ゆっくりいじめ系1351 寄生バチ

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ゆっくりいじめ系1351 寄生バチ」(2008/11/08 (土) 08:57:34) の最新版変更点

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ある森の奥に、ゆっくりの群れがあった。 餌は豊富で天敵も少なく、皆に笑顔が絶えない、とてもゆっくりとした群れだった。 群れの誰もが、この幸せが永遠に続くと信じて疑わなかった。 その日もゆっくり霊夢の一家が、楽しそうに遊んでいた。 「ゆ~、こっちこっち~」 「おねーしゃん、まっちぇ~」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~!」 「みんな、きをつけてあそんでね!」 そんな時、一匹のハチがかすかな羽音と共にやってきた。 体長一センチ足らずの、ごく小さなハチである。 ハチは赤れいむの頬にとまると、その尻の先にある針を赤れいむに突き刺した。 「ゆ!いちゃいよ!」 「あかちゃん、だいじょうぶ!?」 親れいむがハチに気付いた頃には、既にハチは空へ飛び立っていた。 慌てて赤れいむの方へと駆け寄り、患部をペロペロと舐める。 「いたいのいたいの、とんでけー」 「ゆーん!ゆーん!」 幸いにして小さいハチだったため傷も小さく、毒性も低かったようだ。 数分もすると痛みは引き、赤れいむは再び元気になって遊び始める。 その姿を見て、親れいむもほっと一息ついた。 この時は誰も、この小さなハチが群れ全体を恐怖に陥れるなど思いもしなかった。 一ヶ月ほどが経った。 赤ゆっくり達も無事成長し、子ゆっくりと呼べる大きさになった。 何一つトラブルなど無い生活だったが、ある日突然、一匹の子れいむが苦しみだした。 「ゆゆ!な、なんかいたいよ!」 「ど、どうしたの!?」 「おねえちゃん、だいじょうぶ?」 「い、いたいよおおおおおおお!!!!!」 家族達が心配そうに子れいむの周りに集まってきた。 しかし、痛みの原因も分からず途方にくれるばかり。 一方、子れいむの痛みはどんどん激しさを増していった。 そしてついに。 「ゆぎゃああああああああああ!!!!!!!!」 一層大きな子れいむの悲鳴と共に、子れいむの皮に小さな穴が開いた。 同じ穴はあちこちから次々と開き始め、その数は最終的に総計10ほどとなった。 そして、その穴から小さなハチが姿を現し、外に出るとすぐに飛び去って行った。 巣には餡子の減った子れいむの死骸と、呆然とする家族達が残された。 同様の出来事はれいむ一家に限らず、群れのあちこちで起こっていた。 ゆっくりの種や大きさなどは関係無しに、突然苦しみ出したら、体内からハチが現れたというものだ。 平和だった群れに訪れた突然の事件に、群れの幹部であるゆっくり達は頭を悩ませていた。 「ゆ~……いったい、なんなんだろう……」 「あんなはちさん、しらないよ」 「わからない、わからないよー!」 その時、群れ一番の識者であるぱちゅりーに、一つの仮説が浮かんだ。 「むきゅ、もしかするとあれは『きせいばち』かもしれないわ」 「「「「「き、きせいばち!?」」」」」 「みたことない?いもむしさんから、はちさんがでてくるの」 「ゆゆ!れいむは、みたことあるよ!」 「まりさもあるんだぜ!」 「むきゅ……おそらく、あれのいっしゅよ」 実際、ぱちゅりーの予想は当たっていた。 このハチは、ゆっくりの体内に卵を産みつける寄生バチである。 成虫はゆっくりの体の大きさに見合った数の卵を産み、幼虫は体内の餡子を食べて成長する。 その際ゆっくりが暴れないように、痛みを抑える物質を分泌しながら食べる。 そして蛹になり羽化すると、餡子と共にゆっくりの皮を食い破って外へ出る。 その時になると、もうその物質は必要ないので分泌されない。 