燃え尽きた大地に、土を掘り起こして何かを埋めた跡がある。
その上に、簡素ながらに削り積み上げた石が二つ。
その上に、簡素ながらに削り積み上げた石が二つ。
それは、正しく墓石だった。
それは、野比のび太がこのまま放置しておくには可哀想だと思い。
皆の協力の下、残骸だけでも土に埋めて作ったもので。
その残骸は触れた途端に崩れ落ちてしまうほどに脆く、原型を留めることすら出来ず。
それ故に、ロキシー・ミグルディアとベッキー・ブラックベルの首輪が回収された後。
正しく塵と化したその残骸を、二人が生きていた証を土に埋め、丁重に弔った。
それは、野比のび太がこのまま放置しておくには可哀想だと思い。
皆の協力の下、残骸だけでも土に埋めて作ったもので。
その残骸は触れた途端に崩れ落ちてしまうほどに脆く、原型を留めることすら出来ず。
それ故に、ロキシー・ミグルディアとベッキー・ブラックベルの首輪が回収された後。
正しく塵と化したその残骸を、二人が生きていた証を土に埋め、丁重に弔った。
この殺し合いにおいて、死体の尊厳は存在しないに等しく。
利用されるか、破壊されるかのほぼ二択で。
そのような地獄の中で、人並みの善性を保つ彼は。
せめて誰にも利用されないようにと、安らかに眠れるようにと。
利用されるか、破壊されるかのほぼ二択で。
そのような地獄の中で、人並みの善性を保つ彼は。
せめて誰にも利用されないようにと、安らかに眠れるようにと。
雨は止んだ。元々ロキシー・ミグルディアの魔法による雨雲は長くは続くこと無く。
術者の死亡から時が経って降り終わり。雲の隙間より差す黎明の輝きが大地を照らしていた。
術者の死亡から時が経って降り終わり。雲の隙間より差す黎明の輝きが大地を照らしていた。
雨は止んだ。少年少女たちの悲しみを一先ずは流れ落として。
この理不尽な状況、惨酷な殺し合いに抗おうと一歩踏み出した、その始まりのように。
この理不尽な状況、惨酷な殺し合いに抗おうと一歩踏み出した、その始まりのように。
☆ ☆ ☆
エリアD-7、産屋敷邸。
鬼殺隊最高責任者、産屋敷耀哉が住まう邸宅にして鬼殺隊の本部。
百畳敷の大広間から見える庭園は、見るものに安らぎを与えてくれる場所でもある。
そんな大広間に、野比のび太とニンフ、イリヤスフィールと雪華綺晶の4人がそこにいた。
鬼殺隊最高責任者、産屋敷耀哉が住まう邸宅にして鬼殺隊の本部。
百畳敷の大広間から見える庭園は、見るものに安らぎを与えてくれる場所でもある。
そんな大広間に、野比のび太とニンフ、イリヤスフィールと雪華綺晶の4人がそこにいた。
あの後、休息も兼ねて4人が訪れたのがこの産屋敷邸。
先の魔女との戦闘や、ロキシーとベッキーの埋葬の事もあって禄にお互いの話も出来ず。
落ち着ける場所として手軽かつ近場にあったこの邸宅にて改めて自己紹介やお互いの情報の共有を行ったに至る。
先の魔女との戦闘や、ロキシーとベッキーの埋葬の事もあって禄にお互いの話も出来ず。
落ち着ける場所として手軽かつ近場にあったこの邸宅にて改めて自己紹介やお互いの情報の共有を行ったに至る。
「……それで、大体の事は共有できた訳だけど。」
そう口を開いたのはエンジェロイド、ニンフ。
この情報共有会議においての実質的な取りまとめ役の立ち位置に収まった、翼を失った天使。
自分を含めた4人とそれぞれ所有している情報を交換、そして伝達・共有。
この情報共有会議においての実質的な取りまとめ役の立ち位置に収まった、翼を失った天使。
自分を含めた4人とそれぞれ所有している情報を交換、そして伝達・共有。
野比のび太からは未来世界、及びこの殺し合いに関与している可能性がある未来人の事を。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンからはリップという少年の存在、及び別の世界に飛ばされた際の経験、そしてマジカルサファイアを通しての魔術世界の知識を。
雪華綺晶からは薔薇乙女(ローゼンメイデン)を中心にアリスゲームの知識、及び精神世界の事を。
そしてニンフからはエンジェロイド、そのマスターらがシナプスという浮遊大陸、世界崩壊の危機。そして何より、自らの翼を毟った少女のカタチをした怪物の事を。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンからはリップという少年の存在、及び別の世界に飛ばされた際の経験、そしてマジカルサファイアを通しての魔術世界の知識を。
雪華綺晶からは薔薇乙女(ローゼンメイデン)を中心にアリスゲームの知識、及び精神世界の事を。
そしてニンフからはエンジェロイド、そのマスターらがシナプスという浮遊大陸、世界崩壊の危機。そして何より、自らの翼を毟った少女のカタチをした怪物の事を。
4人共、改めて世界の広さを理解する形となった対談。歴史の流れも在り方も何もかもが違う4つの世界。
「僕だって色々経験したことはあるけれどさ……そんな簡単に世界が危機だとか、いくら僕だって驚くよ。」
「いや、平行世界に飛ばされた事には余り驚かないんですね……。」
「いや、平行世界に飛ばされた事には余り驚かないんですね……。」
妙に緊張感の無さそうなのび太の発言。野比のび太としても今までいろんな冒険や繰り広げてきた身である。恐竜蔓延る原始時代、天空の理想郷、遥か彼方の惑星、未来の博物館、兎が住む異説の月、ジャングルの奥地に深海、宝島に南極。
それもあってかそこまで驚いているような表情ではない。つまる所超常慣れである。
イリヤもまたカレイドステッキを手に入れ魔法少女として色々経験している内に荒事には慣れたものの、それでも自分以上に修羅場を潜っているのび太のあっさりした反応には突っ込まざる得なかった。
それもあってかそこまで驚いているような表情ではない。つまる所超常慣れである。
イリヤもまたカレイドステッキを手に入れ魔法少女として色々経験している内に荒事には慣れたものの、それでも自分以上に修羅場を潜っているのび太のあっさりした反応には突っ込まざる得なかった。
「まあ、ね。でもイリヤちゃんだって凄いよ。箒無しに空を飛べるだなんてさ。」
「え、ええと……それは、何というかその……魔法少女って何か普通に飛んでるじゃない?」
「え、ええと……それは、何というかその……魔法少女って何か普通に飛んでるじゃない?」
『いいえ、イリヤ様が特別なだけで、魔術師でも普通はそう簡単に飛べません』と突っ込むようにマジカルサファイアが呆れまじりの発言。ただしのび太は大分あっさりと魔術で空中飛行が出来るイリヤに目を輝かせている。
「……普通に、飛ぶ? いや魔法少女だから……?」
