゃこんな展開見せつけられたら、アイザックじゃなくてもなんてカッコいいんだ!ってなるわ -- 名無しさん (2019-10-27 11:49:44)
- これはアイザックのちんちんうずうずするわ -- 名無しさん (2019-10-29 00:53:09)
- アイザック「素晴らし過ぎる・・・」 -- 名無しさん (2020-03-29 07:09:04)
最終更新:2025年03月29日 21:19