他の多くの生物同様、ゆっくりも体内からの刺激に弱い。 体内から餡子と皮を食い破られる痛みは体外からのそれの比ではなく、大いに苦しんだ後ショック死してしまうのだ。 自覚はなくとも、餡子が減って抵抗力が落ちているのも死に至る原因の一つであろう。 「じゃ、じゃあ、どうすればいいの!?」 「むきゅ……それは……」 ぱちゅりーは困ってしまった。 寄生されたゆっくりを助けるには、体内の幼虫のみを取り出すしかない。 しかし、もちろんそんな方法は存在するわけがない。 「とりあえず、ひがいをひろげないように……いまはそれしか……」 「も、もしかして、さされたらたすからないの!?」 寄生バチに寄生された芋虫は、その時点で死が確定される。 そのことをぱちゅりーは知っていた。ということは、自分達も同じであろう。 「ざんねんだけど、たぶん……」 「ゆゆうううううう!!!!!!」 「そんなのいやなんだぜえええええ!!!!!!」 たちまちのうちに、皆泣き出してしまう。 今まで平穏に暮らしていたので、予期せぬ敵の出現にパニックになっているようだ。 そんな時、一匹のまりさが叫んだ。ぱちゅりーの夫であり、群れのリーダーのまりさだ。 「しょうがない!きょうこうさくにでるよ!」 リーダーまりさは、群れのゆっくり達をすぐに集めた。 「ゆうう……なんなんだろう」 「りーだーから、おはなしがあるって」 「だいじなはなしなんだね、わかるよー」 ざわめくゆっくり達の前に、リーダーまりさが姿を現す。 その横には、妻のぱちゅりーもいる。 「みんな、よくきいてね!  はちさんにさされたことのあるゆっくりは、まえにでてきてね!」 ゆっくり達はポカンとする。 ハチに刺されることの何が問題か、全く理解できなかった。 とりあえず言われた通りに前に出る。群れ全体の一割にも満たないが、少しはいるようだ。 「みんなは、たしかにさされたね?」 「ゆ~、そうだけど?」 「それじゃあつぎは、ぱちゅりーのはなしをきいてね」 ぱちゅりーが、寄生バチについて話し始めた。 ゆっくりに寄生するハチが出現したこと。 ゆっくりに卵を産みつけ、幼虫は体内で餡子を食べて成長すること。 羽化する時の痛みで、ゆっくりは死に至ること。 そして、助ける手段はないということ。 「こ、こわいよおおおおお!!!!!!」 「まりざ、だずがらないのおおおおお!!!!!!」 「ゆーん!!おかーしゃん、たちゅけちぇえええ!!!!!」 「ちんぽおおおおお!!!!!」 話が終わった時には、群れは大パニックであった。 幹部達同様、元々天敵の少ない土地で初めて現れた大敵の恐怖は、相当なものだったようだ。 そんな中、リーダーまりさは声を張り上げる。 「だいじょうぶだよ!ひとつだけ、たいさくがあるよ!」 「ゆ!な、なんなの!?」 皆がリーダーまりさに注目する。 「それはね……いまのうちに、ゆっくりごと、はちさんをころすんだよ!」 水を打ったように、場が静まりかえった。 すぐにはリーダーまりさの言っている意味が分からなかった。 そんな中、リーダーまりさはピョンと跳ね、前に出ていた一匹の赤れいむの所へ着地する。 悲鳴をあげる間もなく、赤れいむは潰れ絶命した。 「はやくしないと、みんなさされるよ!」 その声を皮切りに、一斉に群れのゆっくりが襲い掛かっていった。 「たすけてええええ!!!!!!」 「むれのために、ゆっくりしんでね!」 「おかあしゃああああああん!!!!」 「やめてええ!!!!ありすのあかちゃん、ころさないでえええ!!!!」 「いやだぜ!さされたゆっくりは、ゆっくりできないんだぜ!」 「わがらない、わがらないよおおおお!!!!!」 あっという間に、前に出たゆっくりは全員潰された。 何匹かのゆっくりは、体内にいたであろうハチの幼虫や蛹と共に潰れていた。 幼虫も蛹もいないゆっくり達の方が多かったが、それはおそらく多種のハチに刺されたのだろう。 とんだとばっちりである。 「よし!