「マスター……魔法少女というだけで人が普通に空を飛ぶ認識は少し……」
「あれぇ!? 私がなんかおかしいの!?」
「マスター……魔法少女というだけで人が普通に空を飛ぶ認識は少し……」
「あれぇ!? 私がなんかおかしいの!?」
天然とも言うべきイリヤの発言にニンフも雪華綺晶も生暖かい目。
憧れの眼差しと珍しいものを見る瞳に囲まれさしものイリヤも慌てて言葉を返す。
憧れの眼差しと珍しいものを見る瞳に囲まれさしものイリヤも慌てて言葉を返す。
「大丈夫だよ、僕はイリヤの事は凄い魔法少女だって思ってるからさ。」
『ということらしいので、イリヤ様。一先ず話を本筋に戻しましょう。』
「ねぇ!? なんか私がおかしい人みたいな扱いされたままなんだけど!?」
『ということらしいので、イリヤ様。一先ず話を本筋に戻しましょう。』
「ねぇ!? なんか私がおかしい人みたいな扱いされたままなんだけど!?」
閑話休題。何か勝手に被害者になった魔法少女(イリヤ)は置いといて、サファイアの一言で議題は本題へと戻る。
のび太が若干フォローっぽい発言をつぶやくも、「今褒められてもちょっと嬉しくないかな!?」と赤面状態。実際魔法がてんでダメなのび太としては、カレイドステッキありきとはいえ魔法で色々やれているイリヤに対しちょっと憧れを抱いてしまってるのは素直な感情であるが。
のび太が若干フォローっぽい発言をつぶやくも、「今褒められてもちょっと嬉しくないかな!?」と赤面状態。実際魔法がてんでダメなのび太としては、カレイドステッキありきとはいえ魔法で色々やれているイリヤに対しちょっと憧れを抱いてしまってるのは素直な感情であるが。
『……まず、この殺し合いに関わる海馬乃亜。そして仮想的であるその協力者に関してです。』
第一に、主催・海馬乃亜。そしてその協力者。
人を玩具としか思わぬ言葉。第0回放送で流れた、アニメやゲームを楽しむような無邪気で期待を寄せるような発言。だが、海馬乃亜にそういう力がある前提とは言え、全てをたった一人で準備できるなど思いづらい。特に、世界崩壊の危機に真っ只中だったニンフがいつの間にかここにいた、というのも不可解。
人を玩具としか思わぬ言葉。第0回放送で流れた、アニメやゲームを楽しむような無邪気で期待を寄せるような発言。だが、海馬乃亜にそういう力がある前提とは言え、全てをたった一人で準備できるなど思いづらい。特に、世界崩壊の危機に真っ只中だったニンフがいつの間にかここにいた、というのも不可解。
「あの乃亜ってやつ。対主催とかマーダーとかって言葉って使ってたけど。私達の事をアニメの役者だとかそういうもの扱いなわけ?」
乃亜の発言の一つ。殺し合いに抗う者たち『対主催』。殺し合いを肯定する者たち『マーダー』
まるでドラマの役者が当てはめられる役割のような認識をしている事に、多少は憤りは感じていた。
まるでドラマの役者が当てはめられる役割のような認識をしている事に、多少は憤りは感じていた。
「……海馬乃亜にとって、私達は善と悪の役割で動いて観客を楽しませる、人形の役割なのでしょうか?」
そう告げたのは雪華綺晶。まるで自分たちを人形に見立てた善悪の人形遊び。
違いはその参加者(にんぎょう)にちゃんとした自我と人生があるぐらいで。その人生すら、乃亜という子供にとって、人形に付加された着せ替え人形の服程度の価値なのか。
違いはその参加者(にんぎょう)にちゃんとした自我と人生があるぐらいで。その人生すら、乃亜という子供にとって、人形に付加された着せ替え人形の服程度の価値なのか。
「それとも、ただ……。」
孤独を満たしたかったのか。そう言いかけようとしたが、その言葉すら出なかった。
ある意味他人を利用して、奪って、そして愛が欲しかった雪華綺晶という、本来ならば肉体のない第七ドールは。海馬乃亜を見て、自分の過去を眺めているような、そんな感覚に陥りそうになった。
あの眼は、殺し合いという人形劇を愉しんでいるように見えたあの瞳、まるで―――。
ある意味他人を利用して、奪って、そして愛が欲しかった雪華綺晶という、本来ならば肉体のない第七ドールは。海馬乃亜を見て、自分の過去を眺めているような、そんな感覚に陥りそうになった。
あの眼は、殺し合いという人形劇を愉しんでいるように見えたあの瞳、まるで―――。
「……雪華綺晶?」
「……いえ、少し考え事をしていたえだけです、マスター。」
「……いえ、少し考え事をしていたえだけです、マスター。」
考え込みてたのを見かね、イリヤが心配して雪華綺晶の顔を覗きんだ。
それに反応し、何か誤魔化すかのように、雪華綺晶は口を開く。
それに反応し、何か誤魔化すかのように、雪華綺晶は口を開く。
「ですが、あの海馬乃亜と言う人物は、もしかすれば……。」
心当たりがあると、おもむろに言葉を紡ぐ
鳥海皆人、第七ドール雪華綺晶の『マスター』だった人物。
いや、その実態は雪華綺晶がマスターの代わり、「自分だけのお父様」を得たいが為に自ら創った幻影。
自らを実像だと思い込んだ虚像。雪華綺晶は、海馬乃亜が彼みたいなものだと、そう予想した。
勿論の事だが、雪華綺晶は情報共有の際に自分のことを話している。自分の孤独、そして罪と罰、救済された今の事も含めて。
鳥海皆人、第七ドール雪華綺晶の『マスター』だった人物。
いや、その実態は雪華綺晶がマスターの代わり、「自分だけのお父様」を得たいが為に自ら創った幻影。
自らを実像だと思い込んだ虚像。雪華綺晶は、海馬乃亜が彼みたいなものだと、そう予想した。
勿論の事だが、雪華綺晶は情報共有の際に自分のことを話している。自分の孤独、そして罪と罰、救済された今の事も含めて。
「……自分が創造物だって知らないで、ってこと?」
「例えそうでなくとも、彼自身が本当に彼自身であるという保証はない、ということです。」
「例えそうでなくとも、彼自身が本当に彼自身であるという保証はない、ということです。」
殺し合いを楽しむ子供という創造物。体の良い繰り人形。勿論そうである保証はなく、あくまで考察でしか過ぎないが。
『……のび太様の言っていた事も含めれば、その可能性も低くはないかと。』
「実際そうよね。あいつの言ってたギガゾンビってやつか、それとも別のやつかはわからないけれど。」
「実際そうよね。あいつの言ってたギガゾンビってやつか、それとも別のやつかはわからないけれど。」
ここで出てくるのがのび太が言っていた『ギガゾンビ』の存在だ。
23世紀出身の時空犯罪者。原始時代を時空乱入で隔離し、自分だけの帝国を作り上げようとした極悪人。
未来には適切な材料さえあれば精巧な人間を作ることだって出来る。ギガゾンビかそれに類する人物もそうしたのだろうか?
