忍ルート、“アンファング”として集まっていた、
零示、さつき、
レオナの三人。
ダンジョン攻略を終え、ロビーで談笑を楽しむ彼らの元にGM業務で遅れてしまったと、申し訳なさそうな忍が駆け寄る。
「やっぱり不良とか悪い男ってモテるもんなんですかね、ねぇ忍先輩?」
「な、なぜ私に聞くのかな……?零示までニヤニヤして……ふん、精々そうやって私を馬鹿にすればいいじゃないか」
「ん――─シノブ、かわいい!」
生真面目な彼女に、ここ最近の様子を見ていた女子二人は「零示の事が気になってるのでは」という風に冷やかしはじめ……
予想通り、恥ずかしそうに初々しい反応を返す忍の姿は三人を癒していた。
――そんな中、零示の家で朝食を準備しているさつきが、家の用事で一週間ほど来れなくなると告げる。
もともと滝沢家の親切でやってもらっている事であるとして――
構わない、朝ぐらい食わなくても何とかなると、気軽に返事を返す零示だったのだが。
「いや零示、朝はしっかり食べないと駄目だよ?」
……意外なことに、忍が口をはさんできた。
先輩として、静かに零示を諫める彼女はさらにさつきにも話を向けて。
「それにだ。さつき、そういう時は真っ先に先輩である私を頼ってくれ。君と私の仲なのに水臭いじゃないか」
「えっ? っていうと………」
「その役目、私が引き継ごう」
これまた意外な方向からの助け舟に、さつきは目を丸くする。
それは零示も同じであり、なぜならそれは―――
「でも、先輩……それって……」
「毎朝登校前に零示の部屋に行って、ごはん作ってベッドで寝てる零示を起こして……って事、に……」
(一応)思春期真っ盛りの零示の部屋が寝起きしている部屋に、
忍という女性が一人で通うという事実が、あまりにも驚きだったから。
だが、零示達が思っても言葉に出せないその事実をちゃんと理解しているのか……
忍センパイは、自信満々に言葉を返す―――
「元々、私は朝は早いから心配ない。それに料理はじめ家事作法全般は一通り修得しているのだよ。
大和撫子を甘く見てもらっては困るね?」
問題を判ってるようで分かってない台詞。
つい先ほどまでドツボに嵌っていたラブやらコメやらのシチュに自分から突っ込んでいくその姿。
胸を張って得意顔をキメる忍に……零示は言葉を失ってしまっていた。
「は、はぁ……じゃあ忍先輩が大丈夫なら甘えさせていただきます」
堂々たる天然ぶりに、さつきも降参の体勢。
レオナの方も、全てに気づいた様子でありながら黙って事を面白がる事にした様子。
「うむ。では、明日から早速任せてもらおう」
「……あぁ、よろしく頼むぜ」
そして零示もニヤけ面を浮かべる事もなく、この新展開に静かにうなずくほかはなかった。
- シチュは甘々なのに台詞が雄々しすぎるw -- 名無しさん (2020-07-03 20:36:27)
最終更新:2020年07月03日 21:47