これではちさんは、ぜんいんやっつけたよ!」 「これでまた、ゆっくりできるね!」 「むきゅ……ごめんなさい、みんな……」 ゆっくり達はぞろぞろと帰っていく。 後には家族を殺され、すすり泣くゆっくりの声が聞こえた。 その翌朝。 今日も元気に、あちこちのゆっくりからハチが羽化していった。 「またはちさんがでたよ!ぱちゅりー、どういうこと!?」 「むきゅ……たぶん、さされたことを、わすれたんだと……」 「な、なにそれ!ばかばっかりだね!」 リーダーまりさは再び群れのゆっくりを集めた。 あちこちで泣いているゆっくりがいる。今朝、家族が犠牲になったのだろう。 「はちさんにさされたか、ちゃんとおもいだしてね!  おもいだしたら、ちゃんとほうこくしてね!」 しかし、今回は前に出てくるゆっくりは一匹もいない。 当然である。報告しても昨日みたいに殺されるのが分かりきっているのだ。 そもそも、今思い出せるようなら昨日でも思い出せるだろう。 「ゆうううううう!いないはずないでしょ!」 「むきゅ……まりさ、そのへんで……」 結局、今日は何の成果も挙げられなかった。 その日から、ゆっくり達の生活は一変した。 全ては寄生バチへの恐れによるものである。 まず、皆が外出をためらうようになった。 「ゆうう……おそとで、あそびちゃいよ……」 「でも、はちさんこわい……」 昨日まで元気に遊んでいた赤ゆっくりや子ゆっくりは、巣の中に引きこもるようになった。 「まりさああああ!!!!あかちゃんのごはん、とりにいってよおおおお!!!!」 「いやだぜ!れいむがいくんだぜ!」 「おにゃかちゅいたよおおおお!!!!!!」 「ごはんまだああああ!!!!」 親ゆっくりの中には、子供への食料を取りにいくことを拒むものも現れた。 時々巣の中にハチが侵入したりすると大騒ぎだ。 「ゆぎゃああああああ!!!!!!」 「こっちこないでええええ!!!!!」 「さ、さすんなら、れいむをさしちぇね!」 「どぼちてちょんなこというのおおおおおお!」 「って、なんででこっちにくりゅのおおおおおお!」 赤まりさが刺され、ハチが巣から外へ出て行った。 そして、その直後。 「ゆっくちちね!」 「まりちゃがいりゅと、ゆっくちできないよ!」 「はちさんにさされたら、ゆっくりしんでね!」 「おかあしゃん、たちゅけちぇえええ!!!!」 「ごめんね、あかちゃん……」 刺されたゆっくりは、すぐに家族の手にかけられた。 しばらくすると、家族もハチを発生させた家として危険だと見られ、皆殺しにされるようになっていった。 もちろん、外でも危険はつきまとう。 仲の良い数匹で震えながら狩りをしているところに、ハチが姿を現した。 「ゆゆ!で、でた!」 「ゆっくりしないでにげるよ!」 「あ、ありすをさすのは、いなかもののやることよ!」 たちまち狩りは中止、逃亡の開始である。 もちろん刺されると、仲など一瞬にして崩壊する。 一匹のゆっくり霊夢を刺して、ハチは去っていった。 「みんな、れいむがさされたわよ!」 「ゆうう!!!そんなこといわないでえええ!!!!」 「れいむが、さされたって!?」 「さされたゆっくりは、しょけいだちーんぽ!」 あっという間に集まってきたゆっくり達によって、すぐさま潰される。 狩りに行こうとしない親ゆっくりでも、こういう時は速かったりするものだ。 また、一匹で狩りをしているゆっくりが刺されると、 「ゆゆ……どうするんだぜ……  と、とにかく、むれにはだまっておくんだぜ……」 殺されるのを承知で報告するゆっくりはいない。 彼らのような者がいるため、決して寄生バチの根絶はできないのだ。 また、 「ゆううううう!もうだめなんだぜえええええ!」 絶望して川に身を投げる者もいた。 そして更には。 「みんな!このありすが、さされたんだぜ!」 「ゆ!しかたないね、しょけいだよ!」 「ゆっくりしね!」 「あ、ありすはさされてなんて……ゆびゃああああ!!!!!!」 