23世紀出身の時空犯罪者。原始時代を時空乱入で隔離し、自分だけの帝国を作り上げようとした極悪人。
未来には適切な材料さえあれば精巧な人間を作ることだって出来る。ギガゾンビかそれに類する人物もそうしたのだろうか?
「でも、僕の思う中でそういうのが出来そうなのはギガゾンビかなって。恐竜ハンターに協力していたドルマンスタインも未来人だけど、あいつはあくまで面白半分で恐竜狩りしていたし。」
未来人と言っても多種多様。特に時間移動をする時間犯罪者となれば限られてくる。
幾らのび太が多様な冒険を辿ってきたとしても、思い当たる節というのはそう簡単に出てくるものではない。
幾らのび太が多様な冒険を辿ってきたとしても、思い当たる節というのはそう簡単に出てくるものではない。
「他だとそういうの出来そうなのが大魔王デマオンぐらいだけど、みんなで倒したからその線はありえないかなって。」
他の該当例といえば、魔法で死んだ魂を魔族として転生させていた実績のある大魔王デマオンであるが。
彼の場合はまだ生存しているギガゾンビと違い、魔界星と共に消滅した。なので乃亜が何かの間違いで死者を蘇らせる手段がない限りそれはありえない。
そもそも、人間の下に付くという状態を、あのデマオンが受け入れるはずがないだろう。
少なくとも、野比のび太が思い当たる節はそれが限度であった。
彼の場合はまだ生存しているギガゾンビと違い、魔界星と共に消滅した。なので乃亜が何かの間違いで死者を蘇らせる手段がない限りそれはありえない。
そもそも、人間の下に付くという状態を、あのデマオンが受け入れるはずがないだろう。
少なくとも、野比のび太が思い当たる節はそれが限度であった。
「……もしかして……でも、あの状況で……」
「ニンフ?」
「……いや、確証はないんだけれど、他にも出来そうなやつだったら私にも心当たりあるわ。」
「ニンフ?」
「……いや、確証はないんだけれど、他にも出来そうなやつだったら私にも心当たりあるわ。」
だが、その停滞を打つ破ったのはニンフ。
未来に匹敵するであろう、現代を凌駕する高度な超技術を所有する文明。
それを支配する唯一無二の王にして、エンジェロイド開発者の一人。
未来に匹敵するであろう、現代を凌駕する高度な超技術を所有する文明。
それを支配する唯一無二の王にして、エンジェロイド開発者の一人。
「新大陸シナプスの王。……私たちエンジェロイドの、元マスターよ。」
苦虫を噛むように、ニンフはその名を告げた。
エンジェロイド開発者であるダイタロスと同じ天才科学者。
最後まで誇りを捨て去ることが出来なかった孤独なる王にして。
退屈を紛らわせ、享楽と未知を望む悪逆の王。
エンジェロイド開発者であるダイタロスと同じ天才科学者。
最後まで誇りを捨て去ることが出来なかった孤独なる王にして。
退屈を紛らわせ、享楽と未知を望む悪逆の王。
「あいつなら、時間は掛かるとしても四次元ランドセルやこの妙な首輪も作れるはず。それに殺し合いを愉しんだっておかしくない奴だし。」
仮にもあれでシナプスの王であり、優秀な科学者。
乃亜の望み通りのものを拵えることだって可能。彼が素直に乃亜に協力するかと言われると別の話になるが、少なくとも殺し合いを楽しむというのなら彼も同じ趣向を拵えても違和感はない。
乃亜の望み通りのものを拵えることだって可能。彼が素直に乃亜に協力するかと言われると別の話になるが、少なくとも殺し合いを楽しむというのなら彼も同じ趣向を拵えても違和感はない。
「でもニンフさん、確かニンフさんのいた世界って……」
「そうね。世界崩壊真っ只中で、あいつがいつ乃亜と接触していた、っていう疑問点はあるわ。」
「そうね。世界崩壊真っ只中で、あいつがいつ乃亜と接触していた、っていう疑問点はあるわ。」
その場合、ネックとなるのは石板による世界崩壊の最中で、どうやって空のマスターが海馬乃亜と秘密裏に接触していたのか、ということになる。
その上でこの殺し合いの準備やその為の道具作成、一体いつから仕込んでいたのか。
その上でこの殺し合いの準備やその為の道具作成、一体いつから仕込んでいたのか。
「それもあるけど、もしかしたらこの会場がシナプスみたいに浮遊大陸だなんてのも有り得るわね。」
第二・この会場は一体何なのか、と言う疑問。
その切り口の一つとして、ニンフが予想したのはシナプス同様の浮遊大陸。もしくはここがシナプスそのものであるという可能性。
その切り口の一つとして、ニンフが予想したのはシナプス同様の浮遊大陸。もしくはここがシナプスそのものであるという可能性。
「確かにそれも可能性として高そうかもしれない。シナプスがどんな所かっていうのはよく分かってないけど、パラダピアみたいな空中都市の事あるからさ。もしかしたら、別の惑星とかってのも……」
「……精神世界。」
「へ?」
「……精神世界。」
「へ?」
ニンフに続くように発したのび太の言葉を遮るように雪華綺晶が発言する。
「もしかしたら、この世界は海馬乃亜の心の世界かもしれません。」
「……心の世界?」
「……心の世界?」
精神、心の世界。「無意識(ディラック)の海」を通じて繋がる個人の領域(フィールド)。
かつての雪華綺晶の場合ならその内部に箱庭を模した水晶の城、雛苺の場合ならマスターである柏葉巴の部屋を模したメルヘンな空間。その当人の精神が形作ったフィールドが、その者の心の世界となる。
雪華綺晶がnのフィールドへの行き来が制限されている事も含めて、ある意味納得出来る内容ではある。
特に、元来なら有機の身体を持たず、精神のみの存在だった彼女だからこそ予想できた事だ。
かつての雪華綺晶の場合ならその内部に箱庭を模した水晶の城、雛苺の場合ならマスターである柏葉巴の部屋を模したメルヘンな空間。その当人の精神が形作ったフィールドが、その者の心の世界となる。
雪華綺晶がnのフィールドへの行き来が制限されている事も含めて、ある意味納得出来る内容ではある。
特に、元来なら有機の身体を持たず、精神のみの存在だった彼女だからこそ予想できた事だ。
『つまり、この舞台は海馬乃亜の心象風景そのもの――固有結界のようなものかと?』
「ええ、ここが精神の世界であることを前提として、心象風景というのは些かあっている表現かもしれません。」
「ええ、ここが精神の世界であることを前提として、心象風景というのは些かあっている表現かもしれません。」
