今後の方針について語り合う龍馬と万次郎。
“博打打ち”としての龍馬の思考に対し、理解が及ばない万次郎は、
龍馬にとっては利用する駒としてグラバー商会も
フェレイラも“敵”たり得ないのかもしれないが……
実際にその敵対者達と対峙する
隼人や
柩たちにとっては、かなり厳しい局面になるだろうと、不安を告げる。
特にフェレイラの陣営には、彼により
吸血種と化した新選組の猛者達が随行しており、
沖田総司が味方にいるといっても形勢は
圧倒的にこちらの不利。
万が一にでも、隼人に惹かれつつある柩の《心》が、
彼の死によって砕け散ってしまう事態となれば、
彼女の内面が変化する事により、その内なる
《真祖》の血を覚醒させようとする龍馬の目論見もそこで終わりになってしまうだろうと。
そこで何とか、龍馬の伝手で助っ人を呼び出せないものか、例えば河上彦斎のような“攘夷”思想を持つ剣客はどうかと……
万次郎は龍馬に請うも、それらは謀に使える存在ではないだろうと静かに否定するのみ。
そうして黙考を続けていた龍馬は、箱根の地へ行くのに適した人物が一人いると答え……
その人物の名を促した万次郎に対し、右手の拳銃を光らせながら、彼は告げた。
「坂本龍馬直柔───ワシ自身ぜよ」
様々な思惑が交錯し、大量の流血もまた避けられないであろう箱根の地。そこに自ら赴くという幕末の亡霊・龍馬。
ここに至るまで数多の人間や血族の運命を陰で操ってきたであろう男が、再び表舞台に姿を見せる―――
未だその真意は見えないながらも、博打師のその一手が、巨大な波紋を生み出すことは間違いなかった。
最終更新:2021年12月25日 16:32