嫌いなゆっくりに無実の罪を着せ、皆に殺させるゆっくりも現れた。 冬が近づくと、冬篭りのため嫌でも狩りに行かなければならなくなる。 外出が増えると、その分刺される危険も増えていく。 「ただいま!あかちゃんたち、いいこにしてた!?」 「ゆ……おかーしゃん、さされちぇないの……!?」 「ゆゆ!さ、さされてなんかないよ!」 「うそだ!きっとさされちゃよ!」 「さされちゃおかーしゃんとは、ゆっくちできないよ!れいみゅは、いえをでりゅよ!」 「どぼちてえええええ!!!!!いまでたら、だめえええええ!!!!!」 もはや家族間ですら信用を置けなくなっていき、巣を出て行く赤ゆっくりや子ゆっくりもいた。 しかし、親の加護無しに生き延びれるほど、冬は甘くないということは知らなかったようだ。 そして、今のところハチの被害を受けていない家族が大半だが、彼らも常に恐怖に怯えている。 ハチの脅威に晒されている現在、 「「「「「むーしゃ、むーしゃ……」」」」」 以前のように『むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~!』などと言えるゆっくりは一匹もいなかった。 そして、冬が到来した。 全てのゆっくりが自分の巣にこもり、冬篭りをしている。ぱちゅりーの家もそうであった。 「ゆ……おとーしゃん、こなかったね……」 「むきゅ……」 子まりさと子ぱちゅりーが言う。 ぱちゅりーの夫のリーダーまりさは、もう一ヶ月近く巣に戻っていない。 ぱちゅりーには分かっていた。おそらく、狩りの最中にハチに刺されたのだろう。 そして恐怖にかられ自殺したか、どこか遠い所へ逃げていったか。 刺された時点で、どこにも逃げられる場所など無いというのに。 「おねーちゃん、おなかすいたね……」 「むきゅ、がまんしましょう……」 夫のまりさがいなくなり、体の弱いぱちゅりーだけでは冬を越すのに十分な食料を集められなかった。 自分も2人の子供も、春までは持たないであろう。 死を受け入れてからは、逆に冷静になれた。そして考え続けた。 確かにあのハチは恐ろしい存在だ。しかし、そこまで騒ぐほどだったのだろうか? 沢山のゆっくりが死んだように思うが、その中で本当に寄生されていたのは、ほんの一部なのでは? 多くは寄生された疑いがあるとか、寄生されたゆっくりの家族だとか、そんな理由だったように思う。 それなら本当にハチが原因で死んだ者は、ごく稀に現れるれみりゃ等の捕食種による被害と大差ない。 ならば、多少の被害は出ても、ハチにそこまで怯えず幸せな生活は続けられたのだろう。 「むきゅ、おかあさん、なんでわらってるの?」 「いや……ちょっと、ばかばかしくなってね……」 なまじ中途半端に知恵を持ってしまったために、必要以上に怯え、疑心暗鬼になった。 その結果が度重なる同族殺しや狩りへの怠慢。十分な食料を集められたゆっくりはどれほどだろうか? ぱちゅりーは、何も考えずに寄生されることができる芋虫が羨ましくなった。 しかし、もはや後の祭りである。この考えを伝えようにも、春までは生きられないのだから。 冬が終わり、春になった。 多くのゆっくりが餓死し、多くのゆっくりが越冬に成功し、交尾をして子を育み始める。 だが、誰も彼もが寄生バチへの恐怖に怯え続けていた。 もうこの森からは、ゆっくり達の幸せな声は聞こえない。 終 過去作 ゆっくり鉄骨渡り ゆっくりアトラクション(前) ゆっくりアトラクション(後) ありすに厳しい群れ(前) ありすに厳しい群れ(中) ありすに厳しい群れ(後) 好かれるゆっくりと嫌われるゆっくり [[このSSに感想を付ける>感想フォーム]]