精神世界、もとい海馬乃亜の心から生み出された世界なら、バランスよく都合が良くて不都合な、配置されてた建物に一貫性のない舞台。
それがもし、海馬乃亜の殺し合いを望む願いと、彼の中の心象風景が合わさって生まれた産物というのなら、それは正しくマジカルサファイアが言い示した通り『固有結界』。世界を塗り潰すであろう大業だ。
それがもし、海馬乃亜の殺し合いを望む願いと、彼の中の心象風景が合わさって生まれた産物というのなら、それは正しくマジカルサファイアが言い示した通り『固有結界』。世界を塗り潰すであろう大業だ。
「合否は兎も角として、参考になる話は集まったわね。……どれが答えでも厄介極まりないだろうけれど。」
おおよその意見が集まり、ニンフも一息つく。
考察が合ってようが間違ってようが、少なくとも参考意見としての価値はあった。選択肢が増えすぎるのも良くないと言えば良くないが、こうして違う視点での意見は間違いなく今後の糧となる。
考察が合ってようが間違ってようが、少なくとも参考意見としての価値はあった。選択肢が増えすぎるのも良くないと言えば良くないが、こうして違う視点での意見は間違いなく今後の糧となる。
「……じゃあ最後。今後私達はこれから何処へ向かうかって事。」
そして第三。これからの方針、次の目的地について。
方針と言ってもここにいる4人は共通して殺し合いへの反抗という点では共通している。多少の誤差はあれど致命的な誤差にはなり得ない程度。
方針と言ってもここにいる4人は共通して殺し合いへの反抗という点では共通している。多少の誤差はあれど致命的な誤差にはなり得ない程度。
「首輪の方は並行して調べてるんだけれど、今の私じゃ調べきれないのがね。」
そして、回収した二つの首輪。情報戦に長けたニンフでも把握しきれるものではない。
言ってしまえば翼が無く出力が落ちている今の状態では細部までの解析は不可能。最も万全であろうと未知の技術に包まれたこの首輪は一筋縄では行かないのは道理。
言ってしまえば翼が無く出力が落ちている今の状態では細部までの解析は不可能。最も万全であろうと未知の技術に包まれたこの首輪は一筋縄では行かないのは道理。
「元々僕はロキシーさんと一緒に図書館かホグワーツの方に行く予定だったんだけど、あっちに戻るにしてもまだあのリーゼロッテって人がいるかも知れないし……。」
首輪の調査を更に進めるには図書館でその手に関わる資料を調べれば、という話にはなるが。
そもそも元々のび太がロキシーの提案でそこに向かおうとして結果あの魔女との遭遇。まだ彼女が周辺でたむろっている可能性も否めない。
そもそも元々のび太がロキシーの提案でそこに向かおうとして結果あの魔女との遭遇。まだ彼女が周辺でたむろっている可能性も否めない。
「一先ずの目的地としては南にある海馬コーポレーションもしくは聖ルチアーノ学園、後はここから一番近い港かしら?」
『あと、彼女との遭遇を避け図書館に向かう前提なら、北方面から教会を経由してのルートもありけれど……』
『あと、彼女との遭遇を避け図書館に向かう前提なら、北方面から教会を経由してのルートもありけれど……』
提示された次の目的地への選択肢は4つ。二つは南にある海馬コーポレーション、或いは聖ルチアーノ学園。
海馬コーポレーションという名前から海馬乃亜との関連性があるかもしれないという意味での調査対象。聖ルチアーノで他の参加者を探すというのも案の一つ。
3つ目に港。産屋敷邸から一番近く、かつ別エリアへの移動手段がある可能性。その為の移動手段の船がどういうものかは不明瞭であるが、他にも二つ港があることを考えるとそこへの移動手段としての船舶が用意されているとの予測。なんなら図書館の近くにも港があるから図書館行きにはそれもありだろう。
そして最後に、マジカルサファイアが提案した、図書館への別ルート。もし仮に港からのルートが使えない時の、北方面から教会を経由しての迂回を前提とした道筋だが。
海馬コーポレーションという名前から海馬乃亜との関連性があるかもしれないという意味での調査対象。聖ルチアーノで他の参加者を探すというのも案の一つ。
3つ目に港。産屋敷邸から一番近く、かつ別エリアへの移動手段がある可能性。その為の移動手段の船がどういうものかは不明瞭であるが、他にも二つ港があることを考えるとそこへの移動手段としての船舶が用意されているとの予測。なんなら図書館の近くにも港があるから図書館行きにはそれもありだろう。
そして最後に、マジカルサファイアが提案した、図書館への別ルート。もし仮に港からのルートが使えない時の、北方面から教会を経由しての迂回を前提とした道筋だが。
「……あの子が、リップくんがまだいるかも。」
そうイリヤが零した通り、懸念はリップ=トリスタンの事だ。
明確に殺し合いに乗っているが、殺し合いの走狗とは言いづらい、信念を秘めた少年。
北へから教会を経由するルートの場合、イリヤが最初に居た場所も含め、彼と道中で遭遇するかもしれない。
明確に殺し合いに乗っているが、殺し合いの走狗とは言いづらい、信念を秘めた少年。
北へから教会を経由するルートの場合、イリヤが最初に居た場所も含め、彼と道中で遭遇するかもしれない。
「……不治の事は頭に叩き込んでるわ。一度でも傷をつけられたら倒す事すら治療行為と見なされて、ってどういうチートしてんのよ。」
『いくら数で上回っていたとしても、はっきり言って全く油断のならない相手です。』
『いくら数で上回っていたとしても、はっきり言って全く油断のならない相手です。』
リップの不治の能力に感しては他の三人も共有している。傷の治療行為に対する否定。
間接的に「リップを倒す」という行為すら、治療行為と見なされ、無力化(ひてい)されるのだ。
魔女とはまた別の、別世界の異能力者の厄介極まりない能力。
攻撃を受けた瞬間、不死者でない限り、その時点でほぼ確実に『詰まされる』。何ならリップが誰かと手を組んでいる可能性も無きにしもあらず。
その点で言えば、不治(アンリペア)の能力者リップの事を事前にしれたのは幸運かもしれない。そして逆を言えば、不治を理解してしまったが故に、『「リップの攻撃は食らってはダメ」というのを念頭に置かなければならない』という条件が付き纏う。
間接的に「リップを倒す」という行為すら、治療行為と見なされ、無力化(ひてい)されるのだ。
