Unsung Blue
「今この瞬間、オレたちは自由だ!」
終着点に辿り着くためではなく、全力で生きていくために。
それでありながら、終わらない人生に喜びを描くために。
二人の旅は続いていく。次はどこへ行こうか――どこでも行ける。どこだっていい。
この世は何処でも楽園の地獄……おまえがいてくれる限り、自由はいつも、ここに在る。
解析したデータを用いて、無意識が作り上げていたプログラム。
Type-0を媒体に、人体が生理反応から精製した個人のためにあるブラックボックス。
彼だけのために誕生した情報の結晶。
次元の壁を飛び超えて現実化した、桐原零示を示す力である。
あらゆる間合いを無効化し、
距離を無視した動きで相手に攻撃を加える、などという常軌を逸した力を持つ。
距離を跳躍し、空間座標を接続するばかりか、発射点と着弾点の座標を接合することで相手に自滅を与えることも可能。
肉体の速度が速くなりすぎているため、動体視力がなんの役にも立たない。
マスターアームを使用している
エヴァンを圧倒し、
GM用スキルすら通用しない。
距離を超えて疾走する、超越の駆動。無窮領域、空間に奔る蒼の軌跡を阻める壁など存在しない。
まさに最強の一角と呼ぶべき力を誇る。
更に
同格の力との激突は、その余波だけで《Electro Arms》に残されていた
解析不能の領域を急速に解き明かしていく。
ただ謎を追い求めていた関係者達が驚愕する中、当の本人達は、目の前の相手に夢中という状況だったが
「男の矜持ちょっとは汲めや! いい女の前だから格好つけてみたいんだよ、
なのにやたらと張り合いやがって……かっさらって見せつけてよ。
ほんの少しは三つ指ついて控えてみやがれ、慎み足りないんじゃねえかこの雌獅子が……ッ!」
「馬鹿言わないで……ワタシの方が夢中だわ!何よ自分の方が自分の方がって……
そんなことあるわけないでしょ、この想いには誰も敵うもんですか!」
レオナ・K・バーンズとの最後の
戦いにおいては、
レオナに本気の
想いを伝えながら戦うが、同時に、「ふざけるなよてめぇ」と本気の憎悪をも彼女にぶつける。
大切だからこそ許せない、という本気の憤怒。
「ふッざけんな中坊のガキかオレはァッ!」
レオナに自分を蹂躙された。かつての面影が破壊された。
単純な欲求が消えてしまった。
愛しているお前に夢中だ隣にいるとほっとするずっと傍にいて欲しい、などというレオナに穢された自分へと。
零示は確かに変えられたから。
それは事実上の敗北宣言。惚れた方が負けだというなら、零示は既に
レオナ・K・バーンズに下されている。
だから勝つ、負けたままで終われるか、意地でも膝を折ったりはしない、見せつけてやるのだ。
最高の
相棒と、これからも明日へ向かって歩むために。
そして零示には、絶対にわからせてやらないといけない真実がある。
それは、
「おまえよりもオレの方が愛してるって言ってるだろうが!」という事。
『オレの愛情がお前より軽いはずあるものか』 それを信じていない、
そればかりかさも自分の方が高尚な想いで悩んでるという顔をしたレオナにムカついているわけである。
以降(まあ最初からだが)はイチャイチャ全開でバトる。
勝手にやってろバカップル。
……呆れるほどにぶつかり合い、見つめ合いながらその度に立ち上がる。
まだ、立ち上がってくるこの相手と戦えることに感謝しながら、彼は想いを噛み締める―――
「ああ――ちくしょう……好きだ」
大切だという想いと、破壊してやりたいという嗜虐心、恨み。
それは片側の感情を認めていて、だからこそ何よりも愛おしいと言っていた。
「頼む……一緒に生きてくれ。お前がいないと、自由に呪われてしまうから」
そしてまた、視線を逸らさずに踊る。より苛烈に、より鮮烈に。
大切な片割れ、もう離さない。飛び立とう、重力なんか振り切って。
詠唱
Code―――
《謳われぬ蒼穹》───実行
最終更新:2021年10月05日 22:05