ある森の奥に、[[ゆっくり]]の群れがあった。 餌は豊富で天敵も少なく、皆に笑顔が絶えない、とてもゆっくりとした群れだった。 群れの誰もが、この幸せが永遠に続くと信じて疑わなかった。 その日もゆっくり霊夢の一家が、楽しそうに遊んでいた。 「ゆ~、こっちこっち~」 「おねーしゃん、まっちぇ~」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~!」 「みんな、きをつけてあそんでね!」 そんな時、一匹のハチがかすかな羽音と共にやってきた。 体長一センチ足らずの、ごく小さなハチである。 ハチは赤れいむの頬にとまると、その尻の先にある針を赤れいむに突き刺した。 「ゆ!いちゃいよ!」 「あかちゃん、だいじょうぶ!?」 親れいむがハチに気付いた頃には、既にハチは空へ飛び立っていた。 慌てて赤れいむの方へと駆け寄り、患部をペロペロと舐める。 「いたいのいたいの、とんでけー」 「ゆーん!ゆーん!」 幸いにして小さいハチだったため傷も小さく、毒性も低かったようだ。 数分もすると痛みは引き、赤れいむは再び元気になって遊び始める。 その姿を見て、親れいむもほっと一息ついた。 この時は誰も、この小さなハチが群れ全体を恐怖に陥れるなど思いもしなかった。 一ヶ月ほどが経った。 赤ゆっくり達も無事成長し、子ゆっくりと呼べる大きさになった。 何一つトラブルなど無い生活だったが、ある日突然、一匹の子れいむが苦しみだした。 「ゆゆ!な、なんかいたいよ!」 「ど、どうしたの!?」 「おねえちゃん、だいじょうぶ?」 「い、いたいよおおおおおおお!!!!!」 家族達が心配そうに子れいむの周りに集まってきた。 しかし、痛みの原因も分からず途方にくれるばかり。 一方、子れいむの痛みはどんどん激しさを増していった。 そしてついに。 「ゆぎゃああああああああああ!!!!!!!!」 一層大きな子れいむの悲鳴と共に、子れいむの皮に小さな穴が開いた。 同じ穴はあちこちから次々と開き始め、その数は最終的に総計10ほどとなった。 そして、その穴から小さなハチが姿を現し、外に出るとすぐに飛び去って行った。 巣には餡子の減った子れいむの死骸と、呆然とする家族達が残された。 同様の出来事はれいむ一家に限らず、群れのあちこちで起こっていた。 ゆっくりの種や大きさなどは関係無しに、突然苦しみ出したら、体内からハチが現れたというものだ。 平和だった群れに訪れた突然の事件に、群れの幹部であるゆっくり達は頭を悩ませていた。 「ゆ~……いったい、なんなんだろう……」 「あんなはちさん、しらないよ」 「わからない、わからないよー!」 その時、群れ一番の識者であるぱちゅりーに、一つの仮説が浮かんだ。 「むきゅ、もしかするとあれは『きせいばち』かもしれないわ」 「「「「「き、きせいばち!?」」」」」 「みたことない?いもむしさんから、はちさんがでてくるの」 「ゆゆ!れいむは、みたことあるよ!」 「まりさもあるんだぜ!」 「むきゅ……おそらく、あれのいっしゅよ」 実際、ぱちゅりーの予想は当たっていた。 このハチは、ゆっくりの体内に卵を産みつける寄生バチである。 成虫はゆっくりの体の大きさに見合った数の卵を産み、幼虫は体内の餡子を食べて成長する。 その際ゆっくりが暴れないように、痛みを抑える物質を分泌しながら食べる。 そして蛹になり羽化すると、餡子と共にゆっくりの皮を食い破って外へ出る。 その時になると、もうその物質は必要ないので分泌されない。 他の多くの生物同様、ゆっくりも体内からの刺激に弱い。 体内から餡子と皮を食い破られる痛みは体外からのそれの比ではなく、大いに苦しんだ後ショック死してしまうのだ。 自覚はなくとも、餡子が減って抵抗力が落ちているのも死に至る原因の一つであろう。 「じゃ、じゃあ、どうすればいいの!?」 「むきゅ……それは……」 ぱちゅりーは困ってしまった。 寄生されたゆっくりを助けるには、体内の幼虫のみを取り出すしかない。 しかし、もちろんそんな方法は存在するわけがない。 「とりあえず、ひがいをひろげないように……いまはそれしか……」 「も、もしかして、さされたらたすからないの!?」 寄生バチに寄生された芋虫は、その時点で死が確定される。 