魔女とはまた別の、別世界の異能力者の厄介極まりない能力。
攻撃を受けた瞬間、不死者でない限り、その時点でほぼ確実に『詰まされる』。何ならリップが誰かと手を組んでいる可能性も無きにしもあらず。
その点で言えば、不治(アンリペア)の能力者リップの事を事前にしれたのは幸運かもしれない。そして逆を言えば、不治を理解してしまったが故に、『「リップの攻撃は食らってはダメ」というのを念頭に置かなければならない』という条件が付き纏う。
「……そうなったら、まず港に向かって、船舶が利用可能かの確認。利用できるのならそのまま海路で図書館まで向かう。使えないなら海馬コーポレーションへ向かって、て事になるわね。」
意見を纏め、おおよその方針が決まる。
港に向かい、船舶の類があるかどうか、かつそれが利用可能かどうかの確認。可能なら海路を経由して図書館、不可能なら海馬コーポレーションへ調査へ向かう。
港に向かい、船舶の類があるかどうか、かつそれが利用可能かどうかの確認。可能なら海路を経由して図書館、不可能なら海馬コーポレーションへ調査へ向かう。
「特に反対はない?」
ニンフのその言葉に、反対するものは誰もおらず。
短い沈黙と肯定の証明となる頷きだけで、それ以上に語ることはなかった。
短い沈黙と肯定の証明となる頷きだけで、それ以上に語ることはなかった。
□ □ □
目的地は決まって、準備を兼ねての小休止。
各々が支給品の確認などの準備をする中で、一人事前に準備を終えたニンフは空を眺めていた。
止んだ雨雲が散らばって消えて、朝の輝きがこの世界に差す光景が妙に神秘的に思えた。
各々が支給品の確認などの準備をする中で、一人事前に準備を終えたニンフは空を眺めていた。
止んだ雨雲が散らばって消えて、朝の輝きがこの世界に差す光景が妙に神秘的に思えた。
(……なーんか、こういう事になっちゃったわね。)
場の流れにつられてか、それとも智樹を思い浮かべるような少年、のび太に影響されてか。
ニンフもまた悪くない気分なのは確か。……いや、というよりも。
ニンフもまた悪くない気分なのは確か。……いや、というよりも。
……ごめんね、ニンフさん。―――これしか、思いつかなかったから。
今でも、残響する。彼女の言葉が。
どうして、あいつも彼女も、自分なんか顧みず他人(だれか)のために。
こんな羽無しの欠陥品なんか、見捨てても良かったはずなのに。
そう自嘲めいた、自虐的な感傷に浸りながら、隣で静かに泣いているであろう少年を見つめた。
どうして、あいつも彼女も、自分なんか顧みず他人(だれか)のために。
こんな羽無しの欠陥品なんか、見捨てても良かったはずなのに。
そう自嘲めいた、自虐的な感傷に浸りながら、隣で静かに泣いているであろう少年を見つめた。
「……ドラえもん。」
あの時に比べて、やけに弱々しい姿だ。
いや、仕方のないことだ。外見中身揃って子供なのが多い。
あの巨大な女のように倫理観がぶち抜いて壊れていたり、魔女のように中身が大人らしかったりと違って。
野比のび太もまた、端的に言ってしまえばまだ子供なのだ。孤独に震え、恐怖に怯え。――終焉を恐れる、等身大の。
精神構造の差異はあれど、その点においてはのび太もまだ他の強者や狂人、人外と比較しれみれば、ただの子供である。経験だけでは拭いきれない心なのだ。
いや、仕方のないことだ。外見中身揃って子供なのが多い。
あの巨大な女のように倫理観がぶち抜いて壊れていたり、魔女のように中身が大人らしかったりと違って。
野比のび太もまた、端的に言ってしまえばまだ子供なのだ。孤独に震え、恐怖に怯え。――終焉を恐れる、等身大の。
精神構造の差異はあれど、その点においてはのび太もまだ他の強者や狂人、人外と比較しれみれば、ただの子供である。経験だけでは拭いきれない心なのだ。
「ったく、何泣いてんのよのび太……って、私もあんたの事言えた立場じゃないか。」
「……うわっ!? あれ、ニンフさん?」
「……うわっ!? あれ、ニンフさん?」
唐突なニンフの声にのび太は慌ててひっくり返る。
夜と朝の間の輝きに照らされる天使の姿が、不思議と美しく輝いて、翼を失ったというには余りにも凛々しく見えた。
夜と朝の間の輝きに照らされる天使の姿が、不思議と美しく輝いて、翼を失ったというには余りにも凛々しく見えた。
「……その、何というか……」
「情けない所ごめんなさいってでも言いたいの? そういうのは別にいいのよ。私だって弱音の一つぐらい吐きたい時ぐらいはあるわ。」
「情けない所ごめんなさいってでも言いたいの? そういうのは別にいいのよ。私だって弱音の一つぐらい吐きたい時ぐらいはあるわ。」
のび太のそんな申し訳無さそうな言葉を一蹴。何なら弱音ならこっちも吐きたいぐらい。
世界崩壊が迫る中、こんな所に呼び出され、智樹を導くための翼は化け物のような女に引きちぎられて。
本当なら、今でも泣きたい程に。
世界崩壊が迫る中、こんな所に呼び出され、智樹を導くための翼は化け物のような女に引きちぎられて。
本当なら、今でも泣きたい程に。
「けどね。あんたが助けてくれたのよ。あんたの言葉で、ほんの少しだけ、燻ってなんていられないって思えたのよ。……あいつと、トモキと似ていそうな、あんたのお陰で。」
そんな自分に手を差し伸べたのは、あいつと全く違って、似ているような、そんな少年だ。
なんて、思わず小さな笑みを浮かべていたニンフに対し、のび太が何かを思い出したかのように口を開いた。
なんて、思わず小さな笑みを浮かべていたニンフに対し、のび太が何かを思い出したかのように口を開いた。
「……何だかさ、ニンフの事見てるとさ、リルルの事思い出すんだ。」
「リルル? 誰のこと?」
「リルル? 誰のこと?」
のび太がニンフを見て思い出し話したのは、リルルという一人の、天使のように綺麗なロボット。
ロボットが霊長の頂点に立つメカトピアという惑星で、人類を奴隷にしようと鉄人兵団より送り込まれた少女。敵だったけれど、最後には自分たちと地球を守るために歴史を変えた代償にその存在ごと消え去った、羽ばたく天使。
ロボットが霊長の頂点に立つメカトピアという惑星で、人類を奴隷にしようと鉄人兵団より送り込まれた少女。敵だったけれど、最後には自分たちと地球を守るために歴史を変えた代償にその存在ごと消え去った、羽ばたく天使。
