「・・・わかるか?変態」
アースは武器を構えたままレイスにそう言う
「ある程度はな。もっとも、ヴィクや霊山嬢の方がヤツラの知識は豊富なようだ」
プライドが傷ついたと言わんばかりの面持ちでレイスはそう返す
「何故レイスに聞く!俺に聞け俺に!」
何故かヴィクトは嫉妬した
「オウ!覚悟はいいかお前ら!!」
話している場合ではない、目の前に巨大な体躯の【グレートミノタウロス】がいるのだ
「言ってろ、牛風情が。
私はオマエを倒し、あの豊満な・・・もとい!依頼を達成するのだからな!」
煩悩の塊は剣を構え、戦闘を開始した
女性のミノタウロス【ミノタウロスレディース】はヴィクトへ向かって駆けていく
そしてそのままの勢いで体当たりした!
「ちょっと待て俺はそう言うキャラじゃうぷっ」
「胸・・・!?」
その予想外の攻撃を受けたのは、むしろ霊山の方だ
「ヴィク!貴様なんとうらやま・・・大丈夫か!誘惑に負けるな!」
レイスは鼻の下を伸ばして応援している
その甲斐あってか、ヴィクトは冷静にミノタウロスレディースから離れた
「冷静だね。それとも不能者かい?」
そんな言葉を発し、彼女は鼻を鳴らす
「うおォォォォォォォ!羨ましいぞォォォォォォォォ!!」
バカでかい咆哮がグレートミノタウロスから発せられた
内容はともかく、この叫び声は確実に冒険者たちの体力を削る強力なものだ
「く・・・」
アースの鼓膜は張り裂けそうだった
「胸、やっぱり胸なの・・・?」
霊山は、精神的なダメージが継続している
「乳ばかりデカくてもな!女性は・・・バランスだッ!」
わけのわからないことを言ったヴィクトは斬りかかる
「耐え切れる自信がないのでな。今の内に気絶してもらうぞ!」
レイスも剣を向け、二人はミノタウロスレディースに×の字の刀傷を負わせていく
「そ、そんな・・・っ!」
間もなく彼女は膝をついた
「足元がオルステッド」
霊山のお供、精霊の石山は呟いた
地面が盛り上がり、足場が不安定になる
「オウッ!?」
ずしんと地響きが鳴ってグレートミノタウロスは転んだ
「さあ、行くぞアース!牛頭の癖してあんな豊満な女をはべらす愚か者を惨殺してやるんだ!
依頼?知った事か!三匹渡せば満足だろうよ!」
レイスは叫び、斬る
「オォォ・・・」
グレートミノタウロスは痛みに悲鳴を上げた
が、すぐさま立ち上がってヴィクトを殴る
「やるな、ヴィク!」
血を払ったレイスは、素早い身のこなしでヴィクトがそれを回避したのを確認した
「速い・・・」
しかし、アースの矢も先ほどから避けられているのだ
間髪入れずにレイスが剣を振り下ろすが、それも弾かれてしまう
ならば、とヴィクトも攻撃する
しかしバスタードソードは眉間で受け止められていた
霊山が放った火線も、ほとんど吹き飛ばされている
「この程度じゃあ通らねえな」
グレートミノタウロスは余裕ありげにそう言った
「ガ・・・ッ!? う、げほっ、かはっ」
「ガハハハ!油断したな!」
咽せたのはレイスだ
連戦は堪えるのだろう、彼は血反吐を吐く
「レイス・・・まだやれるか?」
ヴィクトが心配そうに見る
「・・・すまん、めまいがした。ヴィク、私が倒れても、貴様は倒れるんじゃないぞ。
貴様はどうでもよいが、霊山嬢、は絶対に守り抜くんだぞ」
ふらふらとした足取りで出た言葉を、ヴィクトは否定した
「馬鹿を言え、みんなを守ってこそのパーティーではないか。
そうで無ければ組んだ甲斐が無い!」
「ふん・・・熱血馬鹿が」
苦しげな表情が一瞬緩む
気がつけばヴィクトは、手に力を込めていた
「赤い蛇よ・・・もう一度だけ奇跡を・・・!」
バスタードソードが空を裂く
それは徐々に加速していき、何度も、何度も、グレートミノタウロスに傷を増やす
「ヌゥ・・・やるなッ!」
傷だらけになったグレートミノタウロスは揺らめいたが、すぐに持ち直した
「なるほど・・・これが、剣士としての力量差か。男だというのに惚れそうだ」
レイスは素直な意見を、誰に言う訳でもなく呟く
「あれでも落ちませんの!?」
霊山はそれに対し、驚きを隠せない
「ガハハハハ!これで仕舞いよ!」
グレートミノタウロスは豪快に笑うと、レイスとヴィクトを薙ぎ払った!
「ィギ・・・!?ぁ・・・」
レイスが吹き飛ばされたと気がついたときには、彼の意識は暗闇に飲み込まれてしまっていた
「・・・変態にしては上出来だ」
僧侶アースはそうぼやきレイスを踏みつける
やがて何かを口走ったかと思うと、レイスの体の傷は塞がっていた
彼はぶるっと頭を振り起き上がる
「悪い、アース。助かった・・・踏みつけた事に関しては後で追求するがな」
「踏まなければ回復させられん」
神官はそう嘯いた
「ほざけ、魔法は使えないが、知識はある・・・ああ、しかし。
失敗してる霊山嬢も、中々に愛らしい・・・」
どうやら魔法の使用に失敗した霊山の方が気になるようで、レイスはそっぽを向く
そこにはヴィクトが叫びながら戦っているのが見えた
「フン、勝負はまだこれからよ!」
グレートミノタウロスは彼を弾き飛ばしながら徐々にこちらへ迫ってくる
アースは舌打ちし、レイスは武器を構えた
再びレイスとヴィクトに最大級の攻撃が襲いかかる
「いささかマズイな・・・だが!」
「堪え切ってみせる・・・!」
しかしそれを、今度は二人で受けきった
「ヌ、ヌゥ・・・」
グレートミノタウロスは仕方なく後ずさる
その隙を、アースの矢が貫いた
「グ、グォォォォ・・・なんということだ!」
「まさかアタシたちが負けるなんて・・・」
「あ、兄貴!!姐御!!」
こうしてミノタウロスたちは全員、大人しくお縄に
「さて、それじゃあレディースは私に縛らせてくれ」
お縄についた
最終更新:2008年05月09日 08:43