そのことをぱちゅりーは知っていた。ということは、自分達も同じであろう。 「ざんねんだけど、たぶん……」 「ゆゆうううううう!!!!!!」 「そんなのいやなんだぜえええええ!!!!!!」 たちまちのうちに、皆泣き出してしまう。 今まで平穏に暮らしていたので、予期せぬ敵の出現にパニックになっているようだ。 そんな時、一匹のまりさが叫んだ。ぱちゅりーの夫であり、群れのリーダーのまりさだ。 「しょうがない!きょうこうさくにでるよ!」 リーダーまりさは、群れのゆっくり達をすぐに集めた。 「ゆうう……なんなんだろう」 「りーだーから、おはなしがあるって」 「だいじなはなしなんだね、わかるよー」 ざわめくゆっくり達の前に、リーダーまりさが姿を現す。 その横には、妻のぱちゅりーもいる。 「みんな、よくきいてね!  はちさんにさされたことのあるゆっくりは、まえにでてきてね!」 ゆっくり達はポカンとする。 ハチに刺されることの何が問題か、全く理解できなかった。 とりあえず言われた通りに前に出る。群れ全体の一割にも満たないが、少しはいるようだ。 「みんなは、たしかにさされたね?」 「ゆ~、そうだけど?」 「それじゃあつぎは、ぱちゅりーのはなしをきいてね」 ぱちゅりーが、寄生バチについて話し始めた。 ゆっくりに寄生するハチが出現したこと。 ゆっくりに卵を産みつけ、幼虫は体内で餡子を食べて成長すること。 羽化する時の痛みで、ゆっくりは死に至ること。 そして、助ける手段はないということ。 「こ、こわいよおおおおお!!!!!!」 「まりざ、だずがらないのおおおおお!!!!!!」 「ゆーん!!おかーしゃん、たちゅけちぇえええ!!!!!」 「ちんぽおおおおお!!!!!」 話が終わった時には、群れは大パニックであった。 幹部達同様、元々天敵の少ない土地で初めて現れた大敵の恐怖は、相当なものだったようだ。 そんな中、リーダーまりさは声を張り上げる。 「だいじょうぶだよ!ひとつだけ、たいさくがあるよ!」 「ゆ!な、なんなの!?」 皆がリーダーまりさに注目する。 「それはね……いまのうちに、ゆっくりごと、はちさんをころすんだよ!」 水を打ったように、場が静まりかえった。 すぐにはリーダーまりさの言っている意味が分からなかった。 そんな中、リーダーまりさはピョンと跳ね、前に出ていた一匹の赤れいむの所へ着地する。 悲鳴をあげる間もなく、赤れいむは潰れ絶命した。 「はやくしないと、みんなさされるよ!」 その声を皮切りに、一斉に群れのゆっくりが襲い掛かっていった。 「たすけてええええ!!!!!!」 「むれのために、ゆっくりしんでね!」 「おかあしゃああああああん!!!!」 「やめてええ!!!!ありすのあかちゃん、ころさないでえええ!!!!」 「いやだぜ!さされたゆっくりは、ゆっくりできないんだぜ!」 「わがらない、わがらないよおおおお!!!!!」 あっという間に、前に出たゆっくりは全員潰された。 何匹かのゆっくりは、体内にいたであろうハチの幼虫や蛹と共に潰れていた。 幼虫も蛹もいないゆっくり達の方が多かったが、それはおそらく多種のハチに刺されたのだろう。 とんだとばっちりである。 「よし!これではちさんは、ぜんいんやっつけたよ!」 「これでまた、ゆっくりできるね!」 「むきゅ……ごめんなさい、みんな……」 ゆっくり達はぞろぞろと帰っていく。 後には家族を殺され、すすり泣くゆっくりの声が聞こえた。 その翌朝。 今日も元気に、あちこちのゆっくりからハチが羽化していった。 「またはちさんがでたよ!ぱちゅりー、どういうこと!?」 「むきゅ……たぶん、さされたことを、わすれたんだと……」 「な、なにそれ!ばかばっかりだね!」 リーダーまりさは再び群れのゆっくりを集めた。 あちこちで泣いているゆっくりがいる。今朝、家族が犠牲になったのだろう。 「はちさんにさされたか、ちゃんとおもいだしてね!  おもいだしたら、ちゃんとほうこくしてね!」 