「……クールでミステリアスで怖かったけど、本当は優しくて、僕たちを守るために、過去に遡って……。」
「何よそれ、本当にエンジェロイドみたいじゃない、それ。」
「何よそれ、本当にエンジェロイドみたいじゃない、それ。」
その話を聞いて、ニンフはそう思った。
ロボット兵団に良いように扱われる女性型ロボット。玩具同然でこき使われたのはエンジェロイドにそっくりで。でもリルルは性格的には感情が芽生えたイカロスみたいなものでは? と多少は思ったりして。
ロボット兵団に良いように扱われる女性型ロボット。玩具同然でこき使われたのはエンジェロイドにそっくりで。でもリルルは性格的には感情が芽生えたイカロスみたいなものでは? と多少は思ったりして。
その上で、原点を変えた彼女の行為には素直に驚嘆に値するものだ。
やった事が、自分が智樹を石板の元へ送り込もうとしたのと同じことだ。もっともこっちは石板の書き込みさえ出来れば阻止できる世界崩壊だが。リルルの場合は自分という存在を消えることを厭わず、それを為した事だ。
幾ら生まれ変わる可能性があったとして、それがのび太の知っている『リルル』という個と同じものとして生まれるとは限らない。
それは、太陽に近づきすぎたが為に翼を失い海に落ちた神話のイカロスのように。
理想を手にするため、己の身すら顧みなかったのだ。
やった事が、自分が智樹を石板の元へ送り込もうとしたのと同じことだ。もっともこっちは石板の書き込みさえ出来れば阻止できる世界崩壊だが。リルルの場合は自分という存在を消えることを厭わず、それを為した事だ。
幾ら生まれ変わる可能性があったとして、それがのび太の知っている『リルル』という個と同じものとして生まれるとは限らない。
それは、太陽に近づきすぎたが為に翼を失い海に落ちた神話のイカロスのように。
理想を手にするため、己の身すら顧みなかったのだ。
「最後は自分の意志でってのは、ある意味……」
私達もそうかも知れない。と口ずさむ。
智樹は望まないだろうが、智樹の為になら命令に逆らってまで彼を守ってしまいそうではある。
誰かからの命令を求めてしまう自分は兎も角、もしもの時のイカロスとアストレアは間違いなくそうすると、という根拠のない自信はあった。
智樹は望まないだろうが、智樹の為になら命令に逆らってまで彼を守ってしまいそうではある。
誰かからの命令を求めてしまう自分は兎も角、もしもの時のイカロスとアストレアは間違いなくそうすると、という根拠のない自信はあった。
「でも、リルルは多分。生まれ変われたんだと思う。侵略者の為の尖兵なんかじゃなくて、とても綺麗な天使に……さ。」
「……夢のある話ね。良いじゃないの、そういうの。」
「……夢のある話ね。良いじゃないの、そういうの。」
私みたいに第1世代のエンジェロイドは基本夢は見れないんだけれど、付け加えながら。
そんなロマンの有りそうなのび太の話を心地いい気分で聞いてていた。
そんなロマンの有りそうなのび太の話を心地いい気分で聞いてていた。
「だからさ。イリヤにも、雪華綺晶さんにも、ニンフにも。死なないで欲しいし、無理をしないで欲しいって思ってる。……誰も死なないなんて夢物語だってわかってるけれど。」
「いや、真っ先に無理しそうなあんたがそれ言うの?」
「それは、何というか身体が勝手に動いちゃうと言うか……。ロボットだからってそんな事で差別したくないし、そもそも僕はロボットだからそんなの関係なく友だちになりたいって思ってるからさ。」
「いや、真っ先に無理しそうなあんたがそれ言うの?」
「それは、何というか身体が勝手に動いちゃうと言うか……。ロボットだからってそんな事で差別したくないし、そもそも僕はロボットだからそんなの関係なく友だちになりたいって思ってるからさ。」
そんなのび太の発言に、呆れそうで、やはり彼はトモキと似ていると。
人もロボットも、そして人外すらもそうだからと区別しない。自分の善性に忠実で、真摯で。
それでいて、誰とでも仲良くなってしまいそうなそんなありふれた青年だと。
多分、彼に「もしもの時は命令して」って言っても、素直に受け入れてくれ無さそう性格していそうで。
人もロボットも、そして人外すらもそうだからと区別しない。自分の善性に忠実で、真摯で。
それでいて、誰とでも仲良くなってしまいそうなそんなありふれた青年だと。
多分、彼に「もしもの時は命令して」って言っても、素直に受け入れてくれ無さそう性格していそうで。
「多分、この先は地獄よ。私達にとっても、あんたにとっても。」
ここは善性を持つ者にとっての地獄絵図、善意以上に悪意や欲望が渦巻く舞台。
数多の怪物が存在する蠱毒の壺の中だ。
曰く、幼稚な善性を以て蹂躙する生まれながらの破壊者。
曰く、数百年もの間積もった憎悪と愛に塗れた復讐の魔女。
玩具箱の如き混沌の坩堝の中、機械天使に地獄と評される世界の中で、少年は。
数多の怪物が存在する蠱毒の壺の中だ。
曰く、幼稚な善性を以て蹂躙する生まれながらの破壊者。
曰く、数百年もの間積もった憎悪と愛に塗れた復讐の魔女。
玩具箱の如き混沌の坩堝の中、機械天使に地獄と評される世界の中で、少年は。
「今まで挫けそうな事なんて、何度もあったよ。でも、何度でも起き上がるよ。僕は"だるま"だからさ。」
その簡潔な言葉こそが、答えであった。
何度転んでも、転んでも起き上がるのが、彼の得意なことだから。
それだけで、十分な返答だった。
何度転んでも、転んでも起き上がるのが、彼の得意なことだから。
それだけで、十分な返答だった。
「それじゃ、根っこごと壊されそうな時はあたしが何とかしてあげるわよ。ま、その時は命令してくれると嬉しいわね。」
「命令だなんて……そんな道具扱いみたいな事は気が引けるなぁ……。」
「ドラえもんに頼ってばっかのあなたがそれいうの?」
「そ、それとこれとは……!ええと……」
「命令だなんて……そんな道具扱いみたいな事は気が引けるなぁ……。」
「ドラえもんに頼ってばっかのあなたがそれいうの?」
「そ、それとこれとは……!ええと……」
悪戯混じりの言葉を投げかければこれである。別に他人を弄る趣味はないが。
少なくとも「命令するのは道具扱いみたいで気が引ける」というのは何とも底抜けのお人好しなのやら、と。
彼がエンジェロイドを手に入れたら良いマスターになれると思う、特にアストレアとは気が合いそうとかニンフはそう思いながら。
