さあ、お色直しだネイムレス。真理へ導くそのために、まずは傷を与えに往こう

命令者:アポルオン
受信者:ネイムレス


美汐ルート……美汐を庇って重傷を負ったものの、敵拠点から何とか生還した凌駕をロビンフッドは回収し撤退。
その後、ギアーズは戦場に乱入したネイムレス(最優先目標)に攻撃を集中。苛烈な反撃は受けたものの、機体の捕獲に成功する。
戦力として拮抗していたアレクサンドルに他の部隊員が加勢することで、戦闘は流れ作業のように終了したのだった。
その脅威を知る者達にとって、不思議に思う(・・・・・・)ほど
そう、まるで……完全に壊されてしまっては困る(・・)という何者かの意思が働いたかのように

そして艦内指令室に場所を移し、アレクサンドルが見守る中、乱丸が内部情報の解析作業を実行していたのだが。


「はい、ダウト―。こりゃ悪意(・・)を感じるね」

「鵺乱丸。詳細な解析内容の説明を述べよ」


その結果は、情報制御のプロである乱丸をして“超面倒”と言わしめるほどの危険極まりない存在だという事。
――徹底的に外部干渉を受け付けない設計がなされており、ハッキング対策も万全。
――何処かへの情報伝達機能は有しているが、迂闊にその内部情報に干渉しようとすれば探査者は間違いなく壊される。

試作機どころか使い潰すことが初めから前提とされていたような……そんな仕様
マレーネという少女の一族が製造できたとは到底思えず、機構の最重要機密であってもおかしくはない技術
機構の中枢に繋がる可能性を有した機密の塊が、暴走し無防備な状態に陥っていたという不可解さ

「つうわけで、とんだ厄ネタってことでここは一つ。調べても不透明な上から文句言われそうだし、
かと言って放置するとまた暴れ出すだろうし、関わるだけ損においら一票入れとくね。
もう思い切って、内部を覗くの止めてブッ壊しちゃわない?上手い事言い訳してさ。臭いものには鉄拳パンチ! なんちゃって」

「ご苦労だった」

そんな危険物を前にしても常と変わらず嗤う乱丸を去らせて、司令官はあまりに謎の多いネイムレスの処遇を思案する。


「砕くか」


沈黙する紅の機兵を前に、現状の任務――反逆者の掃討は現行戦力でも可能であるという判断、
そして情報流出の阻止の観点も含めた上で、アレクサンドルは自ら機兵を破壊するという決定を下そうとしたが。

そんな彼に、鋼鉄の棺の内側、死の気配を漂わせた人型より制止の声が掛かる。

『待ちたまえ、アレクサンドル・ラスコーリニコフ。提案がある』

『当躯体、アポルオンは最新型だ。ならば直接干渉(ハッキング)を行ったところで、何ら問題はない。
時計機構の上層部……そこにある技術(テクノロジー)が流出して起きた齟齬(バグ)ならば、我ら上層部の手で《無名体》(ネイムレス)は回収しよう。
そして済まないが、功労者たる君にしてもそこから先を知る権限は無い。これは命令だよ、アレクサンドル』

その瞬間、一方的に話の決着は着いた。慮る口調は、その実拒否権など存在していない。
そしてアレクサンドルもまた、その傲慢な命令に一切の深慮を抱かなかった。彼は歯車、故に我を通さない。
……アポルオンが収められた棺の前にネイムレスを安置し、黙々とアレクサンドルは部屋を退出する。
司令官の後ろ姿を見届け、アポルオンは語る

『では任された。なに、開示していい結果は後ほど話すとも。
そう───《無名体》(ネイムレス)が如何なる意義の元に存在しているかは、正確に伝えるとしよう。
君なら必ず、追従してくれると思うから』


含みを持たせた口調のまま、アポルオンは『解析』の為仮面を輝かせる。
そうして――指令室は無人(・・)となり、記憶するものは機械のみとなった。
…故に、未だ誰も秘された思惑に気づかない。傷ついた少年少女も、彼らを追う軍人達も。


『さあ、お色直し(・・・・)だネイムレス。退場するにはまだ早い。
次なる目覚めはもう幾許か過激に演じてみるとしよう。
真理へ導くそのために、まずは傷を与えに往こう』



そのまま、真実を識る者は、愉悦を塗しながら次なる演目の準備に取り掛かるのだった―――




  • お色直しだネイムレス…(セーラー●ーン♪ -- 名無しさん (2021-05-13 18:07:00)
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最終更新:2021年12月10日 23:02