しかし、今回は前に出てくるゆっくりは一匹もいない。 当然である。報告しても昨日みたいに殺されるのが分かりきっているのだ。 そもそも、今思い出せるようなら昨日でも思い出せるだろう。 「ゆうううううう!いないはずないでしょ!」 「むきゅ……まりさ、そのへんで……」 結局、今日は何の成果も挙げられなかった。 その日から、ゆっくり達の生活は一変した。 全ては寄生バチへの恐れによるものである。 まず、皆が外出をためらうようになった。 「ゆうう……おそとで、あそびちゃいよ……」 「でも、はちさんこわい……」 昨日まで元気に遊んでいた赤ゆっくりや子ゆっくりは、巣の中に引きこもるようになった。 「まりさああああ!!!!あかちゃんのごはん、とりにいってよおおおお!!!!」 「いやだぜ!れいむがいくんだぜ!」 「おにゃかちゅいたよおおおお!!!!!!」 「ごはんまだああああ!!!!」 親ゆっくりの中には、子供への食料を取りにいくことを拒むものも現れた。 時々巣の中にハチが侵入したりすると大騒ぎだ。 「ゆぎゃああああああ!!!!!!」 「こっちこないでええええ!!!!!」 「さ、さすんなら、れいむをさしちぇね!」 「どぼちてちょんなこというのおおおおおお!」 「って、なんででこっちにくりゅのおおおおおお!」 赤まりさが刺され、ハチが巣から外へ出て行った。 そして、その直後。 「ゆっくちちね!」 「まりちゃがいりゅと、ゆっくちできないよ!」 「はちさんにさされたら、ゆっくりしんでね!」 「おかあしゃん、たちゅけちぇえええ!!!!」 「ごめんね、あかちゃん……」 刺されたゆっくりは、すぐに家族の手にかけられた。 しばらくすると、家族もハチを発生させた家として危険だと見られ、皆殺しにされるようになっていった。 もちろん、外でも危険はつきまとう。 仲の良い数匹で震えながら狩りをしているところに、ハチが姿を現した。 「ゆゆ!で、でた!」 「ゆっくりしないでにげるよ!」 「あ、ありすをさすのは、いなかもののやることよ!」 たちまち狩りは中止、逃亡の開始である。 もちろん刺されると、仲など一瞬にして崩壊する。 一匹のゆっくり霊夢を刺して、ハチは去っていった。 「みんな、れいむがさされたわよ!」 「ゆうう!!!そんなこといわないでえええ!!!!」 「れいむが、さされたって!?」 「さされたゆっくりは、しょけいだちーんぽ!」 あっという間に集まってきたゆっくり達によって、すぐさま潰される。 狩りに行こうとしない親ゆっくりでも、こういう時は速かったりするものだ。 また、一匹で狩りをしているゆっくりが刺されると、 「ゆゆ……どうするんだぜ……  と、とにかく、むれにはだまっておくんだぜ……」 殺されるのを承知で報告するゆっくりはいない。 彼らのような者がいるため、決して寄生バチの根絶はできないのだ。 また、 「ゆううううう!もうだめなんだぜえええええ!」 絶望して川に身を投げる者もいた。 そして更には。 「みんな!このありすが、さされたんだぜ!」 「ゆ!しかたないね、しょけいだよ!」 「ゆっくりしね!」 「あ、ありすはさされてなんて……ゆびゃああああ!!!!!!」 嫌いなゆっくりに無実の罪を着せ、皆に殺させるゆっくりも現れた。 冬が近づくと、[[冬篭り]]のため嫌でも狩りに行かなければならなくなる。 外出が増えると、その分刺される危険も増えていく。 「ただいま!あかちゃんたち、いいこにしてた!?」 「ゆ……おかーしゃん、さされちぇないの……!?」 「ゆゆ!さ、さされてなんかないよ!」 「うそだ!きっとさされちゃよ!」 「さされちゃおかーしゃんとは、ゆっくちできないよ!れいみゅは、いえをでりゅよ!」 「どぼちてえええええ!!!!!いまでたら、だめえええええ!!!!!」 もはや家族間ですら信用を置けなくなっていき、巣を出て行く赤ゆっくりや子ゆっくりもいた。 しかし、親の加護無しに生き延びれるほど、冬は甘くないということは知らなかったようだ。 そして、今のところハチの被害を受けていない家族が大半だが、彼らも常に恐怖に怯えている。 ハチの脅威に晒されている現在、 「「「「「むーしゃ、むーしゃ……」」」」」 以前のように『むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~!』などと言えるゆっくりは一匹もいなかった。 そして、冬が到来した。 全てのゆっくりが自分の巣にこもり、冬篭りをしている。ぱちゅりーの家もそうであった。 「ゆ……おとーしゃん、こなかったね……」 「むきゅ……」 子まりさと子ぱちゅりーが言う。 ぱちゅりーの夫のリーダーまりさは、もう一ヶ月近く巣に戻っていない。 ぱちゅりーには分かっていた。おそらく、狩りの最中にハチに刺されたのだろう。 そして恐怖にかられ自殺したか、どこか遠い所へ逃げていったか。 刺された時点で、どこにも逃げられる場所など無いというのに。 「おねーちゃん、おなかすいたね……」 「むきゅ、がまんしましょう……」 夫のまりさがいなくなり、体の弱いぱちゅりーだけでは冬を越すのに十分な食料を集められなかった。 自分も2人の子供も、春までは持たないであろう。 死を受け入れてからは、逆に冷静になれた。そして考え続けた。 確かにあのハチは恐ろしい存在だ。しかし、そこまで騒ぐほどだったのだろうか? 沢山のゆっくりが死んだように思うが、その中で本当に寄生されていたのは、ほんの一部なのでは? 多くは寄生された疑いがあるとか、寄生されたゆっくりの家族だとか、そんな理由だったように思う。 それなら本当にハチが原因で死んだ者は、ごく稀に現れるれみりゃ等の捕食種による被害と大差ない。 ならば、多少の被害は出ても、ハチにそこまで怯えず幸せな生活は続けられたのだろう。 「むきゅ、おかあさん、なんでわらってるの?」 「いや……ちょっと、ばかばかしくなってね……」 なまじ中途半端に知恵を持ってしまったために、必要以上に怯え、疑心暗鬼になった。 その結果が度重なる同族殺しや狩りへの怠慢。十分な食料を集められたゆっくりはどれほどだろうか? ぱちゅりーは、何も考えずに寄生されることができる芋虫が羨ましくなった。 しかし、もはや後の祭りである。この考えを伝えようにも、春までは生きられないのだから。 冬が終わり、春になった。 多くのゆっくりが餓死し、多くのゆっくりが越冬に成功し、交尾をして子を育み始める。 だが、誰も彼もが寄生バチへの恐怖に怯え続けていた。 もうこの森からは、ゆっくり達の幸せな声は聞こえない。 終 過去作 ゆっくり鉄骨渡り ゆっくりアトラクション(前) ゆっくりアトラクション(後) ありすに厳しい群れ(前) ありすに厳しい群れ(中) ありすに厳しい群れ(後) 好かれるゆっくりと嫌われるゆっくり [[このSSに感想を付ける>感想フォーム]]

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  1. ある森の奥に、ゆっくりの群れがあった。
  2. 餌は豊富で天敵も少なく、皆に笑顔が絶えない、とてもゆっくりとした群れだった。
  3. 冬が近づくと、冬篭りのため嫌でも狩りに行かなければならなくなる。
  4. 外出が増えると、その分刺される危険も増えていく。
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  1. ある森の奥に、[[ゆっくり]]の群れがあった。
  2. 餌は豊富で天敵も少なく、皆に笑顔が絶えない、とてもゆっくりとした群れだった。
  3. 冬が近づくと、[[冬篭り]]のため嫌でも狩りに行かなければならなくなる。
  4. 外出が増えると、その分刺される危険も増えていく。
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