少なくとも「命令するのは道具扱いみたいで気が引ける」というのは何とも底抜けのお人好しなのやら、と。
彼がエンジェロイドを手に入れたら良いマスターになれると思う、特にアストレアとは気が合いそうとかニンフはそう思いながら。
「でも、命令っていうかお願いになるけど……「死なないで」。ぐらいかな? あはは。」
そんな恥ずかしさ混じりののび太の返答で。本当に甘いというか抜けていると言うか、何というか。
この調子だと肝心な所で失言やらやらかしやしそうだなと多少不安になりながらも。
この調子だと肝心な所で失言やらやらかしやしそうだなと多少不安になりながらも。
「本当にそれお願いの部類じゃないの。……ああでも、そういうのもある意味命令よね。」
「……え?」
「そう言われなくとも、こんな所で死んでたまるかってやつ。――私だってね。」
「……え?」
「そう言われなくとも、こんな所で死んでたまるかってやつ。――私だってね。」
――守りたい人がいるのよ。とのび太には聞こえない声でそう小さく。
少なくとも、何かしらの意図が関わっている可能性がある以上、この殺し合いから脱出する、というだけでは解決しない可能性も出てきた。
何なら、『何でも願いを叶える』と言う根拠に、『石板』が関与している可能性だって。
少なくとも、何かしらの意図が関わっている可能性がある以上、この殺し合いから脱出する、というだけでは解決しない可能性も出てきた。
何なら、『何でも願いを叶える』と言う根拠に、『石板』が関与している可能性だって。
「あんたはこの中だと一番非力なんだから。無茶だけはしないでよね。……あたしだって、眼の前で奪われるのはもう懲り懲りなんだからさ。」
「僕だって、死なないよ。こんな殺し合いなんて終わらせて、みんなの所へ帰るんだから!」
「僕だって、死なないよ。こんな殺し合いなんて終わらせて、みんなの所へ帰るんだから!」
そんな少年の、だるまの如き転んでは起き上がることが野比のび太の言葉。
4人の中だと一番非力で、心許ない少年だが、そんなポジティブ思考は多分必要なものだと。
ポジティブ寄りというより諦めの悪さならイリヤも大概というのは置いておいて。
4人の中だと一番非力で、心許ない少年だが、そんなポジティブ思考は多分必要なものだと。
ポジティブ寄りというより諦めの悪さならイリヤも大概というのは置いておいて。
「大丈夫。僕もロキシーさんみたいには行かないけれど魔法は使えるんだから、チンカラホイ!」
「あっ」
「あっ」
調子に乗ってか、おもむろにのび太がチンカラホイと唱えてしまった。
「あれ、この流れ……」とニンフが悪寒がよぎった時には時既に遅く。
ふわぁとニンフの下半身の風通しが良くなった感覚がよぎったと思えば。
「あれ、この流れ……」とニンフが悪寒がよぎった時には時既に遅く。
ふわぁとニンフの下半身の風通しが良くなった感覚がよぎったと思えば。
「……あれ?」
のび太の目の前には、ニンフのパンツらしき物体が宙を浮いている。
「まさか、ちょっとしたものを浮かび上がらせるぐらいしか出来なかったのに……!」
知ってか知らずか、のび太は大はしゃぎ。
指揮者のように、ゆっくりながらもパンツを空中で右往左往出来ている。
ロキシーが遺したものの結果なのか、魔法の扱いという点ではのび太は一歩だけ前進した、のかもしれない。ただし――。
指揮者のように、ゆっくりながらもパンツを空中で右往左往出来ている。
ロキシーが遺したものの結果なのか、魔法の扱いという点ではのび太は一歩だけ前進した、のかもしれない。ただし――。
「見てよニンフ! 僕の魔法が、ちょっとだけパワーアップして……あれ?」
そして、当のニンフ本人と言えば。
スカートを抑えて、プルプルと体を震わせながら。顔を赤らめたまま。
スカートを抑えて、プルプルと体を震わせながら。顔を赤らめたまま。
「この……バカぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「ごふぅっ!?」
「ごふぅっ!?」
見事にのび太に鉄拳を炸裂させ、天井に突き刺さる結果となった。
「何々!? 敵襲ってのび太さぁぁぁん!? なんかパンツが空飛んでるぅ?」
その後、敵襲だと勘違いしたイリヤが駆けつけて、妙ちくりんな光景に頭が混乱する事になったのはまた別の話。
※C-7とD-7の間にロキシーとベッキーの墓があります。
※ロキシーとベッキーの四次元ランドセルが回収されたかどうかは後続の書き手におまかせします
※ロキシーとベッキーの四次元ランドセルが回収されたかどうかは後続の書き手におまかせします
【一日目/黎明/D-7 産屋敷邸内】
【野比のび太@ドラえもん 】
[状態]:健康、強い決意、天井に刺さった状態
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、量子変換器@そらのおとしもの、ラヴMAXグレード@ToLOVEる-ダークネス-
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。生きて帰る
1:もしかしてこの殺し合い、ギガゾンビが関わってる?
2:みんなには死んでほしくない
3:魔法がちょっとパワーアップした、やった!
[備考]
※いくつかの劇場版を経験しています。
※チンカラホイと唱えると、スカート程度の重さを浮かせることができます。
「やったぜ!!」BYドラえもん
※四次元ランドセルの存在から、この殺し合いに未来人(おそらくギガゾンビ)が関わってると考察しています
※ニンフ、イリヤ、雪華綺晶との情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました
※魔法がちょっとだけ進化しました(パンツ程度の重さのものなら自由に動かせる)。
[状態]:健康、強い決意、天井に刺さった状態
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、量子変換器@そらのおとしもの、ラヴMAXグレード@ToLOVEる-ダークネス-
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。生きて帰る
1:もしかしてこの殺し合い、ギガゾンビが関わってる?
2:みんなには死んでほしくない
3:魔法がちょっとパワーアップした、やった!
[備考]
※いくつかの劇場版を経験しています。
※チンカラホイと唱えると、スカート程度の重さを浮かせることができます。
「やったぜ!!」BYドラえもん
※四次元ランドセルの存在から、この殺し合いに未来人(おそらくギガゾンビ)が関わってると考察しています
※ニンフ、イリヤ、雪華綺晶との情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました
※魔法がちょっとだけ進化しました(パンツ程度の重さのものなら自由に動かせる)。
【ニンフ@そらのおとしもの】
[状態]:全身にダメージ(中)、羽なし(再生中)、羽がないことによる能力低下、ノーパン
[装備]:万里飛翔「マスティマ」@アカメが斬る
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3、ベッキー・ブラックベルの首輪、ロキシー・ミグルディアの首輪
[思考・状況]基本方針:殺し合いをぶっ壊して、元の世界に帰る
1:リンリン(名前は知らない)はぐちゃぐちゃにしてやりたい
2:準備と休息が終わり次第に港へ向かう。船舶での移動手段がついた場合は図書館へ。無かった場合は海馬コーポレーションか聖ルチアーノ学園に向かう。
3:元の世界のトモキ達が心配、生きててほしいけど……。
4:この殺し合いにもしあいつ(元マスター)関わってるとしたら厄介かも。
5:のび太のそれ、ほとんどお願いじゃないの……。でも、言われなくてもその「命令」は果たす。
6:首輪の解析も進めたいけど、今の状態じゃ調べようにも調べきれないわね。
[備考]
※原作19巻「虚無!!」にて、守形が死亡した直後からの参戦です。
※SPY×FAMILY世界を、ベッキー視点から聞き出しました。ベッキーを別世界の人間ではと推測しています。
※制限とは別に、羽がなくなった事で能力が低下しています。ただし「デストラクト・ポーション」の影響で時間は掛かるも徐々に回復しつつあります
※この殺し合いの背後に空のマスターが関わってるかもしれないと、及びこの会場はシナプスのような浮遊大陸なのでは?と考察しています
※のび太、イリヤ、雪華綺晶との情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました
[状態]:全身にダメージ(中)、羽なし(再生中)、羽がないことによる能力低下、ノーパン
[装備]:万里飛翔「マスティマ」@アカメが斬る
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3、ベッキー・ブラックベルの首輪、ロキシー・ミグルディアの首輪
[思考・状況]基本方針:殺し合いをぶっ壊して、元の世界に帰る
1:リンリン(名前は知らない)はぐちゃぐちゃにしてやりたい
2:準備と休息が終わり次第に港へ向かう。船舶での移動手段がついた場合は図書館へ。無かった場合は海馬コーポレーションか聖ルチアーノ学園に向かう。
3:元の世界のトモキ達が心配、生きててほしいけど……。
4:この殺し合いにもしあいつ(元マスター)関わってるとしたら厄介かも。
5:のび太のそれ、ほとんどお願いじゃないの……。でも、言われなくてもその「命令」は果たす。
6:首輪の解析も進めたいけど、今の状態じゃ調べようにも調べきれないわね。
[備考]
※原作19巻「虚無!!」にて、守形が死亡した直後からの参戦です。
※SPY×FAMILY世界を、ベッキー視点から聞き出しました。ベッキーを別世界の人間ではと推測しています。
※制限とは別に、羽がなくなった事で能力が低下しています。ただし「デストラクト・ポーション」の影響で時間は掛かるも徐々に回復しつつあります
※この殺し合いの背後に空のマスターが関わってるかもしれないと、及びこの会場はシナプスのような浮遊大陸なのでは?と考察しています
※のび太、イリヤ、雪華綺晶との情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました
【雪華綺晶@ローゼンメイデン】
[状態]:健康、イリヤと契約。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本方針:真紅お姉様の意志を継ぎ。殺し合いに反抗する。
1:殺し合いに反抗する。
2:イリヤを守る。
3:彼(乃亜)は、皆人と同じ……?
[備考]
※YJ版原作最終話にて、目覚める直前から参戦です。
※イリヤと媒介(ミーディアム)としての契約を交わしました。
※Nのフィールドへの立ち入りは制限されています。
※真紅のボディを使用しており、既にアストラル体でないため、原作よりもパワーダウンしています。
※乃亜の正体が鳥海皆人のように、誰かに産み落とされた幻像であるかもしれないと予想しています。
※この会場は乃亜の精神世界であると考察しています。
のび太、ニンフ、イリヤとの情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました
[状態]:健康、イリヤと契約。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1
[思考・状況]
基本方針:真紅お姉様の意志を継ぎ。殺し合いに反抗する。
1:殺し合いに反抗する。
2:イリヤを守る。
3:彼(乃亜)は、皆人と同じ……?
[備考]
※YJ版原作最終話にて、目覚める直前から参戦です。
※イリヤと媒介(ミーディアム)としての契約を交わしました。
※Nのフィールドへの立ち入りは制限されています。
※真紅のボディを使用しており、既にアストラル体でないため、原作よりもパワーダウンしています。
※乃亜の正体が鳥海皆人のように、誰かに産み落とされた幻像であるかもしれないと予想しています。
※この会場は乃亜の精神世界であると考察しています。
のび太、ニンフ、イリヤとの情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:健康、雪華綺晶と契約。
[装備]:カレイドステッキ・サファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3、クラスカード『アサシン』Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本方針:殺し合いから脱出して、美遊を助けに行く。
1:殺し合いを止める。
2:雪華綺晶ちゃんとサファイアを守る。
3:リップ君は止めたい。
4:みんなと協力する
[備考]
※ドライ!!!四巻以降から参戦です。
※雪華綺晶と媒介(ミーディアム)としての契約を交わしました。
※クラスカードは一度使用すると二時間使用不能となります。
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[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3、クラスカード『アサシン』Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本方針:殺し合いから脱出して、美遊を助けに行く。
1:殺し合いを止める。
2:雪華綺晶ちゃんとサファイアを守る。
3:リップ君は止めたい。
4:みんなと協力する
[備考]
※ドライ!!!四巻以降から参戦です。
※雪華綺晶と媒介(ミーディアム)としての契約を交わしました。
※クラスカードは一度使用すると二時間使用不能となります。
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031:夜の館で | 投下順に読む | 033:i'm a dreamer |
時系列順に読む | ||
018:思い描くは、ひとつの未来 | 野比のび太 | 036:かけ違えた世界で |
ニンフ | ||
雪華綺晶 | ||
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン |